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Umbrella Company “Hitchhike Drive” 開発ストーリー

Umbrella Company 「Hitchhike Drive」は、当初「Cinnamon Overdrive」という名前で発売したかったのですが、商標などの都合があり現在の製品名に落ち着きました。1969年に発売されたNeil Young(with Crazy Horse)の2ndアルバム(Everybody Knows This Is Nowhere )に収録されていた「Cinnamon Girl」、「Down By The River」などの楽曲における生々しいギターアンプサウンドを、ギターペダルで再現したくてプロジェクトがスタートしたのです。

最終的には更に2つのモードが加わった3モード構成となり、ゲインやトーンのストラクチャーを徹底に時間をかけて追求したことで、かなり幅広いサウンドスタイルに対応できる、普遍的なサウンドのプリアンプ/オーバードライブに仕上がったと思っています。

また、開発にあたっては多くのプロフェッショナルな方々にご協力いただき、貴重なご意見をいただきました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

まずはHitchhike Driveに搭載された3つのモードから解説したいと思います。

 

TWEED DELUXEアンプのサウンドを狙ったDモードを含む、全3モードの構成

「Dモード」はHitchhike Driveのスタート地点となった、ツイードDELUXEアンプのサウンドにインスパイアされたサウンドです。

ニール・ヤングのギターサウンドは、1959年製のFender Deluxeアンプの真空管をモディファイ(6V6→6L6)し、アンプ本体のノブを実際に回してプリセットできる「Whizzer」によって作られています(*Whizzarの導入は1978年からなのでそれ以前の作品では手元ボリュームを中心に音作りしていたと想像されます)。

Neil youngのDeluxeアンプとその上に置かれた「Whizzer」。ノブの微妙な位置をプログラムして、フットスイッチからコントロールできる大掛かりな「ノブ廻しマシン」である!

Deluxeアンプには2つのボリュームと1つのトーンコントロールがあり、使用していないチャンネルのボリュームもサウンドに影響します。これらのノブの微妙な位置関係によって、叫ぶようなトーンから、クランチ、クリーンまで彼のトレードマークとも呼べるサウンドが生み出されています。「Whizzer」は3つのノブ位置を4つまでプリセットでき、ノブを実際に回してサウンドを切り替えているのです。

ニールは長年にわたって450以上のDeluxeを試したそうですが、彼が1967年にLAのラーチモントにあったSaul Bettman’s Musicで50ドルで入手したというオリジナルDeluxeに勝るアンプは無いと言っています。ニール・ヤングの機材やアルバムごとのサウンド、またNeil Youngだけでなく、Crazy HorseのDanny Whittenの素晴らしい(素晴らしすぎる)ギタープレイなどについては、ここでは長くなりますのでまた別の機会に書きたいと思います。

Hitchhike DriveのDモードは、この伝説的なツィードDeluxeのサウンド、Whizzarによるトーンプリセットのバリエーションをカバーできるようチューニングしています。特にニール・ヤングのサウンドだけを再現するだけのものではなく、それらをカバーした「普遍的なツイード・デラックスのサウンド」を目指しているので、どんな人にも使いやすいのではないかと思います。

しかしながらGAINノブを12位置に合わせた「トップブースト」のサウンドについてはニール・ヤングの特徴的なサウンドを再現する事をひたすら目指しました。これはニールの言葉を借りますが、「デラックスアンプのボリュームを11ではなくて12まで上げると、すべてが打ちのめされたような感じの音になる。完全に音が飽和状態(saturates)になってアタックの後に音が広がっていくんだ」、正にこのサウンドを再現したかったのです。さらにコンパクトなボックスが震えだすような、歪みが増大されたサウンドには、Saturateスイッチをオンにした「ダイナミックフィルター」が不可欠でした。

また手元ボリュームやGAINノブを少し戻すと今度は分厚い塊のような(chunky)なクランチサウンドに、さらにボリュームを落としていくとトーンダウンしていき、カントリーサウンドのようなブライトでクリーンなトーンにまで自在に反応が変わるようにチューニングしました。つまりアンプそのものといったサウンドを目指しています。

弾き手の音への繊細なアプローチを生々伝えられるモードに仕上がっています。

↑REVERBのANDY氏が作ってくれたこのプロモ動画。いきなりニール・ヤング全開です(笑)!特にニールヤングの事はどこにも書いていなかったと思うのですが見事に感じ取ってくれたようでした!

