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岡山県のレコーディングスタジオ、Studio BEWEST。壁一面に設置されたアナログ・ハードウェアは、NeveやAPIをはじめ入手困難なビンテージものから、発売されたばかりのアウトボードまで。オーナーさんの音に対する拘りと情熱が伝わります。
オーナーの西本さんは、県内に2つのスタジオを稼働。レコーディングに特化した一軒家のスタジオには、圧倒的な量の機材だけでなく、クライアント用にキッチンから浴室、寝室まで備えられています。「合宿レコーディング」にも対応しており、集中して快適な制作を行うことができます。
また、全国でもまだ稼働の少ないDolby Atmosにも対応したスタジオも備えており、ステレオからイマーシブまで、音楽の未来を見据えて営業をされています。
今回は西本さんに、WesAudio ngシリーズのng76とngBusCompの2機種について、導入理由や活用法を詳しく伺いました。
西本 直樹
岡山県内にレコーディングスタジオ BEWEST を2店舗構えるオーナー兼レコーディングエンジニア。
ジャパレゲの第一人者 J-REXXX や、紅桜との伝説のユニットTHEタイマンチーズの作品を手掛け、その他毎年数多くのインディーズアーティストの作品を世に送り続けている。また2023年7月から Dolby Atmos 作品を中心にリリースするインディーズレーベルを設立。地方から Dolby Atmos 作品を世に送り出す活動を精力的に行っている。
Studio BEWESTというスタジオでロック系バンド、ヒップホップ、レゲエを中心にレコーディング、ミックス、マスタリングまでをやらせていただいております。
2023年の5月頃から2店舗あるうちの1店舗でDolby Atmosのシステムを構築し、制作も出来るようになりました。更に2024年中にはもう1店舗もDolby Atmos対応のスタジオにリニューアルする予定です。
現在の各店舗の立ち位置は割と明確で、岡山市内にある岡山店はレコーディングが中心です。また岡山店はリビング、キッチン、お風呂場や休憩室があって、宿泊が出来るレコーディングスタジオとなっておりまして、これは全国的にもレアだと思います。私自身はこの店舗でミックスやマスタリングの作業をする事はあまりありませんし、一度も宿泊したことがありません(笑)。
津山本店は逆にミックス、マスタリング、Dolby Atmosのミキシングが中心です。もちろんレコーディングも出来ますし、岡山店よりブースが広かったりするのですが(笑)、今は制作の方を中心に動かしてます。
EQは"録りでは"あまり使いませんが、コンプはめちゃくちゃ使います。掛け録りするためにあるようなものです。
純粋に音がいいから、自分自身がアナログの音が好きだから、というのもあるのですが、着地点が見えるのが早いんです。基本的には、もう録りの段階から「こういう音で録りたい」という明確なものを頭に描いてからレコーディングに臨むので、その場合、やはりアウトボードで狙いたい音を作りながら収めていけるという利点があり、逆にそれが時短にも繋がるし、クオリティーの担保にも繋がると思ってます。
1176にまず求めるのは「かっこいい歪み」ですね。そこがやはり大きいなと。オールボタンモードは大好きです(笑)。あとは1176特有の速いアタックはドラム等に重宝します。
元々WesAudio beta76を2台所有していまして、今でもレコーディングでこれを使わない日は無いくらい重宝しています。そんな中、デジタルリコール、プラグインコントロールが出来るng76がリリースされたということで、これはもう使ってみたい!と直感的に思い、まず1台導入しました。
使ってみたいというか、それ以前にngBusCompを導入していまして、プラグインコントロールの素晴らしさを体感してるので、迷いが無かったです(笑)。それを録りとミックスに使ってみたのですが、どちらで使っても非常に素晴らしく、すぐに2台目の導入を決めました。
本家のUREI1176とは引っかかり方は多少違いますが、僕が1176のイミテーション系に求めるものとして、「似てる」「似てない」は割とどうでもよくて、ng76はUREI1176よりも守備範囲が広い印象で、とても使いやすさを感じています。
ナチュラル目なコンプレッションから歪みを加えた激しいコンプレッションまでかなり自由自在に扱えるので、これ1台で色んなリビジョンの1176を所有したような感覚です。UREI 1176はUREI 1176で代えの利かない独特の音色感やコンプレッション感を持ってるので、それはそれで重宝しています。
INPUT MODE: MODERN(電子バランス)/VINTAGE(トランスバランス)
これはbeta76にもある機能ですが、本当によく使わせてもらっています。VINTAGEはドシっとした質感でややナチュラル目で、逆にMODERNはギラっとした少し歪みやすい、まさにRevision GやHの銀パネっぽい質感ですよね。例えばスネアに使う場合、BPM遅めの落ち着いた楽曲ではVINTAGE、BPMが速い元気のある楽曲だとMODERNみたいな使い分けはよくやります。
THD
THDは本当によく使います。エネルギッシュにしたいスネアのトップや、クランチ~ディストーションのギターに少し加える事で、やや潰れた感じのサウンドを作ったり、ベースに足して使うのも好きですね。
デジタルリコール/プラグインコントロール
僕の場合はFlock Audio The PATCH(デジタリーコントロールド・アナログパッチベイ)と併用して使っています。The PATCHにng76やngBusComp、その他アウトボードを立ち上げておいて、ProToolsのハードウェアインサートにThe PATCHをインサートして、The PATCHのアプリ内でアウトボードのBYPASS UNBYPASSや順番の入れ替えをしています。
