
spectreは、5つのオシレーターにフィルタリングとフィードバック・ディレイを加える、レゾナント・トーン・シェイパーです。3つのアナログ・バンドパス・フィルターを搭載し、その信号を2つのBBDディレイへ送り、ダイナミックなフィードバック・ループを形成します。フィルターの設定はsequenceに記録され、lens sequencerを使ってリズミカルに保存・呼び出しが可能です。さらに3段階のmorphにも対応しています。
spectre knob #
spectreは、このプロセッサー自体の名前であると同時に、そのパラメーターのひとつでもあります。
spectreノブはマクロ・コントロールとして機能し、ドライ、フィルター、ディレイ・サウンドのバランスを変化させながら、同時にフィードバックの強さもコントロールします。回路を構成する個々の要素をダイナミックにスキャンしていくようなものだと考えてください。このコントロールの効果は、ソースとなる5つのボイスと、このセクション内の他の設定によって大きく変化します。このマクロ・コントロールは3つのゾーンを横断し、それぞれ異なるパラメーター変化を表現力豊かなレンジで滑らかにつないでいきます。ノブを完全に反時計回りにした位置から、時計回りに動かしていくと次のように変化します。
- spectreを反時計回りの位置から10時方向まで動かすと、ドライ信号からディレイを含まないフィルター出力へクロスフェードします。Three Sisters(Mannequinブランドのモジュール)を思わせるサウンド・シェイピングです。
- spectreを時計回りに2時方向付近まで上げていくと、フィルター出力が徐々にステレオ・ディレイへ送られ、それとともにフィードバックも加わります。ディレイ信号はこのフィードバック経路を通してのみ聞こえるため、次第に成長していくレゾナントなエコーが生まれます。
- さらにspectreを時計回りいっぱいまで上げると、フィルター信号から、ダイレクトなディレイ出力を含むドライ信号へクロスフェードしながら、フィードバック量は減少していきます。このゾーンの開始時には最大だったフィードバックが、時計回りいっぱいでは約50%まで減少します。
spectreの各セクションにはそれぞれ独自のキャラクターがあり、楽器全体の固定的なトーン・シェイパーとしても活用できます。レンジの両端ではドライ信号が優先されるため、最も明るくフルレンジなサウンドになります。一方、中央付近では明確な色付けが加わり、spectreプロセッサーによってサウンドをより劇的に変化させることができます。このコントロールをモジュレーションするのも非常に楽しいですが、あえて固定した位置に設定し、パッチ全体のレゾナントなキャラクターを決める使い方も効果的です。
time #
timeノブは、spectreのフィードバック経路におけるディレイ・タイムをコントロールします。
ディレイ信号が聞こえるのは、spectreノブが10時方向より上に設定されている場合のみです。
Atriumではよくあることですが、設定を高くする(時計回りに回す)ほど速くなります。
• timeを反時計回りに回す:ディレイ・タイムを800msに設定
• timeを時計回りいっぱいまで回す:約1.5msまでディレイを高速化
一見シンプルですが、このレンジ全体ではフィルター設定と強く相互作用しながら、さまざまな興味深い現象が起こります。最短のディレイ・タイムでは、コーム・フィルター効果によって金属的で響きの強いトーンに近づいていきます。パッチに強烈なレゾナント・キャラクターを加えるのに非常に効果的です。
逆に、最も遅い設定ではBBD(バケット・ブリゲード・デバイス)ディレイならではの、明確なLo-Fiキャラクターが現れます。長いディレイ・タイムではサンプリング・レートが大幅に低下し、高域が失われます。長いディレイ・タイムを使用するときは、フィルター周波数をレンジの下半分に設定することを意識してみてください。
timeをモジュレーションするとき、マッピング・ソースがポリフォニックの場合は、ボイス1と5がそれぞれ左右チャンネルを独立してコントロールします。lfoをtimeへほんの少しマッピングしてからphaseを広げ、左右のエコーが互いに跳ね返るような効果を試してみてください。さらにphase自体をモジュレーションすれば、スルーゼロ・コーラスのような効果も得られます。
timeの値は通常自由に設定できますが、Atriumのclockの分周または倍数に同期させることもできます。このモードを有効にする方法については、「ON SYSTEMS > Clock > Sync Mode」を参照してください。
spectrum touchplate #
spectreを囲むアーチ部分は、フィルタリングする周波数スペクトラムをコントロールするタッチプレートです。3つの選択可能な周波数帯域だけを通過させるイコライザーのようなものだと考えてください。左から右まで約100Hz〜12kHzのレンジをカバーし、各ボイスを大胆にシェイピングできます。