「Tモード」はよりTwinアンプに近いサウンドを狙っています。3つのモードの中では歪みが一番少なく、艶とハリのある瑞々しいサウンドが特徴的です。

低いゲイン設定でブースター的に使用するのが個人的にはお勧めです。ブースターとして使用する場合には、Saturateスイッチを組み合わせる事でチューブアンプ特有のマイルドさとコンプ感が加わります。瑞々しい音調のクリーントーンは分離感良くコードを響かせられ、心地よいアンプフィールを体感できます。特にJC-120のようなニュートラルなアンプに、温かみのある表情をつけたい場合に最適で、まるでチューブアンプのようなリッチなトーンに変化させられると思います。

もちろんGAINをあげて歪ませたサウンドも素晴らしく、アメリカーナなロックサウンドに最適なオーバードライブ・サウンドです。Stonesライクなクランチサウンドのコード・カッティングにもとても相性が良いと思います。

「Bモード」はTモードより力強いパンチ感が加わり、さらに歪みも大きくなります。たいへんオールマイティなバリエーションとなり、ダイナミックフィルター(Saturateスイッチ)を組み合わせれば、オーガニックでハリのあるトーン表現も可能です。

低いゲイン設定、またはギターの手元ボリュームを低く保つ事で、とてもクリーミーなナチュラル・クリーンが得られます。徐々にゲインを上げていくと、ブルージーで立体的なオーバードライブトーンとなります。歪みも十分にドライブできるため、ソロギターにも最高です。

ダイナミックフィルター(Saturateスイッチ)は、アタックとサスティーン部分で音色が若干変化し、低域と高域で異なるエンベロープとなるため、オーガニックで立体的なサウンドが得られ、このBモードにも良く合います。

以上のように3つのモードに進化させたことで、最初は趣味性の強かったペダルでしたが、普遍的なギターサウンドの良さを凝縮できました。多くの方に、幅広いスタイルで良いサウンドを楽しんでいただけるペダルに仕上がったと自負しています。

また、このようなモード切り替えができる歪みペダルは市場に多いですが、モード切り替え時の音量差が大きく、使い勝手が悪いことが多いので、本機ではクリッピング・ダイオードの切り替えに伴うレベル差を補正して使いやすくチューニングしています。

 

2段仕込みのフィルターとアクティブEQ回路

次にHitchhike Driveの特徴的なフィルター回路について説明したいと思います。

Hitchhike Driveの「アクティブEQ」回路は、Treble/Bassの2バンド構成になっています。EQに関しては様々な方々に使い勝手をお伺いし、滑らかに可変しつつ、ユーザーの環境に合わせて適切なイコライジングが行えるよう、ブースト幅やカーブについて長い時間をかけて研究した自信作です。アクティブ回路のEQは、サウンドを一切曇らせる事なく、オリジナルを保ったまま適切なイコライジングを行うことができます。

個人的にこだわったのは、ローコードで低音弦をミュートしてコードを鳴らした際の(例えばNeil YoungのDown By The RiverのEmコードなど)ずんずんとスピーカーを揺らすBASSの響き、ギラッとした質感を持ちながらも、まったく嫌味のない(アナログライクな)上がり方をするTREBLEのEQにこだわり、かなり細かく調整を加えていったものです。楽器店のスタッフ様にご協力をいただき、様々なタイプのギターやピックアップで試奏をしていただき、どんなギタータイプでもオールマイティーに使用できるイコライザーを目指しました。

実は、この2バンドEQを土台として支えている、もう一つのフィルター回路が基板上に仕込まれています(コントロールはありません)。「Scoope Filter」と私たちが呼んでいる技術で、より「アンプらしい」サウンドを形成するためのアイデアを実現させたものです。

「Scoope Filter」は入力信号を以下のようなカーブでフィルタリングする、言わばアナログのアンプ/キャビネット・シミュレーターのようなものです。入力されたギター信号はまずこのフィルタリングの後で、コントロールを持ったTreble/Bassコントロールで最終調整されます。

