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Recording プロオーディオ

GRACE design REX ROXi レビュー | エンジニア Kensei Ogata 様

REXとROXiは可能性を広げるマイクプリアンプ

最も表現性に優れ、プロフェッショナルからの信頼も厚いGRACE designのマイクプリアンプ。これをコンパクトなペダル筐体に落とし込んだのがGRACE designのREX、そしてROXiです。ラックタイププリアンプのクオリティはそのままに、FXループなどの機能性を加えたことで創造性を拡大。そのサイズ感故にステージでもスタジオでも活用することができる、様々な面で可能性を広げるマイクプリアンプです。

今回はそんなREXとROXiを、エンジニアとして活躍するKensei Ogataさんにレビューしていただきました。アーティストとしての側面も持つOgataさんによる、REXとROXiへの多角的な感想をたっぷりとお聞きすることができました。

Kensei Ogata

ポストロック・バンド、talkのフロントマンとして活動をスタート。レコーディングやミックスも自ら行ない、並行して活動していたソロ名義などでは全ての楽器も演奏して録音もするようになる。様々なバンドのレコーディングやミックスも手伝っているうちに現在はフリーランスの音楽エンジニアとして活動中。ソロ名義での音楽活動やケーブル・ペダルなどの機材製作も行なっている。

https://twitter.com/CuddlyDominion

"ラックのプリアンプと変わらないところまで来ている"

最初に、今回はROXiをどのようなセッティングでお試しされたのかお聞かせください。

まずマイクは、ダイナミックマイクの中でもプリアンプ側での出力が必要で、プリアンプ側のキャラクターが影響しやすいShure SM7Bを選びました。比較対象は、普段使用しているLupert NEVEが監修した90年代のマイクプリアンプ、AMEK9098 EQを使用しています。

まずは声でお試し頂きましたが、ペダルサイズのROXiはラックタイプのAMEKと比較していかがでしたでしょうか?

まずROXiは歪がかなり少なく、クリアな印象を受けました。楽器や声の質感や空気感をそのまま出してくれると思いましたね。AMEKはNEVE系の中ではクリアなプリアンプと言われてはいるものの、中域のハリや歪っぽさなどの癖はあって、その点ではROXiと大きな違いが出ました。GRACE designのクリアな音のイメージがそのままROXiからも感じられるという印象です。

倍音を付与するNEVE系のプラグインも使ってみたのですが、そのクリアさ故にエフェクトのノリも良かったです。録った後で色々とサウンドを変えられるという点でも、クリアに録れることの価値はあるのかなと思います。

コンデンサーマイクのAKG C414(トランスレスモデル)でもROXiを試してみました。印象はやはり変わらず、レンジ感や反応の良さ、エア感もしっかりあるといった感じで、クオリティは本当にラックのプリアンプと変わらないところまで来ていると思いました。ブーストも十分に音量を稼げますし、S/Nもかなり良いですね。

アコースティックギター(マイクはShure SM57)でもROXiをお試し頂きましたが、こちらはいかがだったでしょうか?

AMEKは中域にガッツがあって詰まった感じもあるのに対して、ROXiはクリアでエアー感も感じられる他、レンジも広く情報量も十分にある印象でした。後で色付けするのにも困らなそうな上に、ラックのマイクプリと全然遜色ないです。その点ではエンジニアさんの持ち込み機材としても良いですし、アコギのソロとかを弾かれる方にもすごくいいんじゃないかなと思います。

サウンドチェック中のGRACE design ROXi

"あると無いのとでは全然違います"

ここからはROXiの機能性に関してお聞きしたいと思います。まずEQセクションはいかがだったでしょうか?

まずLOWは125Hzとお聞きしていたのですが、フルアップでももったりせず、ローのエア感が出てくる印象です。100-120Hzぐらいからふんわりローを持ち上げることで、ボーカルなどの存在感や太さを出すのはよくするのですが、それが普通にできちゃってますね。AMEKのような詰まった感じも出てきます。HIGHは上の方から徐々に上がっていく感じで、とても自然な印象ですね。ちょっと上げるとリッチで気持ちいい感じがします。

MIDに関しては、これがあるとやはり便利だと思いますね。シチュエーションにあわせて膨らみすぎた所をカットしたりとか、ちょっと抜けさせたり出したりすることができるので、あると無いのとでは全然違います。HIGHとLOWに加えてもう一匙、MIDで何かできるのは便利ですね。

EQを全てフラットにしたときはどうだったでしょうか?

EQをかけなくてもバランスは良いです。EQありきで成り立っているプリアンプではないなと思います。プリアンプのクリアなサウンドに対してEQには少しキャラクターがあるので、味付けをしたり質感を調整する時に便利だと思いました。

ROXiには低・高域のブースト/カットに加え、中心周波数が可変のMID EQが備わっている。

ボーカルにこそ合うペダルなどの発見も出てきそう

次にROXiのセンドリターンについて、Chase Bliss MOOD MKIIなど色々なペダルを繋いで試して頂きましたが、いかがでしたでしょうか?

