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MOOD MKII、Generation Loss MKII、LossyなどChase Blissの最近の製品は、TRSジャックでのステレオ入出力に対応しています。
べダルボードの最後をChase Blissのステレオ対応ペダルにして、背面DIPスイッチのMISO（Mono In Stereo Out）をオンにすれば、モノラル入力をステレオに分割。更にSEPARATEで躍動感のあるステレオイメージを演出できます。TRSステレオ出力なのでYケーブルによるブレイクアウトが必要ですが、2台のアンプで鳴らすステレオの気持ちよさは、もう格別です。
Chase Bliss MOOD MKIIはTRSジャックでのステレオイン/アウトに対応。
TRSステレオ対応のペダルが複数あれば、その間はTRSケーブルを使って接続することになります。ですがTRSステレオのパッチケーブルは現状選択肢が少なく、こだわって作り上げたシステムにはどうか？というものも。それなら作ってしまおう！ということでUmbrella Company特製"Spiral TRSケーブル"のDIYについてご紹介です。
本記事で紹介するTRSケーブルは、カスタムオーダーにてご購入も可能です。
https://gizmo-music.com/?pid=179719065
まずはこちら、一般的な2芯シールドケーブルを使ったTRSケーブル。Tip、Ring、Sleeveを結線して作られています。市場のTRSケーブルはほとんどがこの仕様と思います。
しかしこの構造は本来TRSバランス伝送で用いられる結線方法であり、TRSステレオとは通過する信号の扱いが異なるため、厳密に言えば適切な方法ではないと言えます。
ではここでTRSケーブルとはなんなのか？整理してみましょう。主な用途は次の3つ。
1. TRSバランス
通過する信号は Hot/Cold。外来ノイズを除去できる伝送方式。内部の芯線同士は距離が近い方がコモンモードノイズの除去効果は高く機能する。位相は逆だが同一信号であり、チャンネルセパレーションの概念は適用外。
2. インサートケーブル
通過する信号はSend/Return。行きと帰りではエフェクト処理前、処理後の違いはあるが同一信号と言える。この用途でもチャンネルセパレーションの考えからは外れる。
3. TRSステレオ
通過する信号は L/R。2つのチャンネルの信号を扱うTRSステレオは、チャンネルセパレーションの性能が重要と考えます。一般的な2芯シールドを使って作ると、共通のシールドでL/Rの芯線を取り囲む構造となる。つまり芯線同士の距離が近く、しかも芯線間にシールドが効いていない。混信・クロストークしやすくなり、これはチャンネルセパレーションを悪化させる直接的な原因となります。間隔が近いほど、引き回す距離が長いほど条件が悪いので、特に長尺の引き回しでは避けるべきです。
またギターアンプやギターペダルに接続する場合は、信号を受ける機器の入力インピーダンスが高いため、クロストークが大きく発生しチャンネルセパレーションに悪影響を与えてしまいます。L/Rのセパレーションが悪くなることで、ステレオイメージの縮小、音像のぼやけなどの副作用は避けられないでしょう。
最高に気持ち良いステレオを味わいたい！そこで考えました。
細いシールドを2本束ねて撚り合わせ構造のケーブルにしました。通常なら共通のシールドにある2芯を、L/R独立したシールドで引き回す設計。チャンネルセパレーション性能を大きく改善・向上させています。そしてプラグを繋ぐだけでL/Rが配線できるTRSステレオのメリットはそのままです。特殊な見た目なので、通常のケーブルとの見分けがついて好都合かも？
本記事ではDIYの方法を解説しますのでぜひチャレンジしてみてください。また長さ/ジャック形状をお好きにカスタムして、アンブレラにオーダーできるプランもご用意しました。
★Umbrella Company特注Spiral TRSケーブル 購入ページ
https://gizmo-music.com/?pid=179719065
今回の例ではプラグはNP3X x2個、ケーブルを30cm + 10㎝ x2本用意します。
ケーブルにはCANARE GS4を採用。しなやかな取り回しながら密度93%OFC編組シールド + 導電性ビニルの採用でパッチケーブルとしても実はなかなかのハイスペック。またCANAREは製造精度がとても良く、例えばテレビのアンテナ線に使う同軸ケーブルでは、どこを切っても芯線がど真ん中にいます。特性インピーダンスを確実にKEEPし、高周波の伝送ロスを防ぎます。脱線しましたが、つまりコスパ最高のケーブルということです。
