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Sola SoundのTonebender MKIIといえば、やはりYardbirds後期〜LED ZEPPELINの初期のジミー・ペイジ(Jimmy Page)サウンドを形作った伝説のファズ・ペダルとして、ロック史にも名を残すほど有名なエフェクターです。特にツェッペリンの最初のアルバムにおける、ジミー・ペイジのギターサウンドやアプローチの重要な要としてTonebender MKIIは存在しています。 Led Zeppelinにおいては1969年の6月までTonebender MKIIが使用されたようで、その後も1971年8月7日のスイスでの公演などで使用されたのではないかと言われています。 3個のゲルマニウム・トランジスタは正確にマッチングさせる必要があり、温度にもとても敏感な部品であるため、個体差も大きく、一概にそのサウンドを定義するのは難しいのかもしれませんが、やはりレッド・ツェッペリンのファーストアルバムにおけるジミー・ペイジのギターサウンドこそが、Tonebender MKIIを最も想起させるのではないでしょうか?
スペインでミュージシャンとしても活躍しているRoman Gilが製作するManlay SoundのSuper Benderは、このTonebender MKIIの回路を再現し、ロックギターサウンドに精通する彼ならではの耳で厳選してハンドセレクトされたゲルマニウムトランジスタ、丁寧なポイント・トゥ・ポイント配線、工芸品のように美しいシルバー・ハンマートーン塗装など、すべてに情熱とこだわりをもってハンドメイドされる究極のギターペダルです。基本Roman Gilが一人で製作する製品であるため、しかもパーツの選定などのクオリティを落とさないためにも、生産数には限りがあり、毎月の入荷数はわずかなものです。 Manlay Sound Super Benderのコアには、ジミー・ペイジのトーンベンダー・サウンドが色濃く息づいており、うっとりするようなサスティーンはもちろん、ギターの手元ボリュームやピッキングによって、ほぼクリーンなサウンドから、唸るような轟音まで幅広く呼応するトーンなど、ロックギターの魅力を伝えられる原点のすべてがこのトーンベンダーに宿っていると言っても過言ではありません! 作り手の耳のセンスによって、まるで異なるファズとなってしまうのが、トーンベンダーの難しいところでもあります。また、信頼できるビルダーが丁寧に一台一台チューニングしてこそ、奇跡のマジックトーンが生まれることは、正にトーンベンダーを所有する喜びでもあります。
さて、最近製作されているManlay SoundのSuper Benderには、もう一つのお楽しみが加わっています。 それは内部に設置されたバイアス調整のためのトリムポットです。 一時は抵抗を差し替えることで2つのサウンドを楽しめるようになっていた時期もあったのですが、最近のロットはすべてトリムポットが仕込まれています。
2019年モデルから、トップにバイアススイッチが追加され、2つのサウンドを切り替えられるようになりました! 右に倒すとSmooth(ZEPサウンド)、左に倒すと Gate(Yardbirdsサウンド)となります。
この内部トリムポットは通常は約10:00くらいの時計位置に設定されています。 トリムポットを回していくと分かりますが、このポジションは通常最もサスティーンが豊かで、伸びやかな、ツェッペリンのファーストアルバムのようなTonebender MKIIファズサウンドが楽しめます。また手元のギターボリュームへの反応が素晴らしく、歪みを落としクリーンなブースト/ドライブを得ることができます。特にATTACKコントロールが最大の場合には手元でのボリュームコントロールによってバリエーションに富んだニュアンスを生み出すことができ、このあたりがジミー・ペイジの多彩な音楽性の表現に一役買っていたのではないかと思われます。また、ATTACKコントロールを最小付近に設定すればファズはFazz Faceのような領域に近い感じとなります。ATTACKが最大では大きなゲインとコンプレッション感が得られ、ノイジーなサウンドが得られますが、少しATTACKを戻してあげることで、暴れすぎないサウンドに調整することもできるでしょう。このようなセッティングのために、ATTACKを最小にセットした上で、ギターの手元ボリュームを少し絞り、サウンドが理想のクリーン/ドライブ・トーンになるようトリムポットのバイアスを調整するのもおすすめです(おそらく、9:00から11:00のポジションがベスト設定となるでしょう)。
そして、Romanらしいもう一つのトリムポットのバイアス・チューニングのベストポジションは、トリムポットを絞り切りに近い状態にセットした「ゲートファズ」ポジションです。 上のビデオでも実演されている通り、このサウンドは正にペイジ在籍時の後期Yardbirdsのサイケポップなアルバム「Little Games」に収録された"Smile on Me"などを意識してチューニングされているようです。ATTACKノブは最大で、バイアス調整のトリムポットを少しずつ最小方向へ回していき、9:00くらいのポジションが美味しいポイントです。手元ボリュームへの反応はほぼなく、伸びやかなサスティーンもなくなりますが、バックグラウンド・ノイズは少なくなります。ギターの弦に触れた際のクリックノイズは多くのファズ・ラヴァーにはたまらないサウンドでしょう!
ジミー・ペイジの1960年代を追求し、トリムポットの設定で「ヤードバーズ」から「ツェッペリン」まで楽しめる、正にペイジ・トリビュート的なトーンベンダーMK2ファズ。途方もないゲルマニウムのクオリティチェックやマッチング作業は想像以上に時間と手間がかかるだけでなく、卓越した耳とトーンへのセンス、そして「愛情」が必要です。 往年のロックギターサウンドを心から愛するRoman Gilだからこそ作り上げられるManlay Soundのファズペダル。確かに、こんな大変な作業を続けられるのは、やっぱり好きじゃないとできないよなぁ〜。絶対に半田持ってる時間より、ギター弾きまくってる時間の方が長いはず(笑)。