BASTL INSTRUMENTSのカテゴライズ不能な「ロボット操作のデジタル・テープマシン」THYMEを解説!
10/29

発売以来、その個性的なサウンドと恐ろしいほどの完成度でハマる人急増中のBASTL INSTRUMENTSの「THYME」。
本機は久々にカテゴライズが全く難しい「マルチ・プロセッサー」で、いやプロセッサーと呼ぶのも少し違っていて、THYMEは「インストゥルメント」でもあり、さらにピッチシフター、フィルター、トレモロ、ビブラート、フェイザー、フィードバックプロセッサー・・・そしてシーケンサーでもあり、THYMEをカテゴライズすることは本当に難しいです。
BASTL INSTRUMENTSでは「ロボット・オペレートが可能なデジタル・テープ・マシン」と呼んでいます。
何のことか全然わからないですよね(笑)!
本日は、この世界一難解であり、世界一クリエイティブ、間違いなくここ数年で発売されたマシン類の中で最高の完成度を誇るBASTL INSTRUMENTSのTHYMEの「謎」を、マニアック・シンセ界では知らない人はいないCUCKOOさんの動画を解説することで、紐解いていきたいと思います!
早速“COCKOO”氏のTHYME解説動画を見てみましょう。
COCKOOさんは大のBASTLファンとしても知られており、来日された際もBASTLのモジュラーで演奏していましたし、チェコのBASTL工房を訪れて秀逸なドキュメンタリー作品も撮影していますね。
動画時間4:00辺りから説明と実演が始まりますが、まずはノブやスイッチの説明です。
INPUT GAINは20dBのゲインをもった入力調整です。後から説明するROBOTと呼ばれるモジュレート(=ノブのオートメーション)ができない唯一のノブコントロールです。
次にディレイ・コントロール・セクションの説明、そして異なるパラメーターを様々な内蔵LFOや外部CV、シェイプ、アマウントを駆使して、オートメーション・コントロールできるROBOTセクション、DRY/WETミキサー、アウトプットボリューム、ファンクションボタンについて説明しています。
ROBOT SELECTボタンは、押しながらオートメーション制御したいノブを動かすことで、そのノブが選択されます。
PATTERNスイッチは4つの異なるパターンを選択できます。
下段の8個の四角いボタンは8つのサウンドパッチを選択できるボタンであり、バンクの選択や、各LFOタイプ/ROBOTタイプを選択できるボタンです。
動画の6:00位からは、実際に音を出しながらの実演です。
最初にインプットゲインのクリップインジケーターについて説明していますね。過大入力になると赤いLEDが点灯して知らせてくれます。
次にパッチの初期化について語っています。希望のパッチ番号を押しながらBYPASSを同時に押すと、そのパッチのサウンドが空になります。
各ノブのインジケーターについて、LEDの光の強さでノブの現在の値がわかるようになっています。ノブが光っていない場合は値は0で、つまり最小位置の値であるということです。逆に最大に光っている場合は値が最大位置であるということです。THYMEのノブはモーターで動くわけではないため、一つのノブでいくつかのコントロールをシェアしている事が多く、パッチの切り替えなどによって、ノブの絶対的な位置が現在のノブの値ではない場合があります。例えばパッチ1ではボリュームノブの値は100ですが、パッチ2に切り替えた時には50だとします。実際にノブが100から50に動くわけではないので、値だけが切り替わっています。パッチ2に切り替えた後でノブの値を変更する場合は、まずは50位置までノブを回し、その後上下させれば値とLEDの光量がリンクします。BASTLではこの仕組みをノブフリーズと呼んでいます。
8:10くらいからディレイのサウンドメイクを行なっています。
COCKOOの説明にあるように、THYMEは古典的なアナログテープを使用したテープエコーをシミュレートしています。パネルのイラストにあるように、アナログテープが「TAPE SPEED」で速度調整され、「WRITE HEAD」と「READ HEAD」を通過して、さらに3つの「EXTRA HEAD」を利用できる仕組みです。
「COARSE」ノブを回すとヘッド位置が動き(デジタルシミュレートですから実際には動きませんが!)、ディレイが発生します。「FEEDBACK」ノブを上げてリピート回数を増やしてショートディレイを作っていますね。
次に「FINE」ノブでディレイタイムの微調整を行なっています。
11:00位からは、エクストラヘッドの説明です。
「LEVELS」ではフィードバックに戻るレベルが調整でき、「SPACING」ではエクストラヘッドの位置が調整できます。
動画では「COARSE」を下げめにして、「LEVELS」と「FEEDBACK」を上げると当然ながらフィードバック発振が起こり、CUCKOOが「あはん」と悲鳴をあげていますね(笑)(11:05)。
12:00くらいから「SPACING」を調整しています。このノブではエクストラで3つのヘッドを調整できるので、位置調整でオリジナルのディレイ音に、リズミックなディレイ音を付け加えることができるので、リズムディレイのような効果になります。
13:20位から様々なディレイパターンを実演していますが、何とも複雑なパターンがクリエイトできることが分かるかと思います。
13:40くらいからは、ハイパス&ローパスフィルターを説明しています。
真ん中を境に左側に回すとローパス、右側がハイパスです。
その後CUCKOOさんいい感じになってきて、遂に禁断の「フィードバックによるセルフオシレート」で遊び始めます。もう入力は関係なくなり、THYMEがインストゥルメンツとなります。入力のケーブルも抜いちゃいましたね。
そして時間にして、16:05で遂に!「TAPE SPEED」ノブを動かしますが、お聞きのようにピッチチェンジとビットクラッシュが同時に起きるわけですが、このピッチ変化をLFOやCVを使ったROBOTでモジュレートしてあげると、また強烈な効果で面白いわけです。
フィードバックを切りたければ、FEED BACKとLEVELを下げればOKです。
みなさんが見ながら解説を読んでいると思われるCUCKOOのリファレンス動画が、すでにもの凄くページの上の方にいってしまって見にくいですね。再度同じ動画をここに配置しましょう。
さて、今度は17:15くらいから見てみましょう。
何やらCUCKOOさんが、曲の一部をループ再生しました。
TAPE SPEEDノブを下げて、ビットクラッシュ的なエフェクトを試していますね。サウンドが出来上がると、今度はその保存についてです。Fnボタン(ファンクションボタン)とSAVEボタンを同時に押すことで、サウンドを保存できます。さらに完成したサウンド#1を#2にコピー&ペーストしています。コマンドは簡単でFn+Copyそして、コピー先を選んでからFn+Pasteです。
サウンドメイクしていますが、まるでフィルターやフェイザーのような独特なエフェクト効果が生まれていますね。何ともかっこいいエフェクトです!
