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先日発表されたChase Bliss Audioの新作ペダル、M O O D。もうチェックしていただけましたでしょうか?実はディーラー向けに情報が解禁されたのがリリースの1週間前で、弊社も完全にサプライズという感じでした。Chase Blissは今年1月のNAMMでBlooperとPreamp mkIIという製品を発表していたので、どちらかが先に出ると思っていたのですが。。。Chase Blissのこういう遊び心溢れるところはとってもステキですね。 (BlooperとPreamp mkIIについてはまたご紹介します。どちらもChaseらしさが溢れたとっても面白そうなペダルです。)
そしてM O O D自体も遊び心とサプライズに溢れていました!ペダルを構成する各要素は意外とシンプルなのですが、その要素が有機的に絡み合うサウンドがとにかく素晴らしい。他のChase Bliss Audioペダルと同様、圧倒的な世界観を持っています。 既にデモビデオ等でチェックされた方も多いと思いますが、つまりどんなペダルなの?なにができるの?と疑問を持たれた方も多いのでは。今までに無かった新しいタイプのエフェクトペダルで、分類が難しいのです。この記事ではM O O Dとはどんなペダルなのか、なるべく噛み砕いて解説にチャレンジします!
M O O DにはOld Blood Noise Endeavorsの協力で開発された空間系エフェクトが3種類搭載されたチャンネル(ペダル左側)、そしてDrolo FXとのコラボで誕生したマイクロルーパーのチャンネル(ペダル右側)があります。それぞれのチャンネルを単体でも同時でも使用ができ、更にチャンネル同士の接続方法も3種類から選択できます。
もう一方のDrolo FXによるマイクロルーパーチャンネル(ペダル右側)。このチャンネルは常に録音が行われていて、スタートとストップの操作は必要ありません。チャンネルをオンにすると最後に録音されたフレーズがプレイされます。Chase Blissはこれを「釣り」に例えています。ループチャンネルのスイッチを押した瞬間に、その時キャプチャーされていたシグナルを「釣り上げる」イメージです。 また”CLOCK”ノブの設定により、録音される音質とループの長さが変わります。CLOCKを上げると高音質かつ短いループ、下げるとローファイで長いループになります。ループの長さは0.5秒から15秒で可変できます。ループは重ねることができず、新しいフレーズは常に上書きされていきます。ルーパーチャンネルには以下の3つのモードが搭載されています。
・ENV:プレイされているループにシグナルを重ねると、ループに割り込んでスタッター(音飛び)やフリーズトーンを一瞬混ぜる。ループを細かく切り刻んでスタッターやグリッチを起こし、LENGTHでスライスの具合を調整。MODIFYでエフェクトを混ぜるエンベロープ検知の感度を調整。時計回しで、より弱い入力でエフェクトが混ざるようになる。アルペジオの1音だけ強く弾いてループにエラーを起こしたりすることが可能。 ・TAPE:録音されたループをスライスし、それぞれランダムに順番を入れ替えて新たなループとして出力。LENGTHでスライスのサイズを設定し、MODIFYでスライスしたループの再生速度と再生方向を設定。奇妙なのにどこか優しい、全く新しいループエフェクト。 ・STRECH:録音されたループをピッチを変えずに縮小または引き伸ばす。音程が変わらずにフレーズがストレッチされ、空間を捻じ曲げるような異質なサウンド。 M O O Dでは例えばフレーズを重ねていって一人でセッションをするような、一般的なルーパーの遊び方はできません。ですが3つのモードはどれも常に予測のできないループが飛び出してくるので、チャンネルをオンにするたびにとっても楽しいのです。そして重要なことを一つ。ルーパーチャンネルは、エフェクトが搭載されたOBNEチャンネルのあとに接続されています。そのため残響を追加したサウンドやSLIPで逆再生させたトーンをルーパーチャンネルで録音し、ループとしてプレイバックができます。更にトグルスイッチでループチャンネルから再度OBNEチャンネルに送り、そのサウンドをまたループに送ることもできます。無限にディレイやリバーブを重ねたり、逆再生の後SLIPさせてさらにスライスしたり。 M O O Dはエフェクトとループの2チャンネル同士でシグナルを渡し合うことで、どんどんサウンドをトランスフォームさせてくことができます。
