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Interview column インタビュー&コラム

Empress Effects メーカーインタビュー 2011

現代のブティックペダルを代表するペダルメーカーへと成長を遂げたエンプレスエフェクト。他に類をみない圧倒的なハイエンド設計志向はレコーディング機器と比較されるほど。さらに大量のコントローラーを搭載しつつもそのどれもが極めてクオリティが高く驚くばかりです。 他のブランドの製品とひと味もふた味も異なる、異端の個性をはなっていることは、そのルックスからもサウンドからも明らかです。 今後のエフェクターシーンを牽引する注目ブランド、エンプレスエフェクトのスタッフへの2011年のインタビューをお届けします。

 

スティーブ&ジェイソンのイマジネーションの結晶。

今回はよろしくお願いします。まずは質問に答えていただける方の、お名前とご担当業務を教えてください。 A) お話できて光栄です。私の名前はダン・ジュンキンス (Dan Junkins )、Empress Effects.の副社長を務めています。ほとんどすべてのEmpress Effectsの毎日の仕事に関わっていますけど。以前は音楽業界でレコーディングエンジニア、ミュージシャンとして長い間働いていました。私自身は音楽学士、また音響工学についての学位を持っています。ほとんどの私のビジネス経験はここ地元のオタワでのレコーディングスタジオのものですね。

Empress Effects社の設立に至るまでの簡単な経緯を教えてください。 A) 同僚のスティーヴがEmpress effectsを2005年にスタートさせたんです。彼はクィーンズ大学の電子工学を専攻していて卒業して会社をスタートさせました。彼の友達が当時マーケットには決して存在しないような機能を持った創造性のあるトレモロペダルを作りたいとスティーブにアプローチしてきたのです。スティーブは7か月後にはそのトレモロを完成させたのですが、その時にはもうその友人は他のトレモロを購入してしまったらしかったのです。スティーブはその行き場を失ってしまったトレモロを(自分は使わないので)地元の楽器店に売りに行ったんですが、その楽器店がたいそうそのペダルを気に入り逆に10台の注文をもらって帰ってきたのです。驚いて他の楽器店などにそのトレモロを紹介したところスティーブの開発したトレモロは間違いなく求められているのだと分かったのです!これがEmpress Effectsのはじまりでした。

HPによると、Empress Effectsは4人のチームで会社を運営しているとあります。各メンバーの役割を教えていただけますか? A)実際にはEmpress effectsは5人のメンバーがいます。HPは更新しないといけないですね。小さな会社ですからそれぞれがマルチな役割を果たしています。必要な仕事があればどんな役割でもこなすという訳です。でも基本的な役割は決まっていますね。 スティーブとジェイソン(Steve and Jason)は設計者です。すべてのEmpress製品は彼らの最高のイマジネーションの結晶です。マイクとコディ(Mike and Cody)は主にアッセンブリを担当しています。 あなたが所有しているEmpress ペダルはこのどちらかが丁寧に組み上げた製品です。私(Dan)は主にすべてのビジネスの部分に関わっています。その他必要なら何でもです。

回路の設計など製品の中核を担っているのはどなたなのでしょうか? A)スティーブとジェイソンです。

専門的な知識をどこで身に付けたのでしょうか? A)スティーブもジェイソンもQueens University(クィーンズ大学)で電子工学を専攻していたのです。

 

可能な限り最上のサウンドクオリティを追及する。

Empress Effectsの製品はいずれのモデルも他ブランドの製品とは違う個性がハッキリ見て取れます。エフェクターの開発におけるコンセプトは何ですか?

そうですね。これは答えるのが難しい。それぞれのペダルは各々異なったゴールを目指していますから。でもいくつかの共通する目標があります。まず一番初めに重要なことは可能な限り最上のサウンドクオリティーを追及することです。また私たちは多彩な機能をいかに簡単な操作で、ライブなどのシチュエーションでも使えるようにそのバランスを重視しています。またすべてが頑強であることについても何度も確認しながら製品を作っていきます。すべての製品は開発段階でちょっと激しすぎるくらいに過酷で激しくテストされ、製品を末永く故障なしに使用できるよう何度も確認作業を行います。

いずれのモデルも非常に多機能なものに仕上がっています。ユーザーに音作りの多くを委ねる形にしたのはどうしてでしょうか?

