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Interview column インタビュー&コラム

Chase Blissスペシャルインタビュー!: 株式会社スクウェア・エニックス 鈴木 光人様、土岐 望様

Chase Blissインタビュー!: 株式会社スクウェア・エニックス 鈴木 光人様、土岐 望様

RPGとして1997年に発売され伝説的にヒットした『FINAL FANTASY VII』。そのリメイク版となる『FINAL FANTASY VII』リメイクプロジェクトの第2作目、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』が、2024年2月に発売されました。全世界が注目する今作の音楽制作に携わったのが、スクウェア・エニックス所属の鈴木 光人氏土岐 望氏です。

実は両氏ともChase Blissのファンで、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』の音楽制作においてChase Blissの製品が活躍したとのこと。愛用のChase Blissデバイスの使用方法や魅力、更にまだ未体験のChase Bliss製品を試していただき、インプレッションを伺いました。

鈴木 光人(すずき みつと)
スクウェア・エニックス サウンドディビジョン コンポーザー
『ファイナルファンタジーVII』リメイクプロジェクト、『スクールガールストライカーズ』などを担当。音楽専門誌での機材レビュー執筆や舞台音楽の制作にも携わっており、多方面で才能を発揮している。
http://blog.jp.square-enix.com/music/cm_blog/suzuki/

土岐 望 (とき のぞみ)
スクウェア・エニックス サウンドディビジョン プロジェクトマネージャー
『ファイナルファンタジーVII』リメイクプロジェクトではマネジメント業務に加え、メロディメイクやコーラスアレンジ等のBGM制作にも関わっている。アンビエントでノイジーなギターをこよなく愛する。

まずは今作の音楽制作で使用したChase Bliss製品について教えて下さい。

鈴木: 使用したのはMOOD (MKI)、Reverse Mode CGeneration Loss MKIIですね。その中でもMOODは出番が多く、土岐のギターはもちろん、テルミンやエレクトリックカリンバ、パーカッションにも使いました。明確なパートやフレーズを演奏するのではなく、自由にジャムりながら素材を集めていく場面では、MOODを常に使っていたと思います。

土岐: 私が弾いたノイズやアンビエント系のギターでも、MOODはかなり活躍してくれました。思いがけないものが出てくるので、それにインスパイアされてプレイする場面も多かったです。エフェクトとして存在感があるので、例えば「ギ族の里」や「ゴンガガの森」を聴いていただけたら「MOODだ!」ってすぐに分かると思います笑。

ゲーム楽曲制作時の様子。

鈴木: Reverse Mode Cはシンプルにリバースとして、音をひっくり返したいときに使いました。最終段に置いて、今までの音を丸ごと加工する感じですね。カリンバとの相性が良かったです。

鈴木: そしてGeneration Loss MKII、これは他の2つと違って、レコーディング時にというよりは、録った音を更に汚して加工するような、ポストプロダクション的に使いました。今まではプラグインを使うことも多かったのですが、使うモノが決まってくると音がある程度予測できてしまって。目的がはっきりしていればそれでも良いんですが、今回はデバイスを直接手元で弄りながらのインスピレーションや、偶然できるかっこいい音に期待しました。ワウやフラッターでのピッチの揺れ方もとても優秀だと思います。あとはテープストップの機能がお気に入りで、土岐のギターを録音中に頻繁に入れました。さすがに入れすぎちゃって編集ではカットしたんですが笑、素材として全て保存しています。

ゲーム楽曲制作時の様子。

土岐: 今作の制作では偶然生まれるかっこいい瞬間を狙ったりして、2-3回サウンドチェックしたら後は一発でずっと録りっぱなしなことも多かったんです。なるべく練習しないで、と言われてました笑。そういった背景にChase Blissの偶発性が高いコンセプトがマッチしたんだと思います。有機的な手触りもあるから、エレキギターはもちろん、アコースティック系の楽器とも相性が良かったです。

制作で使われたスティールタングドラム。

ありがとうございます!今日はお二方が気になるChase Blissペダルとして、MOOD MKIIとLossyをお試しいただきました。どんな感触でしたか?まずはMOOD MKIIから。

