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オランダを拠点にして活動する福録 篤志氏は、伝統的なスタイルのみならず、エフェクターを積極的に導入した先鋭的なプレイにも意欲的な次世代のジャズギタリストです。以前からChase Bliss - Thermaeを愛用いただており、この度同ブランドのMOOD MKIIも導入していただきました。福録氏ならではのテクニックや使用方法に迫るインタビューをお届けします。
福録 篤志
1996年生。ギタリスト、作編曲家。
15歳でギターを始め、上智大学入学後、同大学のビッグバンド・ジャズ研究会に所属 在学中にプロ活動を開始。
2018年、東京JAZZに出演、ベニー・べナックやユリシス・オーウェンスJrらと共演。
2019年、アムステルダム音楽院への入学を機に、拠点をオランダに移す。ジャズを中心にヨーロッパ各地でロック、アンビエント、即興音楽など様々なフィールドで演奏を重ねる。
2024年、自身のバンド、Atsushi Fukuroku Groupを率いて来日ツアーを敢行。別所哲也がナレーターを務めるJ-WAVE MORNING RADIOでソロギターを披露し好評を博す。
2025年夏にリーダー作をリリース予定。これまでに、Jesse van Ruller、Peter Bernstein、Martijn van Iterson、Reinier Baas、Ben van Gelderらに師事。
https://atsushifukuroku.com/
発売直後にジャズギタリストで学生時代の先生でもあるJesse van Ruller がボードに入れていたことで知りました。その後、友人の家でOUTPUT社のPORTAL というグラニュラーエフェクトのプラグインを体験して、複雑なサウンドを足元・手元でコントロールしたいと思ったのが購入を決めた理由です。
コンテンポラリージャズを中心にキーが頻繁に変わる楽曲を演奏する時は、ピッチが変化するシーケンサーというよりは、音を外さない飛び道具として使うことが多いです。具体的には、MIX とGLIDEをギリギリまで下げて、REGEN をオフにした状態で両インターバルを控えめに設定すると、一瞬だけグチャッと潰れたディレイが返ってくるので気に入っています。それをHX stompのセンドアンドリターンにつないで、リバースディレイと併用することが多いです。その際は、2つのエフェクトのミックスをエクスプレッションペダルでコントロールして、早いフレーズを弾くときはミックス0、ロングトーンや曲のエンディングで軽くかける等しています。あとはシンプルなディレイとしても音が良く、またタップテンポを限界まで早くして擬似的なトレモロサウンドを作るのも気に入っています。
とにかく、出てくる音の気持ちよさです。単純な音質としての音の太さ、暖かさに加えて、LPF をあげた時の音の汚れ方、Glide の音の潰れ具合など、出てくる音がどんな楽曲にも馴染みやすく、いつまでも弾きたくなる。そんな印象です。Chase Bliss の他のペダルと比べてもミッドレンジに圧倒的な豊かさを感じます。Thermae 自身が意思を持っているかのような動き方をするので、辛抱強く向かい合える方にはオススメです。うまくハマると、文字通り至福の世界が待ってます。
アンブレラカンパニーさんで試奏した時に、ドローンノイズ的なサウンドをリバーブで手軽に作れることに感動して、明日からでも導入できるなと思ったのが購入のきっかけです。(Thermae はライブで使うまでに1 年かかりました...)ソロギターやイントロを弾くときのバッググラウンドテクスチャーとして比較したのはOld Blood Noise Endeavors のBL-82 Chorus です。
一番使用している機能はリバーブモードで、クロックを少し下げるとリングモジュレーターの様も出つつ、最後まで下げると簡易的なドローンサウンドを得られるので重宝しています。以前はGame Changer Audio のPlus Pedalでフリーズした音にファズを乗せて似た効果を作っていましたが、MOOD MKII のおかげでより直感的になりました。フリーズの音も自然で、他社ペダルのフリーズ機能だとウェット音にエフェクトをかけたくなるんですが、MOOD MKII はそのままで使える音が出るという印象です。マイクロルーパーのセクションはアンビエント系のセッションで使っていますが、まだ完全には自分のコントロール下には置けていないのが正直なところです。
とにかく使いやすさです。初めてのChase Bliss ペダルはMOOD から入るとわかりやすい感じがしますね。どんな人にもオススメですが、ライブ演奏の際は編成もしくは構成において余白が多く取られている楽曲の方が、MOODから戻ってくる反応に耳を傾ける余裕が生まれるので、より効果的だと感じます。
移動が多いツアーミュージシャンとしてはいくらでもお金を出すので、Chase Blissが作る空間系マルチが出てくれたら最高です笑 フットスイッチが5個くらいついてたりして。あとはフリージャズや無調音楽をやる際に、クオンタイズをオフにできる機能がThermaeにもついてくれると嬉しいかもしれません。
従来のギター機材にはなかったアプローチで、頭の中で鳴っている音を再現する手助けをしてくれる点です。ブラジル人SSW のMilton Nascimentoの『Milagre Dos Pexies』というアルバムが大好きで、A Chamada という環境音のようなトラックがあるのですが、長いことあのドライなのに湿っぽい、独特な雰囲気をギターで出せないか模索していました。Thermae とMood MKII を手にした今は少し近い世界観を作り出せている気がします。音楽の進化はテクノロジーの進歩や新たな機材の発明と共にあると考えているので、Chase Blissで新しい音を追求できたらと思っています。
★Chase Bliss THERMAE 製品ページ
https://umbrella-company.jp/products/thermae/
★Chase Bliss MOOD MKII 製品ページ
https://umbrella-company.jp/products/mood-mkii/