Atriumの1回のセッションの中には、いくつもの「廊下」があります。だからAtriumにおけるパッチは、単なる「気に入ったプリセット音色」ではなく、そのときの「景色全体」を保存した完全な構成です。良いパッチほど、もう一度読み込んだときに、前回の探索では見つからなかったさらに多くのサウンドへとつながっていくものです。
このような探索を存分に楽しめるよう、Atriumには合計5つのパッチを本体内に保存できます。各ファクトリー・パッチは、それぞれ小さな世界として探索したうえで、自由に編集して上書きすることもできます。
patchとは、Atrium全体の状態を保存したスナップショットです。コントロールのポジション、スケール、シーケンス、マッピングなど、gesturesとvolume以外のほぼすべてが保存されます。つまり、たったひとつのパッチの中に、とても多くの音楽的情報を詰め込むことができるのです。
Template: Resetting State #
多くのシンセサイザーには、新しいプリセットを作るための「init」パッチがありますが、Atriumにはパッチのtemplateがあります。この特別なパッチは、マッピングなどの複雑な設定を持たず、分かりやすく音楽的な初期状態を提供するデフォルト設定の集合です。
このtemplateは、隠れたモジュレーションに影響されることなく、いつでも既知の状態へ戻れるため、最初の探索に最適です。
Atriumの電源を入れると、必ずこのtemplateパッチが読み込まれます。いつでも呼び出すことができます。
loadを押したままclearを押します。
templateパッチを読み込むと、次の状態になります。
• すべてのマッピングがクリアされます。
• すべてのgesturesがクリアされます。
• すべての連続コントロールが、現在のスライダーとノブの位置に設定されます。
• タッチプレートがデフォルト値にリセットされます。
Atriumの他のパッチとは異なり、templateは常に現在のノブとスライダーの位置にAtriumを合わせます。これによって、マッピングを設定したりgesturesを録音したりした際に発生する「pickup」状態も解除されます。
重要なのは、templateを読み込んだ後は、すべてのノブがパネルに書かれている通りの動作に戻るということです。
Loading #
Atriumの5つのパッチのうち、いずれかを読み込むには:
• loadを押し続けます。extensionウィンドウにLが点灯し、パッチをloadしようとしていることを示します。
• 現在読み込まれているパッチに対応するgestureキーのライトが点灯します。
• 対応するgestureキーを押すと、そのパッチを読み込みます。左から右へ1〜5です。
以前にパッチを読み込んでいる場合、そのパッチに対応するgestureキーが点灯し、gestureウィンドウにパッチ番号が表示されます。ウィンドウにtと表示されている場合、最後に読み込まれたのはtemplateです。
パッチの読み込みは即座に行われるため、ライブ演奏中でも保存済みのパッチを素早く切り替えることができます。
パッチを読み込むと、すべての状態が復元されます。パッチ制作中のある瞬間を丸ごと保存したスナップショットだと考えてください。そのため、現在作業しているマッピング、gestures、MIDI設定などもすべて上書きされます。
Factory Patches #
すでに一通り試しているかもしれませんが、ここではファクトリー・パッチがどのようなものなのかを紹介します。
mappingについて多く触れていますので、この先の説明を読んだあとに戻ってくると、より理解しやすくなるかもしれません。
1. Dialogue #
(by dani derks)
「マシンと手で対話するためにデザインされたパッチです。
• sustain / strumでcontoursを開きます。contoursはtimbreを調整するようマッピングされています。
• 音色探索のために5つのclustersが保存されています。
• 2つのカスタムscalesを使用しています。ボイシングは似ていますが、それぞれに役割のある違いがあります。私はコードをひとつ選び、この2つの選択肢をタップして切り替えるのがお気にいりです。
• LFOはvoicingタッチプレートを上方向へ、contourを下方向へ、どちらもほんの少しだけモジュレーションしています。
• notesはspectreのカットオフ周波数へ逆方向にマッピングされています。そのため、ノート、スケール、コード、オクターブを変更すると、低いトーンほどspectrumの周波数が高くなり、思わず「おおっ!」となるような変化が起こります。
