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オリジナルのAuratone 5C "Super Sound Cube" リファレンスモニタースピーカーの登場は1958年まで遡ります。4.5インチのドライバーを備えた、この小さな立方体のスピーカーは、オーラトーンの創立者ジャック・ウィルソンのデザインによるもので、1960年代、1970年代、1980年代と長い間にわたり販売されてきました。
このスピーカーの特長は他のモニタースピーカーとは異なっていました。録音スタジオや放送局の多くのモニタースピーカーが広いレンジを持ったHiFiなモニタリングスピーカーを導入していましたが、特に1970年代、1980年代のスタジオの写真を見ればわかるように、多くの(そのほとんどの)スタジオにはAuratoneの5C Super Sound Cubeがコンソールの上に鎮座していました。
このスピーカーは特定の帯域の再生能力に抜群に優れ、完璧なドライバーと密閉型のエンクロージャーによって、ミックスがAMのカーラジオやテレビなどから、どのように聴こえるのかを正確に再現しました。またボーカル帯域の正しいミックスバランスを知ったり、ラージモニターとの切替えを行いながらミックスを行うエンジニアも多くいました。特に有名なレコーディングとしてはマイケル・ジャクソンの「スリラー」のミックス作業、当時はAuratoneの広告塔としてあのクインシー・ジョーンズが起用されていたことなどからも、当時のAuratone人気がうかがえます。
以前、Auratone創立者の孫のアレックスが来日した際に、彼が見つけた当時(おそらく1980年代初頭)の資料の事を聞きました。その注文台帳にはとにかく日本への出荷記録が多かったそうです。アメリカへの出荷台数も相当なものだったそうですが、日本への出荷台数もそれに迫るほどで、「こんなに小さな街のどこにそんなにスタジオがあるのか!」と不思議に思ったそうで、「東京には業務用のモニタースピーカーを設置するようなスタジオは何か所あるのか?」としつこく聞かれた思い出があります(笑)。
しかしながら1980年代後半以降は、テレビやカーステレオのサウンドも向上していき、Yamaha NS-10 が小型リファレンス モニターの標準になったため、Auratone 5Cスピーカーは徐々に使用されなくなっていき、最終的には人気を失い、この優れたスピーカーは生産が完了し、Auratone自体も休眠状態となったのです。
しかし2015年、創立者の孫であるアレックスとその家族によって、Auratone "Super Sound Cubes"は突如復活を遂げました。iPad、スマートフォン、コンピューター用のスピーカーなどの急成長による需要も見込まれましたが、この音響的に優れたスピーカーは充実した音楽や映画のミックス確認用モニタースピーカーとして正にフィットしました。5Cスピーカーはミックスの正確さを判断し、その精度を高められると、多くのサウンドエンジニアがその素晴らしさを再確認したのです。
その後、5C Super Sound Cubeは、瞬く間に新世代のスタジオユーザーのなかで輝きを取り戻しました。すでに同じようなコンセプトで5Cを模倣した製品もありましたが、歴史と伝統のドライバーユニットは多くのサウンドエンジニアやミュージシャン達を再び虜にし再評価を得ました。
5Cスピーカーは近代のアクティブ・モニタースピーカーと異なり、パッシブであったため、スタジオでは一度はしまい込んでしまった(または廃棄してしまった)パワーアンプをもう一度引っ張り出す必要がありました。もちろんアンプとスピーカーの相性や接続性も検討しなくてはなりませんでした。そしてそこに目を付けたアレックスはAuratoneスピーカーの性能を100%引き出せる純正のパワーアンプの開発に取り組みました。私が最初にそのアイデアを聞いてから数年後にA2-30アンプが発売されました。
気鋭のプロオーディオブランド Bettermakerが全面的に協力して、本当に最高のパワーアンプが開発されました。Auratone A2-30 は、チャンネルあたり30Wのシンプルなステレオアンプで、このアンプの発売によって5Cスピーカーをメーカーが考える最高のリファレンスサウンドで鳴らすことができるようになります(もちろん他の小型リファレンスモニターにも最適なパワーアンプです)!
2016年にはNAMM TEC AWARDにてAuratone 5C Super Sound Cubeが Hall of Fame(殿堂入り)を果たし、プロオーディオ機材の伝説になりました。さらには2020年のTECH AWARDではA2-30パワーアンプがAmplification Hardware部門で見事にアワードを獲得!見事な完全復活を遂げ、さらに進化を続けるAuratone社の存在感を証明しました。
創業者ジャック・ウィルソンによって 1958年に設立された Auratone社は、50年以上にわたって家族経営であり、音楽およびレコード業界の品質のスタンダードになっています。 ジャックは、カリフォルニア州チュラビスタのガレージから会社を始めましたが、現在ではオフィスをカリフォルニア州からテネシー州ナッシュビルに移し、今も家族経営を続けています。 オーラトーン製品は、最高の品質を保証するために、ナッシュビルのファクトリーですべて手作業でくみ上げられ、テストされています。創業者のジャックがかつて言ったように、「量のために質を犠牲にすることは決してない」という言葉を守り続けています。
現在は孫のアレックスがチームを率いて、ジャックが当時のレコード業界に残した大きな功績を、今後も引き継ぎ、さらに良い製品開発を続けていきたいと考えています。
デジタル全盛の新世代においても、普遍的なサウンドの良さをアピールしたAuratone社の素晴らしい製品をどうぞご活用ください。