クリエイティブな音楽機材の
メディアサイト
Chase Blissの受注生産ライン、Small Batch Blissから届けられる"BAD MOOD"。MOOD MKIIと共通のワークフローを持ちながら、搭載されたモードや機能の多くが完全に別物で、全く新しい印象の新作デバイスです。
この記事では、Knobsの解説動画に沿って、BAD MOODの面白さと革新性をレビューいたします。(日本語字幕があるので、プレイヤーの設定からオンにしてご覧ください!)
Chase Blissを代表する人気機種であり、ギターペダル界で近年のトレンドでもあるテクスチャー系デバイスの代表格としても完成度の高いMOOD MKII。BAD MOODはこのMOOD MKIIを元にしながら、更にワイルドかつトラブルに溢れた方向へ舵を取ったデバイスです。空間系チャンネル+マイクロルーパーチャンネルの2 in 1の構成、またペダルのクロック周波数をイジってピッチや音質を丸ごと反転するCLOCKパラメーターを搭載するなどMOOD MKIIと共通の要素はありますが、BAD MOODではその内容は完全に異なるオンリーワンなデバイスとして仕上がっています。
ペダルを正面から見て左の、空間系チャンネルから行きましょう。ここにはSOUP、RELAY、FLIPの3モードが搭載されています。こちらは独立して使うことも、ルーパーからの出力をエフェクトすることも出来ます。
SOUPはリバーブですが一般的な残響ではなく、どこか異世界的な、もしくは人工的な感触が特徴です。共鳴したレゾネイトが強めのシンセ的な雰囲気で、90-2000年代的なデジタルローファイに通じる世界観もあります。ヴェイパーウェイヴ、リミナルスペースのようなとも言えるかも。
元々のキャラクターはかなり濃いめで、かつCLOCKにかなり影響を受けるため、様々な表情を見せます。CLOCKを下げるとドロドロを尾を引いていくドローン的アンビエンス、高い設定だとありえないくらい狭い部屋やレゾネーター的な感じにもなります。
RELAYはリピーターエフェクト。一般的なディレイと異なるのは、リピート毎にフィードバックが段々減衰するのではなく、決められた回数を同じ音量で繰り返した後にすぐに消えること。フェードアウトしないことで、ディレイとはかなり異なるフィーリングとなります。
例えばループが、次々に現れては消えていくようなアプローチ。リピートがスパッと消えてなくなるので、ドラスティックな表現に向いています。正確なリピート回数を設定して、パルスのようにリズミカルに演奏しても◎。またMODIFYを最大にするとすぐ無限リピートに突入し、ルーパーのように使うことも可能です。リピート中にCLOCKをイジって音楽的にピッチを操っても良いでしょう。
ひねりが加えられたハーモナイザー。MODIFYで設定できるハーモニーはオクターブダウンのみからスタートし、上げる毎に+オクターブアップ、5度、4度が混ざっていく和音となります。このハーモナイズした音に間隔をつけて、ディレイさせて鳴らせるのが最大の特徴。単純なピッチシフトから和音の重なり、更にはハーモニーがシーケンスするようにも演出できる、刺激的なモードです。
ハーモニーを増やしてTIMEで間隔を広げれば、シンプルな単音の入力も複雑なメロディラインのように出力されます。またCLOCKの設定による、ピッチシフト音のキャラクター変化も魅力的。TIMEを少しだけ上げれば、初期のピッチシフターを彷彿とさせる僅かなタイムラグが発生。またルーパーチャンネルにピッチのムーブメントを加える組み合わせ方もオススメです。
ペダル正面から右がマイクロルーパー。自分で録音スタートとストップを行うのではなく、ペダルの入力を常に録音し続けているのが、一般的なルーパーとは大きく異なる点。演奏を「釣り上げる」ような感覚で、意図していないフレーズが意図していないタイミングで切り出されて流れ出します。決まったフレーズを構築するのには全く向いていないのですが、偶発的なリズムや繰り返しが予測不可能に生まれてくるため、テクスチャ的な素材としてぴったりなのです。
空間系チャンネルと同じく、マイクロルーパーにも3つのモードがあります。
MASKではループのダイナミクスを解析し、最も大きい部分へ反応します。設定したスレッショルドを超えるループの一部分のみ、滑らかな浮遊感を付与したり、ノイズを混ぜたり、故障のようなゲートなど、ぐちゃっと再構築することが出来るのです。
LENGTHでマスクのキャラクター、MODIFYでスレッショルドを設定。スレッショルドを上げる毎にループが敏感に反応し、最大では常にMASKが適用されるようになります。ループをオーバーダブすると更にまた反応も変わるため、常に有機的。またMASKモードは最もクリーンなループが作れるため、ここでループを構築して他のモードへ移行していくのも良いでしょう。
BURSTはループを切り刻み、リズミカルなシーケンスパターンに変換します。なんとも無くプレイしたフレーズも安定したテンポで鳴るため、常にリズミカルかつ音楽的に。更にスレッショルドを超える入力を入れると、ループにアレンジが加わる「フィルイン」を行うことが出来ます。
フィルインでは、シーケンスの一部のステップにオクターブアップ/ダウンを適用し、動きのあるバリエーションを生み出します。リズミカルなループフレーズとの押し引きを演出し、リアルタイムで変化を加えられる非常にクレバーなモードです。かなりシンプルな音でも楽しいパターンがすぐに飛び出し、更に音楽的に展開していくChase Blissならではのモードだと思います。