アコギやボーカルをエフェクトに通したい時、普通だと一度録音したものをインピーダンスを下げて出力し、それを録音し直す必要があります。どこかで回線を分岐させるなど手間がかかる一方で、ROXiはFXループにまわしちゃえばできちゃうので、とても楽ですね。その上、エフェクトの感じとかをリアルタイムで決めながら進められるので、行程が一気に省けるのも助かります。

特にMOOD MKIIなどのインスピレーションが重要なペダルは、歌ったり演奏したりしながらリアルタイムで触れるというのは大きいと思います。

最近エフェクトにこだわってボーカルエフェクターを持参する人も増えてきたのですが、音質の面の担保はそういった機材にはあまりないとも言えますよね。そういった人にもROXiは良いと思います。ROXiはレコーディングスタジオのクオリティをステージに持ち込める上に、エフェクトも好きに選べるのは魅力ですよね。

Old Blood Noise Endeavors BL-44もお試し頂きましたが、ボーカルでも相性は良かったですね。

そうですね。そういったエフェクティブなペダルを、ギターだけでなくボーカルやサックスなどでも使えるのは興味深いですよね。ボーカリストがエフェクターボードを組むとかも面白そう。シンプルな歌声にプラスして、ROXiならバンドのアレンジにかかわるようなエフェクティブなこともできる。アートですよね。

それにアナログディレイなどボーカル向けの機材が少ないエフェクトでも、ギターペダルが使えると選択肢が増えて楽しいと思います。やりたい事とかも叶うんじゃないかなと思います。

最後にMXR Carbon Copyもボーカルでお試し頂きましたが、ギターでの使用よりワイルドな印象でした。

そうですね。ギターアンプのスピーカーは実はナローで結構色付けもあるので、こういった使い方をすると実は10kHz以上にも音が伸びていたり、まったく別の印象を受けることはあると思います。エフェクターの可能性も広げられると思いますし、ボーカルにこそ合うペダルなどの発見も出てきそうですね。

ここまでいろいろなペダルをROXiで試して頂きましたが、DAW上でエフェクトをかけるのと、ペダルなどのハードウェアで掛け録りするのでは何か違うのでしょうか?

ハードウェアのエフェクトはプラグインが進化しても替えが効かないことがあったり、プラグインが綺麗すぎてなじまないこともあるので、そういった際にラックのリバーブなどを使用することはあるんですよね。ギターペダルも音質は上がってきているので、そこで同じようにギターペダルを使うという選択肢もでてきています。ROXiならそれが簡単にできるというのは利点だと思います。

REX・ROXiなら、無類の創造性を持つChase Bliss MOOD MKIIとアコースティックギターの組み合わせも。

"REXが9Vで駆動しているのはすごい事だと思います"

ここからはROXiとREXを比較しての感想をお聞きできればと思います。REXの音質はいかがでしたか?

REXはROXiに対して、歪っぽいとまではいかないものの少しヘッドルームが狭く、クリアさという点ではROXiの方が上だと思います。一方でそのヘッドルームの狭さ故か、ローミッドの押し出し感が感じられて、REXの方がちょっとガッツがあるような印象も受けます。ゲイン感の物足りなさも感じないので、これも選択肢として、特にステージでの使用はアリだと思います。

またROXiが100V以上の電源が必要と考えると、REXが9Vで駆動しているのはすごい事だと思います。ボーカル用にペダルボードを組んで持ち運びたい人にとってはありがたいですよね。ガッツ感を感じた原因はこの電源の違いにもあるかもしれません。

REXのEQはMIDが省かれているのですが、このEQはいかがでしょうか

EQはROXiと比べてもそんなに違いはなかったので、REXとROXiは使用用途や、マイクプリ自体のキャラクターで選んでも良いと思います。後で何でもできるのはどちらかというとROXiだと思いますが、REXのキャラクターが好みであればどちらのシーンでも使えると思います。

GRACE design REX(左)とROXi(右)

"自分で全て完結できるんです"

今回はROXiとUmbrella Company Active Mic Cableの組み合わせも試して頂きました。こちらはいかがだったでしょうか?

