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GRACE design m908はモノラル、ステレオからイマーシブ・フォーマットまで、プロフェッショナルな制作環境を支えるモニターコントローラー。その高い信頼性から2020年の発売以来々な現場への導入実績を持つm908は、それに値するだけの音質、操作性、多くの機能を持っています。
『クローズアップ:m908』ではそんなm908の細かな特徴にフォーカスし、様々なプロフェッショナルの現場でm908が選択されている、その理由に迫ります。第五回の今回は、「DSPチャンネル」にクローズアップ。前回解説の便利でフレキシブルなオーディオフローを実現する、m908の根幹となるシステムについて解説します。
DSPベースのルーティングを表した図
m908では全てのシグナルをDSPベースでオペレートしています。例えばオーディオシグナルは、各入力をいずれかのDSPチャンネルに割り当て、さらにDSPチャンネルを各出力に割り当てることでルーティングが行われています。前回で取り上げたルームEQ等の補正もこのDSPで行われています。
DSPチャンネルは合計で24チャンネルあります。先述のスピーカーへのルーティングだけでなく、CUE系統やヘッドホンモニター、トークバックなどへの割り当てもこのDSPを用いて行われています。例えば、Dolby Atmos 7.1.4のスピーカーシステムを組む場合、以下のように割り当てることができます。
またm908ではクロックソースの処理もDSPを用いて行われます。シグナルに重畳されたAESクロックのほかにも、ワードクロック、Danteクロックなど、インプットソースに合わせて柔軟に使い分けることができます。
m908のシステムフロー。このすべてをDSPで統括している。
全てをDSPベースで統率することによって、m908は様々な側面で高い利便性を実現しています。その中でも評価が高いのがワークフローの保存、呼び出しについてです。
スピーカーシステムや入出力の割り当てを含めたm908の全ての設定を、m908では、ワークフローとして保存しておくことができます。これによって、例えば7.1.4Dolby Atmosや360Reality Audioなど、プロジェクトごとに必要なワークフローをすぐに呼び出して使用することが可能に。DSPベースでの管理によって、ケーブルの差し替えなどの必要なくモニタリング環境を切り替えることができます。
さらにこのワークフローはファイルとしてコピーすることができ、USBメモリやWEB UIでインポートやエクスポートも可能。m908を使う部屋が複数ある場合でも、同一のワークフローを全ての部屋で簡単に再現することができます。
Dolby Atmos 7.1.4など一般的な再生フォーマットであれば、テンプレートとしてインストールされているワークフローをそのまま使用することができます。ワークフローを一から全て構築するのも良いですが、手軽にテンプレートから始めて、環境に合わせてカスタマイズすることで導入の手間を減らすことができます。
その他にも、多くの機能をm908の筐体に収まること、オーディオシグナルの経路を削減することにもDSPは一役買っています。加えてWeb UIによるコントロールもDSPベースであるからこその機能であり、DSPベースでの管理はm908の利便性を生み出す根幹と言っても過言ではありません。
より直感的にルームEQなどを設定できるWeb UIも、DSPベースのマネジメントが可能にしている。
前回からオーディオフローとDSPベースのオペレーションについてご紹介してきましたが、次回からはm908のディスプレイ表示にフォーカスしていきます。ストレスフリーなオペレーションを可能にする視認性の高さ、整理された情報の表記に着目し、シビアなプロの現場でm908が採用されている理由に迫ります。
システムの状況が一目で分かるディスプレイ表示