エフェクター批評 vol.14 mid-fi electronicsのモンドファズ!Psych Byke
08/12

mid-fi electronicsの設計者Dougさんは人間がサイケデリックでできているような人だ。そして彼のバンドやソロアーティストとしての作品や、ライブパフォーマンスでのサウンドメイクはかなりサイケデリックな意味でセンスが良い。彼のペダルは変態的なテイストもあるが、実はどのペダルも飛び出し過ぎたマグナムをそっとチャックの中に収められるような配慮がされている事が多く、どこか親切なおもてなしの心意気を持ち合わせた外道ペダルとも言えるのではないだろうか。
さてPsych Bykeである。直訳すればサイケなバイク。つまりは1960年代に量産されたB級バイクムービー、荒野を汗臭く彩るイタリア系の西部劇映画などが醸し出す「モンド感」を前面に押し出したサウンドになっているらしい。
僕のPsych Bykeのファズトーンの印象はずばりこんな感じです。
ギターの手元ボリュームにはとても反応が良く、硬質ながらじゅわーっと飽和していくファズサウンドは昔一度弾かせてもらったイタリア製のファズに似ていた。サスティンも申し分なく、リミッティングされた倍音感がたまらない。かなり薄っぺらいペラペラファズから、ミュンミュンとうなる快音ファズまで、手元の音量や、FUZZノブで自在に変化させられるのが快感だ。FUZZノブは歪のアマウントというよりはトーンキャラクターを変化させるようで、フル方向でバイク疾走系のトレブリーで攻撃的なアタックになり、絞るとメロく砂漠で接吻するシーンのような甘いフォーカスになる。バキっとリミットのかかった単音リフも最高だが、コード感もあるので是非少し手元で絞ったトーンにトレモロをかけて揺らしてみたくなるサウンドだ。やってみたら全くマカロニ&スパゲッティ・ウェスタンなイメージそのもので、髭が生えたような気分である。
Psych Bykeのイメージを膨らませるためにもRuss Meyerの映画などを見てから取り組むことは良い方向ではないかと思う。エフェクターの説明なのに映画をたくさん紹介してイメージを膨らませるのは新機軸ではないかと個人的にはなかなか気に入ったのだが、恐らく結果はやはり自己満足であろう。すまない。
↓この「吸わせる」シーンが好き
とにかくmid-fi electronicsのビルダーであるダグさんは音のイメージのセンスが飛びぬけて良い。「いちどほしくなってしまうととてもほしくなる」 カルトな人気もうなすける快作ファズだと思う。是非お試しください。
Comment
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となりの部屋からサウンドチェックしているのが聴こえてビビッときた!今の何?って聞いたら、これPsych Byke。ネーミングからして期待大です。気になってしかたないのでオシロスコープで波形を観察すると、波形が潰れるというよりは波形がズレる、そんな表現がマッチする異質な変化が見られた。FUZZを右方向にセットすると、入力レベルが小さいときに波形が逆転して見かけ上の周波数が2倍になるポイントが現れる。単音で弾くとサスティン部分でアンプでフィードバックさせたかのようなハーモニクスを含んだロングサスティンが得られる。強く弾いた時にオクターブが現れるOCTAVIA系のFUZZとは異なり、良いタイミングで付いてくれるのでロングトーンのソロフレーズを表情豊かに演出できる。実に興味深い、さすがmid-fi。