予算に余裕がある方はOYAIDE SLD-ZEROなどでも良いと思います。直径4.0mmまでなら使用可能です。
作り方と言っても、普通にケーブルを作るのと、たいして違いはありません。違いは2本通して結線すること。
まず、片端の端末処理を行います。予めブッシングに2本のケーブルを通しておくのを忘れないように。Tip/Ringに芯線を、Sleeve端子に両方のGNDをハンダ付けします。
ブッシングを締めて片端はOK。
そしたら、2本のケーブルをひたすら撚り合わせ、ねじってよじって端まで撚り合わせます。
そこにもう一つのブッシングを通すと、ねじった形状をキープされます。
ここでもう一回根元からねじってよじってしっかりと撚り合わせておきます。
見た目ではTip/Ringどちらの端子に接続すべきなのか分からないので、テスター導通を確認して、ハンダ付け。そしてブッシングを締めて組み立て完了！
あらためて導通/ショートをチェックし、異常なければケーブル完成です。
ギター →シールドケーブル → MOOD mk2 → TRSケーブル → Generation Loss mk2 → Yケーブル → JC-22（ステレオ入力）
という接続で、真ん中のTRSケーブルを差し替えて聴き比べました。
・一般的な2芯シールドTRS
ステレオらしく、気持ちのよい広がり。しっかりステレオ感があり、特に疑問に感じる要素はない。
・GS4x2 Spiral TRSケーブル
通常の2芯シールドTRSに比べて、高域の伸びと音像がよりくっきりするのが感じられる。リバーブ音の端が更に遠い。よりステレオイメージが広がった感覚。
・もう一度2芯シールドTRS
高域が曇った？セパレーションが悪くなったように聴こえる。音が太くなったようにも思うが、高域が落ち着いたことによる相対的な印象とも言える。
・もう一度GS4x2 Spiral TRSケーブル
ステレオが広い、やっぱり広くなっている、気持ちいい！2芯シールドTRSはぼやけた太さ、こちらは芯がある太さを持っている。ピンポンディレイやオートパンによる音の位置がはっきりしてくる。
今回制作の30cmでも結構な違いが体感できました！
一般的な2芯シールドは、一つのシールド線の中で芯線同士撚り合わされている。これはコンデンサの原理そのものと言えます。無防備な状態で近接した2つの導体は、コンデンサと化し静電容量が寄生した状態となる。そして芯線間にコンデンサがあると、L/R間でお互いに信号が漏れて拾い合う、つまり混ざってしまう。コンデンサの性質では高域ほど混ざりやすく、低域ほど混ざりにくい。混ざると、ステレオイメージは縮小し、ステレオ感が損なわれてしまう。音の変化の傾向は体感できた違いと一致します。
ギターアンプやギターエフェクターは入力インピーダンスが高く設計されているので、その作用が大きく働いてしまい、30cmとはいえ影響は大きかったと考察できます。
2芯シールドTRSはクロストークが悪影響となりステレオイメージを狭めてしまう。本来のステレオ感とは、クロストークがないGS4×2 TRS の方なのです。
アンプを2台使ったステレオセットアップの一例。ディレイやリバーブなどの空間系エフェクトではステレオ出力は感動モノの気持ちよさなので、ぜひチャレンジしてみてください。
冒頭ではインサートケーブルの用途ではチャンネルセパレーションには関係ないと書きましたが、厳密には影響はあります。インサート端子でやりとりするシグナルはインピーダンスが管理された接続であり、またクロストークしたとしても元々同じ信号なので影響として感じられることは少ないとしているのですが、「僅かに影響がある」のと「まったく影響がない」には大きな違いがあります。そのためSpiral TRSケーブルはインサートケーブルとしての用途でもメリットがあるはず。こだわる方はぜひ！お試しいただき感想をお聞かせください。
またTRSバランスとしての用途では、Spiral TRSケーブルは芯線間の距離が離れるので、バランス伝送の原理からこれはデメリットとなる方向の変化となります。TRSバランスとして使う場合は一般的な2芯シールドのほうが適切です。
TRSケーブルの使い方、3つの用途があるということを知っていただき、適材適所ケーブルを選んでいただければと思います。昨今のデジタルエフェクトは高品位なステレオアウトを備える物も多くなっています。その素晴らしいステレオサウンドを活かすために、今回ご紹介したTRSステレオケーブルをぜひお試しくださいませ。
作ったよ～って方は、ぜひ感想を教えていただけると嬉しいです！
★今回ご紹介したSpiral TRSケーブルは、カスタムオーダーでご購入も可能です！
Umbrella Company特注Spiral TRSケーブル 購入ページ
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