
Atriumの隅々まで探索していくうちに、「もう何本か手があれば」と思うことがあるかもしれません。Atriumは内部・外部を問わず、さまざまなモジュレーション・ソースを簡単に組み込むことができ、演奏表現を拡張し、さらに深い探索へと進むことができます。
Mappingとは、sourceをdestination(パラメーター)へ接続することです。他のシンセサイザーでは「モジュレーション・マトリクス」と呼ばれることが多く、モジュラー・シンセでいえば、パッチをつなぐケーブルに相当します。
Atriumでは、あらゆるモジュレーターから複数のパラメーターをコントロールでき、逆にひとつのパラメーターを複数のソースからモジュレーションすることもできます。それぞれのマッピングにはintensityがあり、劇的な変化からごく繊細な変化まで設定することが可能になります。
Mappingへの入口となるのが、大きなピーチ色のmapキーです。インターフェースの各所にも、それに対応するイタリック体の文字が配置されています。これらの表示がAtriumのマッピングのsourceを示しています。
Mechanics #
Create a Mapping #
マッピングを作成する基本的な手順は次のとおりです。
• mapを押し続けると、使用可能なすべてのsourceが表示されます。それぞれに対応するキーの近くにある、ピーチ色の背景を持つライトが点灯します。
• ソースのキーを押して、使用するsourceを選択します。
• sourceを選択したら、mapから指を離して構いません。
これで、選択したsourceに関連付けられているすべてのマッピングが表示されます。
• destinationパラメーターを動かして、適用するモジュレーションの深さを設定します。ひとつのsourceを複数のdestinationへ同時にマッピングできます。最初は小さな値から始めることをおすすめします。「LFOエフェクト」をひとつ大きくかけるよりも、ほんの少しのモジュレーションで多くのコントロールを動かす方が、とても魅力的だからです。
• インターフェース上のライトが、適用されているモジュレーションの深さを示します。コントロールがすでに限界位置にある状態でさらに深く設定したい場合は、一度反対方向へ動かしてから、再び戻してください。
• マッピングの設定が完了したら、mapを押して終了します。
マッピングを適用した後でも、対象となったパラメーターは手動で操作できます。手動で値を変更すると、その位置がモジュレーションの新しい基準点になります。
既存のマッピングの深さを調整する場合も、上記と同じ手順を行います。マッピングのsourceを再選択すると、各destinationのライトの明るさによって、現在設定されているモジュレーションの深さを確認できます。
Clear a Single Mapping #
ひとつのマッピングだけを解除するには:
• 上記と同じ方法でマッピングのsourceを選択します。
• clearを押したまま、解除したいマッピング済みパラメーターを操作します。そのパラメーターだけがsourceのコントロールから解除されます。
Clear a Source #
特定のsourceに設定されたすべてのマッピングを解除したい場合(たとえばlfoがパッチ全体を支配してしまっている場合など):
• mapを押したままclearを押します。その後、両方のキーから指を離して構いません。
• アクティブなマッピングを持つsourceがすべて点灯します。
• sourceのキーを押すと、そのsourceに設定されているすべてのマッピングが解除されます。
• mapを押して終了します。
Mute a Source #
モジュレーターの設定を消去せず、一時的にその効果だけをmuteしたい場合もあります。
• mapを押したままmuteを押します。その後、両方のキーから指を離して構いません。
• muteライトが点灯し、すべてのsourceが薄く点灯します。
• ミュートしたいsourceのキーを押します。そのsourceのライトが明るく点灯します。
• mapを押して終了します。
少なくともひとつのマッピングがミュートされている間は、muteライトが点灯したままになります。
clearとmuteの操作が非常によく似ていることに注目してください。ここで操作方法を覚えておくとよいでしょう。mapを押したままclearやmuteなどのmodifierを押すことで、source全体に対して操作を行います。
Polytimbrality #
Atriumにおけるポリフォニーは、5つの異なるピッチやアーティキュレーションを設定するだけではありません。マッピングにもポリフォニーが適用されます。
多くのパラメーター自体がポリフォニックに動作でき、これが「polytimbrality」という呼び方につながっています。
Atriumの5本のスライダーは、その分かりやすい例です。たとえばenergyは、5つのボイスそれぞれに異なる値を設定できます。しかし物理的なスライダーは1本しかありません。このボイスごとのコントロールを可能にするのがMappingシステムです。
ここで理解しておく必要があるのは、モジュレーターにはポリフォニックなものとモノフォニックなものがあるということです。Atriumはマッピング時に可能な限りポリフォニーを維持しようとしますが、sourceまたはdestinationのどちらかがモノフォニックの場合は、統合されたひとつのコントロールとして動作します。
