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5/11に発表されたEmpress Effectsのハイゲイン・ディストーション”Heavy Menace”は、発売以来既に多くの方にご愛用いただいています。ヘヴィなディストーションに洗練されたノイズゲート、高品位な3バンドEQを備え、よりフレキシブルに進化したHeavy Menace。いったいどのような秘密が隠されているのでしょうか。
今回、Menaceのリード・デザイナーであるTaylorと、Empress Effects創設者のSteveにメール・インタビューを実施しました。回路設計における考え方など、かなり深いところまで聞き出すことができたので、ぜひ最後までお楽しみいただければと思います。
Q:Heavy Menaceの歪みを作り出すためにどのような方法が使われているのでしょうか?ダイオードのクリッピングですか?もしそうなら、どのようなダイオードが使われているのでしょうか?
―Heavy Menaceは、6つのトーンシェーピングフィルターに囲まれた3つのクリッピングステージを持っています。非対称のLEDクリッピングステージが2つ、対称のダイオードクリッピングステージが1つあります。フィルターのいくつかは固定のフィルターで、本格的なBaxandall EQも装備しています。 実はクリッピングステージよりも、フィルターの方が音に重要だと考えています。クリッピングステージの間にフィルタリングを加えなければ、使いづらい雑な音になってしまいがちです。私たちは、クリッピングとフィルタリングのステージの順番を何カ月もかけて試行錯誤し、タイトなローエンドと絶叫するハイエンドを両立させました。
Q:Heavy Menaceの電源はとても興味深いです、昇圧回路による強力な設計を選択した理由は何だったのでしょうか?
―完全に必要だったのです。私たちの設計では高品質のオペアンプを使用していますが、それでも電源からのノイズをオーディオ経路に入れないようにすることは完璧ではありません。Heavy Menaceのゲインは非常に高いので、電源にノイズが含まれているとオーディオ経路に侵入しノイズは大きく増幅されます。ヘッドルームの広い製品を提供すべく、スイッチングレギュレーターを追加する必要がありました。スイッチングレギュレーターには優れたものを選び、電源には最高のパーツを使用し、回路のレイアウトにも気を配りました。そうすることで、ハイゲインでありながら低ノイズの回路を実現することができたのです。
Q:Heavy Menaceをデザインする際に、Heavyから受け継いだものは何ですか?
―ディストーションとゲートの回路の多くは両ペダル間で同じですが、Heavy Menaceでは新しい機能と小さな筐体に対応するためにいくつかの変更を加える必要がありました。
Heavyにはフットスイッチで切り替えられる2つのチャンネルがあり、別々のコントロールがあるので複雑ですが、Heavy Menaceは1組のコントロールに留めたことで簡潔になりました。ハイパスフィルターを制御し、低域を引き締めることができるWeight回路は継承しています、ハイゲインな歪を駆使するプレイスタイルに最適な機能です。また、Heavy Menaceには、Heavyと同じアダプティブゲートが採用されており、エンベロープフォロアによって高速停止や持続音を検知し、演奏に適切に対応します。
Q:ゲートはどのようなコントロール方式ですか? FETですか?VCA?OPTICAL?
―ゲートにはVCAコントロールを使用しています。
Q:ゲートのON/OFF SW機能を搭載したのは誰のアイデアですか?
―誰が言い出したのか覚えていませんが、歪み回路とは別にゲートのON/OFFを切り替えられるようにすれば、素晴らしい機能になるのではと意見が一致しました!これはParaEq MKIIペダルのBoost機能の実装に似ていて、EQと一緒に起動するか、完全に独立して起動するかを設定することもできます。独立した切り替えモードでは、歪とゲートの効果の異なる2つのディスクリートペダルとして機能します。
Q:HeavyからHeavy Menaceへの最も大きなアップグレードは何ですか?
―新しいLite(ish)モードは、ライトな歪で汎用性を広げます。ノイズゲートはフットスイッチで切り替えられるようになり、ディストーションをかけた状態でもかけない状態でも使えるようになりました。また、メインのギター入力の代わりに外部信号でゲートをコントロールできるgate key inputが追加されました。これは、シグナル・チェーンでHeavy Menaceの前にペダルをチェインするプレイヤーにとって素晴らしいことです。入力の信号がブーストされ歪んでノイズまみれでも、ゲートキー入力にクリーンな信号を送ることで、プレイヤーが期待する通りのゲート動作が得られます。中域の周波数は完全にスイープ可能になり、200Hzから2.5kHzとオリジナルのHeavyよりも広いレンジを持つようになりました。また、ペダルはトゥルーバイパスとバッファードバイパスの切り替えが可能です。
Q:Heavy Menaceが持っている、Heavyにはなかった新しいアイデアは何ですか?
―Heavyは純粋にヘビーなジャンルのために設計されました。Heavy Menace のLite(ish)モードは、ハイゲインサウンドと高度な機能を求めるが、より過激で攻撃的なサウンドはそこまで必要ないかもしれないプレイヤーに素晴らしいディストーションと柔軟なEQ、そして我々のアダプティブゲートを提供します。 また、このペダルのビジュアル・スタイルも大きく変わっていることにお気づきでしょう。私たちのグラフィックデザインはミニマルなものが多いのですが、Heavy Menaceのアートワークは、ここオタワの才能あるタトゥーアーティスト、Kaylie Seaver が手掛けたものなのです。
(Kaylie SeaverのHPはこちら。過去の作品を見ることができます。)
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Q:Heavy Menaceの回路設計で最も重視した点は何ですか?
―Heavy Menaceでは、Empress Heavyの優れた点をすべて取り入れ、さらに多くの機能を追加して、よりコンパクトな筐体に凝縮することに注力しました。最も重要なポイントは、優れた音質を維持すること、ノイズフロアを非常に低く保つこと、そしてノイズゲートが完璧に動作するようにすることでした。
Q:そのどれもが見事に実現されていると思います!最後に日本のユーザーへのメッセージをお願いします。
―Heavy Menaceは、ブレイク・アップの遥か先を目指すプレイヤーや、ノブをフルテンにしても満足しないプレイヤーのためのペダルです。あなたにとって、これだけ強い歪みは体験したことがないかもしれません。しかし、Menaceはあなたが目指すところならどこへでも連れて行ってくれると、私たちは確信しています。
幅広いゲイン・レンジと高度なEQコントロールを備えたこのペダルを使えば、思った通りにサウンドを形作ることができます。ハードなディストーションに付き物なノイズの量を心配されている方も、ご安心ください!正確でスピーディーなゲートがノイズを抑制し、演奏中は豪快なサウンドを、そうでないときは死んだような静けさをもたらします。
このペダルは、他のギタリストと差をつけたい、耳の肥えた日本のギタリストにぴったりなペダルだと信じています。 また日本に行ける日を心待ちにしています!(Taylor)
Taylor (Engineer) and Steve (Founder, Engineer)