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Interview column インタビュー&コラム

29 Pedals ブランドヒストリー&"EUNA"& "OAMP" 解説インタビュー(完全版)

29 Pedals ブランドヒストリー&"EUNA"& "OAMP" 解説インタビュー(完全版)

 

米国ロサンゼルス発のエフェクターブランド"29 Pedals"。ペダルブランドとしては新興ですが、考え抜かれた設計とセンスから生まれる最高のトーンに世界中が注目、瞬く間にトップブランドの仲間入りを果たしました。ブランド主宰のJesse HonigはレコーディングやPAにエンジニアとして関わりつつ、Manlay LabsやSlate Digitalといったプロオーディオのブランドでも回路デザインに携わった経験があります。サンドエンジニア目線で磨かれた理想のサウンドを実現するデバイスは、ここ日本でも評判が広がりつつあります。

29 Pedalsとしてリリースされた最初の製品はインプットバッファーのEUNA、続いてはアウトプットバッファーのOAMPと、ペダルブランドとしてはかなりユニークです。ミステリアスな29 Pedalsを解き明かすべく、今回はオーナーのJesse Honigにプロフィール、ブランドヒストリー、EUNAとOAMPについてインタビューを行いました。

はじめにお名前と御社での役割・役職を教えてください。
Jesse Honig (以下JS)Jesse Honigです。29 Pedalsのオーナーであり、デザイナーです。

29 PedalsオーナーのJesse Honig。

29pedalsを立ち上げた経緯を教えてください。
JS: 私はレコーディング機器の修理、レストア、モディファイを長年仕事としてきました。私の最初のキャリアはオーディオエンジニアとして始まり、レコーディングスタジオでの機器メンテナンスが主でした。その後の興味は新しいギアの設計に傾いていき、スタジオでの仕事を離れLAのオーディオ機器メーカーで働きました。そこでマニュファクチャリングを学び、オリジナルの回路設計を始めました。まずはペダルのパワーサプライを設計し、その後私がギタープレイヤーやエンジニアとして感じたニーズを元にEUNAに取り掛かりました。いくつかのプロトタイプをエンジニアやギタリストに渡したところかなり好評だったんです。そのシャーシ設計を完了したころが29 Pedalsの始まりと言えるでしょう。
29pedalsというブランド名はとてもユニークに思います。何か特別な由来があるのでしょうか?
JS: 私とパートナーの小さな砂漠の牧場がある、カリフォルニアの29 Palmsという地名から来ています。とても開放的で自然に近い場所です。私のインスタグラムでその美しい景色を見ることが出来ます。工房で長く作業をした後は、そうしたアウトドアが心を落ち着かせてくれるのです。また私がデザインしたパワーサプライは29ボルトの電圧振幅があり、砂漠に広がる大空のような開放感と高いヘッドルームを備えています。

あなたの音楽的なバックグラウンド(好きなミュージシャン、愛用しているエフェクターやアンプ)を教えてください。
JS: 私は素晴らしい音楽の伝統を持つフィラデルフィア出身で、もちろん家族もみな音楽が大好きだったので、常に多くの音に囲まれて育ちました。ラジオからは常にモータウンや50年代のR&Bが流れ、それらが最初のお気に入りでした。好きなアーティストは、リトル・リチャード、ハウリン・ウルフ、ニール・ヤング、トッド・ラングレンですかね。もちろんビートルズやトーキング・ヘッズも大好きです!この世界は素晴らしい音楽で溢れています。最近ゲットしたハリソン・ウィットフォードの新しいレコードも最高です。メイソン・ストゥープスとアダム・レヴィの"Kibi Dango"という新譜もよく聴いています。好きな音楽の話は永遠にできてしまいますね。笑

機材に関しては、強迫的と言えるほどのコレクションがあります。50本近くあるギターの多くは私が改造したものですが、Guyatone LG-60、Silvertone 1446と1420、Geminiピックアップを搭載したRickenbacker 330はフェイバリットですね。Alex FinkによってリフレットされたTeisco EP-90Tも最高です。 お気に入りのアンプは古いTraynor Guitar Mate YGM-3です。多分1974年製かな。私はクリーンなサウンドを好むので、周波数レスポンスを拡大するため改造しています。よりローゲインな真空管へ変えたり、特別な設計のリバーブタンクへ交換したりとか。

ペダルとなると難しいですね。Frantone期のビッグマフをずっと使っていて、最高にインスパイアしてくれる機材だと感じています。Sound Lad Liverpoolによる2つのペダル、ScranとHungry Beaverもグレイトですね。EAE Hypersleepもこれ無しでプレイするのは考えられないくらい気に入っていて、2つ持っています。

