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Guitar ギター&エフェクター

エフェクター批評 vol.6 CHANDLER LIMITEDのブースト&歪ペダル 2機種を試奏レポート

 

今回の感想文は by やまもと

 

今世紀最高のブースト・ドライブペダル。その独創的な設計とサウンド。

日本でもヒットを記録しているChandler Limitedのペダルの魅力に迫ります。近年ギター製品への開発が盛んでついにはギターアンプの発表も間近なChandler 製品の独創性を徹底レポートしてみます。

 

Chandler Limitedのギターペダルの魅力

それまでプロフェッショナル・スタジオレコーディングのための機材を 製作していたChandler Limited が突然ギターペダルを発表したときにはとても驚いたものです。Chandler Limitedはあの英国アビィロードスタジオの機材スペシャリストとして業務提携し、The BeatlesやPink Floydが実際に使用したEMIのTGコンソールを再開発して一躍有名になりました。その後様々な独創的なレコーディング機材を発表し、設計者の Wade Goekeは今や現代を代表する機器デザイナーとなりました。世界中のどれだけのロックレコードでChandler Limitedの製品が使用されているでしょう?それは数え切れないほどです。もちろんThe Beatlesのリマスター版の作業にもChandler Limitedの製品が使用されています。

Chandler Limitedがこの2つの圧倒的なギターペダルを発表する前に、スタジオ定番のアウトボードGermaniumシリーズとLittle Devilシリーズの話をしなくてはなりません。今やどんな大手のスタジオにもこの素晴らしいアウトボードは設置されています。


↑ Germanium Pre Amp スタジオアウトボードの内部

Germanium Pre Ampはマイクロホン信号を増幅してレコーディングするためのマイクプリアンプです。楽器を入力できるDI入力も装備しています。ポール・マッカートニー の近年の作品などでも一番大切なボーカル録音に使用されるほどのトップ機材です。Wade GoekeはこのGermaniumシリーズのアウトボードにゲルマニウムトランジスタを使用した、独動的なハイブリッドモジュールを仕込みました。写真 の黒いボックスがそれです。レコーディング機器のGermanium Pre Ampにも、ギターペダルのGermanium Driveにも同様のブラックボックスが搭載されています。


↑ Germanium Drive ギターペダルの内部

またGermaniumアウトボードシリーズには全機種、GAINと FEEDBACKの相互関係により、それぞれの無限の組合せにより得られる倍音やトーンの質感を全く変えられるという革新的な回路設計が搭載されていまし た。この機能によりビンテージサウンド系の倍音を多く含むサウンド~クリーンで素直なサウンドまで自由自在のトーンを操ることができました。 Germanium アウトボードシリーズのフレキシブルで本物のアナログサウンドは瞬く間に世界中のミュージシャンやエンジニアのスタジオラックに導入されました。

もちろんこのPre Ampで録音されたギターやベーストラック(少し倍音を強めに歪ませた)のサウンドが最高であったことは説明するまでもありません。

またWade GoekeはこのGermaniumシリーズの発送を発展させたLittle DevilシリーズをAPI500モジュールのフォーマットでスタートさせます。こちらも独創のアナログサウンドを極めたGAINとFEEDBACK構造 を採用しており、赤い筺体がAPIラックの定番アイテムとなりました。

レコーディング機材の発想から生み出されたギターペダル

上記したような流れで発表されたCHANDLER Limitedのギターペダルは、ベースが完全にプロオーディオのスタジオの世界から発祥していることがお分かり頂けたと思います。またデザイナーの WADE GOEKEが本来ミュージシャンでありギタリストであることも、この製品を魅力のあるものに仕立てさせました。

まず内部の写真をみていただければ、この製品が他の一般的なブースターペダルや歪ペダルとは全く異なる次元のものであるかが分かります。クラスA回路構成 でドライブ&フィードバックを搭載し、完全にハンドワイヤリング。また目指すサウンドは「質感」に重きがおかれ、まるでスタジオレコーディングでのミキシ ング作業の中でサウンドエンジニアが音に魔法をかける手法までをもペダルの中に内包してしまったかのようです。

Germanium Driveにおいては 9Vバッテリー×2個の18V仕様(ACアダプター×2も可)という、これまた独自の仕様。広大なレンジ感をもったサウンドは正に革新的です。