私たちEmpress Effectsが長けている点の一つにマイクロプロセッサーに対する技術能力があります。私たちは多くの開発の中でアナログ回路をマイクロプロセッサーで精密にコントロールする手法を使っています。このことによりアナログ回路だけでのコントロールに比較して多大な機能をペダルに取り込むことができるようになります。このようなエクストラのオプションを用意することで、ミュージシャンは従来望んでいたけど実現が不可能だったような事を実行できるようになります。Empressのペダルで新しく実現できることでミュージシャンは大きなインスパイアをうけていると実感しています。

ユーザーのターゲットとしてはどの辺りを想定して製品を開発しているのですか?

私たちのペダルを多くの異なるスタイルのミュージシャンたちが使用してくれていることは知っています。私たちは可能な限り多彩な機能を盛り込んだ製品を作っていますから。私たちの目標はさらに多くのスタジオやライブツアーでのプロミュージシャンへEmpress Effectsのペダルを使ってもらうことです。

様々なスイッチを始めとする各エフェクターの機能は、どのような観点から採用に至っているのでしょうか? プロ・ミュージシャンの意見を参考にしたりしているのでしょうか?

新しいペダルを開発するときには大量の異なるタイプのプロトタイプが製作されます。私たちは沢山のベータテストに協力してくれる人たちのグループを持っています。また現在私たちのペダルを愛用してくれているプロオーナーともたくさんの意見を交わします。彼らが捜しているあらゆる機能などを検証します。

 

アナログとデジタル技術の融合。

Empress Effectsのエフェクターは、アナログとデジタルの技術が巧みに融合されているのも特徴です。アナログとデジタルどちらか一方だけを使うのではなく、融合するメリットはどこにあると考えますか?

そうですね。もっとも多大なアドバンテージはデジタルコントロールで可能になる多くの能力になります(プリセットの保存、演奏者のプレイスタイルに追従するオートモードなど)。そしてそのことでオーディオパスはデジタル変換されることなく最高の音質を保ち続けられるのです。ギタリストが愛するナチュラルなアナログ信号を保ちながら沢山のコントロールをキープできるようになるのです。

Empress Effectsのラインナップ中、開発に最も苦労したエフェクターは何ですか? 開発時の逸話があれば教えてください。

間違いなくSuperdelayですね。これのデザインには2年を費やしました。スティーブは1年ほどそれにかかりきってから、Jasonをデザインチームに迎えました。Superdelayには驚くほど多くの機能が備わっていますし、すべてを正しい方向に持っていくには長い時間がかかりました。

 

Multidrive は完全にオリジナルと呼べるペダル。

新製品である“Multidrive”に関して色々教えてください。これはEmpress Effectsとしては初めての歪み系です。歪み系モデルを開発しようと思ったきっかけを教えてください。

A) 私たちは真の意味でのオリジナルと呼べるものが想像できない限りは、歪ペダルをつくる気はありませんでした。そしてそのような事が容易にできるとはもちろん思ってはいませんでした。しかし調査を進めていくにあたって私たちはまだ 未開の地が歪ペダルにもたくさん残されていることを次第に発見していったのです!様々なディストーション(オーバードライブ)回路を研究し、10個ほどの独自のフレイバーを持ったサウンドとなる回路を作り上げました。そこで私たちはスタジオレコーディングでの経験を活かしたパラレル構成にたどり着いたのです。スタジオでは定番のレコーディングトリックで複数のアンプサウンドのレイヤーミックスでサウンドを作り上げていくテクニックです。これは従来の歪ペダルには決して取り上げられていない手法でした。そしてその結果に誰もが満足しました。

設計者が考える“Multidrive”の最大の特徴は何ですか?

A) Multidriveの最大の魅力は3つのまったく異なるタイプの歪(ファズ/オーバードライブ/ディストーション)をブレンドしてサウンドを構築可能な点です。各チャンネルをミックスしたサウンドは、いくつかの歪ペダルをシリーズに接続したサウンドとは全く異なるリッチで素晴らしいサウンドになります。

“Multidrive”の各セクションに関して教えてください。“Fuzz”はどのような音を狙ってチューニングしたのでしょうか? 何か特に参考にしたモデルはありましたか?

A)Multidriveのファズは素晴らしくリッチな1960/70年代のクラシックファズトーンです。私たちはそこに少しタイトなローエンドを加え、ローコードを使用した時にも響きが少しタイトになるようチューニングしています。

上記の質問と同様に“Overdrive”セクションの響きはどんなチューニングが施されてますか?

