クリエイティブな音楽機材の
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プロフィール 古川貴浩(フルカワ タカヒロ) ベース 作詞 作曲 編曲 サウンドプロデューサー 長野県上田市出身 ソニーミュージックパブリッシング所属 14歳よりエレクトリックベースを始め、19歳で音楽活動の為上京後、ベーシストとして活動する。 2005年から作曲、編曲にも本格的に取り組みこれまでに戸松遥、スフィア、嵐、 乃木坂46、Aimer、YUKI、栗山千明、水樹奈々、flumpool、関ジャニ∞、タッキー&翼、やなぎなぎ、9nine、分島花音、(敬称略)など様々なアーティストの作曲、編曲、ベースRecを担当し、テレビアニメ、ドラマなどの劇伴やゲームアプリ、コンサート用の音楽制作まで幅広く活動している。また自身の名義でベース教則本を2冊出版している。 Furukawa Takahiro WebSite http://www5d.biglobe.ne.jp/~udonsky/
★古川さんはアレンジャーの仕事を中心に幅広くご活躍されていますが、楽器はベースから始められたとのことで、現在のアレンジャーとして仕事をされるまでの経歴についてお聞かせください。
18歳の時に長野から上京して、都内の専門学校に通いましたが、その頃はベーシストを目指していたんです。 地元でバンドを始めた頃にベースを弾いていましたが、ドラマーがいなかったので、替りにリズムマシンを使って打ち込みも始めていました。そんな流れで始めていたので、打ち込みの作業には全く抵抗がなく続けてこれて、現在の仕事に繋がっています。 20代半ばには仕事の幅を広げるために編曲をやろうと思い、同時に作曲も始めました。 ベーシストは編曲が好きな人が割と多いような気がします。単音楽器だから、気持ちにゆとりがあるのか、他の楽器のことも冷静に見ることができるような気がしますね。
★こちらのプライベートスタジオでは、どこまでの制作作業をされているのでしょうか。
アレンジから録りまでの作業をここで完結させることも割と多いです。最近では外のスタジオで全部録る場合と半々くらいですね。 ボーカルをここで録ることもあります。以前住んでいたところではブースも作っていたのですが、普通のマンションだったので音出しには制限があったんです。ここはしっかり防音されたスタジオなので、音に関しては制限無く使えています。ベースアンプも本気で鳴らしていますから。 MIXについては、必ずエンジニアの方に外のスタジオで作業してもらっています。何人かよくお願いしている方がいますが、それぞれに得意なことがあって、皆さん素晴らしい方ですね。
★全ての録りを行うこのスタジオで、コンプレッサーのWes Audio Beta76を導入していただきまして、ありがとうございます。
アウトボードは今のところ録りの段階でしか使っていなくて、必要最小限しか揃えていないですが、その中でもBeta76はかなり気に入って使っていますね。 知り合いのエンジニアが使っていたのがきっかけでBeta76を知ったのですが、そこで初めて聴いた時の印象がとても良かったんです。
★Beta76を導入を決められた理由は?
掛かり具合と音はもちろん良かったのですが、一番の決め手は、サイドチェインの機能でしたね。プラグインのコンプにはサイドチェインの機能が付いているのもあるので、実機でも付いていたらいいのに、と思っていたんです。 特にベースを録る際にこの機能は必需品なんです。ベースを録る時にはまずラインで録って、アンプを鳴らす時はリアンプを使っていますが、Beta76のサイドチェインを使うと、ピッキングにちゃんと引っかかってコンプレッサーが掛かってくれるんです。オリジナルのUrei/Universal Audio 1176にはこの機能は付いていないので、どうしても低域成分に引っかかってしまうんですよね。 自分は常に重心を意識して音作りをしているんです。出音が硬いとかローが多いとか少ないというのではなくて、低域に存在感があるような重心のコントロールをしたくて、TG2やBeta76などの機材もギターやベースの存在感を出せるということを意識して揃えてきました。特にBeta76のサイドチェインを使うと重心を下げられたり、そのコントロールがしやすいんです。
★Modern Mode/Vintage Modeの機能については、どのように使い分けていますか?
ボーカルやA.ギターに使う時には、音を聴きながらModern ModeかVintage Modeを選んでいます。基本的にVintage Modeの方が存在感が出てくる感じですね。最初はトランスを通したVintage Modeの方が良いに決まっているというイメージも持っていたのですが、そこは敢えてModern Modeでも試してみたり、曲のイメージでもう少しクリアな質感にしたいような場合にModern Modeで使うこともあります。 コンプを敢えて掛けずに、信号を通して質感を加えるだけの使い方もしています。
★ありがとうございます。続いて、CHANDLER LIMITED TG2を導入されたきっかけについてお聞かせください。
A.ギターやギターアンプを録る時に、他にいつもと違った録り方はできないかと思って機材や楽器を探すようになって、ギターはもちろんマイクなども色々と試してきた中で、マイクプリの選択肢を広げるのがいいのかな、と思えてきたんです。 マイクプリはAUROLA AUDIO GTQ2を何年も使ってきていたんですが、最初のマイクプリの導入を考えはじめた当時、HAはNEVE系かAPI系のどちらかという自分の主観でザックリとした選び方をしていて、外のスタジオでA.ギターを弾きながら比較したんですが、APIは音が前に出てきて、ギターにはNEVEよりもAPIの方が自分は好きなんだなと思いました。でもAPIは少し線が細く感じてしまって、それが理由でその時はAPIの導入を見送ったんです。
★その比較の結果、まずAUROLA AUDIOを導入されて、暫くしてから新たにTG2が候補として挙がったんですね?
