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アビィロード・スタジオとCHANDLER LIMITEDが共同で復刻&開発を手掛けるTG2マイクプリアンプは、1968年~1970年代にかけて、英国EMIレコードが開発したTGコンソールのヘッドアンプを正確に復刻したアウトボードです。
ザ・ビートルズ後記~各メンバーのソロ・ワークス、ピンク・フロイドなど、多くの名作を生みだしたTGコンソールは、ロックサウンドの歴史そのものであるといえます。このたびアンブレラカンパニーでは、「ハードウェアー機材の素晴らしさ」を伝えるプログラム、"BACK TO BASICS"の特別企画製品として、CHANDLER LIMITED TG2 マイクプリアンプ/DIをモディファイした "TG2(BACK TO BASICS)"を発売開始いたします。
マイクロフォニックノイズを対策したメカニカルなチューニングにより、オリジナルTG2のサウンドの魅力を100%引きだすだけでなく、メーカー直伝のファット・サウンド・モードを追加搭載。1968年以降の英国アビィロード・スタジオの伝説のオリジナル・サウンドはそのままに、メーカー直伝の新たなサウンド・オプションを搭載した特別バージョンです。TG2(BACK TO BASICS)との比較サウンド・レビューはこちらです
グラフでは“ノーマル仕様のTG2”と“TG2(Back to Basics)のファットサウンド・モード”の周波数レスポンスの違いが確認できます。例えば、一番上のラインは2本のラインが重なって途中で枝分かれしています、黄色は“ノーマル仕様のTG2”の周波数レスポンス、水色が“TG2(Back to Basics)のファットサウンド・モード”となっています。どちらも+75dBのゲイン設定ですが、黄色は100Hzあたりから低い方でロールオフしているのが分かります。遮断特性が緩やかなのでナチュラルな帯域のコントロールとなっています。水色は20Hzを下回ってようやく低下の兆しが確認できる程度のフラットレスポンスとなっています。その下に続く赤と緑、ピンクと黄色… の関係も同様です。 意図的なサウンド・コントロールが施された設計の“ノーマル仕様のTG2”では、ゲインの増加に伴ってエネルギー密度が中域に集中し、パンチがあちつつも扱いやすいトーン・キャラクターとなっています。 一方の“TG2(Back to Basics)のファットサウンド・モード”では、よりフラットなレスポンスとなり、濃密で低重心、一回り大きい音像、余裕のある落ち着いたサウンドとなっています。さらに実際のサウンドはより自然で、鮮明であることも特徴的です。
オリジナルはオリジナルで歪ませ気味に使った時のドライでマイルドな質感がありTG2らしいサウンドだし、モディファイの低域が少々しっとりとした、ムチっとしまった張り感も心地いい。CHANDLERが教えてくれた方法だとどちらかしか選べない。切り替えができたら面白いんだけど‥‥と考えました。
真ん中にSummingスイッチがあるが、この機能は現場ではなかなか重宝しているとの意見もあり他の手段を検討。 プッシュスイッチは、ファンタムON/OFF、フェイズ、入力インピーダンス、Mic/DI切り替え、どれも必要な機能。DIの切り替えはGRACE DESIGN社の製品のようにジャックが兼ねるのはどうか、DEMETER STDB-1のモディファイで使用しているリレー基板を使い、ジャックの抜き挿しで自動切り替えにしてしまえば、このDIスイッチをモディファイとノーマルの切替用のスイッチにあてられる。これでオリジナルの特性に加え、モディファイ・サウンドがトーンバリエーションとしてプラスされることになります。さらに、現在社内でそのサウンドへの効果の高さが話題になっている『配線や基板の制振モディファイ』を追加することでサウンドの基礎を固め、サウンドの体幹をパワーアップさせることにも成功しています。次にその制振モディファイに説明したいと思います。
