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Cooper FX – Outward V2を解説レビュー。「ロストデジタル」な質感を持った唯一無二のアンビエントデバイス!

発売以来ペダルギークの間で話題のCooper FX Outward V2ですが、とにかく凄い。まだ未体験の方にもこの凄さをどうにか伝えたく、今回解説レビューを書いてみます。
その前にまずはCooper FXのブランド紹介からどうぞ。

Cooper FXは2015年頃に活動を始めた、ペダルビルダーとしては新世代といえるブランドです。そのエフェクトは例えば一般的なドライブや空間系と言ったものではなく、全てが独特でユニークなものでした。まず発表された“Genation Loss”が話題に。VHSやデジタルメディアの劣化コピーから着想を得て、ピッチビブラート、ハイパス/ローパスフィルター、ワウフラッター、ホワイトノイズ、ビットクラッシュなどのパラメーターを組み合わせてありとあらゆるLo-Fiサウンドを創造する、ユニークなペダルでした。続いてV2の前身モデルである“Outward”をリリース。更に2019年のNAMMはピッチシフター+アルペジエーター+16ステップシーケンサーに200以上のパラメーターを搭載した、もっとも強力なハードウェア形態のエフェクト“Moment Machine”を発表。次々に発表される独自の視点をもった唯一無二すぎるエフェクトの数々は、フォーラムやSNSで話題となっていきます。

 

Cooperが注目されるきっかけとなった、Generation Loss。

 

シーケンサー+ピッチシフター+アルペジエーターのMoment Machine。

 

またChase Bliss Audioとのコラボレーションで注目を集めました。Chase Blissのデュアルリバーブ“Dark World”には、Cooper FXによってデザインされた独特の世界観を持つ3つのリバーブがWチャンネルに収められています。

Chase Bliss Audio – Dark Worldのレビューはこちら。Keeley ElectronicsとCooper FXのリバーブを融合。幅広い残響に対応するコンパクトリバーブのネクストレベル!

その後設定幅を拡張しdipスイッチやMIDIコントロールを追加した”Generation Loss Limited”が1000台限定でChase Blissより発売され、大きな話題となりました。

1000台限定で発売されたGeneration Loss Limited。

 

Cooper FXのエフェクトはそのユニークさ、唯一性も相まって大人気ですが、あくまで小規模、小ロット生産を貫いています。世界中でソールドアウトが続いており、マーケットでは高額で取引されていることも。
ちなみにCooper FXはGeneration LossのV2を製作中のようなので、気になる方は発表を待ってみても良いかもしれません!

 

 

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Been sidetracked by that other secret project, but I’m trying to have v2 gen loss done by the end of the week 🤞

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Cooper FXはEmpressやChase Bliss、Death By Audioのように確固たるブランドイメージをしっかりと製品に落とし込んでいるブランドだと言えます。想起されるのは、ノスタルジアやメランコリー、深夜に夜更しをして観たオールドVHS。通常クリアでハイファイな世界をクリエイトするために用いる「デジタルエフェクト」を、あえて90年代初期のような「ローファイ・デジタル」な音に注目することで唯一無二なイメージを獲得しているのです。

長くなってしまいました。それではOutward V2のレビューに参りましょう!

Outward V2ってどんなペダル?

ざっくりいうと、Outwardはディレイペダルに分類されると言えます。かなり複雑ではありますが。ディレイバッファへ入力シグナルを記録し、8つのプレイバックと処理方法で出力します。その結果、スタンダードなディレイサウンドから奇妙なグリッチ、スタッター、シグナルフリーズ、空間を引き伸ばすタイムストレッチ、パッドリバーブや逆再生、Lo-Fiルーパー、オクターブでピッチさせたり、広大で様々な景色を描くことが可能です。

モードはSmooth, Choppy, Time Strechに分類されそれぞれ3,3,2のサブモードがあり合計で8モードになります。選択したモードによりノブの働きも変わる少々ややこしい作りなのですが、ここでは3つのモードを取り出して説明しましょう。

・Smooth Envelope
Smoothはディレイトーンが滑らかに伸ばされ、かつEnvelopeはスレッショルドを超える入力があるとシグナルを引き伸ばしてフリーズさせるモードです。動画では強く弾いたフレーズがパッドリバーブのように溶けていく様子がわかると思います。このモードのときはPIT/DIRノブでフリーズトーンのオクターブをコントロールできます(動画では1オクターブ高い設定)。このノブはモジュレーションさせることも出来るので、パッドリバーブのピッチが絶えず変化するような印象的な表現もできちゃいます。

・Choppy LFOモード
Choppyはディレイトーンがギザギザになるモードで、加えてここではLFOでフリーズを発生させています。強い入力でLFOが有効になり、入力に追従するスタッターグリッチになります。ノブの設定によって多様な「音飛び」サウンドを楽しめます!PITノブではSmooth Envelopeと同じようにディレイトーンに適用するオクターブを設定できます。