そのいくつかのサウンドを手動で切り替えて、実演しています。このように8つサウンドを8つのバンクに作成して、切り替えて使用することができます。もちろん後記しますが、これらのサウンドはシーケンスすることができます!
21:44からはROBOTについてです。
動画ではTAPE SPEED ノブの動きをROBOTでモジュレートしてオートメーションしようと試みています。
ROBOT SELECTを押しながら、動かしたいノブを少し動かすと、そのノブが選択されます。
またROBOT SELECTを押しながら8つの四角いボタンを押すと、モジュレーションソースの波形やタイプを選択できます。
AMOUNTとRATE(SHAPEはROBOT SELECTを押しながらノブを回す)の値を調整でき、選択したROBOTタイプ(モジュレーションソースの波形やタイプ)でモジュレートします。
8タイプのROBOTタイプを切り替えています。LFOシェイプごとに異なるサウンドの動きになりますが、ROBOT SELECTを押しながら、Freeze/Link/Syncのいずれかを押すと、ROBOTの極性をマイナス、プラス/マイナス、プラスで変更できます。下降するLFOシェイプを逆向きにしたり、上昇/下降パターンに変更して実演していますね。地味ながらかなり芸の細かい素晴らしい機能です。
その他、ワンショットのディケイ(特定のサウンドボタンをヒットした時にトリガーされる)やエンベロープフォロワーのROBOTモードを説明しています。この動画ではCVモードは実演されていませんが、外部のCVソースを使用してのモジュレートももちろん可能です。
25:39付近からは外部のキーボードからTHYMEをシンセの用に演奏しています。サウンドパッチを切り替えながらの演奏がかっこいいです!
そして遂にシーケンサーについての説明ですが、Fnボタンを押しながらTAPボタンを押すたびにクロックソースが、内蔵(タップテンポ)→アナログクロック→MIDIクロックとトグルで切り替わります。
動画ではARTULIA KeyStepのアナログクロックに同期させているようです。モードはLIVEモードです(リアルタイムにシーケンスを打ち込める)THYMEがARTULIAのクロックを待ってシーケンスがスタートします。
シーケンスの書き込みをリアルタイムに行うのは簡単で、動画のように上書きもできます。WRITEボタンを押しながら、リアルタイムに1-8の四角いボタンをタイミング良く押すだけです。
A~Dの4つのパターンボタンで、異なるシーケンスも切り替え可能です。
動画の30:00付近からは、マニュアル(WRITEモード)でのシーケンスの打ち込み方法です。WRITEモードにするにはWRITEボタンを押してLEDをm点灯させます。もう一度押すとLEDは消灯してLIVEモードになります。
WRITEモードでは8ステップの中に4つのサブステップを持っていて、8×4=32ステップを細かく編集が可能になっています。
またFnボタンとA-Dのパターンボタンで、入力クロックのデバイダーを設定できます。
THYMEの可能性は、それを使用するクリエイター次第で無限の可能性を持っていると思います。
ギターやその他楽器のディレイとして使用する場合は、背面にフットスイッチジャックが装備されているので、こちらを使えばペダルのようにオン/オフできます。
モジュラーシンセやMIDI機器との使用は、CVでROBOTをコントロールしたり、アナログクロックやMIDIクロックへの同期も可能で、THYMEをマルチなエフェクトプロセッサーとしても、THYME自体のフィードバックを使用したオシレーターのように利用することもできます。ビットクラッシャーやフェイザーのような効果、フィルターのような効果、ディレイ・フィードバック、ステップシーケンサーなどなど、あまりに多くのサウンドのバリエーションを得ることができます。
これでもTHYMEの魅力について「入口」をざっと説明したにすぎません。
THYMEを「ループデバイス」として使用した動画を最後に紹介だけしておきます。
このビデオ、THYMEのもう一つの魅力を知るのに最高のパフォーマンスになっていますので必ず観ておいてくださいね。
フィードバックやディレイループを利用して、従来にないプレイスタイルでサウンドを重ねていくことができます!
このTHYMEの「Destructive Looping」については、また次の機会にゆっくりとご紹介したいと思います。
CUCKOOさんのビデオを通じて、BASTL INSTRUMENTS THYMEの魅力を発見してもらえると嬉しいです!
CUCKOOさんありがとうございます!
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