マイクロフォニックノイズって聞いた事がないでしょうか?ケーブルの宣伝文句としてよく出てきますが、導体が振動などにより動くことで導体間の静電容量の変化を生み、それが信号ラインの電圧の変化つまりノイズとなる現象で、フレキシブルに動くケーブルではとても重要なポイントになります。音響機器は据え置きが基本ですが、内部にも配線は存在します、配線が振動すればマイクロフォニックノイズの発生につながります。配線がなくても基板が振動することでマイクロフォニックノイズにつながります。通常はひじょうに小さいため、ほとんど問題になりません。しかし音質を追求する上では邪魔な存在であることには違いありません。特に微小信号を扱うマイクプリアンプではそれが大きく作用します。仮に-50dBu程度のマイク信号、これが100dB以上のダイナミックレンジを求められた場合、上に20dBとるとすれば小さい方の信号レベルは -130dBu以下、ここまできれいに増幅しなければなりません。このレベルでは配線を直接たたけばマイクロフォニックノイズの方が大きいくらい、これをラインレベルまで +50dBゲインを稼ぐと、混入したノイズも一緒に +50dBされてしまいます。こうなると、電源トランスの振動やモニタースピーカーからの音波による振動のような小さな振動も無視できません、はっきりとノイズとして現れるまでではなくても音を濁らせ汚すには十分です。制振材によりチューニングを施すとその濁りやざわつきがとれ、アンビエンス成分の分解能が増し、さらに踏ん張りの効いた強い音像となったのが分かります。今回、制振材に選んだエプトシーラーは、程よい柔軟性と優れた復元率を併せ持つスポンジ状のゴム系素材、配線の下に枕として入れてみたり、基板と筐体で挟み込んで振動を抑制したり、入出力トランスと筐体間に用い機構的なアイソレートや、機器内部のパーツの振動を吸収するように、効果的な場所に適切に配しています。マイクにサスペンションを使うのと同じ感覚で、余計な振動の伝達を防ぎ、目的の音声信号だけを増幅するため、先述した絶大な効果があるのです。
しかし、このようなメカニカルなチューニングの場合、体感できる効果ほどはグラフや電気特性には現れてはくれないので、簡単なサウンドサンプルをアコースティックギターの音源で録音してみました。
"TG2-NORMAL"がオリジナルのTG2です。"TG2-B2B"はオリジナルのTG2に『配線や基板の制振モディファイ』のみを施した時のサンプル・サウンドになっています。この2つのファイルを聴き比べると(なるべく良い再生環境で聴くことをお勧めします)、"TG2-NORMAL"は一音一音が少しブレがあるように聴こえ、"TG2-B2B"は音がしっかり立っていて明瞭であることが分かると思います。"TG2-B2B"の方が高域弦のサスティーンが際立ち、低域はしっかりとタイトに伝えられているのが確認できるのではないでしょうか。丁度オーディオ装置で電源環境をハイグレードなものに変更した時のような、音の濁りが取れたような感じに近いかと思います。サウンドのキャラクターを変化させるものではなく、より本来のサウンドを引き出すような傾向に働きますので、この『制振モディファイ』によって、TG2の持っている本来のサウンドを、一切濁らせることなくストレートに引き出せていると思います。
また3番めのファイル "TG2-B2B-EXTRA"が、今回CHANDLER LIMITED直伝のオリジナル・モディファイのファット・サウンド・モードになります。今回のサンプル音源は全てゲインを高めに設定して録音されていますが、2番目の"TG2-B2B"に比べて低域がとてもリッチになっているのが分かると思います。TG2のローエンドはとてもオーガニックな倍音感を多く含み、正にアナログのファットさを表現できる素晴らしいサウンドなので、ローが多くてもそれが嫌みにならず、心地よく伝わってきます。
今回は社内での簡易テスト音源のみでしたが、ドラムスやギターアンプ、もちろんボーカルなどでも、この2つの『オリジナルTG2』と『よりファットなモディファイTG2』の使い分けは、楽器の種類や、求めるサウンドの方向性によって実践力となる「バリエーション」をプラスできるものです。また『制振モディファイ』が基盤にあることで、これらのサウンド・バリエーションの素晴らしさを、よりしっかりと伝えられるようになります!
Back to Basics(B2B)モディファイにより、オリジナルのサウンドも残しつつ、新たなトーンバリエーションを追加。さらにメカニカル・チューニング(制振モディファイ)により、ダイナミックな基礎力がアップしたTG2(Back to Basics)をぜひ体感してみてください。