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Recording プロオーディオ

『FMR AUDIO 世代を超えたアナログサウンドの魅力』
File 01:RNC1773

FMR AUDIOはアメリカ・テキサス州で1997年に設立されたプロオーディオ機器のブランドです。RNC1773(Really Nice Compressor)は、低価格ながら超高品質なコンプレッションを実現する、記録的なロングセラーを続けるステレオ・コンプレッサーです。

この小さなレコーディング用コンプレッサーが、何故これほどまで世代を超えて多くのユーザーを魅了し続けているのか?そして新世代のクリエイターの方々にも、この普遍的な魅力を持つアナログ・アウトボードの素晴らしさを紹介したく、改めてFMR AUDIO製品の魅力に迫る記事をシリーズで展開していきます。

RNC1773(Really Nice Compressor)の魅力とは?

RNC1773(RNCはReally Nice Compressorの略!)はFMR AUDIOブランドとしての最初の製品です。当時199ドルという低価格帯で発売されたにも関わらず、そのサウンドが『2,000ドル以上するハイエンドのスタジオコンプレッサーをも超えている!』と話題になりました。当時私は、米国のレコーディング雑誌での絶賛レビューや、John McEntire(Tortoise)のSOMAスタジオで圧巻のハイエンド・アウトボード群の中にポツンとRNC1773があったのを見て興味を持ちました。RNC1773を絶賛するエンジニアやミュージシャンは国内外で増え続け、あのSteve Albiniをはじめとするプロフェッショナルからも支持されていきました。

RNC1773はデジタルコントロールによるアナログコンプレッサー。プログラムを切り替えることでフルコントロールコンプのお手本のようなスタンダードなNORMALモードと、スーパー滑らかで自然な効きが魅力のSuper Niceモードが選択可能。アナログVCAのゲインリダクションコントロールをデジタル演算により行うRNC1773独自の手法には発売当時ド肝を抜かれたのを覚えています。

設計はFMR AUDIOを主宰するMark McQuilken。現在でも全く色あせる事なくパーフェクトな完成度を誇っています。発売から長い年月を経っている今でもステレオコンプレッサーの定番機種として存在しているなんて、その先進的な完成度の高さに驚かされるばかりです。最高レベルのアナログ回路設計はどれだけテクノロジーが進化しようとも、人間の耳に普遍的な良いサウンドを響かせてくれることを証明してくれる好例だといえます。

↑Steve AlbiniのElectrical Audio Recordingには合計4台のRNC1773がインストールされており公式ホームページにも掲載されている。
https://www.electricalaudio.com/outboard-1/p/fmr-audio-rnc-1773


↓アルビニ自身がRNCを紹介しているEarthQuakerDevices製作のこの動画も必見だ!
https://www.youtube.com/watch?v=NARjalbFQGQ&t=337s

「RNC1773」6つの特長。

1,フルコントロール

RNCには5つのノブ(THRESHOLD、RATIO、ATTACK、RELEASE、GAIN)があります。これはコンプレッサーのコントロールの基本です。RNCではレコーディングにおけるサウンド・コンプレッションの、あらゆるサウンドメイクを実際に体感できます。軽いコンプレッションから、ガッツリとリミッティングしたサウンドまで、コンプレッサーの教科書には必ず載っているであろう全てのダイナミクスコントロールを、どんな音源に対しても実行する事ができます。

コンプレッサーにも様々なタイプがあって、改めて調査してみるとベーシックな構成のコンプレッサーって意外と少ないのかもしれません。THRESHOLD、RATIO、ATTACK、RELEASE、GAINの5つの基本コントロールを駆使して、この後で説明する『スーパーナイスモード』も組み合わせると、RNCの守備範囲はとてつもなく広く、あらゆる楽器や声、音源に対して、コンプレッション/リミッティングの多くのテクニックを適応することができます。

2,スーパーナイスモード

RNCの人気を決定つけているのが『スーパーナイスモード』です。このモードをオンにするとコンプレッサーが"究極にスムース"にかかるようになります。音のダイナミクスを揃えてトラックを聴きやすくしながらも、まるでコンプレッサーがかかってないように聞こえるかもしれません。サウンドの音量ばらつきを均一にして、さらに音圧を上げてサウンドに存在感を出したい場合などに、あまり原音の持つ印象は変えたくないという場合は多いです。コンプレッサー(リミッター)と呼ばれている機器は使用方法が様々で、積極的に音をスマッシュして倍音などの質感もガッツリ加えて派手なサウンドメイクを行う場合もあれば、なるべく原音の印象は変えずに音量のばらつきを抑えてサウンドを聴きやすくしたり、音圧などの存在感を引き出すタイプのものが存在します。

RNCの『スーパーナイスモード』はその後者で"クリーンなサウンド"を最も特徴としています。逆に『ノーマルモード』では、一般的なコンプレッサーのように強めにリミッティングしたりもできるので、この2つのモードがあることで、RNC1773は驚くほど広範囲なコンプサウンドを利用できるのです。

3,ステレオ・コンプレッション!