鈴木: 音出しした瞬間に感じられたのは、音の良さ。先代のWetセクション、特にリバーブの音はヤマハの古いデジタルリバーブ的な靄っぽさがあってそれも魅力だったんですが、MKIIはハイファイにも振り切れて、真っ当に音が良くなったと思いました。あとは何と言ってもステレオ対応。これを本当に待ってたんですよ。今までは後段でステレオディレイをかけたりして、無理やりそれっぽくしてましたが、MKIIはパンニングとかちゃんとステレオ感があって気持ち良いです。

土岐: ステレオにならないかな~ってずっと話してましたよね。ドラムやボーカルにかけてみても面白そう。ユーザーの声を取り入れつつブラッシュアップされているけど、先代のサウンドに戻る機能をちゃんと入れているのも好印象でした。こういうモノって旧モデルのほうが良かったのに、みたいなこともたまにありますもんね。

鈴木: 他のデバイスはプロジェクトごとに色々入れ替えるんですが、MOODは常に外れがないというか、まず一番に試してみるデバイスなんです。以前はグリッチやグラニュラー系のプラグインも使っていましたが、デジタル感や無機質な感じが飽きちゃうこともあって。それがMOODだと、かなり音楽的。ノイズも通すだけでずっと聴けてしまう。どんな音源でもすごく面白い質感を付与してくれて、代えがきかないのでずっと愛用しています。MKIIではユーザーのリクエストを元にアップデートしたとのことですが、まさに痒いところに手が届くような嬉しいポイントが満載です。

鈴木: クロックを下げたときのノイズが消せるようになったのも良いですね。自由度が広がって、実験ツール的な面白さが格段に増したと思います。ルーパーセクションでオーバーダブもできるようになったのも嬉しいです。今まではDAWに一度取り込んで重ねたりしていましたが、より直感的になったと思います。

鈴木: エフェクトペダルって歪み、コーラス、ディレイ、リバーブなど分類がありますよね。MOODは、そのどれにも属さない「MOOD」っていうジャンルを作り上げてしまったと思います。

どんなユーザーさんにオススメでしょうか?

鈴木: 僕みたいに変わった音を探している人には間違いなく薦められます。あと良い意味で固定概念に縛られないサウンドを求めている人に試して欲しいですね。一般的なユーザーさんには少し複雑に見えて、そもそも何ができるのかわからないイメージもあるかもしれません。とにかく1回試せば、そこでハマるかハマらないかが瞬時にわかるはず。用途を限定せず、あらゆる楽器や音源に使って欲しいですね。エンジニアさんが秘密兵器的に使ってもすごく面白いと思います。あとはステレオ対応なので、システムの最終段にとりあえず入れちゃうのもアリだと思います。それこそPCやMACの出力に直接挿したり。

土岐: 意外と難しくなくてルールもなく、音楽として成立してしまうというか。なんなら楽器がちゃんと弾けなくても、MOOD自体でかなり音楽的に展開できてしまうので、初めてのエフェクターがMOODっていうのも、尖ってるけどあながち無しではないと思います。

続いてLossyはいかがでしたか?

鈴木: 実は最初アナウンスされた時点では、どういう効果を与えるエフェクターなのか未知だったのですが、実際触ってみるととにかくヤバい音でした笑。MOOD MKIIも特化したデバイスですが、Lossyはもうそれ以上で最高。1990-2000年代のデジタルローファイとのことですが、確かにその時代ってチープなレゾナンス感やフィルターなど、すごく独特ですよね。半ば忘れていたけど確かに存在していた音、それを想起させる懐かしさがあります。劣化系でも、Generation Loss MKIIとは全く違う方向性。どうしてこの音を作ろうと思ったんだろう?と、またChase Blissが大好きになってしまいました笑。

土岐: 特定のサウンドというより、あの頃の「雰囲気」そのものという感じですよね。かなり幅広いのに、出てくる音全てがとってもチャーミングで、ちゃんとLossyの音になっています。モデム通信みたいなピコピコ、水の中みたいなコポコポ、更にグリッチしたり、レズリースピーカーみたいなうねりもあったり。当時、この音は「不要なノイズ」として扱われることも多く、決して歓迎されていないものだったと思うんですけど、Lossyの音はすごく心地よいです。

