Powered by

クリエイティブな音楽機材の
メディアサイト

アイキャッチ画像
アイキャッチ画像
アイキャッチ画像
Guitar ギター&エフェクター

FluxToneの新技術”VMT”を解説。アッテネーターとの違いとは?

What's VMT?

FluxToneの最大の特徴である独自技術、VMT。アンプ音量のアッテネーションに革命を起こしたこの技術はあまりに衝撃的で、一切音色が変わらない音量変化を一度聞けば、その感動を忘れることはできないでしょう。

しかし、アッテネーターとは何が違うのか?今まで失われていた倍音とは何なのか?なぜVMTは音が変わらないのか?
そしてそもそも、真空管アンプを大音量で鳴らすとなぜ”良い音”になるのか?

この記事ではそんな疑問を晴らすべく、VMTを技術的に深掘りしてみました。

ゲインアップが生み出す極上のクリーントーン

VMTでは失われない音色の成分とは何なのか?
それを説明するためにはまず、チューブアンプのボリュームを上げたときに起きる変化についてご紹介しなければなりません。それも歪だけでなく、ゲインアップは極上のクリーントーンを生み出している、という点についてお話いたします。

まずはプリアンプでの歪、ゲインを上げ、アンプをオーバードライブさせ得られる歪です。この歪が素晴らしいものであることは言うまでもありませんが、クリーントーンで使いたい場合でも、普段より少しゲインを上げると少しホットな領域に入れます。ピッキングによっても表情の変化を付けやすくなるなど、真空管アンプの魅力あふれるクリーントーンを生み出すことができます。

ではなぜ、ゲインアップすることで極上のクリーントーンが生まれるのか。ゲインアップによるサチュレーションの付加も一つの要因ですが、実はゲインを上げると、ボリューム回路で周波数特性の変化が生じます。(*)これも、ゲインアップが生み出す極上のクリーントーンの大きな要因の一つなのです。

ボリュームにハイパスキャパシターを仕込んでいるアンプでの現象です。


ボリューム回路にはハイパスキャパシターが使われていることがあります。これはボリューム位置で周波数特性を変化させ、小音量でも抜けの良いトーンを得るための工夫です。ボリュームMAXでフラット、ボリュームを絞るとキャパシターにより高域が残り、低域から削れて行く変化となります。デフォルトで採用されている場合もあったり、Brightチャンネルに実装されていたり、Brightスイッチ機能として実装されていたりします。意識してはいなくとも、ふだんお使いのアンプもボリューム回路にハイパスキャパシターを採用しているかもしれません。
このボリューム回路では音量の上下と共に周波数特性も変化するため、当然ながらボリューム位置によって音色も変わります。同じクリーンサウンドの領域にあっても音の太さや音圧に違いが出るのはこのためです。

以上の通り、クリーントーンであっても、ゲインアップすることで極上のサウンドが手に入ります。問題はワンボリュームのアンプの場合、この音色を狙ってボリュームを上げると、出力音量も大きくなってしまうことでした。そこで、その音色を ある程度 キープしたまま使いやすい音量まで下げるために、アッテネーターが使われてきたのです。

しかし、チューブアンプのボリュームを上げることで起きる音色変化はこれだけではありません。

VMTにしか残せない音色の成分

ここまで紹介してきたのはボリュームを上げたときにプリアンプ部分で発生する音色変化でしたが、パワー段でも歪は発生します。出力回路での電気的な歪と、出力トランスが性能の限界に近づき磁気飽和を起こすことによる歪です。これらがシルキーな心地よい倍音が特徴のサチュレーションを生み、チューブアンプサウンドを彩ります。

磁気飽和という聞き馴染みのない単語について、ここで解説したいと思います。
トランスやスピーカーユニットは、コイルに交流電流を流すことで発生する磁気の変化を応用した部品です。素子の中では電流の変化と磁束の変化の変換が行われる訳ですが、100%の効率で動作する理想素子はありません、現実的にはエネルギーが失われたり、波形の変化を伴ったり…このような変換過程におけるロスや誤差が歪、倍音につながる要素となります。

特に大きな信号が入った際には、磁束の変化が素子の限界に達し直線的に変化できなくなり歪が発生します。これが磁気飽和です。磁気飽和はチューブアンプの出力が大きければ大きいほど増えていきます。電気信号が電源電圧以上に振幅は大きくなれないので波形が歪む感じとイメージは似ています。徐々に徐々に、曲線的に変化しますので、ナチュラルにアナログな質感が追加されていきます。磁束変化の限界は振幅の上下で対称となり3次、5次、7次といった奇数次の倍音が整然と現れます。調和のとれた関係性にあるため、扱いやすい音楽的な倍音と言えます。

パワー部で発生するこの磁気飽和と電気的な歪、それらが生み出すシルキーな心地よい倍音。これにプリ部で発生するサチュレーションが加わることで、真空管アンプの最高なトーンは完成します。
しかし、アンプのマスターボリュームやロードボックスで音量を下げてしまうと、これらの成分を100%キープすることができません。それどころか、後者に至っては磁気回路自体を変質させてしまいます。VMTだけが、これらの成分を維持したまま音量を変えることができるのです。

それでは、アッテネーターやマスターボリュームでは維持できない音色変化を、なぜVMTは維持することができるのか?
それを紐解くために、VMTの仕組みについて解説しましょう。

