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Technotes 技術ノート

バランスーアンバランスのケーブル接続について【アップデート版】

10年以上前に公開した【バランスーアンバランスのケーブル接続について】は、多くの方に読まれ大好評いただいているコンテンツです。いまだに読まれるお役立ち情報として、より普遍的な内容にするためにアップデート版を公開します。

『シンセの取り込みに弊社取扱い機器を使おうと思ったら低域がなくなってしまい音が変だ』。

弊社のサービスでも時々このようなご相談をお受けすることがあります、状況をよく確認するとアンバランス出力からトランスバランスのライン入力に変換ケーブルを使って入力した、その際ケーブルの仕様が合っていなかったというケースが大半です。変換ケーブルの結線については、それ自体イレギュラーなので公式に制定された決まりはありません。

メーカーによって様々ですし、公表しているところもあまり見かけません。機器に適していないケーブルでの接続は、音が正しく出なかったり、機器によっては故障の原因ともなりえます。間違ったケーブルを選ばないため、ご愛用の機器を壊さないためにも正しいケーブルを選択する必要があります。

また、入力がトランスバランスなら出力も トランスバランスとは限りませんので要注意です。同様にレベルやインピーダンスに関しても注意が必要です。以下のコンテンツがお役に立ちます

●レベルに関してをまとめたコンテンツ「レベルのはなし。」
https://umbrella-company.jp/contents/level/

●「インピーダンスとインピーダンスマッチング」
https://umbrella-company.jp/contents/impedance-matching/

機器同士の接続は、バランス同士または、アンバランス同士の接続が基本ですが、バランス/アンバランスの垣根を超えて接続したい場合もあると思います。

バランス入力/バランス出力の方法は回路的に見ると2種類、それぞれ回路的な特徴が異なり、特にアンバランスに変換接続した際のふるまいが違いますが、適切な変換ケーブルを用いれば「バランス → アンバランス」、「アンバランス → バランス」 共に正い接続で信号を伝送することが可能になります。

バランス伝送の方式は2種類存在します。
トランスを使用した「トランスバランス方式」は、ビンテージ機器やその手の音質を狙った物に多く採用されています。トランスを通過することで倍音成分が付加され、音の色付けに関しても重要な要素となっています。

もう一つは、トランスを使用しない「電子バランス方式」(トランスレスと呼ばれる場合もあります)。これにはディスクリートによるもの、オペアンプによるもの、専用ICによるものなど色々ありますが、トランスを使用せずにバランス伝送を実現している場合は全て電子バランスです。

アンバランス信号とバランス信号のやり取りで考えられるパターンは次の4つです。

  1. アンバランス出力  →  トランスバランス入力
  2. アンバランス出力  →  電子バランス入力
  3. トランスバランス出力  →  アンバランス入力
  4. 電子バランス出力  →  アンバランス入力

バランス回路側がトランスバランスなのか、電子バランスなのかでやって良いこと/悪いことが異なります。それぞれの違いについて解説していきます。

● アンバランスOUTPUTとバランスINPUTを接続する

1、アンバランスOUTPUT → トランスバランスINPUT

2Pフォン(RCA) → シールドケーブル → XLRオス

・Tip   → Hot線 →  2Pin
・Sleeve Cold線&シールド線をまとめて配線 → Cold線 →  3Pin
・Sleeve Cold線&シールド線をまとめて配線 → シールド線 →  1Pin

XLR側の結線は1Pinと3Pinはショートしてあるケーブルを使用します。 3Pinがオープンのケーブルを使った場合は音が小さい、または低域が出ないカリカリした音になってしまいます。

トランスバランス入力回路は、電気的にはフローティングした状態にあり、Hot/Coldの両電極に接続しなければ信号を受け取ることができないので、Tip電極からはHotである2Pinに、そしてSleeve電極からColdである3Pinに接続します。

シールド線は信号をノイズから守るシールドとなります。ただシールド線があれば良いという訳ではなく、グラウンド電位、つまりSleeve 電極に接続することでシールド効果を得ることができます。シールド線も忘れずSleeveと1Pinに接続する必要があります。

2、アンバランスOUTPUT → 電子バランスINPUT

2Pフォン(RCA) → シールドケーブル → XLRオス

・Tip   → Hot線 →  2Pin
・Sleeve Cold線&シールド線をまとめて配線 → Cold線 →  未接続 / 3Pinは配線無し
・Sleeve Cold線&シールド線をまとめて配線 → シールド線 →  1Pin

電子バランス入力のHot/Coldの各端子は、グラウンド電位を基準として信号を扱います。グラウンドのシールド線とHot線の2線だけでも信号を受け取ることが可能です。ですので、XLR側の結線は1Pinと2Pinを結線するだけでOK。Tipから2Pin、Sleeveから1Pinへ接続します。3Pinは未接続です、3PinはXLR側で接続されていない事が重要です。

もし、XLRの3Pinが接続されていて、フォンプラグ側でオープンになっていると、3Pinに接続されたCold線はアンテナとして作用しノイズを拾い集めてしまいます。実際にはシールドされていますので、支障ない場合も多いですが余計なリスクは排除しておきたいところです。

電子バランス入力の場合の3Pinの処理について、実際のところ1Pinとショートでもオープン/未接続でも、どちらでも良かったりもします。回路によっては、アンバランス接続時に起こる6dBのレベル低下を3Pin-グラウンドをショートすることで補正してくれる回路もありますので、電子バランス入力でも3Pinショートのケーブルのほうが勝手が良かったりもします。

アンバランスOUTPUTとバランスINPUTを接続する場合は、XLRコネクタの1Pinと3Pinがショートのケーブルであればどちらのパターンにも流用できます

● バランスOUTPUTとアンバランスINPUTを接続する

3、トランスバランスOUTPUT  →  アンバランスINPUT

XLRメス → シールドケーブル → 2Pフォン(RCA) 

