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Studio compressor コンプレッサー

レコーディング・コンプレッサーの「ダイオード・リング(ダイオード・ブリッジ)方式」について

レコーディング・コンプレッサーのダイオード・リング(ダイオード・ブリッジ)方式解説

CHANDER LIMITED TG1NEVE 33609、それを模したVINTECH 609CAGAP COMP-54など、限られたビンテージタイプのコンプ/リミッターで見られる"ダイオード・リング(ダイオード・ブリッジ)"という方式。アンブレラカンパニー取り扱い製品でも数多く見られるので技術担当社の自分としては超メジャーな方式ですが、世間的にはあまり知られていないようなのでこの機会に知っていただきましょう!

コンプレッサー/リミッターの心臓部とも言える「ゲインリダクション回路」、これに使われている素子や方式は様々ですが、そのほとんどはVCAFETフォトカプラ ではないでしょうか?そして数は少ないですが、Fairchildの670/660などのバリアブルμ(ミュー)、そしてこの"ダイオード・リング(ダイオード・ブリッジ)などが存在しています。

ダイオード・リング方式(またはダイオード・ブリッジ方式とも呼びます)は、半導体であるダイオードの『加える電圧によって流れる電流が特徴的に変化する性質』を利用しています。電流の流れ方が変化すると言う事は内部インピーダンスが変化すると言う事、これを利用し直流電圧で交流インピーダンスを変化させシグナルのレベルをコントロールしようというのがダイオード・リング方式です。

一般的にはダイオードは電流を一方通行にするための整流用途で使用されます。電流を通すか通さないかができればいいので、ONかOFFかのはっきりした使い方です。

コンプ/リミッターのゲインリダクションに使用するにはONとOFFの境目の極わずかな区間の性質を利用します。電圧の変化で流れる電流をコントロールしたい、コントロールに適した部分とそうでない部分があります、グラフがカーブしている部分は使えません、直線に見える部分が適していますので0.55Vから0.6Vのこのわずか範囲で動作させる必要があります。

とても繊細な使い方になりますので使い方が難しいです。リング状に組まれたダイオードのネットワーク入力された音声信号はそのままでは大きすぎます、0.55Vから0.6Vの範囲で扱える小さなレベルまで減衰が必要です。そしてコントロールされてダイオード・リングを出る時は極小さなレベルになっていますので極低ノイズなアンプ回路が必要、周りの回路設計もとても重要です。

ダイオード・リング(ダイオード・ブリッジ)方式として例に挙げたこれらの機器は、このアンプ回路に昇圧トランスを組み合わせたノイズレスな増幅を行っています。単価が大きい音声トランスが増えるのでコストもかかります。リングを構成するダイオードも特性を揃えるために部品を選別するなど製造・調整にも費用や手間をかけなければなりません。

こんなに設計や製造・調整に気をつかうダイオード・リング方式、それでも使いたい理由はやはりサウンドです。滑らかでクリア、適正なレベルの範囲で使用すればとても低歪、ちょっとオーバー気味に使えば豊かな倍音も得られ、オーディオ的にオイシイ要素をたくさん持ち合わせているのです!

合わせ込まれたダイオードネットワークでは偶数次高調波は打ち消され、比較的少ない倍音で使う事が可能です。ダイオード・リング方式、実はけっこう素直でナチュラルなんです。

にも関わらず、このダイオード・リング方式の機種は、倍音豊富でリッチなサウンドとか、太くて存在感が増すなどと形容される事が多いです。私が知ってるダイオード・リング方式のコンプ/リミッターも確かに芳醇でリッチなサウンドキャラクターです。ゲインリダクション回路の直後にトランスが使われてており、入出力もトランス式だったり、1台の中でシグナルパスにトランスが3個も使われます、つまり色付け要素が多いのです。芳醇な倍音を含むサウンドはそれら周辺回路によるものと考えても良さそうです。ガッツリ潰しても芯の強い濃厚なサウンドはリダクション回路の素直な特性と周辺回路のリッチな倍音のコンビネーションによるものだとも考えられます。

さらに、レベルを突っ込んだ時に生まれる倍音は利用価値が高いです。主に奇数次倍音を豊富に含む構成であり、ソフトクリップ、サチュレーションと言った使い方では扱いやすいタイプ。このキャラクターを積極的に利用しようと圧縮動作をさせないで倍音を付加する“THDモード”などと呼ばれるサチュレーター機能が追加された機種も多いです。

もちろん、コンプ/リミッターのキャラクターを作っているのはゲインリダクション素子や倍音だけではありません。コントロール信号を作るディテクターセクション、シグナルレベルの検出やアタック/リリースといった圧縮動作の時間軸のコントロール、これらも重要なファクターです。

アタック/リリースに関して言えば、驚いたのが Empress Effects / ECM-519のオートモードの秀逸さ!熟練の手コンプ職人が中に入っているかのような、極めて自然な動作で欲しいところがちゃんと出てくる素晴らしいデザイン。ちなみにECM-519はFET方式なので脱線してしまいましたが・・・。

以上、ダイオード・リング方式のご紹介でした。 少しでもダイオード・リング方式の魅力が伝わればうれしいです。

主なレコーディング・コンプレッサーのゲインリダクション回路方式

・Vintech-Audio / 609CA -> ダイオードリング
・Chandler Limited / TG1 -> ダイオードリング
・Chandler Limited / ZENER LIMITER -> ダイオードリング
・Golde Age Project / COMP-54 -> ダイオードリング
・Golde Age Project / COMP-2A -> オプト (T4セル)
・Golde Age Project / COMP-3A -> オプト(T4セル)
・Golde Age Project / COMP-3A JR -> オプト(LED & CDS フォトカプラ)
・Grace design / m102,m103 -> オプト (LED & CDS フォトカプラ)


・FMR Audio / RNC1773 -> VCA
・FMR Audio / RNLA7239 -> VCA
・FMR Audio / PBC-6A -> VCA
・Wes Audio / ngBusComp -> VCA
・Wes Audio / _DIONE -> VCA
・Wes Audio / _MIMAS -> FET
・Wes Audio / _BETA76 -> FET
・Wes Audio / _TIMBER -> valable μ
・Empress Effects / ECM-519 -> FET

https://umbrella-company.jp/

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