アンプの上に設置されたFluxToneシステム・コントローラー

スピーカーとVMTの仕組み

スピーカーは永久磁石の磁力を使って、振動板を駆動し音波を発生させています。正確には、アンプからの電気信号によってボイスコイルに発生する磁力を永久磁石の磁力と反発させて、ボイスコイルと接着されているコーン紙を動かすことで音波を発生させています。

磁力の強さは、アンプからの電気信号を音に変えるスピーカーの能率(変換効率)に大きく影響します。大音量を実現するためには強い磁力が必要になり、逆に磁力を弱めれば音は小さくなります。

そのため、スピーカーの音量は以下の3つの要素で決まると言えます。
1.アンプから供給する信号の強さ
2.ボイスコイルの巻き数
3.ボイスコイルを横切る磁界の強さ

すると、音量を下げるためには以下の方法を採る必要があります。
①供給する信号の強さを下げる
②ボイスコイルの巻き数を減らす
③ボイスコイルを横切る磁力を弱める

①は最も簡単にコントロールできる手段で、マスターボリュームやロードボックスはこの原理です。マスターボリュームは、プリ段とパワー段の間の可変抵抗器でアンプからの信号の強さを下げています。ロードボックスはパワーアンプとスピーカーの間で、アンプからの信号の電気エネルギーを熱エネルギーとして消費させ、音量を下げています。

②はボイスコイルを分解し、巻かれた電線をほどくしかありません。これはコントロールの自由度もなく現実的ではありません。

そして残った③に注目し、実現したのがFluxToneのVMTです。

VMT(Variable Magnet Technology)ではスピーカー内の永久磁石を電磁石に置き換えています。電磁石は流す電気の力を変えることで磁力を調節可能です。VMTはこの原理を利用して、ボイスコイルを横切る磁力を制御しています。つまり、VMTはアンプから供給する信号、すなわち電気エネルギーから音への能率(変換効率)をコントロールすることで、音量をアッテネートする技術と言えるでしょう。

この単純ながら革新的な仕組みと、マスターボリュームやアッテネータの仕組みを比較し、VMTだけが音色変化を完璧に維持できる理由を明らかにしていきましょう。

VMTがフレームの下に取り付けられたFluxTone Guitar Speaker

マスターボリューム vs. ロードボックス vs. VMT

まずはマスターボリュームについて。
マスターボリュームは先述のように、プリ部をオーバードライブさせた歪を保ったまま音量をコントロールすることはできます。しかし、マスターボリュームで音量を下げるということは、出力トランスへのパワーを抑えるということです。そのため、パワー段で発生するはずだった磁気飽和による芳醇な倍音は、音量と一緒に抑えられてしまいます。

次にロードボックスについて。
ロードボックスはパワーアンプからスピーカーへ到達するパワーを抑制するために、パワーアンプとスピーカーの間に抵抗器による減衰回路を挿入しています。これはパワーアンプからスピーカーまでの回路が変わってしまうということです。(正確には、挿入される減衰回路の直列抵抗とスピーカーユニットとで分圧が発生します。)
そのため周波数レスポンスも変化してしまい、プリ部やパワー部で発生している音色の変化は完全には再現されないほか、磁気飽和による倍音も変化してしまいます。具体的には低域が抜け落ち、中低域にピークが生じ、中高域の瑞々しさを失なってしまうような変化です。
この不本意な音色変化こそFluxToneがVMTを開発するきっかけであったと、VMTの開発者であるFluxToneのSteve Careyは話しています。

そして最後にVMT。
先述の通り、VMTはスピーカー内の電磁石の磁力を制御して音量をコントロールする技術です。そのためパワーアンプからスピーカーまでの回路には立ち入っておらず、パワーアンプとスピーカーがケーブルで直結されるのみ。
そのためプリ部での音色変化はもちろん、パワー部でのサチュレーションや磁気飽和による倍音を失うことはありません。その上ロードボックスのように発熱することもなく、極上のチューブアンプの音色を一切変えずに真に音量だけをコントロールする事を可能にしているのです。

ボリューム・コントロールはワンノブで十分

VMTは「アンプからスピーカーまでの信号の経路に立ち入らなければ音質は変わらない、磁力を変えれば音量だけ変わる」という、ごくシンプルなアイデアに基づいています。そのためVMTのコントロールもノブ一つだけと極めてシンプル。しかし、ボリューム・コントロールとはそうあるべきでしょう。

ロードボックスには様々なコントロールが設けられている機種も多くあります。それは音色変化が避けられず、その失われた周波数成分を取り戻す必要があるからに他なりません。逆に言えば、音色が変わらないのであればワンノブで十分。VMTを体感すると確かにこれで良いと実感できると思います。

製造中のVMTコントローラー

次は体感!

ここまでの解説で、VMTの素晴らしさをご理解いただけたかと思います。しかし、実際にVMTを使用したときの、思わず自分の耳を疑ってしまうような衝撃、思わずにやけてしまうような感動も、VMTの素晴らしさの一つかと思います。真にピュアなボリューム・コントロールを、ぜひともご体感ください。
VMTが搭載されているFluxTone Guitar Speakerを試奏可能な店舗・スペースはリンク集にある「FluxTone 製品を試奏可能な店舗・ショールーム一覧」からご確認いただけます。皆様のお越しを、心からお待ち申し上げております。

リンク集

FluxToneブランドページ
FluxTone Guitar Speaker製品ページ
FluxTone 製品を試奏可能な店舗・ショールーム一覧

 

 

SHARE

Facebook Twitter リンクをコピー