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Recording プロオーディオ

AURATONE "5C Active Super Sound Cube" 導入事例 | サウンドエンジニア 伊永拓郎様

伊永拓郎(コレナガタクロウ)

Recording/Mixing Engineer

早稲田大学大学院卒。建築学で修士号を取得しながら、ソニー・ミュージックスタジオへ入社した、異色の経歴を持つエンジニア。
2019年に独立、現在はフリーランスで活動中。
2022年より昭和音楽大学サウンドプロデュースコースで教鞭を執るなど、後進の育成も積極的に行う。

Twitter : https://twitter.com/johnny_korenaga

Spotify : https://open.spotify.com/playlist/0vK3jQKonlNTHBoYKnX8TW?si=eca4acbe126f457a

この度はAURATONE 5C Active Super Sound Cube を導入いただき誠にありがとうございました。導入に至った経緯など教えてください。

伊永様(以下K): ハードモノモニタリング用のスピーカーとして使用しています。元々ハードモノモニタリングが好きだったので、NEUMANNのKH80をモノラル運用して使っていました。その際にAudifiedの「MixChecker Pro」という製品を使ってAURATONEの 挙動をシミュレートしていたのですが、導入しやすいアクティブモデルの AURATONEが発売されたのをきっかけに、今回は本家AURATONEに手を出してみたって感じです。

スタジオではどのような位置づけで使用されているのでしょうか?

K: ヘッドホンやラージスピーカーなどと同じ扱いで、モニタリング方法のひとつとしてレコーディングでもミックスでも使用しています。 レコーディングでは、ドラムやストリングスなどのマルチマイキングにおける位相 チェックがとてもスムーズになりました。またベースやキックなどの低音楽器をレコーディングする際に”低音だけ”録れてしまっていないかのチェックに使っていま す。スタジオには家では鳴らせない大口径のスピーカーもありますし、それを大音 量で鳴らすことが可能です。その気持ちよさに任せてローエンドを狙っていると、エネルギーだけ大きくて携帯 やラジカセでは鳴らしきれない低音を録ってしまうことになるので、レコーディングの段階から小口径でナローレンジな再生環境でも通用する低音を確認します。

フルレンジユニット 1発の位相特性と周波数レスポンスが用途とマッチしているようですね。リアルにナローレンジな音を聴きながらだと、マイキングにもフィードバックできたり、メリットは大きそうですね。

K: ミックス時の使い方としては最初のパラデータの整理と、最後のオートメーションの確認に主に使っています。 モノラル運用なので位相や帯域の整理がめちゃくちゃシビアにできます。最初にその整理を済ませておくとミックスが格段に早くなるし、ミックスの際の音の自由度が高くなるんですよねぇ。 ダイナミクスとバランスがすごく見やすいので、ボーカルのコンプ感も見やすい し、最終的なボーカルオートメーションにも重宝しています。リバーブとかディレイ選びにも良いです。モノラル環境でも見えてくるディレイやリバーブはしっかり 実音が存在しているってことなので、ステレオ環境に戻した時も強いんです。

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ミックスではAURATONEの表現力の高さがマッチしているようですね。
冒頭で登場している気になるワードも聞き逃せません。『ハードモノモニタリング』これはモノラルミックスをステレオスピーカーでチェックするのではなく、リアルに1つのスピーカーでモニタリングする手法ですね? ステレオスピーカーで聴くモノラルミックスと、スピーカー1本で聴くモノラル音 声はどのような違いがありますか?これにはどのようなメリットがありますか?