そうですね。知り合いのエンジニア数人にギター録るのに良いHAって何?って相談すると、大抵の人がTG2を挙げていたんです。その頃に丁度レコーディングでギターにTG2を使って録るチャンスがあって、聴いたらすごく良いと思ったんです。 改めてデモ機を借りて、まずA.ギターで試してみたんですが、聴いてすごく感動しました。AUROLA AUDIOは出音が少しマットな印象で、ベースには良い重心になるので使いやすいんですが、A.ギターには存在感はあるけど、自分の中ではもう一歩前に出てこない印象を持っていたんです。TG2はA.ギターをインプットホットで使ってみたら、中高域のパンチ感が加わって、音がしっかり前に出てくると思いました。 今までのTG2の無かった環境では、オケに馴染み過ぎていたギターが、TG2を使うことで急に存在感が出てきたんです。
★AURALA AUDIOのNEVEタイプとは全く異なるキャラクターを理解した上で、2機種目のマイクプリとして導入していただいたんですね。導入されてからはどのような楽器に使っているのでしょうか?
主にボーカルとA.ギター、ギターアンプに使っています。 ギターアンプについては、プログラムによってアレンジを進める時には、アレンジ第一稿で行ける時とサイズが変わったり修正が必要になる時があって、ある程度任せてもらえる時は、最初から直接マイクでギターを録り始めるんですが、アレンジの詰めにに時間がかかりそうな案件の場合は、後で音作りができるようにDIを使ってラインで録って、リアンプする手段を取っています。
★マイクは何を使っているのでしょうか?
ボーカルにはNeumann U87を使っていて、ベースアンプ用にはElectro-Voice RE20。ギターアンプ用は主に、SENNHERSER e906かSHURE SM57をセンターに立てて、センターを外した太い成分はMD421かTelefunken M82を使って、いつも2本立てて録っています。 その意味ではTG2は2chの仕様なので助かっています。本当は録った後で微調整をするのはあまり好きではないので、できるならサミングスイッチを使って2つのマイクをミックスして使いたいんです。このスタジオがコントロールルームとブースに分かれていれば、サミングした音を作ってから録ってみたいですが、今のところは大事を取ってチャンネルを分けて録っています。 実はベースアンプにはAUROLA AUDIOのセッティングで満足していたので、今までTG2は使っていなかったのですが、先日インプットを下げ目にして試してみたら、以前にインプットホットで試した時の印象とは全然違って、ベースのラインがはっきり見えてきて、すごく印象が良かったんです。ベース用としても新しく選択肢が増えましたね。
★作業で使い続けてみて、TG2についてどのような印象を持ちましたか?
TG2はNEVEとAPIの中間の印象というユーザーのコメントを目にしたことがありますが、まさにそんな印象を持っています。 僕のイメージの中で、TG2はギターエフェクター然としているというか、ギターのエフェクターってギター用には良いけど、ベースなど別の楽器を通すといまいちピンと来ない印象なんですけど、TG2もギターエフェクターの用にギターには特別相性が良く録れる、という印象を持って使っています。 ボーカルでも声質によって入力レベルの突っ込み具合で音楽的な音色が全然変わるので、目的に合わせて使えると思いますね。あとセッティングが決まった時は、モニターの音もTG2を使った方が歌いやすいというヴォーカリストの意見もありました。
★お話を伺っていて、古川さんはアウトボードについても厳選した機材のみを最小限に揃えて、目的に合わせたセッティングで使いこなしている印象を持ちましたが、古川さんの機材についての選び方について、拘っているようなことはありますか?
例えば、人が言う作品の良い音とか悪い音って、主観の意見に偏っている事が多々あるじゃないですか?あの曲の音っていいよね、って誰かが言っても、漠然とワイドレンジだから良いのか、派手な音だから良いのか、人が何を根拠に音の良し悪しを決めているかはその人次第だと思うんです。なので機材についても、そういう周囲の評判では判断しないようにしているんです。 それよりも、自分が出したい音を出せる機材を選ぶようにしています。ハイファイだから良いわけではないし。例えばLEVEL42のMark Kingのベースを聴いてもローはさほど出ていないし、逆にPino Palladinoのやっているような音楽では高い成分が出ていないものもありますよね。でも、ちゃんと出したい音が出ているんです。 あと、エンジニアさんがスタジオで使う機材の使い方と、僕らが自宅で作業する時の使い方って、少し違うように感じています。特に自宅の機材で録る場合は、セッティングの再現性を重視することが多いんです。エンジニアさんは様々なスタジオで、言ってしまえばその曲に合わせたその場限りのセッティングをゼロから素早く作り上げて毎回良い音を録っているので。 自分が自宅で使う場合は、TG2のゲインがステップスイッチだったりすることが重要で、例えばライン録音ではあのギターは+50dB、あのベースは+40dBといったようにメモしてあれば、数日に渡る制作でも同じ入力レベルを再現できます。アウトプットツマミは無段階の方を使ってますが、動きの滑らかさと効きが繊細でかなり微妙なセッティングに対応できたりと、長く使って行く上で、もちろん機材の要領をしっかり把握しておく必要はありますが、そういう意味でも、TG2は信用できるしとても気に入っています。 このスタジオの規模だと、自分の中ではこの2機種があれば、十分目的に合わせて使い分けていけるのかな、と思っています。
★今持っている機材を使い続けることで、セッティングや他の機材との組み合わせで、まだまだ新たな音作りが見つけられるかもしれないですね。
そうですね。揃える機材は今はある程度落ち着きましたが、使い方については、まだまだ色々試してみたいですね。 今後は今持っている機材で、この部屋でできることをさらに探っていきたいと思っています。
★ありがとうございました。
製品リンク ・CHANDLER LIMITED TG2 http://umbrella-company.jp/chandlerlimited-TG2.html ・WesAudio Beta76 http://umbrella-company.jp/wesaudio-beta76.html