まずActive Mic Cableについて、最近はボーカルのレコーディングでUSA製のShure SM58にActive Mic Cableの組み合わせを使う機会が増えてきています。本来はコンデンサーを使いたい場面ではあるのですが、ボーカルの声量があって歪みやすい時や、U87などの上のチリっとした部分を嫌うボーカルも多いんです。それでも太さとレンジ感が欲しい時にこの組み合わせを使うと、一発で良い感じになります。

100万くらいするビンテージマイクに肉薄するような音になってしまうので、「こんなことがあってもいいのか…」と思いながら最近は作業してます(笑)

そんなActive Mic Cableも、ファンタムを出せるREX・ROXiなら使用することができるのは大きな利点だと思います。僕はステージでもActive Mic Cableを使ったら良いと思ってて。PAさんにお願いしなくてもファンタムが出せて、エフェクトまで自分で制御できて、自分で全て完結できますよね。

マイクを持参するボーカリストが増えてきていると思うので、音質面にこだわった選択肢としてこの組み合わせも良いんじゃないかなと思います。Active Mic Cableならコンデンサーに匹敵するレンジ感をダイナミックマイクで実現できると思っているので、これがステージにも持ち運べるというのもREX・ROXiを推したい点の一つですね。

Ogataさんお気に入りの、マイクのダイナミックレンジを拡張するActive Mic CableとSM58の組み合わせもROXiでチェック。

"痒いところに手が届くなという印象"

ステージに持ち運べるというお話が出ましたが、REX・ROXiのコンパクトさについてはどうでしょうか?

ラックのプリアンプは可搬性が悪く、ラックケース自体も重く大きくて、持ち運びがかなり億劫なんですね。それもこのサイズ感ならペダルボードやギグバックにも入りますし、それでいてラックレベルのクオリティというのすごい事なのではないかと思います。ステージはもちろん、リハーサルスタジオで録音する際にも持ち運びやすいくて良いですね。そういった機会の多いアーティストの方にお勧めしたいです。

次に接続に関して、先程エフェクトが掛かった音とかかっていない音を同時に録音されていたと思います。どのように接続されていたのでしょうか?

ROXiのFX Sendからペダルに繋ぎ、そのエフェクトが掛かった出力をFX Returnに戻さずに、D/Iやインターフェイスに出力します。そしてROXiのD/I OUTからも出力すると、エフェクトが掛かった音と同時に、エフェクトが掛かっていない音も録音することができました。

D/Iとかがあると良くやる手法なのですが、これができるとDAW上でエフェクトの具合を調整することができるようになるんですよね。プレイバックをよく聞いてから後で調整することができるので、ROXiに関してはこういう使い方も良いと思います。

その他の機能で良いと感じた機能があればお聞かせください。

ギターエフェクターは位相の事を気にしていない設計のものも多いので、位相反転スイッチがあるのは助かります。また、ROXiが9Vか12Vで500mAまで電源供給できるのも良いですね。別でパワーサプライを用意する必要もなくなるうえに、使うことの多いであろう空間系エフェクターなども500mAあれば足りなくなることは少ないと思います。ハイパス・ローパスもローの回りなどステージでの問題に対処できるので、痒いところに手が届くなという印象です。

ROXiは接続に関しても柔軟で、拡張性を持ったデザインになっている。

「これ買ったら正解じゃないですか」

仮にOgataさんがROXiを使うとしたら、どのような用途で使いたいでしょうか?

自分ならレコーディングスタジオやリハスタなどでプリプロをする際に、可搬性の高いマイクプリとして持っていきたいです。ボーカルやキック、スネアとかに使っても良いと思います。

加えて、自分が演者としてステージで演奏するときにも持っていきたいですね。他の人よりも音質面でかなり有利になると思いますし、好きなマイクとActive Mic Cableという、自分の好みの組み合わせをステージで実現できるのも大きいなと思います。

最後に総括として、Ogataさんならどのような人にREX・ROXiをお勧めしたいでしょうか?

まずはステージでも、宅録などレコーディングでも、とにかくマイク録りの音にペダルをかけたい人にはお勧めです。ボーカルはもちろん、マイク録りの楽器演奏者にも合うと思います。

また、REX・ROXiはFXセンドを使わなくても、ステージ上で使えるプリアンプとしてかなり質が高いです。

ライブハウスのミキサーの音質は、音を大きくして遠くに飛ばすことを目的としている分、音の密度感などはあまり考えられていない傾向にあります。そんなステージでも音源のように、密度感やリッチさなどの音質面にこだわりたい人にとって、可搬性の高いREX・ROXiはかなり良い選択肢になると思います。

確かに、スタジオでも宅録でも、そしてステージでも一定の音質が担保されるのは大きいですよね。

そうですね。「家の環境でステージに立ちたい」という方もたくさんいると思いますし、実際そこでモニターのしやすさ、演奏のしやすさもかなり変わってくると思います。

普通ならマイクプリアンプは家でしか使えないので、持ち運ぶ用に別のマイクプリを買ったり、エフェクトを掛けたいとなったら新たに機材を足したりしますよね。それがREX・ROXiなら一台で済みます。加えてラック並みの音質が担保されていると考えると、「これ買ったら正解じゃないですか」という気持ちはありますね。

ありがとうございました!

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