RNCはコンパクトながらステレオの入力&出力を備えています!パラメーター調整はL/R共通なので異なる音源に対する処理には向いていませんが、生楽器へのステレオマイキングでのトラッキング(かけ録り)時のコンプレッションなど、ステレオ入力ソースを処理できることはRNCの大きなアドバンテージになります。例えばアコギなどの生楽器へのステレオマイキング、ドラムスのオーバーヘッドやパーカッションなど、ステレオマイキング→マイクプリアンプ→オーディオインターフェースというシチュエーションに最適です。

また、シンセサイザーやドラムマシンなどの電子楽器に積極的なコンプレッション処理を適応したり、DAW上の2ミックスや特定のトラックにデジタルプラグインではなく、アナログのコンプレッション感を加えたい場合などにも役立ちます。さらにモードを『スーパーナイスモード』に切り替えれば、クリーンでアタックを失わないコンプレッションが可能となり、ステレオソース全体の音圧を上げるマキシマイザー的な効果を、自然で瑞々しいアナログサウンドの領域で行う事が可能になります!

4,コンパクトな設計

RNCは1/3ラックサイズのコンパクト設計!1Uのラックマウントトレイに3台並べてセットアップできます!RNP/RNC/RNLAの組み合わせでフレキシブルなマイクプリアンプとコンプレッサーのステレオ・セットアップを構成したり、RNCを3台並べてコンソールへのインサート用コンプレッサーとして使うなど、スタジオからコンサートPAまで、多くのサウンドシステムで活躍できます。

また、DAWを中心とした自宅スタジオのデスクトップ・セッティングでは、オーディオインターフェースの上や横に設置するのにちょうど良いサイズ感。複数台を積み上げてもコンパクトなパーフェクトサイズ!省スペースながらそのサウンドは完璧なプロクオリティ。これがRNC1773の人気の秘密です!

5,低価格なのに超高音質。

大型のラックマウント機器まで必要としていない自宅スタジオ環境において、省スペースで低価格で高音質なステレオ・コンプレッサー(やマイクプリアンプ)を導入することは大きなチャレンジです。オーディオインターフェースに付属する簡易的なマイクプリアンプからのアップグレードや、プラグイン・コンプレッサー以外の選択肢は常に求められています。

実売で20万円以上するようなラックマウント型のハイエンド機と同クオリティのサウンドを実現できるような、自宅スタジオ用のステレオ・コンプレッサーを、さらにお求めやすい価格帯で探すのはとても大変です。FMR Audioは正にこの要望に応えられる製品を開発しており、長年にわたってユーザーの高い信頼度を獲得しています! 一例として、サイドチェインセクションのコンポーネント(抵抗、ダイオード、コンデンサ、オペアンプ、トランジスタなど)をマイクロプロセッサを使用することでソフトウェアの塊に置き換えている。このことでコンポーネント・コストを削減し、低コストでこのような高性能・高機能を達成しています。RNC1773は『ハイファイ・オーディオ・パスとコンプレッション・スキーム』を高いレベルで達成しており、その細部にわたるこだわりは部品選定や回路設計において見ることができます。

6,入出力とサイドチェイン。

RNCのリアパネルに注目してみましょう。

左チャンネルと右チャンネルのIN&OUT端子があります。TSフォンケーブルでのアンバランス接続です。信号のレベルは業務機レベル、バランス出力の機器からでも正しい変換ケーブルを用いれば接続可能です。 さらにIN端子の部分にTip=In、Ring=Outの印字があります。これはミキサーなどのインサート接続(Send/Return)に対応することを意味しています。TRS-TRSフォンケーブルを使えばケーブル1本でRNCに送り、RNCから戻す接続を完結でき便利です。同社RNP8380もインサート端子を備えているため、これに対応します。

さらに右側にSidecain端子があります。サイドチェインとは、シグナルパスではない経路であり、コンプレッサーの場合は信号を検出し動作を決めるディレクターセクションを指しています。本機のSidecain端子はディテクターセクションに送る信号に外部処理を追加する事に使用されています。具体的には、低域への過剰なコンプレッションを軽減したり、ディエッシングを行う場合に使用します。サイドチェインについては過去にまとめたコンテンツがありますので、興味のあるかたはこちらもご参照ください。

