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Api500 API500モジュール

ChandlerとVintechのAPI 500モジュールのライン入力のサウンドを比較してみました

 

ここ最近では各雑誌さんなども競ってAPI500モジュール(VPRアライアンス)の製品について特集されており、一気に国内のAPI500事情も海外並みに近づいてきているようです。弊社製品もお問合わせやデモ依頼が急に増えてきているので嬉しく思っています。 さて本日、Chandler LimitedのGermanium500mk2Little Devil Pre Ampの両機種のサウンドの違いについて、特にサンプル音源やドラムサンプル、シンセサイザーなどに使用して「サウンドキャラクター」を得たい場合の違いをお知りになりたいというお客様よりご質問をいただきました。 マイクプリアンプとしての比較試聴などは記事になっているものなどもあったとは思いますが、ライン入力での比較はあまり見かけないので、簡易的な試聴ですが実際に音出しして試してみました。 試聴したのはたまたま社内のAPIランチボックスに組まれていたVintech 573、Chandler Germanium500 mk2、Little devil Pre Ampの3機種です。

chandler-vintech-500-002

音源はCD音源のドラムス、ストリングス、ベースのソロ音源→各API500モジュール→Fader Control→ヘッドホンで試聴していきました。 今回の音源はバランスのみとってある素の音源ですので、原音は極めてフラットに録音されているものです。際立った倍音感もなくクリアーに録音されています。Fader Control経由で900STヘッドホンで聞くとフラットすぎて平凡に聴こえるような音源でした。

まずはVintech 573で聴いてみます。 よくクリエイターの方々がトランスを使用したNEVE系マイクプリをサンプル音源などに通して使っていますが、どうしてそれが必要なのか一発でうなづけるサウンドです!Vintech573はご存じのとおりビンテージNEVEを再現したマイクプリですので、やはりたいへん高級感のあるゴージャスなサウンドになります。ドラムスは重心の低いロックサウンドで、程よい倍音が音の抜けや存在感を増しています。とてもまとまりのあるサウンドで高級で上質な育ちの良さそうなサウンドに感じます。ベース音源では歪ませていくと(入力ゲインを上げて、OUTPUTを絞っていく)太くファットな、いかにもアナログ!といった図太い歪になります。それでもどこか品を保っているというかお下劣になりきらない所は特徴でしょうか。ストリングス音源でも入力GAINを下げめに設定することで程よい美しさを保ちながらもサウンドに豊かな肉付けをして、立体的でオーガニックなサウンドに変化させることができました。全体的には「しっかりとした量感たっぷりの低域、適切な高域への倍音質感」が安定感のあるサウンドを作り出していると思います。僕の印象は「スマートで頭の良い優等生」といったところ。

次にChandler Limited Little Devil Pre Ampです。 赤いボディーがスマートでカッコいいのですが、その外見通りカッコいいサウンドが聴かれました。まず先ほどのVintech 573に比較すると一聴してパンチ感のあるサウンドです。たいへんまとまった印象のある倍音と響きのコントロールに調整されています。またとても艶のあるサウンドでガッツのあるサウンドの印象です。より明るい印象で、音の滑らかな張りが感じられます。またFeedBackとGainは共に上げめにしていくとドライブ感がぐんぐん増していき、サウンドに倍音が加わり、同時に高域がエンハンスされていくような印象でした。この音は特にドラムスの金物の音を際立たせて、シャキ~ンとしたかっこいいドラムサウンドに貢献します。ドラムスを少し歪気味に調整したサウンドは何物にも代えがたい存在感を作り出せます。ベースはやはり突っ込み気味の設定が素晴らしく、パンチ感を得て活き活きとしたサウンドに少しゴリッとした歪が加わりハンサムなサウンドになるのでたまりません。 Vintech573とは違ってより強く歪ませると一線を越えた過激さも演出できるのは特徴のひとつでしょう。ただし歪感(倍音)の付き方のコントロールがあまり細かくできないので基本的にはロックっぽい太いアナログサウンドを演出する専用だと思います。ストリングスの音源ではどの設定でももう少しわずかな倍音に仕上げたいと感じました。繊細なストリングサウンドを保つほどの倍音感に設定するのが難しかったです。全体的には「ロックサウンドをかっこ良く仕上げたいならこれ。パンチ感と高域のドライブ感を持ち合わせた通すだけでかっこ良くなるサウンド」だと思いました。僕の印象は「硬派で格好良い奴」です。