K: ステレオスピーカーでのモノラルミックスに比べて、音像に対する判断はさらにシビアになります。左右のスピーカーに同じ信号を出していたとしても、ルームアコースティックや セッティングによって、耳に届く音に左右差が生まれて位相の判断を誤ったりするのですが、ハードモノであればそういったことが起きにくい印象があります。 レコーディングの際は慣れていないスタジオ・慣れていないリスニング環境で音作りをしないといけないので、AURATONEのような普遍的かつシビアに判断できるツールがあると非常に助かります。

そして先ほども少し触れたのですが、ハードモノモニタリングならどの再生環境でも通用するステレオ感が作れているか否かを判断することができます。 逆相で広げるステレオイメージャーだと、お客さんの聞く環境によってまちまちな ステレオ感の印象を与えてしまいます。

モノラルにすると逆相がぶつかり合って消えるので、スピーカーの左右の距離が離せない携帯のような再生機器だとごっそりギターが消えてしまったり、シンセの印象が大きく変わってしまう、なんてことも起きえます。

そういったプロセッサーを使わずに、左右に振る素材はちゃんとダブル分を演奏し たり、コーラスやディレイを使って実音を増やすようにステレオ感を出せば、どの環境でも変わらないステレオ感が出せます。

これは逆説的に言えば本当のステレオ感はモノラル環境でも確認できるっていうこ となんです。 「環境に左右されないステレオイメージを作るには実音を増やす」→「実音が増えているということは、その変化はモノラル環境でも知覚できる」→「モノラル環境 でもステレオ感は確認できる」という流れですね・・・。伝わりますかね・・・。

モノラルだからこそ見えてくるものがあるという事ですね。AURATONE 5C Active Super Sound Cubeはフルレンジユニットが1つだけの密閉型スピーカー、バスレフ 構造とは違い振動板背面の音波が出てこないので基本的な音質がとても素直ですし 構造からくる音質的なメリットもあるんだと思います。とはいえ、フルレンジ1発の構成ですので周波数特性は公称値で80~15,000Hzと低域は少し寂しく、パーフェクトと言えるものではないと思いますがこのあたりはいかがでしょうか?

K:逆にその狭めな周波数特性にこそ価値があると思います。

導入して初めて気づいたんですが、良いミックスの楽曲ってAURATONEで聞いても その良さが絶対に崩れないんですよね。購入をした当時特に聞いていたのは、 GorillazのCracker Island (feat. Thundercat)
や、Skrillexのrumbleなどなのですが、一聴するとこれらの曲の低音ってAURATONEじゃ聞き取れないって思いません か?でもちゃんと聞き取れるんですよ。サブベースも。キックも。もちろんハイエンドも。

正確に言えば、しっかりこの周波数帯で聞き取れるように歪みやEQ処理を丁寧に 加えている感じです。

サブウーファー等の低音が実音として見えるモニターも良いけど、実音で見えてしまう分処理が疎かになってしまって、いろんな再生環境との互換性は薄れてしまう 気がしています。サブウーファーで40Hzのサブベースが聞こえたとしても、歪ませて倍音を発生させなければ環境によってはサブベースが聞こえなくなります。

なのでむしろ逆に携帯・テレビ・モニタースピーカー・PAスピーカーなど どんな再生環境にも含まれる80-15,000Hzというコア帯域を完璧に作り込むことが大事だと思っています。そうすることで再生環境に左右されない強いミックスが完成します。

ミックス後に小さいスピーカーで確認するのと、小さいスピーカーでモニターして 調整するのでは確かに仕上がりに差が出そうですね。がっつりと作業に特化した使い方でしたが、一つAURATONE 5C Active Super Sound Cubeの真価が見えた気がします。

K: 最高です。ぜひ一家に一台。 アクティブだから省スペースで設置できるし、見た目も可愛くておすすめです。

ありがとうございます。
以前お話をお伺いしましたActive Mic Cableは、その後もお役に立てていますでしょうか?

もちろんです。やはり一番効果を発揮するのはダイナミックマイクでの楽器録音です。長距離伝送での音質の劣化ってこんなに生じていたんだな、と感じます。感覚的にいうと「実が詰まってる」みたいな印象です。EQをかけても歪ませていって も美味しい部分がしっかり録れているから多少の無茶が利く。ギター・ドラム録音には欠かせない存在です。

この度はモニタースピーカーを使い分けてのサウンドメイク術もお話いただき。とても勉強になりました。
ありがとうございました!

Auratone(オーラトーン)日本語ページ
https://umbrella-company.jp/products/5c-super-sound-cube/

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