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Interview column インタビュー&コラム

Electronic Audio Experiments製品の選びかた。

Electronic Audio Experiments製品の選びかた。

アメリカ・ボストン発のギターペダルブランド、ELECTRONIC AUDIO EXPERIMENTS (EAE)の製品はもうチェックされましたか?2015年頃から販売をしていて、新世代のペダルブランドとしては比較的ベテランとも言えるでしょう。満を持して日本にも入ってきたということで、既に耳の速いペダルギークな皆様はご存知のブランドかもしれませんね。
現在のラインナップは6種類ですが、全てオーバードライブ、ファズ、ディストーション、ブーストといった歪み系に属するペダルたち。オーナーであるJohn Snyderは電工技師でもあり、非常に緻密な理論に基づいて各ペダルがデザインされているのが大きな特徴。ラインナップ全体に感じる、憂いを帯びたダークでダーティな雰囲気、身を捩るような咆哮。ニッチながらこれ以上無いほど研ぎ澄まされたサウンドコンセプトの実現のため、各ペダルの持つ雰囲気は全く他と被らない、オンリーワンなものとなっています。
ですが6つもあって全て歪みなら、どれを選んだらわからないよ!という方もいるでしょう。EAEの本国ページのブログで、オーナーのJohn Snyderが自ら解説する「EAEドライブペダルの選び方」が掲載されていましたので、訳して公開します。「これが好きなら買え!」というずばりな選びかたも記載されていますので、ぜひ御覧ください。

ブログ原文
Which EAE drive should you buy?
https://www.electronicaudioexperiments.com/blog/2022/7/7/which-eae-drive-should-you-buy
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僕たちのペダルラインナップが拡大して様々な種類がレギュラーで入手できるようになって、どのペダルを選んだらいいかって質問がよく来るようになっているんだ。
なんでそんなに歪みペダルを作り続けるかって?つまるところ、僕は歪んだギターサウンドが大好きなんだ。楽器と、それを飛躍させる電子デバイスとの相互作用は、僕がもっとも好きな音楽体験の一つでね。回路のオーバーロード、サグ、リングアウト、エッジの転がりなんかは、まさにエレキギターにしか許されないと言える。興味深いオーバードライブやディストーションサウンドを作るにはいくつもアプローチがあるし、様々に調整、合成、悪用することだって可能だ。

(補足。僕が「歪みペダル」というときは、ギター信号が歪むもの全てを含む。ブースト、オーバードライブ、ディストーション、そしてファズは全て、微細な汚しから完全な破壊までの、一つの連続体の上にあると思う。その境界は曖昧で、最終的にはプレイヤーによって定義されているはずだ)

現代のペダル市場はかつて無いほど選択肢があって、そこから一つを選ぶのはとても大変だと思う。ただ一つ言えるのは、僕たちが作るペダルはどれも個性的で、他で似たようなサウンドを見つけるのは難しいだろう。僕たちのデバイスは全て、1. 特定の目的のため1から設計されているか、 2. 忘れ去られた過去の遺物の再現 どちらかだよ。

以下はそれぞれのペダルの簡単な紹介だよ。それぞれのペダルにはそれなりのストーリーがあるし、そのときのスナップショットでもある。もし特定のモデルに興味を持ったら、より詳細なストーリーがマニュアルで発見できるだろう。

Longsword
Longswordは2015年にリリースされた、僕たちの最初の製品だ。Distortion+, Rat, OCD, Klon KTRを含むオペアンプを使った歪みペダルファミリーに属していて、多大に影響を受けた。
これらのペダルを構成する要素は一般的なものだけど、同時に無限にアレンジやモディファイを行える。Longswordはオープンかつクリアなディストーションキャラクターで、ハイブリッドなアクティブ/パッシブEQで驚くほど多用途に使用できるんだ。

このペダルは僕が90s/00sスタイルのスクリーモバンドにいて、シングルコイルのギターにシングルチャンネルのチュープアンプを組み合わせて使っていたときに設計したんだ。その結果、分厚いローミッドレンジ成分がブライトなギターにマッチして、更にEQで特定のアンプに調整できるようになった。MID EQはかなり極端な設定もできるよ。

Ver3から現行のVer4では、Longswordの特徴的なローミッドの押し出しを維持しつつ、ホットなハムバッカーにも対応するよう調整した。そしてこれらのバージョンで最も大きな変更はブーストチャンネルだ。ドライブの前段に配置することでゲインの追加とミッドレンジを引き締めて、全体のキャラクターを変えること無く2つの全く異なる歪み量を操れるんだ。