→ 参考リンク『【徹底解説】サイドチェインとは?』
https://umbrella-company.jp/contents/sidechain/

あああああああ

「RNC1773」2つの動作モードの使い分け。

FMR AUDIO RNC1773コンプレッサーには、2つの動作モード(NormalモードとSuperNiceモード)があります。ここではそれぞれのモードがどのような特徴を持ち、どんなアプリケーションに適しているのかを解説していきます。

◎ Normalモード

RNC1773のNormalモードは、オーソドックスなコンプレッションに集中したモードです

スレッショルド、レシオ、アタック、リリース、メイクアップゲインの独立した5コントロールを用意。コンプレッサーの基本動作に忠実なパラメータを無段階で調整できる為、トラックに最適なコンプレッションを自由自在に追い込んでいくことが可能です。ゲインリダクション量は8段階のLEDメーターに表示され、コンプレッサーの効果はバイパスボタンで比較可能です。

Normalモードのサウンドでは、標準的なハードニー・コンプレッサーに期待されるような効果が得られます。レシオが軽めの設定であれば、サウンドの副作用をあまり感じることのない自然なレベルコントロールを行います。

逆にゲインリダクション量が多くなるにつれてゲインのポンピング効果が現れてきます。ポンピングとはたっぷりとゲインリダクションされている状態で、リリースタイムを短く設定した際にサウンドが脈動・拍動する現象です。一番わかりやすいのは古典的なロックサウンドにおけるドラムスのリミッティング・サウンドでしょう。上手く活用すれば荒々しくエフェクティブであり、エキサイティングな緊張感を演出できます。

このような派手なコンプレッション/リミッティングのポンピング効果は、狙うサウンドによって積極的に活用したり、またはポンピングが発生しないように自然なコンプレッションを目的とする場合などがあり、これがコンプレッサーを使ったサウンドメイクの面白さの一つでもあるのです。RNCではその両方をこなす可変幅を持ち合わせています。 Normalモードのサウンドは、一般的なコンプレッサー/リミッターのサウンドを幅広くカバーするもので、以下のような連続可変の調整を備えています。

Normalモードのサウンドは、一般的なコンプレッサー/リミッターのサウンドを幅広くカバーするもので、以下のような幅広い連続可変の調整を備えています。

  • スレッショルド:−40~+20dBu
  • レシオ:1:1~25:1
  • アタックタイム:0.2msec~200ms
  • リリースタイム:0.05sec~5.0sec
  • ゲイン:-15dB~+15dB

◎ Super Niceモード

RNC1773の機能の中で最も評価されている機能が『Super Niceモード』です。

『Super Niceモード』を簡単に説明すると、「コンプレッションしていることを感じさせずにコンプレッションを実行する」モードといえます。Super Niceモードでもフロントパネルのコントロールは通常通り操作可能ですが、コンプレッションは明らかにスムーズで透明度が高くなります。ダイナミック・ゲイン・コントロールは十分に実行しながらも、コンプレッションによる聴感上の副作用を最小限に抑えこみます。強めに掛けたとしても不自然な効き方にはなりません。

コンプレッサーが掛かってる感じがしない、アタックの存在感が失われない、音の持つオリジナルのニュアンスを変えることなく音圧のみを上げて存在感を強調できる。自然に持ち上がる。何倍もの価格帯のコンプレッサーと比較しても『Super Nice』モードはRNCにしか実現できないサウンドで価値が高いサウンドです。

このSuper Nice モードでは、3台のコンプレッサーによるレイヤーのコンプレッションの仕組みを使用しています。1台でコンプレッションするよりも、3台で分担してトータルで相当するコンプレッションを実現するほうが、仕上がりの音質変化が小さくなり、より自然なゲインコントロールが可能になります。この動作原理を説明するのはなかなか難しく、良い例がないものかと考えていたのですが、あの名機と通ずるものがある事に気が付きました。

