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The King of Gear – Mini Glitchレビュー。Radioheadサウンドの再現に留まらない、革新的なモードを搭載するグリッチデバイス!

 

グリッチ、Glitchは
・(機械、計画などの)故障、欠陥、エラー
・ゲームなどのバグ、裏技
を指す言葉ですが、音楽のエフェクトでは有る特定の効果を指します。マイクロループや音飛び、スタッター(どもり)とも称される特殊なエフェクトです。

 

グリッチ/スタッターと呼ばれるエフェクトは、元々はオーディオデータをMax/MSPのようなプログラムで処理する際に起きてしまっていた“エラーノイズ”から発想を広げたものです。またチープなCDプレイヤーに衝撃を与えたときのノイズや、CDの盤面が傷による音飛びにも近いと思います。
ドイツのテクノアーティストOvalは、CDの盤面をサインペンで傷付けてプレイヤーのエラーを誘発し、そのノイズをサンプリングするグリッチテクニックを世界に知らしめました。

 


 

グリッチエフェクトをバンドサウンドで効果的に取り入れたのはやはりRadioheadでしょう。Hail to the Theif収録の“Go To Sleep”では、終盤の全く新しい奇妙過ぎるギターソロは話題になりました。既存のグリッチに更にランダム要素を付加したこのサウンドは、プログラミング処理したMax/MSPをリアルタイムのエフェクトにすることで達成されていたようで、多くの機材ギークが再現にチャレンジしました。

 

2:45あたりから不可思議なギターソロを聴けます。
 

このようなグリッチテクニックは以前はコンピューター上での処理に任されていましたが、近年はギターエフェクターでも効果を再現するペダルがリリースされ始めています。
MWFX – Judder、Red Panda – Particle, S3N – Super Flutter, Catalinbread – CSIDMAN、Banana Effects – MANDALAなどに加えて、日本で最もメジャーなのはMASF PossesedやRaptioではないでしょうか。アンブレラカンパニー扱いなら、Chase Bliss Audio – M O O DCooper FX – Outwardにもグリッチの要素が感じられます。
またデジタルディレイで極端にディレイタイムを短く設定したりホールドモードを使ったりして、グリッチを再現する手法も編み出されました。

 


BOSS DD-3を使ったグリッチサウンド。DD-8にはグリッチモードも搭載されましたね。

 

・The King Of Gear (tkog)ってどんなブランド?

エフェクターブランドのThe King Of Gearですが、元々はアメリカのRadioheadファンによる、Radioheadの使用機材をまとめるデータベースサイトです。Radioheadの各メンバーのギター、アンプ、エフェクト、シンセサイザーなどからそれぞれのソロプロジェクト、レコーディングのマイクテクニックに至るまで、驚異的なデータが情熱的に網羅されています。

https://thekingofgear.com/

そのRadiohead愛はデーターベースだけに留まらず、2018年にはオリジナルのエフェクトペダルの開発にスタート。MINI GLITCHの前身モデルのFERAL GLITCHをクラウドファンディングで発表します。まさしくGo to Sleepで聴かれる「ランダム・グリッチ」を再現するこのペダルは(一部の界隈で)話題になり、その後機能を追加/改良したMINI GLITCHがリリースされます。

昨年にはRadioheadなどのオルタナ系アーティストが愛用した、伝説のMarshall Shred Masterを基本に更にトーンを拡張したOXFORD DRIVEを発表。

特定のアーティストを愛するあまりにペダル制作へ至るという、何ともユニークなブランドです。

 

・MINI GLITCH完全解説!

MINI GLITCHはフレーズを極端に短くキャプチャーし、繰り返すことでグリッチエフェクトを達成しています。そのため厳密にはルーパーペダルとも言えるかもしれません。
インターフェースはかなりシンプルな構成で、白いノブはループタイム(フレーズをキャプチャーする長さ)を設定し、左に回しきるとエフェクトが音になるたびランダムになる設定になります。キャプチャーできるタイムは1000ms近く(THモードでは500ms)です。

2つのスイッチは3つのグリッチモードと、グリッチ時のドライ音を出力するかを切り替えます。
更に、各モードではフットスイッチを押しながらノブを回すことで「セカンダリー機能」へアクセスできます。

・RNDモード
MINI GLITCHには3つのグリッチモードが搭載されていますが、目玉のRND(Random)モードから行きましょう。これはジョニー・グリーンウッドのMax/MSPのランダムグリッチ・パッチを完全再現するモードです。
 

このモードでは、グリッチのオンオフがペダルによりランダムに決定されます。加えてノブを左に回し切ってループタイムもランダムにすることで、あのGo to Sleepの摩訶不思議ギターサウンドの再現ができちゃいます。ディストーションをかまして、魂のまま弦をかき鳴らしまくってください。このモードだけでもMINI GLITCHをゲットする価値はあります。

tkogに寄せられる質問で最も多かったのが、ジョニー・グリーンウッドのMax/MSPによるランダムエフェクトはどうやってギターペダルで再現できるか?だったようです。グリッチ機能はあっても特にランダム要素を再現できるペダルは無かったようで、ルーパーやトレモロを使った構築方法をアドバイスしていました。このランダムグリッチの完全再現には、高価なプログラムを搭載したPCとオーディオインターフェースが必要でしたがMINI GLITCHがあればもう大丈夫です。無いなら自分で作ってしまえ!となるのが愛に溢れていますね。