「Scoope Filter」のフィルタリング・カーブは、本物のアンプキャビネットの箱鳴り感や、スピーカーユニット自体のトーンを想定したEQカーブになっています。ギターアンプはたいへん限定された周波数帯域内での、特徴的な特性をもっていますので、そのトーンをペダルの基盤上に再現しました。

このフィルターを通過する事で、土台となるベーシックなアンプトーンが構築されます。アンプのキャビネットやスピーカーユニットそのもののように考えてみると良いかもしれません。その土台の上にゲイン/歪、イコライジングなどの要素を積み重ねて、よりアンプらしいサウンドを構築しているのです。

 

Saturationスイッチ/ダイナミックフィルター

次は「Saturationスイッチ」によってオン/オフ設定できる「ダイナミックフィルター」について説明します。

開発当初、ツイードDeluxeのサウンドを細かく研究していましたが、特にソロトーンにおけるピッキング・アタックを再現することができませんでした。音色の表現性は良いのに、真空管アンプならではの芳醇な質感がなく、平面的なトーンになりがちだったのです。特にDモードでGAINをフルにした時には、思いっきり飽和状態になって「ピキピキ」したピックアタックを表現したかったのと、そのサチュレーションは常に平坦・均一に発生するものではなく、演奏の強弱に合わせて追従するものでないと、本物のアンプフィールは得られないと考えました。回路設計を行なっているS氏は10年ほど前に、チューブの特性をエミュレートした回路のアイデアを他の製品の開発で試していて、このアイデアをHitchhike Driveの回路でも試してみようという事になったのです。

高域の周波数だけに限定してコンプレッサー(リミッティング)効果を与える事で、真空管アンプらしいアタック感を再現しています。高域だけに作用するため、全体のサウンドの印象は大きくは変わらずに地味な効果ではありますが、使いこなすうちに無くてはならない機能になってきました。高域の周波数を吟味していったのはもちろん、効果に安定性を持たせるために専用設計のオプティカル・リダクション素子を設計しました。光学式のリダクション回路のためたいへん高速に作用し、さらにシグナルの増幅からダイレクトにオプティカルリダクション素子を駆動するため、ピッキング一音ごとに反応がよく追従できます。

真中の黒いのがダイナミック・フィルターの心臓部、我々が”K.S.L.”と呼んでいる回路です。”K.S.L.”が何を表す言葉なのかは、本当は言いたくないのですが告白します。K(高周波)、S(専用)、L(リミッター)です(笑)。すみません・・・。

一般に言われる真空管アンプのナチュラルな弾きやすさや、痛くない歪み感など、滑らかなアンプフィールを調整できます。たいへん細かい表現性を追求した機能のため、試奏の際もパッと聴きでは効果が実感しにくい場合もあり、ガヤガヤしたような環境や音量をそれほど上げられない環境の場合も多いので、このスイッチは基板上のジャンパでオン・オフを切り替えられる仕様にしようと考えていたのですが、長く使用してその効果を深く知るほど、Saturateスイッチのオンとオフの効果が重要になってきたので思い切ってスイッチをパネル上に配置しました。その意味はHitchhike Driveを使いこなすうちに分かっていただけると思います。

最初はJC-120などのカラーの少ないアンプで試すと効果が実感できると思います。JCアンプをより豊かなサウンドで鳴らしたい場合のトリートメントにHitchhike Driveを使用するのは大変にお勧めです。弊社の開発でもJC-120をリファレンスアンプとして一番多く使用しました。

この「ダイナミックフィルター」機能によって、本機に深みが与えられたと思います。

その他、外観については本当はツイードを貼りたかったのですが(笑)、現実味があまりなかったのでこれだけは唯一諦めた点です。ビンテージっぽいゴールドカラーに、シンプルなデザインを重ねました。ノブはもちろん「Deluxe」を意識したものです!

ぜひ、Hitchhike Driveのオーバードライブ・サウンドをお試しください!

Hitchhike Driveの初期プロトタイプ。ご覧のように最初は”CINNAMON OVERDRIVE”という名前でしたが商標の問題で断念!

 

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