特定の目的のために設計されたけど、Longswordはどんな状況にも対応できる。インディロックからデスメタル、更にはベーシストでもLongswordを気に入ってくれると思う。

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Model feT

以前僕は、収入の半分以上が家賃で消えていってしまうような貧しい学生だった。ヴィンテージのSunn Model Tが欲しいのは山々だけど、すぐに3000ドル以上のお金を用意できるわけはない。そこで僕が手に入れたのは、回路図、回路シミュレータ、工学に関する本、そしてオリジナルのアンプそのものを持っている友人だった。また友人であるDunwich AmpsのNickのように、JFETを使った真空管アンプの再現に成功している例もいくつか知っていたから、僕も挑戦してみることにしたんだ。
まずは最も基本的なDIYのアプローチでやってみたけど全然ダメで、いくつかの回路を追加し、更に最適化した。その結果、10%以下の価格でModel Tの90%近くを再現できたんだ。(そして、僕が知る限りJFETを使ったModel TはEAEが最初に作ったはずだよ!)その後のバージョンは更にオリジナルアンプのサウンドに近づいているよ。

Model TはSunnがMarshallに対抗しようと60年代後半から70年代前半にリリースしたアンプだ。そのため当時のSuper Bassから多くのデザインを借りて(パクって)、プリアンプに大量のゲインと150Wという恐るべき出力へパワーアップしたんだ。
特にハムバッカーと組み合わせるとプリアンプは簡単に歪んでしまい、ゲインステージ間の低域フィルタリングが全くないから、全体のキャラクターは真空管アンプにしてはかなりファジーになっている。発売当時は大失敗だったと言えるけど、その後Model Tがスラッジやドゥームメタルのギタリストに人気になったのは言うまでもないよね。

元のアンプへのリファレンスを抜きにすると、Model feTは全くクリーンでない、他のペダルを前に組み合わせることを好む、スムーズかつ少しミッドスクープされたオーバードライブと考えられる。ファズやディストーションを更にヘヴィにするのに、完璧なベースレイヤーを作るんだ。またクリーンなパワーアンプやキャビネットシミュレーションと組み合わせて、自然なフィーリングを演出するにも使える。間違った使い方は無いよ!

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Dagger
Longswordの小型版を作るのは、常に頭にあるアイディアだった。何度かリミテッドで生産して、いろんなパーツを混ぜてエキサイティングなものを作ろうとしていた。それで久しぶりに初期のLongswordをプレイしてみたら、古い設計にもなにか魔法があったように感じたんだ。

だからDagger V2はパラレルワールドからきたLongswordのような感覚で設計した。ローゲインではきめ細かく、Driveを上げるとファジーに変化するようにね。Longsword V1/V2が持っていたクセを、より現代的にリファインしたんだ。その一つがトーンコントロールと最終ゲインステージの相互作用だね。LOWとHIGHのEQコントロールをブーストすることで、出力ステージがオーバーロードしてアグレッシヴなサウンドになるんだ。

搭載されたゲルマニウムクリッピングダイオードのおかげで、Longswordよりもコンプレッションが効いたサウンドになっている。EQのローエンドのパンチは少し抑えられて(それでもベースでプレイできるくらい十分なローがあるよ)、トレブルを強調するようなボイシングだ。あとはローエンドのプリクリッピングをカットかブーストで大きく変化させるShiftトグルもあるよ。

Daggerは少し地味に見えるかもだけど、コンパクトでかなり多用途なドライブペダルだよ。

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Dude Incredible
2016年にポートランドのメインでShellacのライブを観たとき、僕は瞬間的に"Steve Albini 機材"でググるようなナードたちの仲間入りをした。Harmonic Percolatorは人気のあるクラシックなファズだけど、ミステリアスなIntersound IVPについては何も知らなかったんだ。更に調査すると、サウンドは最高なのに誰もこの回路をペダルに詰め込むことにチャレンジしてなかった。そこで両方を一つのペダルに収めたんだ。

PercolatorについてはいろんなHPで語られてるけど、IVPについては更に困難だ。
Tube Voiceチャンネルは、トランスフォーマーを搭載した特殊なゲインステージでサチュレーションを加える。ローゲインでは常にオンにしてスウィートさをプラス。そしてハイゲインではまさに"ソリッドステート"な、他には類を見ない威圧的なグラインドになる。EQコントロールは全体のトーンを変えるのではなく、歪みを適用する周波数帯を強調するような変化で、ユニークにキャラクターが変わっていくんだ。