・Smooth LFOモード
後述するclockを低い設定にすることで、全体的にローファイな雰囲気へシフトさせました。音質が荒くなりディレイタイムもかなり長くとることができます。ユニークなのは、弾いたフレーズが時を超えてメルトダウンしていくように溶けていく点。幻想的で美しいルーパーのようにプレイができます。そして気に入ったサウンドスケープができたら、FRZスイッチでいつでもサウンドのキープしましょう。clockノブを使えばループ全体の速度やピッチシフトも可能です。

サウンドを拡張するパラメーター

Outwardの3つの白いノブは選択したモードにより役割が異なります。一方黒いノブは共通のコントロールになり、Outwardのサウンドバリエーションを更に拡張するパラメーターです。

clockはChase Bliss AudioのM O O Dでも見られた、ペダルのクロック速度を変更するコントロール。ペダル全体の処理速度を可変することで、ピッチシフト、最大ディレイタイム、サウンドの質感、lo-fiからHi-Fi、ホワイトノイズ、高域のロールオフなどあらゆる変化が同時に起きます。Outwardは選択したモードによってノブをランダマイズさせることも出来ますが、このときもclockが影響してきます。clockを下げればペダルの処理も遅くなるので、ランダム要素が起きにくくなり、逆に上げれば強く変化するようになります。

クレバーなのが、このclockは「無段階の変化」「ピッチへクオンタイズしての変化」、2つの設定を切り替えられることです。ベンドのようなダイナミックな変化が欲しければclockを無段階へ設定して、ピッチが急上昇/急降下するよな演出ができます。一方クオンタイズするようにすれば5度かオクターブでピッチをシフトさせていくので、現在のキーを保ったままサウンドにアクセントを加えていけるのです。上記の3つ目の動画では、clockをクオンタイズの変化に設定しているので、キーを崩れずにサウンドが変化しているのがわかると思います。M O O Dはインタラクティブなプレイを目的に設計されているので、サウンドが崩壊しないようclockはクオンタイズさせたと思われますが、Outwardは選択できるようにしたのが気が利いてます。

toneはディレイのトーンを調整できるノブです。例えばclockを下げた設定のときにホワイトノイズがきになる場合、すこしtoneを下げてやることで高域のノイズを目立たなくすることもできます。EXPペダルで操作が可能なので、演奏中に動かして表情を変えるのも可能です。

drywetはそれぞれ楽器のドライ音とOutwardのエフェクト音の音量を調整。2つが独立して調整できるのが嬉しいですね。完全にカットすることもできるので、dryを消してやればゆっくりエフェクトが立ち上がるような、アタックが無くなるバイオリンのようなプレイもできます。

・充実したコントロール

Outwardの2つ目のフットスイッチはディレイタイムやLFO速度のタップテンポ、またはフリーズ動作を有効にします。短い間隔で踏めばテンポ設定に、一度だけ踏めばフリーズ動作を切り替えます。またこのフリーズフットスイッチとオンオフのスイッチは、長押しするとモーメンタリー動作になるので、ライブパフォーマンスでの使用も考えられてる優秀な設計です。
フリーズ動作は現在なってる音=ディレイバッファ内のシグナルを、減衰させずに出力し続ける機能で、アンビエントなサウンドの構築には最適です。

プリセットの設定EXPペダルでの操作にも対応する懐のデカさ!MIDIを使えば全てのパラメーターや機能を外部からコントロールできます。

前身モデルのOutward。

 

・とにかく気持ち良くて楽しい!

ここまでOutwardのモードや機能を駆け足で説明しましたが、複雑に感じる方もいるでしょう。実際複雑ではあるのですが、とりあえず感覚のままに弄ってもとにかく気持ちよくて楽しい!のです。モードを変えたりノブを少し回すだけで次々にシグナルが変容していき、どんどん深みにハマっていきます。これだけ多くのモードとパラメーターを備えるのに、使えないサウンドは一個も出てこないんです。新しいプレイが本当に、次々生まれてくるような感覚。描き出される世界はかなり広大ですが、そのどれもがCooperによりかなり緻密にデザインされていることを感じられます。

Cooper FXならではの、デジタルエフェクトへの偏愛も随所に感じられます。Outwardは完全なデジタルエフェクトながら、どこか優しくノスタルジアな雰囲気を感じさせます。まさに「ロストデジタル」と言えるような、新しい世界観。今までどのエフェクトでも味わえなかった新しいフィーリングです。

もちろんパラメーターと機能をしっかり理解すれば、ディープに味わう余裕もOutwardは持っています。このようなアンビエントなエフェクトは偶然性も高く、気に入ったサウンドへ再度チューンするのは難しいものもある中、Outwardはプリセット設定が可能なのが偉い!

すべての要素がしっかりと意味を持ち、有機的に絡み合い影響し合うかつてないエフェクト。ギターはもちろん、シンセやドラムマシン、様々な楽器と組み合わせても面白いでしょう。

近年リリースされた中でも、相当研究しがいがあるエフェクトだと思います。
ぜひチェックしてみて下さい!

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