クリエイティブな音楽機材の
メディアサイト
★まずGregoryさんが普段の作業で使われているモニタースピーカーについて、そして今回導入していただいたAuratone 5C(Super Sound Cube)の用途についてお聞かせください。
まずラージスピーカーのMusikelectronic Geithain 901Kは、フルレンジでローからトップエンドまでの全体を聴くためのスピーカーとして使っています。ニアフィールドはYAMAHA NS-10Mにサブウーファーを組み合わせたものを使っています。更にラジカセサイズのモニターとして、エンジニアのリスニングポイントから敢えて外した位置にMusikelectronic Geithain MO-1を置いて、クリティカルリスニングに使っています。 Auratoneはセンターの位置に1本置いていて、主に音楽のセンターに配置される楽器で、キック、スネア、ベース、ボーカルなどの一般のリスナーが聴いている音楽の重要な要素の確認のために使っています。Mixの作業でボーカルのレベルを書いたりする時や、ボーカルとオケのバランスを確認する時などにも使います。バランスツールですね。★モノで作業する時にAuratone 5Cに切替えて使われているのですね?
そうですね。Mix以外でもラフミックスの段階でも、言葉がちゃんと聞こえているかどうかの確認や調整に使ったり、レコーディングでもバランスのチェックに使うこともあります。モノにした状態でAuratoneで聴いた方が、ほんの小さなレベルの変化も確認しやすいんです。★どのようにモノの信号を送っているのですか?
スピーカーの切り替えにはSSLのコンソールのモニターセクションを使っているのですが、AuratoneのアンプにYAMAHA PC2002Mを使っていて、アンプ側でモノにしてAuratoneに送っています。★Auratone 5Cを導入されるまでは、どのようにその作業をされていたのでしょうか?
今まではNS-10Mをモノにして、小さな音で作業していました。元々僕が尊敬しているエンジニアの方がモノの確認用にAuratoneを使っているのを知り、今回復刻されたのを機に導入しました。★2chの音楽のMix作業でセンターに1本だけスピーカーを置いている現場は見たことが無かったのですが、敢えて1本だけ使う理由は?
2本のスピーカーをモノラルにして聴く場合、少なからず部屋やスピーカーの時間軸のズレなどで位相干渉が起きてしまい、完璧なモニターセッティングで聴くのが難しい場合があります。 モノで聴く場合は、シングルドライバーのフルレンジスピーカーを1本だけ使って聴くことで、その干渉の問題を排除できるんです。このセッティングだと、部屋のどこに置いても位相の影響がなく聴くことができます。★Auratone 5Cはモノのチェックに最適なスピーカーなんですね。
そうですね。特に海外ではモノのチェック用に使っているエンジニアが多いようです。 良いMixをされた作品は、モノで聴いてもMixのバランスが崩れないんです。Mixの作業で難しいのはモノのバランスを取る作業で、逆に言えばモノでバランスが良くできれば、ステレオでも良いバランスになります。 現代の音楽でも過去の作品でも、Auratoneで聴くことによって、重要なベース、キック、スネアやボーカルなどの素材がどういうダイナミクスでバランスを取っているのか確認できるし、2ウェイや3ウェイのスピーカーで聴くよりも分かりやすいです。 そのため、Bruce SwedienやQuincy Jonesが言っていたように「ウソをつかない、真実のスピーカー」と言えるんだと思います。★Auratone 5Cがスタジオのリファレンスモニターとして使われていたアナログレコード全盛時代と比べて、現在はデジタルレコーディングが進化して、記録される音の周波数帯域やダイナミックレンジも広くなりましたが、その状況の中で、Auratoneを通常のステレオのモニターとして使うとしたら、どのような使い方が考えられますか?
デジタルの録音環境がどんどん進化して、20年前のオーディオインターフェースよりも圧倒的に現在の方が良くなっている反面、現在は聴き手側は圧縮された素材をパソコンのスピーカーやイヤホンなどのレンジの狭い音で再生しているんです。しかもイヤホンはフラットで忠実に再生するというよりも、格好良く聴こえるようにイコライジングされていたりします。 その聴き手側を意識してMixの作業をする場合に、ラジカセサイズのモニター環境は必要だと思いますし、特にミッドレンジをしっかり鳴らせることの出来るAuratoneはその確認に適していると思います。★最後に、Gregoryさんの考えるモニタースピーカーの重要性についてお聞かせください。
ミュージシャンの演奏を録音して作品を作るのにまず大切なのは、原音ですよね。良い機材も重要ですが、エンジニア、クリエイター、クライアントの皆で音を判断する際に、その肝心な(記録された)音をしっかり確認できる環境を整えることも大事にしています。その判断がしっかりできるスピーカーを置くことで、チーム全体の作業効率も良くなると信じています。アウトボードだけ良い機材で揃えるのではなく、音を確認するためのモニターが信頼出来るものであれば、更に良い作品が生まれると思います。★ありがとうございました。
Gregory Germain(グレゴリ ジェルメン) ENGINEER / MIXER フランス生まれ、パリ育ち。日本の文化にあこがれて10代の頃からジャンルを問わず日本の音楽シーンを聴きまくる。20歳から来日。Engineerを目指し音楽専門学校へ入学。 卒業後、スタジオグリーンバードでアシスタントとして様々のメジャーアーティスト、バンドの作品に参加。3カ国語オペレーターとして海外アーティスト、プロデューサーのセッションにも参加。2011年からDigz, Inc. Groupに入社。 Digz内のスタジオDCH STUDIOにてハウスエンジニアとして活躍中。