29 Pedalsの最初のラインナップはバッファーペダルでした。つまり、ギター・サウンドにおいてバッファがとても重要であると考えているのだと想像します。バッファに関してのお考えを教えてください。
JS: バッファは非常に重要なのに、軽視されがちな部分であると感じます。29 Pedalsのペダルは、従来のバッファに置き換わって最適に動作するよう設計しています。バッファリングとは、どんな回路であるかだけでなく、回路がどのように働き周りに影響するかを考える必要があるのです。EUNAとOAMPはデュアルステージ・アンプリファイア回路を備え、従来のバッファよりも優れた性能を発揮するよう設計されています。例えば、ペダルボードを大きなモジュラー型のチャンネルストリップと考えると、インプットとアウトプットドライバーは非常に重要でしょう。インプットドライバーは信号を極めて高いインピーダンスにしつつ、アウトプットドライバーはローノイズかつ低いアウトプットインピーダンスへ信号を変換します。従来のバッファの多くはこれらの役割がシンプル過ぎて、ヘッドルームが低く、位相レスポンスが変なものも多く単純に音が良くなかったのです。それらをたくさん並べると、本当に多くのテクスチャとトーンが失われていきます。EUNAとOAMPは、すべてのペダルボードの入り口を出口を整えるのが目的です。幸いこの2つはとてもうまく行ったので、今後は他の種類のペダルにも取り組んでいきます。

あなたが考える「最高のサウンド」とはどのように達成されますか?
JS: 最高のサウンドに最も大事なのは、「聴く」ことです。セットアップを構成する要素すべてが重要です。一つの要素はまるでウサギの穴くらい深いので、一つずつ対処していく必要があります。可能であれば、時間を掛けて異なるピックや弦を注意深く研究してみてください。見過ごされがちですが、それらは本当に大きな違いを生みます。 ギターセットアップおいては、それらがすべてインタラクティブ(相互に影響する)であることを忘れてはいけません。指からアンプ、そしてレコーディング処理におけるまで、全てが互いに影響します。私個人に限るなら、ポッティングされていないピックアップを好みます。そして真空管ベースの優れたパワーアンプを他のテクノロジーが打ち負かすのはまだ難しいと感じています。ソリッドステートのフロントエンドと真空管パワーセクションを備えたハイブリッドアンプには素晴らしいものがありますが、ソリッドステートのパワーアンプにはまだ好みのものを見つけられていません。

29 Pedals製品の設計プロセスを教えてください。
JS: 29 Pedalsの製品は、すべて私の個人的なニーズから設計がスタートします。その後私のオーディオエンジニアとしての観点が入り、どんなユーザーにもマッチするようにしていくのです。あらゆるギターやアンプ、他のペダルとの組み合わせも試します。どんな機器にも目的があるので、それらを邪魔していないかを特に重視します。プレイヤー側に任せるのではなく、どんな機材と使っても自分のサウンドにたどり着けるように設計しているのです。そのため特定のプレイヤーや機材の組み合わせはありません。
29pedals製品は、AC電源、DC電源、センター・マイナスやセンター・プラス、7.5〜35Vと様々な形に電源に対応しています。こうした仕様を実装したの理由を教えてください。
JS: ライブツアーでパワーサプライが壊れてしまうことが多くて。特定の物はツアー先で手に入りにくいものもあり、汎用的でフレキシブルなものを作りたかったんです。と、ここまでが表向きの回答で、実際はもっとおかしな話があります。シンプルなバッファステージを持つ初期のプロトタイプを制作しているとき、ギターサウンドにグレイトな耳を持っている友人のJason Loughlinに送ったんです。そのプロトは特別設計の巨大なアウトボードサプライで駆動していて、彼にこれじゃあツアーに持っていけないよ!と言われました。確かにそうだと感じ、そこから様々な電圧に対応するコンパクトなパワーサプライの開発が始まりました。

仕様の異なる複数の電源アダプターで動かしてみたとこころ、どんな電源を使用しても音色に変化がありませんでした。この"WHATEVER"パワー・サプライはどのような仕組みで実現しているのでしょうか?
JS: 仕組みは少し複雑なんですが、シンプルには複数のレギュレータにより常に回路が同じ電圧と電流で駆動してると言えます。どんな電源が入力されても常に同じなので、サウンドは変わりません。
“Euna”、“Oamp”はどちらもバッファにカテゴライズされていて、似たような機能を備えた機材のようにも思えます。しかし、それぞれに用途が異なっているのだと思います。それぞれのコンセプトについて教えてください。
JS: EUNAはインプットドライバーであり、パッシブのギター信号を直接受けるよう設計されています。EQのようなわざとらしい効果ではなく、サウンドのバランスと位相を整えるフィルタリングを提供します。出力インピーダンスは低く、600Ωまでドライブできます。ユニティゲインのため音量の変化はなく、インピーダンス補正とアンプリファイア部分のタイトさのみ、サウンドの変化として聴こえます。

