クリエイティブな音楽機材の
メディアサイト
エジソンが1886年に開発した無煙炭粉末による炭素(カーボン)マイク、その構造は、炭素の粉を詰めた容器に振動板を取り付け、音の圧力によって生じた炭素粉の接触抵抗を電気信号として取り出すという原始的なもの。雑音の多さはあるものの感度が高く、つい最近まで黒電話などの受話器のマイクなどでも使用されていました。ダイナミックマイクやリボンマイクが使用されるようになるまでは、ラジオ放送などでもカーボンマイクが使用されたようです。
そんな100年以上も前のテクノロジーを復刻したPlacid Audioは、デジタル・高音質が当たり前の現代のレコーディングにノスタルジックな情景を呼び戻そうと試みています。
Placid Audioの主宰者であるMark Pirro氏は、アメリカのインディーバンド Tripping Daisyを経て、The Polyphonic Spree(ThumbsuckerのO.S.Tも有名)でも活躍する現役のベーシスト、レコーディングエンジニアとしても活躍しています。
彼のローファイマイクに対する情熱は、Lo-Fiなエフェクトマイクとして、Norah jonesをはじめとする多くのミュージシャンの録音で使用されているCopperphoneから始まり、一貫してノスタルジックな技術に注目した特殊マイクロホンのみを販売しています。
Placid Audioのマイクロホンを使用している大物ミュージシャンやレコーディングスタジオのリストは以下をご覧ください。
★ Placid Audio User List(Artists / Engineers / Producers) https://www.placidaudio.com/users/
★ Placid Audio User List(Studios) https://www.placidaudio.com/studios/
↓ ノラ・ジョーンズのレコーディングで使用された"Copperphone"
Placid Audioの最新作であるRU-80の米国 "レコーディングマガジン”のレビューを掲載します。この特集は「グレイトボーカルマイク」特集のレビューで掲載されたものです。同号の表紙にもRU-80が掲載されていました!
あなたは今回スムーズでハイファイなマイクのレビューを期待しているかもしれません。しかし、今回紹介するのは、独特のローファイなキャラクターを持つマイクロホンです。マイクの技術の歴史の中でも最も古い技術を採用したマイクです。そしてこのマイクは「カーボンエレメント」をベースにしています。
PLACID AUDIOのRU-80は、Placid Audioのラインナップの中でも特殊な「カーボンマイクロホン」です。2016年に5ポジションの外付けトーンボックスとそのオリジナルモデル(Carbonphone)を見ています。彼はそれを "100年前のラジオ番組を再現する "ための完璧なマイクだと評しました。
オリジナルのCarbonphoneのエレメントは、アメリカの戦闘戦車のインカムマイクのものです。それに対して、新製品のRU-80は、1970年代の冷戦時代のソ連軍の部品を使用しています。RU-80のボディは、同社のCopperphone/Resonatorモデル同様にラッカー塗装された銅製エンドキャップのペアを使用しています。オリジナルモデルよりも短く、幅が広く、先代モデルのアルミ製スイベルヨークとリアマウントされたスイッチクラフト社製XLRコネクターを継承しています。
単一指向性のRU-80は、オリジナルのCarbonphoneに搭載されているのと同じHammondトランスを使用したトランス・バランス出力を備えています。新旧すべてのカーボンマイクは電圧を必要としますが、RU-80は+48Vのファンタム電源を使用します。
音響的には、RU-80はオリジナルCarbonphoneが持つ「普通でない」サウンドの全てを持っていますが、50 Hz〜10 kHzの周波数応答で、著しくダーク&リッチ、ブライトさはなく、おぼつかないサウンドです。設計者のMark Pirroは、RU-80はヴィンテージのカーボンマイクに忠実であると説明しました。帯域幅はオリジナルCarbonphoneよりも充実しており、回路設計で意図的に帯域制限を行って、忠実度を下げているようです。
ボーカル録音におけるRU-80はより近くパーソナルな印象で素晴らしいです。歪んだ荒削りなキャラクターにもかかわらず、シンガーにとってはとても魅力的なマイクなのです。通常のマイクでは、シンガーとの距離やレベルで近接効果や親密さをコントロールするのですが、このマイクでは、トーン、フィール、グリットをコントロールするためにマイクを操作します。クルーナースタイルの長い持続音は太く滑らかで、速いトランジェントバーストや歯擦音によって歪みが生じます。
(マイキングに)距離のある楽器においては、ハイハット、タンバリン、ブラス、ジャングリーなギター弦などの明るいソースでは、このトランジェント・ブレークアップがきちんと効果を発揮します。ベースキャビネット、アンプを通したキーボード、チェロ、さらにはバイオリンのような低い持続音では、より豊かで耳障りな音色になります
RU-80は、Placid Audioの中でも最もトーンが地味で、グランジなモデルですが、私はそれを愛を込めて言っています。このモデルは、オリジナルモデルとうまく共存する素晴らしいテイストを提供し、他のPlacid Audioモデルとブレンドしても、従来のマイクと組み合わせても、どんな曲にも素晴らしい「Xファクター」を加えてくれます。エフェクトボックスやコンピュータの処理を必要としないオーバードライブツールだと思ってください!
極めて特殊なマイクロホンであり、ノイズは多い、帯域は狭い、と何ともローファイなマイクロホンですが、1920~1930年代の当時のテクノロジーに思いを馳せて、あえてローファイな録音を試みたり、不思議な効果を求めてエフェクトマイクとしてメインマイクに混ぜて使ってみたりと、クリエイティブに使用してみてください。スタジオに1本あるといつかきっと多分役に立ちます!?