最後はM O O Dのコントロールの中でも最もユニークな”CLOCK”コントロール。「ペダルのクロックスピードを変更するノブ」です。クロックとは何か?を説明するとかなり長くなるので別の機会にしますが、「ペダルの処理速度を可変する」コントロールとイメージください。通常ならCLOCKは上げて設定するのが基本ですが、下げていくと(ペダルの処理速度を下げると)、トーンに様々な変化が起きます。
REVERB、DELAYはキャラクターの変化、ハイファイからローファイ。最大タイム、音質の変化。ディケイとリピート音に倍音が足され溶けるようなフィルターも効いてきます。この変化が今までどのペダルもできなかった、不思議なトランスフォーム。キャラクターが変わっていくと言えばそれまでなのですが、この気持ちよさはぜひ実際に試して体感して下さい。そして残響やリピート音が鳴っているときにCLOCKを変更するとピッチベンドが発生。更にCLOCKを限界近くへ下げるとエフェクトにホワイトノイズが混ざりサウンドが崩壊していきます。このメルトダウンしたトーンもなんとも気持ちがいい。荒涼としているのに、どこか優しいノイズ。
CLOCKの変化はルーパーチャンネルにも影響します。ループの音質と録音できる長さが変わるのは前述の通りですが、ループをプレイ中にCLOCKを変更すると、再生スピードが変わりループのピッチが変わります。ここが面白いところで、CLOCKノブによるピッチシフトは「音階でハーモナイズして」起きます。CLOCKを無段階ではなく、ハーモナイズが起きる区切りのスピードで変更させることで、ペダルの処理速度変更というハチャメチャなコントロールを、絶妙に音楽的なカタチで組み込んでいるのです。
そしてループチャンネルは常に新しいシグナルは上書きされ、オーバーダブができない仕様になっています。ここもかなり考えて設計されていて、あえてオーバーダブできないようすることで、ループを展開させることを音楽的に展開させていくのを見据えているのだと思います。ハーモナイズさせたフレーズをいくつも重ねると収集がつかなくなってしまいますが、常に上書きをすることで次々に新しい景色を見せてくれるのです。
更に更に、CLOCKの変更はOBNEとループチャンネルどちらにも同時に影響します。つまりハーモナイズしたピッチシフト、ディケイやディレイタイムのベンド、そしてノイズが混ざるほどの音質の変化が同時に発生します。これらの変化全てが絡み合い、なんとも言えないアンビエンスを構築しています。
加えて他のChase Blissのペダル同様、エクスプレッション・ペダルとMIDIでのコントロールに対応しています。全てのノブは単独または同時に可変させることができ、M O O Dの持つ可能性は飛躍的に拡大します。 エクスプレッション・ペダルでグラニュラーループにちょっとずつ変化を与えたり、もちろんリバーブやディレイのタイムを変化させても最高に楽しいです。
以上がM O O Dのメインの機能となります。こうやって文字で解説するとかなり複雑に感じるかと思いますが、Chase Bliss はM O O Dを「何も考えずにプレイする」ことを推奨しています。そして実際、ある程度適当にプレイしても、形になってしまう。本能の赴くまま好きなようにペダルをいじっても最高のMOOD(雰囲気)になってしまう、ペダルデザインのセンスの良さには脱帽です。もちろん全てをきちんと理解すれば、どんどん深みにハマっていける懐も持っています。
「おもちゃ箱をひっくり返したような」という表現がありますが、M O O Dにピッタリだと思います。エフェクトやループチャンネルをオンにするたびに想像のつかない音が飛び出してくる。そしてただ単に「変な音が出る」わけではなく、「音楽的に破綻しない」というのが素晴らしい。ループにエフェクトを掛けてトランスフォームさせていくとトーンは変化していきますが、その出力される変化全てが美しいのです。奇妙で狂ったトーンが出るペダルはたくさんプレイしてきましたが、ここまでハイセンスかつ本当に音楽に寄り添ったペダルは無かったと思います。大傑作です!
ユニークな空間系エフェクトと、グラニュラーの要素を取り込んだ独創的なルーパー。加えてペダルの処理速度を可変するCLOCKで、ペダルのキャラクターやノイズ、ハーモナイズまで自在に操作。全ての要素が有機的に絡み合う、孤高のエフェクトペダル。そしてなにより本当に「音楽的」なペダルです。
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