詳しくは後ほど説明します。まずはsourceについて見ていきましょう。
Continuous Modulators #
lfo #
内部で生成される低周波オシレーター(LFO)です。詳しくはlfoのセクションを参照してください。
speedはオシレーションの速度を調整します。最小では約10秒の周期、最大では低いオーディオ・レートとなる約100Hzまで変化します。
phaseは5つのボイスそれぞれのタイミングをずらし、LFOのポリフォニーを引き出します。
shapeは異なる波形を順番に切り替え、オシレーションのキャラクターを変化させます。
Atriumには11種類のデフォルト・シェイプが用意されています。これらへのアクセス方法についてはsequencesセクションを参照してください。
notes #
notesで選択された周波数を表す信号です。notesそのものと同様、この信号もポリフォニックです。
• octaveキーによって、このモジュレーション信号も上下にシフトします。
• glideは、このモジュレーション信号には反映されません。
freqs #
spectreの3つのバンドの周波数を取り込みます。
• morphはfreqsのモジュレーションに反映されます。
ポリフォニックなdestinationへマッピングした場合、このモジュレーションもポリフォニックになります。左チャンネルがボイス1、中央がボイス3、右チャンネルがボイス5に対応します。ボイス2と4には、それぞれ最も近いチャンネルとの中間値が使用されます。
spectreを最小にして、そのエフェクトが聞こえない状態では、周波数タッチプレート(およびlens)を使ってポリフォニック・パラメーターを直接手動操作することもできます。
step #
この信号はlensシーケンサーを、段階的に上昇するランプへ変換します。
レンジは動的にコントロールされ、最初のlensステップではモジュレーションがゼロ、最後のステップでは最大になります。
contour #
contourによって作られたエンベロープを、さらにノート・イベントのマッピングに利用できます。
• contourはsustain、ramp、lengthの相互作用によって作られているため、ここには多くの探索の可能性があります!
• contourをnotesへマッピングし、それぞれのペアに対してcontourをstretchしてみてください。するとsustainによってnotesをポリフォニックにモジュレーションできます。
loudness #
楽器全体の振幅を取り込みます。
• volumeが低い場合、このマッピングの効果はほとんど聞こえない可能性があります。
loudnessはspectreと組み合わせると特に有効です。ディレイのフィードバックを自己制限させることができ、飽和したエコーの彼方へ暴走してしまうのを防げます。
Event Modulators #
イベント型モジュレーターは、幅が極端に短いスクエア・パルスのようなものです。連続的に展開していく信号というより、イベントが始まる瞬間の「onset」を表します。
これらのモジュレーターは、sequencesを進めたりcontoursをトリガーしたりするのに便利です。また、spectreの周波数や、energy、tone、timbreといった連続パラメーターにパーカッシブな動きを加えることもできます。
change #
ボイスのピッチが変化するたびにパルス・イベントを生成します。
- rampを完全に反時計回りにします。
- changeをsustainへマッピングすると、そのボイスのノートが変化したときだけ、contourへ短いパルスが送られます。
- chordを広げているときは特に面白い効果になります。notesを動かしても、すべてのボイスが同時に変化するとは限らないためです。
changeはポリフォニックですが、モノフォニックなdestinationへマッピングした場合、ルート・ノートの変化だけがイベントをトリガーします。
つまり、chordを変更してもイベントはトリガーされませんが、notesを動かすとトリガーされます。
scaleを無効にした場合(非クオンタイズ・モード)、changeモジュレーターは一連のdifferentiatorsに置き換わります。
難しい言葉ですが、意味はシンプルです。notesを速く動かすほど、より大きなモジュレーション信号が生成されます。
clock #
tempoに従って出力される一定のパルスです。メトロノームが1回刻むたびに、ひとつのパルス・イベントが生成されます。
詳しくはclockページを参照してください。
Limit Modulators #
ノブやスライダーがレンジの端、つまり最小値または最大値に到達すると、モジュレーション信号が生成されます。
このLimitタイプのモジュレーターはバイナリーで、単純にオンまたはオフのどちらかです。レンジの大部分では信号はゼロで、何も起こりません。コントロールが選択されたlimitへ到達すると、フルスケールのモジュレーションが有効になります。
これらのsourceは、Atriumの演奏性を拡張する強力なツールです。代表的な使い方として、シーケンサーを進めたり、キーを自動的に押したりできます。
もちろん連続的なコントロールへマッピングすることもできますが、フルスケール信号によってパラメーターが大きく変化する可能性があることには注意してください。
Limit Modulatorをマッピングするには:
• mapを押したまま、スライダーまたはノブを最小値か最大値まで動かします。対応するライトが点灯し、そのsourceがマッピング用に選択されます。
• mapから指を離します。
• 自動的に「押したい」キーを選択したり、destinationコントロールを調整したりします。
• mapを押して終了します。
設定したスライダーまたはノブを端まで動かすと、新しいマッピングが作動します。
Limit Modulatorによって、非常に強力な作曲上の操作が可能になります。
たとえば、sustainスライダーを素早く振る操作そのものを、lensをステップさせるメタ・ジェスチャーへ変えることができます。
最小値と最大値のLimitは、それぞれ独立したsourceです。まったく異なる操作に割り当てることもできますが、組み合わせて使用するのも効果的です。
たとえばenergyのLimitを、上側ではoctaveを上げ、下側ではoctaveを下げるようマッピングしてみてください。これでひとつの動作によって、サウンドのティンバーと倍音レンジの両方をコントロールできます。
Monophonic vs. Polyphonic Parameters #
Atriumには、モノフォニックとポリフォニックという2種類のパラメーターがあります。
モノフォニック・パラメーターはひとつの値に集約され、すべてのボイスをまとめてコントロールするか、単一の機能を表します。
一方、ポリフォニック・パラメーターはボイスごとに個別の値を持っています。
ポリフォニック・モジュレーターは以下のとおりです。
• notes
• change
• lfo
• contour
• freqs
ポリフォニックなdestinationは以下のとおりです。
• notes
• energy(energy meterに表示されるのはボイス3の動きのみ)
• timbre
• tone
• time(ボイス1と5によってステレオでモジュレーション)
• sustain
それ以外のすべてのパラメーターはモノフォニックです。
• ポリフォニック・モジュレーターをポリフォニックなdestinationへマッピングすると、ポリフォニック・モジュレーションが行われます。
• ポリフォニック・モジュレーターをモノフォニックなdestinationへマッピングすると、ボイス3の値が単一のコントロール信号として使用されます。
違いを具体的に見てみましょう。
contourをvolumeへマッピングすると、どうなるでしょうか?
5つのボイスにはそれぞれ独自のcontourがあり、各ボイス固有のエンベロープによるアーティキュレーションを反映しています。一方、volumeは最終段にあるコントロールで、ステレオにミックスされた信号全体に作用します。
そのためvolumeが意味のある形で扱えるのはひとつのコントロール・チャンネルだけであり、モノフォニックなdestinationとして扱われます。
では、volumeがcontourからポリフォニック信号を受け取ったらどうなるでしょう?
5つのエンベロープを混ぜ合わせてぐちゃぐちゃにするのではなく、Atriumは中央のボイス、つまりボイス3のcontourだけを送ります。
では逆に、contourをnotesのようなdestinationへマッピングするとどうなるでしょうか?
この2つはどちらもポリフォニックなパラメーターなので、それぞれのボイスが自身のcontourに沿って、スケールから新しいノートを個別に選択します。その変化は耳でも目でも確認できます。
strumタッチプレートを手で演奏してみてください。各ボイスのエンベロープが開閉するにつれて、それぞれのボイスが個別にアルペジオするのを聴くことができます。
Pickup Behavior #
Mappingをいろいろ試していると、モジュレーションの深さを設定するためにノブやスライダーを動かしたあと、Mappingモードを終了した際にインターフェース上のいくつかのライトが点灯していることに気づくでしょう。
これらのライトは、コントロールの物理的な位置と、パラメーター内部の値が一致していないことを示します。
theory(パラメーターの値)とpractice(物理的な位置)の差が小さい場合、ライトは暗く点灯します。この場合はそのまま通常どおり操作して構いません。
次にノブを動かしたときに2つの状態の差が自然に解消されるため、おそらく違いに気づくこともないでしょう。
しかし差が大きい場合、「pickup」ライトが明るく点灯します。
この状態では、コントロールに触れてもすぐにはパラメーターが反応しません。ライトが示す方向へ物理的なコントロールを動かし、パラメーターの値と再び一致させる必要があります。
多くの場合は少し動かすだけで十分ですが、極端な場合にはレンジの半分ほど動かす必要があることもあります。
物理的な位置が完全に追いつくと、ライトは消灯します。
Pickupの動作が最も目立つのはpatchesを読み込んだときです。そのパラメーターを実際に操作する必要が生じるまでは、これらのインジケーターを無視していても問題ありません。
External Modulation #
外部モジュレーションについては、On ConnectionsセクションのMIDIとControl Voltageで詳しく説明します。
ここでは、コントロール・ボルテージと連続的なMIDIソースの両方が、この同じMappingシステムを通して割り当てられるということだけ覚えておいてください。
ここまで学んできたMappingの知識は、外部モジュレーションを使用するときにもそのまま活用できます。