いつも興味深いプロジェクトを紹介している「
DIY RECORDING EQUIPMENT」がAPI500シリーズ用の3ステージのアナログ・サチュレーション・デバイス“COLOUR”の発売とプリオーダーをアナウンスしています。このプロジェクトはクラウドファンディング式の生産となっていて、予約分を3月~5月に出荷する予定のようです。
COLOURは本物のアナログサーキットによるデジタルシミュレートではない「アナログサチュレーション」をプラスできるハードウェアです。同じようなコンセプトのアナログハードウェアとしては
Empirical LabsのFatso(EL-7)がありますが、API500シリーズのフォーマットでは初めてではないかと思います。
特筆すべき点はこのCOLOURが“Palette”という換装可能な3つのスロットを備えている点で、ユーザーはこのスロットに“COLOUR”と呼ばれるモジュールを自由に組み込めるよう設計されています。3つのCOLOURモジュールはフロントパネルのスイッチで切り替えることが可能で、どれだけ入力レベルをCOLOURモジュールに突っ込むかを調整する“Saturation”と、出力信号のアッテネーションを調整する“Trim”の2つのノブが装備されています。

ColourモジュールはすでにDIY RECORDING EQUIPMENTが以下の3タイプを開発していてプリオーダーで購入することができるようです。3タイプのモジュールはそれぞれ個性的な倍音やコンプレッション、フィルターを持っており完全にアナログ回路で構成されています。
・15IPS → アナログ磁気テープの飽和感や倍音を再現したモジュール。ゲルマニウムダイオードとレゾナンス・ハイパスフィルターが応用されている
・CTX →クラシックなアイアンコアのオーディオトランスによるサチュレーションを再現。実際にCinemag社のトランスを使用している。
・JFT → JFETによるかすかな倍音質感を原音にプラスできる
これらのColourモジュールのサウンドはサンプルも公開されているので是非一度聞いてみてください。

さらに面白いのが、このColourモジュール自体の規格がオープンソースになっているようで、サードパーティーのColourモジュールが各社から発売される予定のようです。実現すれば色々なサウンドデザインナーの開発した異なるアナログ質感を試すことができるようになるので楽しみです。現在以下のブランドからColourモジュールの発売予定があるようです。
・Eisen Audio
・Louder Than Liftoff
・TB Audio
・AC Sound
・Big Bear Audio
・THD Industries
・XQP Audio
・Bearcat Audio

アナログ・ハードウェアーでしか体感できない「アナログ質感」は、近年ますます再認識されてきているようです。”warmth” “color” “mojo” “goosh”などの言葉で表されるアナログハードの個性的なサウンド、美しい倍音、真空管やアナログテープのソフトクリップはソフトウェアやデジタルシミュレートでは決して再現しきれないオーガニックなものであり、レコーディングという文化の重要な財産でもあります。これだけデジタルが普及した今でもあらゆるメーカーがソフトウェアでそれを再現しようとしたり、ユーザーが「そのサウンド」を求めているのは、「そのサウンド」が普遍的な魅力を持っているからに間違いありません。
そんな中でAPI500フォーマットの全盛期にタイムリーに発売される「DIY RECORDING EQUIPMENT」の“COLOUR”は、気軽に、しかも本物のアナログサウンドの質感を楽しみたいクリエイターには最適なのではないでしょうか。