1本の指でスワイプすると、3つすべてのフィルターのカットオフを調整できます。それぞれの周波数帯域が同じ量だけ移動します。どちらかの端まで動かし続けると、3つのフィルターはひとつの周波数へ集約されます。その後、反対方向へ動かしても、この位置関係は維持されます。3つすべてのフィルター周波数をアーチ中央へ戻すには、clearを押したままspectrumタッチプレートに触れます。
フィルター同士の間隔を広げ、それぞれの位置関係を変更するには、2本の指で操作します。次の3つの方法があります。
- 1本の指を押さえたまま片側を「固定」し、反対側でもう1本の指を動かすと、他の2つのフィルターを動かさずに、そのフィルターのカットオフ値だけを操作できます。
- 2本の指をアーチ中央から外側へ広げると、中央のフィルターを固定したまま、左右にパンされたフィルターをさらに離すことができます。
- 2本の指でバンドを中央へ押し込むように動かすと、左右のフィルターを中央へ近づけることができます。
ファクトリー・パッチでは通常、左側のフィルターは中央より左、右側のフィルターは中央より右に配置されています。しかし、この配置では左チャンネルの低域が多くなるなど、ステレオ・フィールドに偏りが生じることがあります。3つ目の2本指ジェスチャーを使えば、中央チャンネルをクロスオーバーして、スペクトラル・パンニングを反転させることもできます。2本指で操作するときは、spectrum上の最も左側のタッチ位置が常に左出力チャンネルに対応します。これを目安に周波数帯域の配置を把握してください。
lens & morph #
spectreを探求していくと、フィルターの配置が最終的なサウンドの形に大きく影響することが分かるでしょう。Atriumにはspectre専用のlensというsequencerがあり、異なるカットオフ周波数の配置を最大11個のスナップショットとして保存できます。
• lensを押す:sequenceを次のステップへ進める
• spectrumタッチによるカットオフ調整:現在のsequencerステップを直接変更する
• sequenceの範囲を変更する方法については「sequences」を参照
lensのステップ切り替えによる急激な変化は、3段階のスルーによって滑らかにできます。morphキーを押すと、スルー・タイムを順番に切り替えられます。morphが有効なときは、spectrumへのタッチ操作も滑らかに変化します。最も長いmorph設定と、フィードバック量の多いspectre設定を組み合わせると特に楽しめます。フィルターが滑らかに移動するにつれて、フィードバックがサウンド内の異なる倍音を次々と捉えていく様子を聴いてみてください。
morphは周波数をリニアに、一定の速度で移動させます。そのため、互いに大きく離れた周波数間をモーフィングする場合は、近い周波数間を移動する場合よりも長い時間がかかります。
Stereo Field #
簡単に言えば、spectreはステレオ・エフェクトです。しかし、その魅力の一部は左右チャンネルを複雑に絡み合わせるところにあります。以下は実装上の詳細ではありますが、spectreの新しい使い方を考えるヒントになるかもしれません。
信号の流れは次のとおりです。
- Atriumの5つのボイスがステレオ・ペアにミックスされます。各ボイスはステレオ・フィールド全体に均等に配置され、ボイス1と5はそれぞれ左端と右端に配置されます。
- ボイスのステレオ・ミックスが各フィルターへ送られます。Left → Left、Right → Right、Left + Right → Centreです。したがって中央のフィルターは、信号の「モノラル」ミックスを処理します。
- フィルター出力も再びステレオへミックスされます。Left → Left、Right → Right、Centre → Left + Rightです。これが「フィルターされた」サウンドとして聞こえる信号ですが、同時にフィードバックにも使用されます。
- ステレオ・フィードバックはディレイへ送られ、ステップ2と同じ方法で3系統へ展開された後、3つのフィルターへ再循環します。
その結果、centre周波数帯域を介して、ステレオ・フィールドの左右を行き来するようなフィードバックが生まれます。spectreはサウンドのステレオ幅を狭めるように作用することがあり、Atriumをミックスの中でより収まりよくし、占有するスペースを減らすのに役立ちます。
逆に、大胆な周波数設定、左右のパンニングを交互に切り替えるlens sequence、そしてtimeへのポリフォニック・モジュレーションを組み合わせれば、ステレオ効果を大幅に強調し、非常に広いステレオ・イメージを作ることもできます。