Model feT同様、Dude Incredibleはオリジナルを知らなくてもかなり説得力があるサウンドだ。ユニークなゲイン回路とTube VoiceのEQにより、他では得られないジャグリーなリズムや完全に飽和したフィードバックの壁といったサウンドを得られるよ。

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Halberd
Halberdは2018にリリースしたSending V1 Analog Delayの一部として始まった。ヴィンテージのトランジスタマイクプリアンプを彷彿とさせるゲインステージを設計したんだ。これはディレイライン全体にサチュレーションを加えるのに最適で、ペダルのキャラクターに興味深いキャラクターを付与していた。このプリアンプはすぐに単体で発表するつもりだったけど、オーバードライブとしてかなり可能性を持っていると気づいたんだ。なので18ヶ月を掛けて数え切れないほどの改良をし、独自のアイデンティティを持たせた。

Halberdは軽い色付けから生々しいオープントーンまで、どんなプレイでも明瞭感を維持する。内部24Vで動作しクリッピングへの移行が非常にソフトで、他の歪みペダルより遥かに大きいダイナミックレンジとなる。

トーンコントロールを使えば、アンプやギターの音色を買えずに微妙にサチュレーションを加えたり、EQボイシングを新しい領域へ劇的にシフトさせるのも可能だ。高域のピークやディープなサウンドも簡単に達成できる。回路のインプットで低域の輪郭を調整するDepthは、特にドライブサウンドの特性に大きな影響を与える。また他のドライブペダルや、歪んだアンプの前とHalberdを組み合わせるのも最高だよ。

あくまで個人的な意見だけど、Halberdが他のラインナップと大きく異なるのは演奏時のフィーリングの反映度と思う。硬すぎることなく、でも高い反応性を持ってるんだ。ステージで演奏くらいのボリュームになると、まるでピッキングしている手の延長にも感じられるよ。コードのアタックを強化したり、単音に深みを与えたり、あらゆるディテールを全面に押し出すんだ。

これが好きなら買え!:右手のダイナミクス、圧倒的な音量、ステージに持ち込むドライブは1台だけ



Limelight
Touché AmoréのNickとClaytonはいくつかのミッドゲインなオペアンプドライブとアメリカンなボイシングのクリーンなアンプを使って、彼らのアグレッシヴかつチャイミーシグネイチャートーンを実現していた。だがしばしば求めているサウンドには、複数のペダルを使ったり、前段にブーストしてやる必要があったんだ。彼らのアプローチを統合した結果がLimelightだ。

LimelightはBluesbreaker系のペダルと言われているけど、実はもっと複雑なんだ。Marshallの古き良きペダルであるBluesbreakerとShredmasterで見られるユニークなゲイン回路から要素を借りていて、1つのポットで2ステージのゲインを同時に変更できる。(興味深いことに、この構成はハードコアやデスメタルで定番と悪名高い、Ampeg VH140cと同じなんだ)僕のバージョンはより洗練された方法で低域を取り出し、減衰がスムースになっている。つまり、Bluesbreakerならではの高域を残しつつ高いゲインにアクセスできるんだ!またEAEの他のラインナップ同様、オープンなコンプレッションも特徴だね。

Boost回路も見逃せないよ。オペアンプを使ったシンプルなブーストだけど、低域にシェルフカットを効かせて、クリアで存在感あるサウンドを維持する。Limelightだけじゃなく、HalberdやDaggerと組み合わせても最高だね。

これが好きなら買え!: Touché Amoré、チャイミーなギタートーン、馴染み深い2in1のドライブペダル。


0xEAE Boost
威圧的かつ突き刺さるようなゲインのモノリス。これについては多くの解説はいらないだろう。周波数の観点から言うと、これは僕たちのペダルで最もアグレッシヴなものだ。極限のトレブリィトーンを提供するため、全く妥協していない。もちろん友好的ななサウンドも可能だけど、正直になろう。これがほしいってことは、君が変態ってことだ。

これが好きなら買え!:SSSSKKKRKKRRSSSSSHHHHHHHZZZZZZZZZなギターサウンド、炎に包まれたスピーカー、耳鳴り、スタジオから追い出されるなど...



ここまで読んでくれて本当にありがとう、この投稿が役に立つことを祈ってる。どのペダルも語り尽くせないほどのストーリーがあるから、もしもっと興味があればメッセージを送ってね。

John

★ELECTRONIC AUDIO EXPERIMENTS製品についてはこちらもどうぞ。 https://umbrella-company.jp/electronicaudioexperiments.html

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