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Umbrella Company HP-ADAPTER / BTL-ADAPTER
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HP-ADAPTER / BTL-ADAPTERは、リファレンスサウンドのためのヘッドホン専用バッファーアンプです。
ヘッドホン出力端子とヘッドホンの間に生じる干渉を排除し、前段からの信号を音質劣化なく取り出します。
信号は新開発「アクティブZEROインピーダンス出力回路」によって"フラットな駆動電圧"に自動調整され、あらゆるヘッドホンを理想的に駆動します。
オーディオI/Oやキューボックスなどの音楽制作機材、ユニバーサルプレーヤーやDAP、PCなどの再生機のヘッドホン出力に接続するだけで、従来の使い勝手を変えることなく音質をアップグレードできます。
「音が悪くなる要素は何もない、音が良くなる要素も何もない」 リファレンスサウンドとはこうあるべきです。
標準ステレオフォン仕様(HP-ADAPTER)と、BTL駆動仕様(BTL-ADAPTER)の2タイプをご用意しております。
ヘッドホンは電気信号を音に変換する機器であり、耳に近接して使用します。電気を音、つまり「振動」に変換するためにはエネルギーが必要です。電気信号にパワーがないとヘッドホンの振動板を動かして音波を発生させる事ができません。そのパワーをヘッドホンに供給する物がヘッドホンアンプです。ヘッドホン端子には、必ずヘッドホンアンプ回路の出力がつながっています。
「ヘッドホンを駆動する」という言い方をするのも、「振動板を動かして音を得る」動作原理が分かれば、理解できると思います。
ヘッドホンアンプはどれくらいのパワーがあればいいか?ヘッドホンによって条件が異なるので、決まった値はありません。10mWで十分な場合もあるし、モノによっては1000mW必要な事もあります。
ヘッドホンアンプでいうパワーは電力になります。電力の単位は W(ワット) です。電圧と電流を掛け合わせると電力が求められます。また、ヘッドホンが決まれば、どれくらいの電圧を与えたらどれくらいの電流が流れて、それが何W(ワット)なのか、という計算もできます。
例えば、16Ω のヘッドホンに 1V の信号電圧で鳴らす時、電流は 1V ÷ 16Ω で、62.5mA 流れます。電圧が 1V なので掛け算して、電力は 62.5mW(ミリワット) となります。しっかり電流が流れます。62.5mA ってたいしたことなさそうですがアンプ回路にとっては負担が大きく、結構な重荷です。なので、アンプの出力に接続する物を電気的には 負荷 と言います。
ヘッドホンを選ぶ時、何Ωという表記を気にしたことはありますか?これは「公称インピーダンス」と言いまして、電気的にどんなタイプのヘッドホンかという目安にもなります。その値は、中に入っているコイルや振動板の大きさ、構造などによって決まります。
8Ωや16Ωなど、低めの値の物は小さい電圧でも電流がガンガン流れてパワーが得られます。コイルが小さければ値は低い、動かす振動板が小さければコイルも小さくて良い。なのでイヤホンタイプに多いです。小さい電圧でもパワーが稼げるのでポータブル機器での使用を見据えた設計の物も多いと思います。
40Ωや63Ωあたりのやや高めの値のものは、Φ50mm程度の大きなダイヤフラム、これを動かすにはコイルも大きく、それに伴い値も大きくなってきます。ヘッドホンタイプに多いです。この大きなダイヤフラムを駆動するには、ある程度の電圧とある程度の電流でパワーを供給してあげる必要があります。
中には120Ω、300Ω、600Ωなど100Ωを超えるものもあります。特大のダイヤフラムであったり、特殊な構造である事が多いです。これをきちんと駆動するためには、電圧振幅が大きな駆動シグナルと、ある程度の駆動電流が必要です。広い電源電圧の安定した電源を備えたヘッドホンアンプでないと実力を引き出せないかもしれません。
以上のように、ヘッドホンによってインピーダンスの条件が異なるため、適正な電圧、必要な電流のバラつきが大きくなります。
シグナル電圧と電流そしてインピーダンスの関係を簡単に説明します。ヘッドホンアンプのボリュームを操作すると、シグナル電圧が変化します、シグナル電圧の振幅の大小は音量の大小です。ヘッドホンをつなぐと電流が流れ振動板を動かし音に変換します。流れる電流はヘッドホンのインピーダンスによって決まります。インピーダンスの値が小さいほど電流は多く流れ、値が大きければ電流は少なくなります。