・2Pin  → Hot線 →  Tip
・3Pin  → Cold線 →  Cold線 とシールド線をまとめ Sleeve
・1Pin  → シールド線の シールド線 →  Cold線 とシールド線をまとめ Sleeve

3Pinは1Pinと共にSleeveとショートさせたタイプを使用する。トランスバランスの出力信号は、電気的にフローティングした状態にあり、Hot/Coldの2線で接続しなければ信号が伝送できません。HotをTip電極、そしてColdをSleeve電極に接続する必要があります。3Pinオープンだと音が出ないのは信号電流の経路が無いためです。低域のない音になってしまう場合は、静電容量などにより漏れ伝わった信号を聴いているという事です。

シールド線は信号をノイズから守るシールドであり、グラウンド電位に接続することでシールド効果を得ることができます。シールド線も忘れず1Pin、そしてSleeve に接続してください。

4、電子バランスOUTPUT  →  アンバランスINPUT

XLRメス → シールドケーブル → 2Pフォン(RCA) 

・2Pin  → Hot線 →  Tip
・3Pinは配線無し 未接続 / Cold線 →  Cold線 とシールド線をまとめ Sleeve
・1Pin  → シールド線 →  Cold線 とシールド線をまとめ Sleeve

3Pinは未接続のタイプを使用してください。未接続でないケーブルを使用すると、機器によっては故障の原因になります。3Pinとグラウンドが結線されたケーブルを接続するとCold側の出力アンプは出力ショートとなり、大電流が流れる危険な状態になります。出力回路の保護は対策されている機器が多いと思いますので、すぐに故障につながるケースは少ないかもしれませんが、長期的な連続使用におきましてはにはストレスがかかりっぱなしとなるためお薦めできません。出力回路は伝送におけるシグナルの劣化を防ぐため、出力インピーダンスは低く設計されますので、性能の良い回路ほど負担がかかるのも事実です。

アンバランスOUTPUTとバランスINPUTを接続する場合は、トランスバランスか電子バランスかでケーブルを正しく使い分ける必要があります。基本的に流用はNGです。

例外もあります。それは、電子バランスOUTPUTでも3Pinショートを推奨する機器です。さっきダメって言ったばかりで混乱させてしまい申し訳なく思いますが、機種によっては3Pinをショートするようにと指示がある、ショートしないで使うとノイズ多くなる場合もあります。3Pinをオープン/未接続の変換ケーブルを使うべきか、1Pin-3Pinショートのケーブルを使うべきかは、機器のマニュアル等に記載があると思いますので、それに準じて選択してください。

技術的に少し触れておくと、電子バランスOUTPUTをアンバランスINPUTに接続した場合、Hot/Coldのうち片方しか利用しないため、信号電圧が半減、-6dBとレベルが低下してしまいます。しかし、トランスバランスOUTPUTの場合はアンバランスINPUTに接続してもレベルは低下しません。これはトランスバランスの特徴の一つであり、このようなトランスの性質を模した気が利いた電子バランス回路があるのです。専用に設計されたバランスラインドライバーICの品種で言うとSSM2142やDRV134、THAT1646など、これらをバランス出力回路に採用した機器は3Pinを1Pin とショートすることで、ゲインが補正されレベルを保ったままアンバラ信号を出力する事が可能です。

アンバラ接続時にゲインが補正されるなんてセールスポイントになり得る事なので、1Pin-3Pinショートのケーブルを使うようにとしっかり書かれているはずです。不明な場合や、特に表記が無ければ3Pinオープンの変換ケーブルの使用が無難ですね。

※インサート端子について:
ミキシングコンソールなどのINSERT端子はアンバランスです。3極フォンのTip/RingにSEND/RETURNが割り当てられます(TipがSENDになるか、RingがSENDになるのかは機器によって様々ですので注意が必要です)。Yケーブルを用いますがバランス入出力の機器をインサートする場合にはアンバランスとバランスのやり取りになりますので、これまで述べてきた事と同様の注意が必要です。

※基準レベル関して:CDなどのデッキ、シンセや音源モジュールなどのRCA端子は-10dBvの場合がほとんどですが、フォン端子は機器や入出力の目的によって-10dBv(アンバランス入出力の機器やINSERT端子に多い)もあれば+4dBm(プロ機、TRSバランス端子などに多い)、0dBu(AUX OUTやCHANNEL DIRECT OUTなどに見かけることもあります)と様々です。更に2極フォンのアンバランス、3極フォンのバランス(TRS)更にはヘッドホンのようなステレオアンバランスなども存在していますので機器の仕様について確認が必要です。

各機器にレベル差がある場合には、入力レベル/出力レベルが調整できる機器であれば調整が可能です。調整機能が無い場合にはPADコネクターや、ラインアンプが必要になるでしょう。

レベルに関してまとめたコンテンツ「レベルのはなし」に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

※インピーダンスについて:ラインレベルの信号に関して、インピーダンス(以下 Z)の関係は「送り側の出力Z<<受け側の入力Z」と、送り側の出力Zに対して、受け側の入力Zが10倍以上であれば信号の伝送は正しく行えます。

放送用の機器にはバランス伝送600Ωでインピーダンスマッチングを取らなければならない物もあります。一般的にはあまり出会う機会も少ないと思いますが、例えば出力インピーダンス1kΩの機器から入力インピーダンス600Ω(バランス)の機器に入力したいといった場合ではケーブルだけでの変換では正しく伝送ができないため、D.I などを用意する必要があります。

インピーダンスに関しては、こちらで詳しく解説しておりますのであわせてご参照いただければと思います。

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