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12月2日に音楽プロデューサー冨田恵一さんのソロプロジェクト、冨田ラボの「即興作編曲SHOW」がビルボードライブ東京にて行われました。
冨田さんは以前、アップルストアにて即興で作曲を行う無料のイベントを行ったことがありますが、今回は冨田ラボの5作目となる次回アルバムの制作作業の初日を公開し、曲が作られる流れを一から目の前で見られるという、冨田ラボファンだけでなく音楽ファンにも堪らないイベントとなりました。 曲が既に完成していて、作業内容も決まっていて、それを時間内に実演するように思えそうですが、何とこのイベントでは、メロディも曲調もその場で一から即興で作るというのです。 ステージの中央には、冨田さんのプライベートスタジオの制作機材を中心にセッティングされました。冨田さんのプライベートスタジオでは、GRACE design m904をモニターコントローラーとしてお使いいただいており、今回のイベントではシステムを構築されたサウンドウーノの宇野さんに声を掛けていただき、m905を用意してEVE AUDIOとFOCALの2種類のスピーカーのコントローラーとして、またヘッドホンアンプとしてもお使いいただきました。このイベントは、DAWで制作する作業についてある程度知っている方には、冨田さんが一から曲を作る流れを見られるという貴重な時間を楽しむことができて、また制作作業について何も知らない方にも、普段聴いている曲がどんな風に作られていくのかという、その作業を楽しむことができる内容だったと思います。
1ステージ正味70分という、作業工程を考えると本当に僅かな時間で、メロディを一からある程度のアレンジ作業も含めて、観客の前でほぼ1コーラス分形にしてしまったことに、もの凄く感動してしまいました。公演中に作業内容の解説をすることは、時間や集中力を妨げる原因になるため一切ありませんでしたが、その分相当な集中力を保ったままピアノで進行とメロディを作られたのだと思います。Apple Logic ProのDAWでドラムをプログラミングし、ベース、ギターやシンセを次々と重ねていき、全ての作業が驚くほどサクサクと進行して形になっていきました。
今回はデモトラックの段階ではありますが、ギターのダビングではプラグインのギターアンプ選定からディレイなどエフェクトの設定、シンセでもアナログシンセのプラグインを使いサクサク音作りを行っていて、大型スクリーンに映されたLogic Proの画面上で各々のセッティングが丸見えなので、見ていてとても興味深かったです。こちらも集中して見ていると、あっという間に時間が経ってしまい、でもあっという間に曲が形になっていました。また、最初にできたメロディーからは想像できないような展開に仕上がっていく過程を見せたかった、という冨田さんの思惑通りの流れを見ることができたと思います。
終演後の楽屋での話ですが、初めて曲の制作作業を見たという方が、フランス料理の作り方を見ているようだと言っていたのが印象的で、なるほどと思いました。チャーハンくらいなら作り方をイメージできるけど、最初に作り始めた素材から、最後にはこんな形になるのかと、その制作過程をじっくり楽しむことができたのだと思います。個人的に作業中の流れについて解説してほしいと思っていたら、公演中に何を考えながら、どんな経緯でアレンジをしたかなど、詳細に解説されたご本人のコメントと当日制作されたデモ音源が来場者特典としてプレゼントされ、更にアルバムには曲の完成形が収録されるという、イベントが終わったあとも楽しめる、満足度の高いとても充実したイベントだったと思います。
★冨田ラボ・冨田恵一 http://www.tomitalab.com/
★DEMETER VTDB-2B、TGA2レビュー https://umbrella-company.jp/contents/tomita-lab-demeter-interview/
*写真はリハーサル中のものが含まれています。