サウンドレビュー Little Devil Colored Boost

まずはLittle Devil Colored Boost を試奏してみます。赤い筺体がかっこいい。そしてポジションも悪魔のナンバー「6」にこだわっていいるのが良い。ドライブ( Colored Boost)の目盛りは「6」まで、トーンバリエーションも「6」まで用意されている(Germanium Driveは5ポジション)。

まずはポジション1で弱めにドライブ( Colored Boost)を設定、原音との違いを聴いてみる。原音では全く不満のなかったアンプサウンドだが、少しこのLittle Devil Colored Boost でプッシュしてあげるだけで全く別物の上質なサウンドができあがる!サウンドにリッチな倍音が加わり、一聴して音が太くなり、抜けもよくなっているのが判 る。アンプが1段階といわず、2-3段階よくなったような圧倒的な音質の向上である。凄い!今度は少しずつドライブを上げていくと歪みが少しずつプラスさ れていく。3時くらいからぐっと歪みが大きくなり、トップ付近ではかなり滑らかにファットに歪む。単純なブースターとしてだけでなく、これは完全に歪みペ ダルとして機能するほどの幅の広さだ。この歪サウンドはかなり個性的なサウンドで素晴らしいの一言。他のいかなるブランドの歪みサウンドとも異なる、ク リーミィでリッチで滑らかな歪みサウンドだ。そもそもアプローチが全く異なる点でこの孤高のサウンドが完成しているのだろう。最上級のオーディオにも似た 感覚の高級感のある歪みサウンドである。倍音のつきかたが通常のペダルとも、真空管アンプとも違う。一言でいえば「オーガニック」。間違いなくとても有機 的なサウンド。心地よい音の響きとサスティンは心をわしづかみされたようなインパクトがあります。このポジション1でもかなり歪みます。

6つのポジションは各ポジションごとにサウンドの匙加減が変化し、異なるキャラクターとなります。サウンドのトーンカーブや倍音感が異なる6つのバリエーションです。詳細は製品ページをご参照いただくとして、ここでは簡単な特徴だけを一言だけ書いてみます。

まずポジション1はすべての基本になる基準サウンドです。ドライブが低めでクリーン~高めで十分な歪みが得られます。低域までがっつり出てくるガッツのあ るサウンドです。ポジション2は1よりも少しだけ軽めのサウンドで明るさがあります。ポジション3はさらに軽いサウンドですが倍音は十分に感じられるサウ ンドです。ポジション4ではよりクランチ系のブーストになりますがしっかりとした倍音質感が美しくリッチです。ポジション5はフルに近い状態でも歪みが少 なくクリーンブーストでマイルドなポジションです。最後のポジション6はポジション1のようにフル付近では強く歪みますが、1よりも低域が軽めで明るい タッチです。個人的にはポジション1でドライブつまみでエフェクター的に使うか、ポジション5でほぼクリーンブースト系で使うのが好みでした。少しキャラ がありすぎて迷い気味ですが、どのポジションも基本のカラーは同じ傾向なので感覚的に選択していけばよいのではと思います。

コントロールですがその他に、高域のイコライジングを変えることができる3段階のHighコントロールと(僕はVery Blightが圧倒的に好みでした)、ブーストレンジをFull-Mid-Highの3段階で切り替えられるトグルスイッチがあります。これらは使用する アンプの設定や、他のエフェクターとの関連で、本機になにをやらせたいのか?によって設定が変わると思います。個人的には基本的にはFullレンジブース トで、アンプの設定によってはMidブースターとして使用するのがしっくりきました。

全体的にはアンプのサウンドを「ゴージャス」に変化させる質感付加系の使い方から、少し歪みをたすような設定、完全に歪みペダルとしての使用など幅広く使 用できるペダルだと思います。サウンドはただただ素晴らしい見事なアナログサウンドです。Germanium Driveとの比較は後記したいと思います。

サウンドレビュー Germanium Drive

次にGermanium Driveを試してみます。こちらは9V電源を2発接続する18V仕様です。一聴して感じたのはそのサウンドの奥行きの深さと立体感、余裕のあるレンジ感 です。さすが18Vです。Little Devilがエフェクターとしての役割だとすると、こちらのGermanium Driveはスタジオ用のエフェクターといった印象です。よりコントロールできる幅が広く、微妙なアナログ質感のコントロールも可能、これは足もとのペダ ルの機能をある意味超えているようにも思えます。

Little Devilはより近く張り付くようなサウンドが個性的でしたが、Germanium Driveはもっと余裕のあるゴージャスさが魅力です。もっと大人なイメージです。少しクランチ気味にポジション1でSadowskyのストラト(シング ルコイル)で弾いてみると、もうとろける位にオーガニック、倍音も美しく、ミックス済のレコーディング素材のような素晴らしいサウンドです。

