クリエイティブな音楽機材の
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サウンド部サウンドエディター/レコーディングエンジニア 五十川祐次様
サウンド部サウンドデザイナー 木部寛之様
株式会社スクウェア・エニックス https://www.jp.square-enix.com/
最高峰のデジタルエンタテイメント制作で、世界中のゲームファンを魅了し続けている、株式会社スクウェア・エニックス様。以前、Dolby Atmos for homeにも対応したMAスタジオと録音に特化したMA スタジオへのThe Fader Control導入取材をさせていただきました。今回は作業効率化や、収録音源のブラッシュアップを目的としたアフレコスタジオの機材の大幅なリニューアルを実施され、その中でThe Fader Controlを4台連結した特注品をご発注いただきました。特注品を含め機材が刷新されたアフレコスタジオについてお話を伺いました。
MAスタジオでは、2台のThe Fader Controlを並べた状態で、主に2本のマイクの収録作業が行われていますが、MA2スタジオでは、マルチマイクでの収録に対応し同時に4本のマイクの収録が行え、本数が増えてもストレスなく快適に作業が行えるよう、今回は4台のThe Fader Controlを1つの筐体に纏めた特注仕様のご依頼をいただきました。 この特注品では、機能面は通常品から変更点はなく、背面の電源スイッチを一括し合計8チャンネル分の入出力端子をXLRからD-Sub25に変更しています。MAスタジオと同様にINPUT MODEのモノラルモード(モノラル信号の入力に対して、フェーダーを通過した可変レベルの信号と、入力されたままの固定レベルの信号を同時に出力できるモード)で、それぞれのチャンネルにフェーダーの処理をした信号とバックアップ用のスルーアウトの2系統を出力して収録に使われています。
今回の特注フェーダーの導入について、五十川祐次様と木部寛之様にお話しいただきました。
五十川様: もともと本社ビル内で別の会社のアフレコスタジオを、弊社が2017年頃から使うようになったのですが、ここではセリフ以外に音楽も録れるようにCUE回線を新たに引いたり、ワイヤリングもやり直したり、マイクプリやコンプレッサーは MAスタジオと揃えて使うようになりました。録音時のフェーダーは、MAスタジオの環境に合わせてThe Fader Controlを一台置いて使っていました。 それとは別に、前の会社から譲り受けたEUPHONIX S5(System5)もそのまま暫く使い続けていましたが、長く使われていたもので調子が悪くなってきたので、別のコンソールに変更しようということになりまして、アナログコンソールも含めて検討していましたが、EUCONの安定性を考えてAVIDのフィジカルコントローラーの導入を検討しました。
木部様: 例えばAVID S5からコンソールを入れ替えるスタジオは、S6を選ぶところが多いと思うのですが、このスタジオではミックスはしないことが前提でしたので、大規模なS6のようなコントローラーは必要なく、コンパクトなS1を2台で充分と判断しました。それとは別に、レコーディングをする際のフェーダーとして、MA スタジオと同じくThe Fader Controlを暫く使っていましたが、今回のリニューアルから新たにマルチマイクでの収録にも対応できるようにするため、The Fader Controlが4台分必要と考えました。
木部様: コンソールデスクの一部をS1に合わせて作り直しましたが、フェーダー操作を右手でするか左手でするかエンジニアさんによって異なりますので、それぞれのコンソールのレイアウトは都度好きなように変更できるようになっています。
五十川様: ワイヤリングについては、劣化せず音質を保ったまま録れるよう、敢えてパッチベイは使わずに直結する形にしています。
五十川様:The Fader Controlは音質が劣化しないというか、何かを通しているような存在感を感じさせないんですよね。そこは素晴らしいと思います。
木部様: フェーダーの触り心地も滑らかですね。この滑りの良い感じが好きです。
五十川様: 自分もフェーダーを突いたり早く動かすことが多いのですが、耳で聴きながらリアルタイムで手コンプするような使い方なので、このくらいの軽さが使いやすいですね。フィジカルコントローラーのようにフェーダーにモーターが入っていると、どうしても重くなってしまうので、思い通りには動かせないんですよね。
木部様: それにフィジカルコントローラーだと、0.5dB動かしているつもりが全く動いていなかった、ということもありますからね。The Fader Controlの良いところは、ボリュームのコントロールに連続性があるところだと思うんです。
- またこちらのスタジオでは、リモートワークが普及した現在でも効率的に収録作業が行えるよう、ZOOMを利用したリモート収録に対応しています。最後に、この便利なシステムをお二方に紹介していただきました。
Black Magic Design Atem MiniとZOOMを使って、ここでの収録作業をリモートで行えるようにしています。Rec/Playのタリー信号を使って、ProToolsが録音再生中はその本線の信号がZOOMに流れて、停止されると自動でコントロールルーム内のZOOM用に用意したマイクに切り替わるように制御しています。音声も高品質に送信できています。
映像はスタジオに設置したカメラやProToolsの画面を切り替えて送れるようにしています。
リモートで収録作業を行う場合には、ProTools本線だけではなく、再生を止めた後のコントロールルームにいるディレクターとのやりとりが一番重要で、リモートで作業に参加している方たちにも全てお伝えしないと成り立たないのですが、その音声の切り替えを手動ではなく自動で行えるのは便利ですね。
協力:タックシステム株式会社
■ The Fader Control 導入事例(MA STUDIO)
https://umbrella-company.jp/contents/umbrella-company-the-fader-control-square-enix/