それでも、まだたくさんのマニュアル操作が残されています。notesスライダーを上下させたり、ティンバーを素早く変化させたり、spectrumを広げたりしてみてください。」
2. Place #
平行移動するメジャー7thコードを探求するパッチです。
spectreの周波数がnotesの広がりをコントロールし、lensがループしながらsequenceを進めます。LFOがタイミングを駆動し、timeにはわずかなコーラス効果も加えられています。
そのLFO自身はランダムにステップしながら、まるで自分の居場所を探しているかのように動きます。
3. Cyan #
Bill Evansの「Blue in Green」冒頭のコードを繊細に再現したパッチです。
最初に聴くだけでも美しいのですが、tempoとspeedを操作するだけでもとても楽しめます。
droneを使ってコード・トーンを順番に鳴らし、各イベントの動きをcontourで作っています。voicingは一番下まで下げられているため、深いベースラインが生まれ、その上に密集したコードが重なります。ベースには上方向のcontour stretchも加えられています。
4. Lovely #
存在しなかった古代のパイプオルガンから生まれたオルゴール。
古い世界、教会的な雰囲気を持っています。
きわめて多くのモジュレーションが動作していますが、これがモジュラー・シンセのスパゲッティ状パッチにならないことは本当に最高です。
phaseを使ってノートを3つの異なるグループへ広げ、lensは6つの値を循環するよう制限されています。
もともとはワルツのプリセットを作ろうとして始めたものですが、かなり遠いところまで進んでしまいました!
5. Barry #
「diminished sixth」スケールをベースにしたパッチです。
リズムには非常に面白いギャロップ感があり、しかも11拍子です。
ここでのポイントは、chordを調整してスケール内の1音おきのノートを発音させ、changeをdroneの進行へマッピングすることです。droneは2パルスに1回だけ鳴るよう設定されています。
その結果、droneが繰り返されるたびにメジャー6thコードとディミニッシュ7thコードが交互に現れます。
同じ効果を異なるハーモニーで試せるよう、ほかにも8音スケールがいくつか収録されています。lengthを操作して、さらにグルーヴィーな領域を探してみてください。
Saving #
Atriumのパッチはいつでも上書きできます。
同じスロットへ繰り返し保存しながら既存のパッチを少しずつ発展させることも、まったく別の内容へ置き換えることもできます。
パッチを保存するには:
• altを押したまま、loadも押し続けます。
• この2つのキーを押している間、extensionウィンドウにSが点滅し、パッチをsaveしようとしていることを示します。
• 現在読み込まれているパッチのLEDも点灯します。現在のパッチを上書きしたい場合、または逆に避けたい場合の目印になります。
• 保存したいgestureスロットを押すと、そのパッチ・スロットへ保存されます。
パッチには次の内容が保存されます。
• すべてのコントロールの状態(ノブ、スライダー、タッチプレート、モード・キー)
• scales
• mappings
• sequenceの値と範囲
• clusters
• MIDI設定
• tempo
*gesturesとvolumeは保存されないことに注意してください。
Exporting & Importing Patches #
パッチのエクスポートとインポートにはthe Clerkを使用します。
パッチはLuaファイルとして保存され、Atriumの物理的なハードウェア状態とデータ(scales、mappingsなど)の両方を管理しています。
Clerkからパッチをダウンロードすると、ファイル名は自動的にpreset_X.luaとなります。自由に名前を変更して構いませんが、あとで再アップロードできるよう、.lua拡張子は必ず残してください。
好奇心からファイルを開いてみたくなるかもしれません。そうすると、Atriumのデータ構造の裏側を初めて覗くことができます。
Luaに詳しい方なら、ファイルを編集してみたくなるかもしれません。現時点ではAtrium側からロード失敗を分かりやすく通知する仕組みがないため、広く推奨しているわけではありませんが、スクリプティングを通してAtriumとどのように関わっていけるかを考えるのは興味深いでしょう。
コンピューターからAtriumへパッチをアップロードすると、既存のパッチ・スロットが上書きされます。
そのため、
uploadする前には必ずdownloadしておくことをおすすめします。