録音現場ではトラッキングしたレコーディング素材をミックスで整えてトリートメントします。マイクロホンの音質や、マイクアンプやコンプレッサーの質感な どが単純なアンプから発せられたギターサウンドをトリートメントしてミキシングされていきます。Germanium Driveのサウンドで私が感じたのは、例えばNEVEなどのビンテージ機材で録音され、適切にコンプなどで整理された最高のギターサウンドでした。スタ ジオのモニタースピーカーから聞こえるあのサウンドです。

Germanium Driveのサウンドはさらにオーガニックで有機的、クランチサウンドの心地よさは特筆すべき点でしょう。アンプのサウンドが完全に脱皮したかのように豹変します。ゴージャスで大人っぽいとても上品な歪でいつまでも弾いていたい上質なサウンドです。

録音スタジオを思い起こさせてくれたのがヒントになり、今度はアンプシミュレーターに色付けする役割でGermanium Driveを使ってみます。アンプシミュレーター経由でヘッドホンで試聴してみます。これは!かなりクオリティの高いサウンドでスタジオモニターで録音さ れたプレイバックのサウンドを聴いている感覚にかなり近いです。アンプシミュレーターのちょっとギザギザしたエッジをちょうど良く調整してくれるので、デ ジタル臭さを見事アナログ感満ち溢れるサウンドにアップグレードしてくれました。ヘッドホンモニタリングとGermanium Driveのオーガニックサウンドはかなり相性が良いので、ちょっと新しいご提案にはなりますがかなりお勧めです。

ポジションについてはポジション3がちょうど中間的なニュートラルポジションに感じました。ポジション1~5まで段階的に歪みが少なくなっていき、低域の 量感が少なくなっていき、抜けの良い明るい音になっていく印象です。ポジション1では一番低音の量感があり、最も歪ませた感じもハードにずんずんドライブ します。ちなみにドライブ設定は1~11までポジションがあり、(ポジション1の場合)4くらいまではクリーン、8くらいまでがクランチ、10でぐっとド ライブし、11ではトップブースト、かなり歪みます。

個人的にはポジション1でFullブースト、High=Very Brightで歪ませた設定、またはポジション5でアンプに質感だけを与えるクリーンブースト系のセッティングが最高でした。特にポジション5のちょい質 感プラスのセッティングは奥が深く、本当にアンプを輝かせることのできる素晴らしいものです。

Germanium Drive と Little Devil Colored Boostを比較

皆さんが気になるのはこの2機種の比較かと思います。Little Devilは9V電源なので取り扱いが簡単、Germanium Driveは18V駆動でACアダプターも独立した2つのアダプターを使用しないといけないなど取扱いでも悩むところです。

個人的な印象では、まずLittle Devil Colored Boostはより従来のエフェクター的、Germanium Driveはプロオーディオ的アプローチを感じます。簡単なのはLittle Devilの方です。エフェクター感覚で操れます。

またサウンドはLittle Devilの方がクリーミーでアグレッシブな歪みが特徴です。けっこう張り付いたようなロックなサウンドが魅力です。押し出し感とガッツのあるサウンドで す。でも十分にオーガニックな響きが魅力です。あまり複雑な電源の取り回しなどを考える必要もなく、シンプルにペダルボードにも組み込めます。

対してGermanium Driveは、そのレンジの広さが素晴らしく、抜けるサウンドがまず特徴です。上質な質感がギターシステム全体のランクを引き上げたようなリッチなサウン ドが最大の魅力です。美しいサウンド、オーガニックな響き、極上のアナログサウンドとはこのサウンドのことです。電源回りなどで個別のACアダプターを用 意しなくてはならない複雑さも、このサウンドの前には全然苦になりません。ポジションを切り替えるときにでるポップノイズも、そのサウンドを犠牲にしない ためにあるかと思うと全て納得してしまう極上のアナログサウンドは素晴らしいです。

どちらの機種にも言えることですが、従来のブースト、歪みペダルのどの感じにも当てはまらない、独創的なサウンドは凄いです。真空管でも、ファズでも、 オーバードライブでもない独特のオーディオ感。がらりと音の印象を変えてしまう魔法のような質感コントロール。奇才Wade Goekeにしか実現できなかった現代の最高傑作ペダルの一つだと思います。

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