その名機とは、NEVE 33609 COMPRESSOR / LIMITER です。この機種の大きな特徴は、コンプレッサーセクションとリミッターセクションが用意されている事。つまりコンプレッサーとリミッターの2段階の処理を適用する事ができるのです。使い方の例として、コンプレッサーでは緩やかなレシオで時定数もゆっくりと設定音色変化を少なくかける。リミッターセクションではピークを確実に抑えるため、速い時定数ときつめのレシオで対応する。コンプレッサーで緩やかではあるがレベルコントロールがなされているので、リミッターで対応すべきピークはすでに少なく、小さくなっているそれに対して速い反応速度でピークを抑える、この時の変化量は小さく済んでいますので、このセクションにおいても音色変化は最小に抑えられる。原音のニュアンスを崩さず確実なゲインコントロールを実現する理にかなった構成であると言えます。

また、1台で2段掛けする事も大きな意味を持っています。33609はコンプとリミッターのゲインコントロールは一つのゲインリダクション素子で行われているので、余計な歪や雑音が加わる要素を最小にできるメリットもあります。

NEVE 33609はこれ程にも考え尽くされた機能美を有し、これに加え入出力のトランスやディスクリート回路によるシルキーな倍音の付加といったサウンドの秘密も含めると名機の称号を冠する理由がよく分かります。

FMR AudioのRNC1773も負けていません!33609が2段ならRNCのSuper Niceモードでは3段。コンプレッサー3台分のレイヤード処理をデジタル領域でシミュレーションしたプログラムにより生成されたコントロール信号でアナログVCAを操作しゲインコントロールを行う。通過するVCA素子は1つ、33609と同じく歪やノイズの付加を最小限に留める工夫は共通している。音質面ではトランスは使用せず、ICを用いた構成のオーディオシグナルパスであり、低歪で素速いレスポンス、クリアで明瞭、原音を尊重したい場合のコンプレッサーとして最高の活躍が期待できるコンプレッサーです。

Super Niceモード時の操作性に関しても特筆に値します。全てのコントロールは同じく無段階で調整が可能ですので、効き方に関する細かいニュアンスなんかを詰めて行く事ができます。なのですが、けっこう適当でも良い音になってくれる、これもSuper Niceモードの特徴ではないかと思います。どんな設定にしたとしても、3段レイヤーの動作原理により、自然な動作を保つことができるのです。さらにどんな音源に対しても同じような結果になります。ボーカルやギターなど楽器単体だったり、ドラムキットをまとめたグループトラック、さらには2ミックス / マスタリングでも相当に良い仕事をしてくれます!

このようにSuper Niceは様々な楽器や声、DAW上の特定のトラック、ファイナルの2ミックス素材に至るまで、あらゆるコンプレッション、整音作業に最適。シビアな調整も不要です。Super Niceモードはサウンドの良さ、使いやすさの面から高く評価されています。

「RNC1773」の動作の仕組みや回路構成の秘密。

RNC1773はデジタルコントロールによるアナログコンプレッサー。アナログVCAのゲインリダクションコントロールをデジタル演算で行うことで動作しています。ディテクター回路以降のサイドチェインセクションのコンポーネントをマイクロプロセッサの使用によりソフトウェア上で実行している。しかし、このアプローチでもメインのオーディオはアナログ領域で処理されるため、デジタル・オーディオ変換に伴う問題(レイテンシー、デジタル・アーティファクトなど)は発生しません。またフロントパネル・コントロールにオーディオが流れないため、ポットやスイッチの "ガリ"の問題も回避できます。フロントパネルのポットやスイッチは直流電圧値をマイクロプロセッサーに供給するだけで、パラメーターの調整と信号経路はマイクロプロセッサーが行い、密閉型リレーやVCAなどのコンポーネントは入出力ジャックの近くに配置され最短経路で配線、コントロールの経年劣化によるノイズのピックアップといった音質の劣化を防ぎます!

このような技術の融合により、RNCはデジタル・コントロールの正確さと精度を、オールアナログ・シグナル・パスのクリーンなトーン特性と共に提供します。NORMALモードとSuperNiceモード、正確の全く異なる動作の違いもプログラムの切り替えだけで実現している。これもデジタルコントロールのアイデアにより実現した動作の秘密と言えるでしょう。

もう一つ、1173が興味深いのは、"パッケージングではなく、部品にお金をかける "という哲学を持つMark❤Beth McQuilken夫妻のエレクトロニクス事業によって設計されていること。FMR Audioは正にこの要望に応えられる製品を開発しており、長年にわたってユーザーの高い信頼度を獲得しています!

正直、これだけのテクノロジーとアイデア、高品位パーツを詰め込んだReally Nice Compressor/RNC1773が、この価格帯で販売されていることには驚かされ続けています!DTMユーザーやクリエイターには最強のコンプレッサーです!

★ FMR AUDIO RNC1773 製品ページ

https://umbrella-company.jp/products/rnc1773/

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