鈴木: フィルターセクションが充実していて、ここがキモだと感じました。ギター系エフェクトだとフィルターって珍しいけど、制作で少しローカットしたい場面などでは、あったら便利なんです。幅が広いので、補正にも大胆な表情付けにも使えますね。あとはフリーズ機能、特に音が変化し続けるフリーズは、現在のフレーズになにか新しい要素がどんどん足されるのが興味深いです。

鈴木: ドラムマシンと組み合わせたときは「来た!」って思いました。スネアとハイハットがメタリックかつレゾナンスが効いた質感になって。さっきのフリーズが、いろんな要素を付与してくれるけど、全然邪魔にならない。Aphex Twinが当時ふんだんに使ってた、過剰なタイムストレッチ的な、まさに「あの音」。これはすごくかっこよかったので、ぜひ実際に試して体験してほしいですね。

使い方のアイディアは浮かびましたか?

鈴木: Chase Blissらしくかなり飛んでますけど、MOOD MKIIと同様に、すごく音楽的な感触が保たれていると感じました。ハマる人はとにかくハマって、インスピレーションを掻き立ててくれる音だと思います。僕はとても気に入りました。ギター、ドラムマシン、シンセなど使う楽器によってガラッと雰囲気が変わるので、色々実験してみるのが楽しみです。2mixをそのまま突っ込んで丸ごとこいつの色にしてもいい。エレクトロニカとかには抜群に合うと思うし、入力した音を矩形波のような音色にもできるので、レトロゲームっぽい雰囲気を出したい時などにはバッチリだと思います。あとは、これでギターソロなんか弾いたら面白いんじゃないかな。

土岐: 実際触ってみると、出てくるサウンドの幅広さに驚きました。でも、その全てがちゃんとLossyの音で、嫌な音が一個もなかったです。ローファイだけどどこかポップなので明るい雰囲気でもいいし、前段に歪みをいれると壊れたFAXみたいになるので、ポストロック的な雰囲気で使っても良いと思います。何より設定によって音がどんどん変わるのが生き物みたいで、段々可愛く見えてきて。あとは、ロボットや機械のSEなども制作できそうだと思いました。

ずばりChase Bliss製品の魅力はなんでしょう?

鈴木: 予測がつかなくて、予想を超えてくる所。パラメーターの相互作用が化学反応のようで、どんどん惹き込まれます。使い込むうちに好みの方向がわかってくるけど、まだ驚かされる。でも制御は完全にできるという感覚もあるんですよね。そのバランスがとにかく絶妙で、何かフレーズを作るとき、自分の中に無いものをこいつらに任せられるんです。それは制作で使った3機種はもちろん、今回試したMOOD MKIIとLossyでも強く感じられました。あと多くのChase Bliss製品で言える事ですが、背面のディップスイッチでパラメーターのカスタマイズができるのもポイントが高いです。MOOD MKII だとCLASSICモードに切り替えもできますし、ユーザーライクで好感が持てます。STOMPペダルは沼とも言える特有のロマンがあるのですが、フィジカルな操作性と気持ち良さがChase Blissの魅力と言えるでしょう。土岐とも話していたのですが、ついツマミを触りたくなってしまうので、演奏しながら1人では手が足りないのですけどね(笑)。間違いなくこれからの制作で活躍してくれるはずなので、とても楽しみです。

土岐: 制作においてインスピレーションの源になってくれる所がすごく好きです。各ペダルのコンセプトがしっかりとあり、その思想に沿って過剰になりすぎない絶妙な範囲の機能が備わっているので、作りたい楽曲の方向性はズレることなく新しい発見を常にもたらしてくれるのが魅力だと思います。使っていて本当に楽しいと思えるし、いざという時には奇想天外な音やフレーズで助けてくれる心強さもあるので(笑)、ペダルボードに1つは入れておきたいブランドだなと思います。

ありがとうございました!ぜひ末永く愛用いただけたら嬉しいです。

★FINAL FANTASY VII REBIRTHページ
https://www.jp.square-enix.com/ffvii_rebirth/

★Chase Blissブランドページ
https://umbrella-company.jp/brand/chase-bliss/

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