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歪みエフェクトの中でも、特別な位置を占めているのはやはりファズでしょう。倍音が多分に含まれた、クラッシュされたような深い歪みと毛羽立ち。プリミティブでありながら、感情へ直結されたようなダイナミックな音色は、古今問わずあらゆる場面で活躍しています。
オーバードライブやディストーションといった歪みたちもそうであるように、ファズも「〇〇系」カテゴリーで語られるようないくつかのジャンルが存在し、その系譜に属するペダルが現代でもリリースされ続けています。伝説の個体の完全再現や、歴史へのリスペクトを感じさせるモデルももちろん魅力的ではありますが、中には既存の枠に囚われずまったく新しいバイブスを提唱するモデルも存在しています。今回はアンブレラカンパニー取扱製品の中から、新しい領域へ挑戦し、新しい価値観を提唱するファズたちをピックアップしてご紹介します。
現代ファズを語るなら絶対に外せない名機。かろうじてマフ系に分類されるだろうが、暴虐的な音圧と歪みは、「一瞬で空間を支配する」という誰もがファズに求める要素を難なくクリアします。やり過ぎなサウンドだけでなく、アンサンブルでの抜けや解像度もしっかり確保する緻密なコントロール設計も魅力的。特にTONEは従来の使いにくいカーブを大幅に拡張し、多くのポジションで使う意義を見いだせます。もはや「戦争」。
Fuzz Warのベース用モデルという触れ込みだが、そもそものキャラクターもオリジナルと結構異なる。ただでさえグイグイ歪むFuzz Warに更にゲインを追加、更に低域も増強したとくればもうパンパンです。オリジナルをベースで使うユーザーも多かったくらい十分な低域だったのに笑。そんな爆発的なパワーも、クリーンブレンドが搭載されたことで制御しやすいのが嬉しい。そしてギターで使った場合の破壊力もとんでもない。過剰すぎるゲインがサウンドをぶっ潰す阿鼻叫喚のアポカリプスサウンド。こいつをベーシストに独り占めさせるのはもったいない。
マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズもノイズ生成器として愛用。光線銃の如しPew Pewなサスティンが「勝手に」混ざってしまうGATEモードと、お下劣な発振音が垂れ流されるOSCモードの2つを搭載する"ビザール"なファズ。幅広いサウンドバリエーションを持っていますが、その全てが変態であることが非常に貴重と思います。スタンダードに使いやすいサウンドなんかつまらないという貴方に。
チリチリとした粒子が爆発するようなファズに過剰なゲートをプラス。サウンドを丸ごと圧縮して飲み込むゲートは、耐えきれなくなって暴発寸前のゲインを無理やり抑え込んで綱渡りをするような、オルタナティブなスリルこそがHauntの真骨頂です。スピーカーが吹き飛んでしまったようなオーバーロード気味のサウンドもクール。これをギターソロでぶっ放したら最高にかっこいいと思います。
更に深淵を探求したいならデラックス版のAlpha Hauntをどうぞ。Hanutをベースにあらゆるコントロールを拡張/追加し、オルタナを定義するファズサウンドを心ゆくまで追い求められます。
ファズは一般的に強烈で存在感のあるキャラクターが想起されますが、本機は美しくスムーズなドライブに毛羽立ちを加えたような印象。軸足はオーバードライブっぽく、でもファズ的な質感もしっかりある不思議な立ち位置です。特にローからミドルゲインのサウンドが素晴らしく、感情を揺さぶるエモーショナルトーン。また他ペダルとのスタッキングが緻密に追求されており、サウンドへ疾走感を足すファズブースト的な役割にも最高です。
スズメバチのその名の如く凶暴でアグレッシブ。突き刺すようなゲートファズとアッパーモジュレーションが渦巻くハイピッチオクターブを縦横無尽に、"演奏中に!"切り替えられる意欲作です。核となるサウンドは決して懐古的ではなく、現代のアンサンブルでこそ存在感を放つBeetronics謹製のクールな世界観。オルタナなリフやかき鳴らすパワーコードには相性抜群。ハイオクターブのモードではソロフレーズをサイケに決めるもよし、あえて和音を弾いてぐちゃぐちゃなカオスを演出しても良しです。
鉄塊のような佇まいが見る者を圧倒する本機は、そのサウンドもまさに異形。23Vまでの内部昇圧に、驚異の10000倍のオペアンプブーストをブチ込む。つまりどうやっても歪まない圧倒的なヘッドルームへ、それを上回るとんでもなく過大な増幅を入れて無理矢理に歪みを生成する驚きの構成です。非常に攻撃的で切迫感がありながらクリア、カミソリのような切れ味に飽和した倍音が乗って拡散していきます。つんざくように音楽的なオクターブアップサウンドも魅力的。ノイズを求め、抱擁し、導く貴方に。
ブランド創設時からバージョンアップを重ね続けるDr. Freakensteinの最新バージョン。ゲインは最大で固定されたフルオン仕様、強烈なノイズゲートでのバッサリ感が合わさって非常にマッドな雰囲気を作り上げています。オクターブともピッチシフトとも違う複雑怪奇なハーモニーを加えるOvertone、ぶつ切りのチョップトレモロ、極限チューニングのLFOも加わり、全てが渾然一体となってRainger FXのフリーキーな思想を体現します。これっていつ使うの?とか聞かないように。
誰もが一度は試した(?)、カセット4トラックMTRのアンプへギターを突っ込み、過大入力で歪んだサウンドにインスパイアされたファズペダル。一般的なファズとは異なるコンプレッション特性やソフトな飽和感は、ローファイでどこか愛おしい。木漏れ日が風に揺れてきらめくような、一瞬西日が差し込む部屋のような、感傷的な美しさまで感じられます。かき鳴らすのではなく、忘れられない過去へ思いを馳せるように、ペダルと対話するように爪弾きたい。
ギターエフェクターの歴史の中で、最古のペダルはファズ(Maestro Fuzz Tone)と言われています。またロックの黄金期で様々なプレイヤーが使用し、そのサウンド自体も痛烈なものが多いため、ファズとは特定の時代とリンクする記名性が強いものであるという印象も多いかと思います。しかし新しい領域へ挑戦する余地は、どの時代も常に残されているもの。従来の発想に囚われないこれらのモデルたちは、まさに新たな音世界を紡ぐための最適なウェポンです。ぜひチェックを。
FUZZ KILLS。ファズは用法用量を守って正しくお使いください。