音楽ジャンルに基づいたラジオ局をイメージした5つの再生モードを搭載。再生速度と方向を操ったり、ストレッチしたり、刻んだり、特定の場所だけ抜き出してリピートしたり、霧の向こうに溶けさせたり。
かなり独創的なモードで、実質5つの異なるルーパーが1つに収められていると言っても良いです。それぞれのモードは特定の再生方法とパラメーターを持っており、非常にユニークにループに再構築します。面白いのは、ステーションの切り替えの間に本物のラジオのようにノイズが混ざる点。中間では2つのステーションがノイズとともに混信したようになり、ゆっくりとチューニングが合っていきます。このモードだけで単体のペダルとしてリリースされてもおかしくないほど、広大かつ緻密なモードです。
マイクロルーパー、空間系チャンネルの両方に適用されるグローバルEQを搭載。12時でフラット、左まわして低域を強調したモコモコ、右まわしで高域を強調したスカスカに。ペダル全体の雰囲気を整えるのに有効です。
こちらはペダル全体に適用されるコンプレッション/サチュレーター。低い設定ではコンプレッションの付与として作用し、2つのチャンネル同士を自然に馴染ませ接着する効果を生みます。これはLost + Foundで導入されたアイディアですが、BAD MOODでは更にアグレッシブな方向性へ。オーガニックな質感を足したり、エラー的な表現をしたり、もしくはシグナルを完全に破壊し尽くす事もできます。
パラメーターを上げていくと強烈なディストーション、同時に崩れ落ちるようなゲート効果も発生。ノイズの渦に巻き込まれ機器が故障していくような、デストロイヤーになります。ルーパーや空間系と混ぜると、生き生きとしたノイズや有機的な質感を足せてグッドです。
GlueはdipスイッチのDRY GLUEでドライ音に適用も出来ます。このときMIXを下げきればループや空間系エフェクト無しでBAD MOODを歪みデバイスとして使用できます。このサウンドも非常にクールです。
ダイナミクスでペダルのピッチやボリュームに干渉して、サウンドを妨害するのがCROSS。どちらかのチャンネルがもう一方へ影響を与えるか、もしくは入力自体で両方のチャンネルをモジュレーションすることも出来ます。
入力でのモジュレーションは、シンプルに楽器入力の強さで各チャンネルが変化するのがわかるはず。そして面白くなってくるのは、一方でもう一方のチャンネルをモジュレーションするとき。オーバーダブやエフェクトの設定で反応の仕方もどんどん変わっていき、ペダル内部にユニークな相互干渉を生み出します。固定されたエフェクトではなく、生き物のような脈動を表現できるのです。
BAD MOODをより一層唯一無二のデバイスに押し上げているのが、このCLOCKでしょう。ペダルのクロック周波数、つまり処理速度を可変させることで、音質やキャラクター、ピッチなど多角的な変化を生み出します。ペダルのあらゆる要素が丸ごと変わっていき、パラメーターやエフェクトのレンジも全く異なるものに。ノブをひねるだけで、非常にドラマチックかつスリリングな演出が可能です。
CLOCKは5度とオクターブで変化するようにクオンタイズされており、演奏中にいじってもキーが崩れない音楽的な変化を保ちます。展開に合わせた転調、ローファイからハイファイ、景色の移り変わり。何が起きるかわからない"パルプンテ"なノブ。すべての要素に影響するので、まるで異なるペダルに変貌したかのようにも感じられます。
3種の空間系エフェクト。3種のマイクロルーパー。これらを別々に使用したり、互いに掛け合わせたりするのが真骨頂。化学反応のように互いに相互干渉し、サウンドは予想もしないトランスフォームを繰り返します。わずかなパラメーターの変化やオーバーダブが、どんどん雰囲気を展開させていく。ここにCROSSやGLUEを加えれば、より空間は立体的になります。
BAD MOODとは風変わりな空間エフェクトであり、ワイルドな質感への案内人であり、ユニークなサウンドを生み出す科学実験ツールなのです。
元になったMOOD MKIIとは全く異なる、独自性の強いサウンドです。 ノイズ、グリッチ、エラー的な表現に重きが感じられ、より実験的と言っても良いかと思います。MOOD MKIIが瞬間的に場に馴染むインスタントなアンビエンス性が合ったのに対し、BAD MOODはその強い個性を全方面に放出しつつ、オーガニックな質感も追求されています。
リズム的な要素やダイナミクスへの干渉が多いのも特徴で、場に馴染ませるというより、BAD MOODを核として世界観を構築するほうが良いかもしれません。リバーブ1つとってもアクがかなり強いのですが、Chase Blissらしい音楽的な遊び心があり、次々に興味深いサウンドが飛び出してくるのは見事としか言いようがありません。
MOOD MKIIを持っている、体験したことがあるという方でも、BAD MOODの全く異なる個性は大いに価値があるものかと思います。ノイズ、グリッチといいながら決して単なる突飛な音が出る飛び道具ではなく、圧倒的な世界観を提唱する完成度まで高められているのは脱帽です。限定生産であるのがもったいないくらい!
BAD MOODは期間限定の受注生産品で、2026年8月31日まで受注を受付中です。これを逃すと(しばらくは)手に入りません。Chase Blissらしい感性で作られた超ユニークなマルチエフェクト、Lost + Foundも2026年の新カラーで復活しているので、こちらもお見逃し無く!