大きい値のライン入力と接続した場合、ライン入力のインピーダンスは 10kΩ 程度なので、1V で 0.1mA しか流れません。電力も0.1mWと微弱です。電圧情報さえきちんと伝送すればいいので、極僅かな電力で信号を伝送することができます。出力回路の負担はなく、とても効率的と言えます。接続先の電気特性の条件によって動き方を変えます。ヘッドホンアンプであってもライン出力と同等の動きかたに変化します。ヘッドホンのインピーダンスと電圧、電流の関係は、もう一つ違う見方もできます。つないだ物のインピーダンスが低い場合、電流を多く流さないと正しい電圧値が得られません。インピーダンスが高ければ、少ない電流で正しい電圧値を得ることができます。つまりヘッドホンアンプは必要な電流を供給でき、かつ ヘッドホンに正しい電圧を与える能力が必要になります。駆動力が乏しいと必要な電流を供給できず、ヘッドホンにかかる電圧が低下してしまいます。電圧の低下は音量の低下、つまりロスとなり、音質劣化の要因になります。そのためヘッドホンアンプは、どんなヘッドホンを接続してもそのヘッドホンに負けない駆動力が必要です。
駆動力と言いましても、特に定義されたものではありませんので、私なりの解釈で説明したいと思います。アンプ駆動力、一つは出力電圧と出力電流のコントロール能力です。入力されたシグナルを正確に追従した駆動電圧として出力する能力。二つめは、駆動電圧とヘッドホンのインピーダンスで決まる駆動電流を正確に出力する能力。そして、電源の能力があげられます。いくらアンプの性能が良くても、電源電圧以上の電圧を出力する事はできません。電流も電源電流容量を超えて出力することはできません。十分かつ余裕のある電源回路が必要です。
もう一つは、出力インピーダンスです。これは説明が難しい!イメージだけつかんでいただきたい。例えばダンス、スタジオのフロアでは完璧に踊れても、氷の上で同じパフォーマンスができるかどうか。足元が不安定で踊れなくなってしまうのか、条件の変化に動じることなく完璧に踊りきるのか。と、言った感じで過酷な状況でもクオリティーを落とさない能力、100%の実力を100%発揮する能力があるのか、ないのか。それが出力インピーダンスの値から読み取れる情報です。
見方を変えると「クオリティーを落とす可能性や度合いを表している」ともとる事ができます。アンプの出力部分でのロスの大小にも深く関わります。理想はロスが発生しないこと、その条件を満たすのは「出力インピーダンス:0Ω」です。
しかし現実は数Ω~数十Ωの値である事が多いです。それはヘッドホンの端子の構造によるところも大きいです。フォンプラグ/フォンジャックのコネクションは抜き差し時に端子間でショートしてしまう位置が必ずあります。出力がショートすると大電流が流れアンプ回路の故障に直結します。そのため出力電流を制限する保護機能が必要です。抜き差しの際の変化を検出し出力をリレーで切り離しミュートする方法も考えられます。検出のためのロジック回路やミュートのためのリレー素子が必要で回路の大型化、コストのアップがついてきます。最も簡単な保護の手段として最も多くのアンプに採用されているであろう手段として、出力に抵抗器を入れ電流を制限する方法。抵抗値が大きければ確実な保護が効き安全な運用ができますが、出力インピーダンスとしても加算されてしまいます。この手法では出力の保護と出力インピーダンスの低減相反する課題に折り合いをつけているに過ぎません。
理想とする、出力インピーダンス:0Ω が実現できないのはこのあたりに理由があります。
アンプの出力インピーダンスが何オームかが分かれば、接続したヘッドホンのインピーダンスこの2つの比によってロスの割合が決まりますので、次の計算式で求めることができます。
出力インピーダンスの値が大きくなるほどロスは大きく、接続されたヘッドホンのインピーダンス値が小さいほどロスとなる割合は大きくなります。ロスを小さくするためにはヘッドホンのインピーダンスを大きくするか、ヘッドホンアンプの出力インピーダンスを小さくする。そのいずれかですが、お気に入りのヘッドホンのインピーダンスは変えようがないので、出力インピーダンスが低いアンプを使う事でロスの無い理想的な駆動に近づける事ができます。
もっと言うと出力インピーダンスが 0Ω ならばロスは 0 、ヘッドホンのインピーダンスが何Ωでもロスは 0 です。ヘッドホンのインピーダンスは周波数毎に異なる値を持っています、周波数でインピーダンスが変わろうとも出力インピーダンスが0Ωならロスは 0 です。ヘッドホン自体が異なる場合も、出力インピーダンスが0Ωならロスは 0 です。それはつまり、出力インピーダンスが 0Ω ならばどんなヘッドホンでもロスがない理想的なヘッドホン駆動が可能なのです。
★ テクニカルガイド Vol.06 「BTL駆動のアドバンテージ」もご覧ください