そうすることによって、瞬時にオン・オフ、ドラッグでアウトボードの入れ替え等出来るので、これこそが究極のハードウェアをプラグインのように使える「プラグインコントロール」だなと思っています(笑)
サチュレーションモード
これは物凄く好きで、多用するようになりました。コンプとして使うというよりは、FETの回路を通すことによって得られる「サチュレーション」をサウンドに加える、いわばエフェクター的な使い方ですね。
結局どの機能も素晴らしくてこれ!と決める事が出来ないのですが、肝はやはりハードウェアをプラグインのように扱える「プラグインコントロール」ですね。これによって、MIXにハードウェアを使う事をためらってる方でも手が伸びると思いますし、プラグインとハードウェアとの比較も容易に行えるので、これに尽きると思います。
あとひとつ挙げるなら、「パラレルコンプ」が出来るMIXコントロールですね。これはオリジナルには無い機能ですが、このパラレルコンプは個人的には重宝してます。
僕は1176系を既に1台所有されてて、2台目を検討されてる方にあえてお勧めしたいです(笑)。従来の1176とどう違うのか、機能的にどれくらいのものが、このng76に集約されてるのかが分かりやすいと思うので、その時にng76の素晴らしさを体感していただけるのではないかと思います。
ステレオバスコンプは割と所有していて、Dangerous Comp、MANLEY SLAM MASTERING Version、MANLEY Stereo Variable Limiter Compressor、Ruper Neve Design Portico Ⅱ Master Buss Processor、API2500、Heritage Audio HA-609A等を所有しています。
導入理由は、やはり最初は「プラグインコントロール」を使ってみたいというところがきっかけですね。導入当時は、ハードウェアをプラグインベースで使えるというのは斬新だったし、機能とかも調べたのですが、使ってみたいと思わせてくれる機能が満載でした。
バスと言われるところにはあらゆるところに使っています(笑)。よく使うのはドラムバスですね。本当にうまくまとまりますし、特にロック系のドラムバスには必要不可欠になってます。
プラグインコントロールは、ng76同様、Flock Audio The PATCHとの組み合わせで使っています。やはり便利だし、アナログハードウェアなのにプリセットを保存できるとかは本当にうれしい機能です。
どちらも本当に素晴らしいです。THDは全帯域に影響があってグッと歪むのですが、IRONはどちらかというとローからローミッド辺りの押し出しが強くなって、アナログ好きだと殆どの方が好きなトランスの音色が付加された音になります。更にIRON PADがあって、これだけMAKE UPした音が好きなんだけど、どうしても出力が大きくて使えないを瞬時に解決してくれるという、本当に設計者の思想に頭が下がりますよね。
ng76同様、やはり肝となるのはプラグインコントロールなのですが、実際に使ってみて「THD」と「IRON」という、「2系統のサチュレーション」を思いのままにコントロール出来る点、また、それらをオフにして得られるクリーンなコンプレッサーとしての利用も最高です。クリーンなコンプレッサーとしても、とても素晴らしいんです。そこから、THDやIRONを少しずつ足したり引いたりして、好みの音色を作っていくという、作れないなと思う事が少ない機材です。
アナログハードウェアをミックスやマスタリングで使う、いわゆるハイブリッド構成の場合だと、格段に作業効率は上がります。前述しているようにFlock Audio The PATCHとの組み合わせで、完全にプラグイン同様にアナログハードウェアを使えるという利点がありつつ、音が決まるのがとても早いので、僕の中では最大級のチート機材です(笑)。
これはもう、初めてハードのバスコンプを検討してる方に、是非お勧めしたいです。欠点と言えば、便利過ぎて2台目に触手が伸びにくくなる、という事ぐらいしか思いつきません(笑)。
私が所有しているもので、Wes Audio以外にこの機能を持っているハードウェアはありません。とても便利だし、ファーストチョイスで手が伸びるようになりました。
但し、ng76やngBusCompではまかえない「音色」というものが他機材には存在し、その機材特有の「音色」を求めて使用する機材をチョイスしていくというスタンスです。真空管コンプはやはり真空管の「音色」がありますし、オプティカルコンプはオプティカル特有のコンプレッション感があるので、まかない合っていくイメージですね。
ngシリーズは、ハードウェアを使うことをためらっているITB派の方にもおすすめ出来ますし、もちろん今まで実機が好きで多用されてる方にもおすすめ出来ます。更にプラグインコントロール機能により、プラグインと実際のハードウェアとの音色や効き方、本当のアナログとエミュレートされたアナログの違いなどが瞬時に認識出来る利点もあります。
そういう意味では使い手を選ばず、どんな方にもおすすめ出来ますので、是非一度、店頭やデモ機等で実際に体感してみて、ngシリーズの素晴らしさを堪能して下さい。
協力:宮地楽器RPM(Recording Proshop Miyaji)
WesAudio ng76 製品ページ:https://umbrella-company.jp/products/ng76/
WesAudio ngBusComp 製品ページ:https://umbrella-company.jp/products/ngbuscomp/
WesAudio ブランドページ:https://umbrella-company.jp/brand/wesaudio/
WesAudio製品はデモ機をご用意しております。 ご興味のある方は、お近くの販売店、または弊社までお問い合わせください。
デモ機のお貸出詳細:https://umbrella-company.jp/demonstration/