A)オーバードライブのサウンドは可能な限りアンプそのもののサウンドになるようチューニングしました。ベースになっているのはツイードスタイルのチューブアンプですね。多くのオーバードライブペダルは一つのゲインステージによってゲインをかせいでいますが、Multidribeでは複数のゲインステージを設け、それぞれが少しずつゲインを加算しているのです。このことで大変ウォームなビンテージライクなサウンドやトーンを得ることができます。またギターボリュームへの追従性も素晴らしく、サウンドをクリーンアップすることができます。

“Distortion”セクションはいかがでしょうか。どんなトーンを目指しましたか?

A)ディストーションセクションは比較的モダンな100Wのチューブアンプヘッドのサウンドを再現しています。

特に“Distortion”セクションに関しては、他のモードより幅がもたせてあります。3つのタイプから選択することができますが、どうしてこういう仕様にしたのでしょうか?

A)ディストーション回路の開発にはなんと100以上の異なるコンビネーションを試していきました。その中で自分たちの満足いった3つのサウンドフレイバーを3wayスイッチで切り替えられるようにしたのです。

各セクションに搭載されている“FIlter”スイッチの詳細を教えてください。設定周波数はいずれも同じなのでしょうか? それとも全く違う周波数が設定されているのですか? 明かせるようなら数値も教えてください。

A)フィルタースイッチはローパスまたはハイパスフィルターになっていてMultidriveの各歪セクションに搭載されています。たとえばリッチでスムースな倍音をファズセクションの高域に割り当て、タイトなローエンドをディストーションセクションに担わせるなど複雑なコンビネーションを帯域別に構成して一つの歪サウンドをクリエイトすることができるのです!カットオフ周波数は約500Hzです。

“Multidrive”に搭載されているイコライザーは、アクティヴですか? パッシヴですか?

A)このEQはParaEQと同じくアクティブタイプのEQです。multidriveの EQではハイ/ローはシェルビングタイプです。

“Mid”のみ周波数帯が選択できるようになってます。これはどうしてなんでしょうか? また500/250/2Kという数値を選んだ理由は?

A)私たちが直感的に良いと思ったポジションがこの3セクションです。250hzはたいへん太い帯域で部屋のタイプを演出できます。このレンジのコントロールは非常に重要ですね。500Hzにはギター本来のボイスがあります。ハスキーなマーシャルトーンにはこのレンジが多く含まれます。決して冷淡にならずにギターサウンドをミックスの中で前に出すことができます。2kはまさにサウンドの喰らいつきの部分です。ピックアタックやギターのアグレッシブさを出すには最高です。このEQがもつ3つのコントロールはまさに自在のトーンシェイプの可能性を創り出すことができるのです。

基板部分にDIPスイッチを搭載しています。このスイッチの役割を教えてください。

A)Multidriveは2つの選択可能なプリセットをもっています。各プリセットにはどんな3チャンネルの歪のコンビネーション(fuzz, overdrive and distortion)をもDIPスイッチで選択が可能です。たとえばプリセット1ではOverdrive と Distortionの組合せを、プリセット2ではすべての3タイプの歪のブレンドを選択して切り替えるなどクリエイティブなサウンドメイクが可能になるのです。

音作りに精通していないアマチュアに向けて“Multidrive”を使う上でのアドヴァイスをいただけないでしょうか? まずどういうセッティングからスタートして、どういう意識で各コントローラーを調整していけばいいでしょうか?。

A)まずは各セクション個々のサウンドに親しむことです。そのあとミキサーを操作するかのように各サウンドをミックスしていきます。あらゆるコンビネーションの可能性が用意されています。

 

ミュージシャンをインスパイアするペダル。

今後のモデル展開や開発状況を明かせる範囲で教えてください。(2011年6月時点)

Empress Effectsはこれからも音楽家をインスパイアするペダルを作り続けていきたいと考えています。ちょうど今は大変楽しい製品に取り掛かっています。実は夏ころにコンプレッサーペダルを発表したいと考えているんです!また大変に興味深いデジタルコントロールを駆使したエキサイティングな製品の開発も進んでいます。この2-3年で相当な数の新製品を発表できると思います。

日本のエフェクター愛好家の間では、Empress Effectsは非常に評判がいいです。日本のユーザーに向けてなにかメッセージをお願いします。

まずはともかく日本の皆様のサポートに感謝します。ミュージシャンたちの素晴らしいアートや創造性なくしてEmpress Effectsという会社はあり得ません。製品を使ってくれるユーザーのフィードバックやアドバイス、アイデアの数々が新しい製品を創造するきっかけになっていくのです。お互いに良い仕事をしていきましょう!

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