OAMPも同じく600Ωまでドライブできますが、こちらはアウトプットドライバーとして設計されています。最大で30dBのゲインアップでき、また興味深いトーンコントロールも備えます。スイッチは入力と出力ゲインステージを様々な側面から調整し、ゲインの変化に加えてトーンに微細な影響を与えます。プレゼンスはギターアンプのようなミッドスクープを追加するため、ヘタったアンプやモデリングアンプでもトーンスタックの挙動を変化させ、好みのサウンドへ近づけられます。出力は非常にクリーンなので、OAMPを使ってアンプをドライブさせるのもクールでしょう。現代の真空管アンプの殆どは最初の2つのアンプステージの間にボリュームポットがあり、そのため低いボリュームでもハードなドライブサウンドを得られます。OAMPを使えば最初のステージをハードにヒットすることができ、アンプのボリュームでトータルのアウトプットレベルを揃えられます。

“Euna”、“Oamp”基板上のリレー・スイッチは何の目的に使われているのでしょうか?
JS: リレーはトゥルー・バイパススイッチの制御に使われています。特に高インピーダンスシグナルでは、シンプルな機械式スイッチよりリレーのほうがよりクリアで信頼できるコネクションを達成できます。
“Euna”に搭載されている3つのサウンド・フィルターは、具体的にどのように作用するのでしょうか?
JS: EUNAの3つのフィルターは予め固定された帯域に作用し、調整は出来ません。Lはマイルドなローブーストで、異なるピックアップ間でバランスをとったり、サウンドに肉厚感を足せます。Bはギターアンプのブライトスイッチに近いですが、異なるシェイピングが施されています。Hはエアバンド帯を強調し、心地よいハーモニクスを付与します。

バッファの効果に感動して中を見たところ、比較的安価な“TL072”オペアンプが採用されていたので、とても驚きました。特に“TL072”を採用している理由はありますか?
JS: この回路設計ではTL072がベストなんです。TL072の利点を活かすよう特別に設計されているので、高価なチップは必要ありませんでした。TL072は非常にヴァーサタイルで良いサウンドを持っているので、私のデザインの多くはここから始まっています。
“Oamp”は高価なバーブラウン(Texas Instruments)の“OPA2134PA”オペアンプが採用されています。“Euna”と“Oamp”ではどのような意図でオペアンプを使い分けているのでしょうか?
JS: OAMPではOPA2134を使って高い解像度とローノイズを実現しようとしました。OAMPは高いゲインを持つので、アンプリファイア部分のサウンドを研究し、最適なチップを選択したところハイエンドなものとなりました。開発では様々なチップを付け替えて、その都度サウンドを調整します。そのためチップ部分はソケット式となっており、ユーザーもその実験を行えるようにしました。出荷時は私が選んだベストなものが搭載されています。
“Oamp”を使用して音作りをするのは、“Euna”に比べて難しく感じました。“Oamp”を使う上でのコツやセッティングの仕方を教えてください。
JS: まずは2つのアンプリファイアステージをLowにし、Levelは3時、Presenceは12時からスタートしてみてください。その後異なるゲインオプションを試すのが良いでしょう。私は最初のステージはhiにするのが好みです。この設定でのサウンド変化はマイルドですが、更に研究を進めて貴方が好む最適なドライブポイントを見つけてください。
29pedals製品の特徴としてDIYフレンドリーな仕様が挙げられます。“Euna”や“Oamp”のオペアンプの交換をしたい場合、オススメのオペアンプがあれば教えてください。
JS: ほとんどすべてのチップが動作するよう設計しているので、まずは色々実験してみてください。私はFETオペアンプを好みますが、5532や似たようなバイポーラチップも良い結果になります。またOAMPのOPA2134はEUNAへ交換することもでき、大きな違いはありませんが若干硬いニュアンスになります。唯一、単電源のオペアンプはやめたほうがいいでしょう。私は次はADA4062を試してみるつもりです。

29pedalsの製品はユニークなアイディアでありつつ非常に実用的なので、とても好感をいだきました。今後チャレンジしてみたい題材があれば教えてください。
JS: 今後もたくさんのアイディアがあります!いくつかのギターペダル、小型ミキサー、そしてapi500モジュールなど。楽しみしていてくださいね。
最後に日本の29pedalsのファンに向けてメッセージをよろしくお願いします!
JS: 初めまして!日本のプレイヤーに29 Pedalsを気に入ってもらえてとても嬉しいです。今後のリリースもお楽しみに。皆さんの意見を聞くのも大好きなので、インスタグラムやウェブサイトで私を見つけてください。いつか日本に行けると良いな。

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