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最後にGermanium500 mk2です。 まず特筆すべきはレンジ感が3機種の中で一番ワイドに聴こえた点です。高域も低域も拡張されたように聴こえて極めてビッグなサウンドに聴こえます。抜け、迫力感ともに最高です。この機種もFeedbackノブとGainでサウンドメイクをしていくのですが、この2つのノブの相互関係によって最終アウトプットされる全体のゲインとキャラクターが同時に設定されます。そしてこの2つのノブの組み合わせは結構無限大で面白いほどサウンドキャラクターもゲインも変化します。ドラムスを聴いてみるとキックドラムの食いつき感、皮の鳴り感が全く異なって聴こえるほどのサウンドの違いを演出できます。こんなに幅広く、全く異なる楽器のようにサウンドを変化させられるのは凄いと思います。 控えめの設定にするとVintech573のような上品なサウンドになるし、突っ込み気味に(倍音が少し強めになるよう設定)するとLittle Devil Pre Ampのようなサウンドにもなります(中域のパンチ感と高域のエンハンス感はLittle Devilの方が強い?)。Little Devilではストリングスの繊細なサウンドをハンドリングしにくかったのですが、Germanium500 mk2では見事に繊細さを保ったままで程よい倍音を付加し、リッチなアナログ感を持ち合わせた美しいストリングスサウンドを作り出すことができました。ベースではブリブリと前に出てくる格好良いロックベースサウンドを簡単に作り出せました。今回はライン入力のベース音源ですが、DI入力経由でのダイレクト・ベース録音でもその素晴らしいサウンドは容易に想像できます。またそれ以上に激しく歪ませた場合には流石ゲルマニウムというか、素晴らしく滑らかで太い歪サウンドが得られます。歪エフェクターとして使用しても良いくらいかもしれません! あまりに応用範囲というか守備範囲が広く感じられたので、様々な音源をためしてみました。男性・女性ボーカル、ピアノ、アコギ、エレクトリックギター、フルート、サックスの音源を聴きましたが、どの音源でもベストなセッティングを追求でき、どの音源に対しても最も音源が輝くアナログ感溢れる滑らかな質感、立体的な存在感をトラックに与えることに成功しました。特に男性ボーカルの格好よさと躍動感、アコギサウンドの立体的な音像、エレキギターを歪気味に設定した時の芯の太さは特筆すべき点がありました。またファットスイッチの効きぐあいが最高です。音をググっと自然に太くしてくれるのですがピアノ音源にとても良くマッチしていました。ほぼどんな音源が来てもGermanium500 mk2なら対応できると思いました。それが繊細なタッチをもつアコースティック楽器でもハイファイ感を失わずにアナログのリッチな質感だけをプラスすることができるし、ロックっぽい力強い太いアナログ感を加えることもできるし、更には過激なまでに歪んだサウンドを追求することもできる幅広い守備範囲に改めて感心いたしました。 ただしFeedbackとGainの相互関係で最終ゲインが決まり、さらにアウトプット調整はないため録音時の最終アウトプットの調整が難しいのが難点です。アウトプット調整用のフェーダーなどがあると便利だと感じました。インターフェースなどを使用する際には入力で微調整できればバッチリです。総評としてはやはりその「幅広いアナログ質感」と「ワイドレンジサウンド」が良かったです。個人的印象は「ちょっと尖っていてカッコつけてるように見えるけど、実はすごく真面目で仕事も完璧にこなすしセンスも抜群。何だこいつちょっと凄いぞ」という印象です(すみませんへんな感想で)。

 

どの機種もやはり捨てがたい個性はありますし、今回は本来の役割である【マイクプリアンプ】ではなく、【ライン素材への色付け】を比較した結果なので、単純に各機種の評価としては見れませんが、ラインソースのカラーリングという意味ではGermanium500 mk2の応用範囲の広さとその滑らかで表現力の高いアナログ感、天井も床も広がったようなワイドレンジサウンドに改めて驚いた試聴となりました。またGermanium500 mk2のツマミを回しているとその音質の変化がどれも音楽的なのが楽しくて、時間を忘れて遊んでしまいました事を追記しておきます!

   

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