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カナダのプロフェッショナル・エンジニア集団であるEmpress Effects。その卓越した技術力と抜群の音作りのセンスはここ日本でも高く評価されてきました。
Empress Effectsの製品はどれもベーシックな製品の音質と機能を極限まで高めた設計を貫いており魅力的ですが、中でも「ディレイ」に関しては特別な完成度とこだわりをもって設計されているのが分かります。Empressとして最初に話題になった製品がSuperdelayであり、最も長い時間をかけてエンジニアのスティーブが研究を続けているジャンルでもあります。ここではエンプレスエフェクトに行った日本独占のインタビューをノーカット完全版でお届けいたします。お楽しみください
●あなたのお名前と生年、出身地、Empress Effectsでの役職とお仕事の具体的な内容を教えて下さい。
「私の名前はスティーブ・ブラッグです。Empress Effectsの代表と開発担当を務めています。現在は一日の大半を新しいペダルのデザインや設計に費やしていますよ。」●あなたはいつ頃、ギター・エフェクターに興味を持ち始めましたか? どのようにそれについて学びましたか?
「私がギターペダルを作り始めたのは高校生のころからです。一番最初に製作したペダルはTycobache社のOctaviaのコピーでしたが、それは完成することはありませんでした(笑)!私は多くの電子工学についてgeofex.com やmuzique.comなどの素晴らしいウェブサイトから学びました。Art of Electronicsという本からも多くを学びましたよ。」●どんな音楽機材が気に入っていますか?どんな音楽を聞いていますか?
「ペダルではありませんが今 MONOMEとおいう機材にはまっています。プログラムをしたり演奏したり、とても楽しい機材です。私たちの住んでいる場所には音楽がそこら中にあります。来週末にはフェスティバルに出かける予定です。Vampire Weekendを見るのが楽しみです。」●Empress EffectsはDan Junkinsと Steve Braggにより、2005年に創立されたと聞いています。ブランド創立当初、おふたりはどのようなカスタマーに向けて、どのような機材を製作することが使命であると考えていましたか?
●Empress Effectsのペダルは“Distortion”や“Multidrive”、“Phaser”のように多くのパラメーターをストンプボックスに実装しています。可能な限り豊富なパラメーターをユーザー自身が制御できるユニットというのは、Empress Effectsの全製品における統一されたコンセプトですか?
「その通りです。私たちはペダルを製作する際に目標の締め切りを設定しますが、その後でもぎりぎりまで、可能性のある機能や技術を検証していきます。発表の1か月前でもまだそこに新しい要素を組み込むことをやめないのです!」●エフェクト回路をアナログで設計し、パラメーター・コントロールを始めとする部分にMIDIを始めとするデジタル規格を導入しているのもEmpress Effectsの特徴と見受けられます。このアナログ/デジタルの融合がもたらすメリットには、どのようなものがあげられますか?
●“Tap Delay”について聞かせて下さい。まず、signal / noise ratio=around 103dBという優れたオーディオ特性はどのように実現されていますか?
「これはオーディオ的に優れたハイエンドなコンバーター Cirrus CS4272をオーディオコーデックに採用している点が大きいです。もちろん全体の回路設計には様々な工夫やアイデアが活かされています。」●ディレイ回路はBBD素子を含むアナログですか? それともDSPチップを含むデジタルですか?
「SuperdelayとVintage Modified Superdelay(VMSD)、Tapedelayの信号パスはデジタルです。しかしTapedelayではアナログのドライ信号を混ぜることができます。」●“tape age”パラメーターはどのような回路から成りますか? 一種のロー・パス・フィルターを採用しているのでしょうか? 歪み/サチュレーションもこの部分で加えているのでしょうか?
「これらは全て極めて優れたDSPプロセッシングで成り立っています。これはモジュレーション、フィルター、ダイナミクス、そして多少のディストーションの各要素を魔法のような比率のコンビネーションで融合させたプリセットです。私たちはテープディレイの美しいサウンドにとても興味を持ち、それらが持つコンプレッション、モジュレーション、ワウ&フラッター、などについてとても長い時間をかけて研究・解析を行ってきました。3つのサブモードを切り替えることで、かすかなテープディレイサウンドから、ビンテージ系のテープエコー、そしてヘッドが汚れている時の独特の揺れを持ったサウンドまでを再現することができます。 またモジュレーションについてはビンテージのテープエコー特有のもので、埃や異物がマシンのモーターやヘッドに付着することで回転スピードを1~2秒の周期で不安定にさせます。私たちはそんな細かなマシンの状態とサウンドを研究してプロセッシングで再現することに成功したのです。」●“modulation”パラメーターはどのような回路から成りますか? コーラス/フランジャーに近い独立したアナログ回路でしょうか? または、このエフェクトもDSPにより生成されているのでしょうか?
「このモジュレーションもDSPプロセッシングで構成されています。」●“Analog Dry”シグナル・パスのメリットについて聞かせて下さい。
「DACからのノイズを最小限に抑えることができます。」●“Blips”エフェクトはディレイ・タイム・パラメーターを周期的、またはランダムに操作するものと考えて良いですか?
「ノーマル設定ではディレイタイムを演奏中に動かした時のサウンドは徐々に変化しますが、Blipsモードではまったく異なる変化となります。ディレイタイムのサンプル周波数はその半分または倍となり、これによりオクターブアップとダウンの効果を生み出します。説明するのが難しいのですが、とてもクールなサウンドになりますよ。」●“Vintage Modified Superdelay”について聞かせて下さい。このディレイ回路にはDSPチップを使用していますか?
「ディレイ回路にはMicrochip社製のDSPチップPIC33Fを採用しています。素晴らしい働きを持つチップです!」●8つのディレイ・モードのうち、“tape”アルゴリズムを組む上で参考にした実機はどんなものでしたか?
「RolandのSpace Echoは最初にエミュレートを試みたテープエコーでした。これを皮切りに私たちは私たちが望む、様々なテープエコーサウンドを試していきました。」●パラメーターには“High Pass / Low Pass Filter”が用意されていますが、8つのディレイ・モードそれぞれのトーン特性も異なるものにしていますか? もしそうであれば、それぞれがどのようなトーンを持っているか教えて下さい。
「ローパスフィルターは少しくぐもったようなサウンドを表現した時に良いでしょう。ハイパスフィルターではフィードバックのコントロールと組みあわせてダンス系のサウンドに良くあいます。」●Reverseモードについて教えてください
「アナログテープでは録音したサウンドを逆回転させて特殊なサウンドを作り出していました。Superdelayではこの効果をプリセットで作り出すことができます。モードCではダブルスピードで再生させることでオクターブアップサウンドを生み出し、とてもエフェクティブなサウンドを作り出しています。」●“Tap Delay”、“Vintage Modified Superdelay”ともに、ディレイ・エフェクトで可能なことをすべて実現したと言っても過言ではないほど高い音作りの自由度を備えています。今後、これらにさらに新しい機能を付け加えるとしたら、どのようなアイディアが浮かびますか?
「私がまた新しいディレイペダルを作るとしたら、間違いなくいくつかのクレイジーなディレイサウンドを取り入れると思います。まだ具体的には考えていませんけど・・・。」●ありがとうございました。最後に日本のユーザーに一言!
「カナダから日本の皆様に大きな感謝を伝えたいです。いつも Empress Effectsのペダルを使ってくれてありがとうございます!」