 

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個人的にお気に入りなのが、アンビエント系のペダルとMINI GLITCHのセットアップ。ぶつ切りのサウンドをディープな反響や無限のリバーブと組み合わせて、摩訶不思議な空間表現が可能になります。ランダマイズの頻度を下げれば、忘れた頃にプツプツと途切れるセンチメンタルなグリッチになります。

・THRモード

THR(Thresholdモード)は、設定したスレッショルドを超える入力があったときにグリッチを発生させるモードです。グリッチのスタートを弾く強さでコントロールできるので、例えばアルペジオの一音だけグリッチさせて、ループさせながらプレイを重ねるようなことができます。風変わりなルーパーのように使ったり、プレイによっては壊れたリバーブにも感じられる、新感覚のモードです。

2:28から、THRモードをデモしています。アルペジオの一部分を強く弾いてグリッチを起こしています。
スレッショルドの設定が敏感で、特に歪みペダルと組み合わせると設定が難しいと感じることもあります。上手く使うならクリーンなサウンドだと調整がしやすいです。

 

・SWモード
SW(Switchedモード)はこの手のグリッチペダルで一番馴染みのある、スイッチを踏んでいる間だけフレーズをプレイバックするモードです。ギターを弾くと同時にフットスイッチを踏めばギャギャギャギャ!とグリッチさせられます。白いノブは引き続きキャプチャーするフレーズの長さを設定するのですが、左に回しきればランダムへもちろん設定可能です。一般的なギャギャギャギャ!というグリッチサウンドは極端にフレーズを短くキャプチャーするので、ノブを左回しきりから少しだけ右へ回してやります。MINI GLITCHは最大1000msまでのキャプチャータイムに対応するので、ノブを高く設定すればディレイやループペダルのように使用も可能です。

 

優秀なのは、SWモードではフットスイッチをモーメンタリーとラッチから切り替えられること。標準ではモーメンタリー動作ですが、SWモードを選択するときフットスイッチを押しながらモードを切り替えれば、フットスイッチはラッチ動作になります。多くのグリッチペダルがモーメンタリーだけに対して、スイッチの動作を選べるようにしたのは偉い。

 

裏技ですが、グリッチ中に白いノブを弄ってキャプチャータイムを変更すると、ループがビットクラッシュしていきインダストリアルな格好のよろしいサウンドになります。崩壊しまくるこのヤバいサウンドのためにMINI GLITCHを導入するのもアリだと思います。

 

・Dry Mute / Pass
多くのグリッチペダルは、グリッチ中は元の入力はカットされてグリッチ音のみ出力されるのがほとんどです。グリッチのダイナミックな効果を際立たせるためには確かに有効なのですが、MINI GLITCHはここのミュート/パスを選べるようにした事で可能性が広がっています。
ドライ音のパスは、ドラムマシンや音源を加工するときに特に有用です。元々のリズムを崩さずに、アブストラクトな雰囲気を足して表情を変化させられます。
またMINI GLITCHをディレイやループペダルのように使いたいときも、Dry Passすればプレイを重ねられるので便利に使えます。

 

・グリッチ/スタッターエフェクトの可能性を追求!
正直RNDモードだけなら一発芸というか出オチ感もあるんですが、ギターペダル型のグリッチエフェクトに求められる機能は全てカバーしつつ、さらに可能性を広げたモードもMINI GLITCHは搭載しています。インターフェースがシンプルに纏まっていることもあり、エフェクト自体の癖はかなり強いのに扱いやすいのです。グリッチペダルはコントロールが感覚的なものが多かった中、自在に思うまま操れるようになっています。Radioheadのあのサウンドを再現はもちろん、グリッチエフェクトをクリエイティブに導入したいならMINI GLITCHは間違いないです。グリッチ系ペダルはまだまだ発展の最中だと思いますが、現時点ではMINI GLITCHが決定版だと思います!

 

 

グリッチエフェクトはそもそもがかなりアグレッシブな効果で、楽曲に活かすにはセンスが問われるのも事実だと思います。一方で新しい音楽のジャンルは興隆は、テクノロジーの発展や機材の発達に後押しされるという側面もあるでしょう。MINI GLITCHはそんな新しいジャンルを生み出してくれるペダルだと感じています。他とは比較できないダイナミックなエフェクトなので、インスピレーションをガンガン刺激してくる。人と違うサウンドを出したい、一風変わった世界を創出したい、そんなチャレンジングな方にぜひ挑戦してほしい。もちろんただRadioheadのあのサウンドを再現!というのにもバッチリです!

元々グリッチとはエラーノイズで避けられるべきもののハズですが、MINI GLITCHのランダムグリッチは何故か魅力的です。ランダムにオンオフが繰り返されているだけなのに、ペダルに意思があるようにも感じられてくる。何十年も放置されてブレイクダウンしたロボットのような、宇宙飛行士の最後の通信のような…こんなに情景が浮かんでくるグリッチペダルはちょっと他には無いと思います。

 

MINI GLITCHは全国の販売店さんで絶賛取扱中。ぜひお試し下さい。グリッチ中毒になっても、責任は負いません。

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