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m903

ハイエンドオーディオ誌 レビュー

マイケル・グレースはJeff Rowland design GroupでHi-Fiオーディオを深く学んだ後の1994年にGRACE designをスタートさせた。基本的にはスタジオ用プロオーディオ製品を製造しているが、Hi-Fiオーディオコミュニティーとも常にクロスオーバーしている。


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完璧な明瞭さと音楽性をいつも目標にしている


それはGRACE designの設計がオーディオファイル達にも魅力を感じさせるためだ。「デザインの目的としてはそれは同列だ」とマイケル・グレースは語っています。「完璧な明瞭さと音楽性をいつも目標にしています。精密度も指標の一つですが、たいへん分析的で精密なアンプやDACは世間にいくつかあります。そしてそれは長時間のリスニングではとても疲れてしまうようなサウンドです。もし長時間にわたりヘッドホンを使っていたら正直 脳が疲れてしまいます」。

GRACE design m903には2系統のヘッドホン出力が備わっている。「m903のアンプは複数のヘッドホンをローインピーダンスで駆動しているので複数のヘッドホンを接続してもサウンドクオリティを変化させることのないよう設計している」とマイケル・グレースは言う。

ボリュームは大型のディスプレイに数字で表示される。セットアップメニューの機能にもアクセス可能だ。また別売でm903RCU(赤外線リモートコントローラー)が発売されており、ボリュームやその他の機能にアクセスが可能になっている。「Volumeノブをプッシュするとヘッドホンとラインアウトを切り替えられる。ラインアウトはさらにもう一系統セレクトすることもできるんだ」。

m 903は0.5dBステップでボリューム調整可能だが、驚くべきは0.05dB以内のパーフェクトなチャンネルマッチングを達成している事実だ。「これは電子制御のゲインコントロールを採用することで得られる大きなアドバンテージです。極めてローノイズで、コンタクトをすり減らすこともありません。完璧なチャンネルマッチングが実現できます。そしてボリュームをたいへん低いレベルに設定することもできます。ユーザーはたいへんセンシティブなインイヤータイプのヘッドホンも使用します。その場合にはスタンダードなフルレンジのヘッドホンから何10dBも全体のボルテージを下げる必要があるでしょう。一般のアッテネーターでは6dBステップの制御であったりするため低いボリューム調整が犠牲になってしまいます」。




X-Feedによるアコースティックシミュレート

さらに好奇心をかきたてられる機能としてX-Feed機能が搭載されている。このサーキットは実際にラウドスピーカーで聴いているアコースティック環境をヘッドホンでシミュレートする。「これはシンプルなパッシブサーキットです。サウンド的にとてもニュートラルな演出を行います。この技術はいかにサウンドが人間の顔を屈折して右側のスピーカーから反対側の左側の耳に辿り着くかを電気的にシミュレートしています。これにより自然なリスニングとなり長時間のリスニングでも聴き疲れすることがありません。X-Feedはとても微かなエフェクトですが長時間のリスニングのあとに、それをOFFにしたときなどはヘッドホンの左右のバランスが全く変わったように感じられるでしょう」。

DACのサンプルレートはLEDで表示されます。またS-LOCKがデジタルソースが選択されると点灯します。これはデュアルステージのPLLです。

デジタル入力にはS/PDIF、USB(筐体から直流的に絶縁された。つまりコンピューターと接続したときに全くグラウンドが接続されないということ。グラウンドに起因するノイズが全く発生しません)、TOSLINK、AES3を装備。アナログはバランス(XLR)とアンバランス(RCA)入力と、RCA出力を装備しています。




USBオーディオでの圧倒的なアドバンテージ

m903の注目すべきデザインとしては、コンピューターからくるサンプリング情報に対してロックする一般的なUSB DACではなく、ビットパーフェクト再生を実現する非同期のデータ転送モード採用したことでしょう。「それ(一般的なUSB DAC)は安価に作れてさらに動作も良好だとは思いますが、私たちの信念はビット変換のこと以上に、最も優れたクロックをDACに与えそれをサウンドソースに同期させることを大切に考えています。これはUSBモードにおいて最も高信頼なアプローチだと言えます。m903はUSBシステムに対してクロックマスターとして機能します。コンピューターからデーターを受け取るとm903のクリスタルオシレーターがマスタークロックとして使用されます。m903はまったくといっていいほどジッターからの影響をうけることがありません」。

パワーサプライにはローノイズなアイソレートされたトロイダルユニットを採用。またm903には10もの異なるパワーサプライが各セクションに個別に存在し、回路間の影響を最小に抑え込み、バランスライン入力のラインレシーバーアンプとして、いかなるノイズの影響も受けないのです。




徹底した高貴な設計思想

ヘッドホンアンプは“カレントフィードバック”タイプの設計となっており、一般的なボルテージタイプのアンプに比較して、極めて高速、複雑な倍音まで余すことなく表現することができます。GRACEはBurr BrownDACを使用していますが、これはDACがカレント出力をもっており、GRACE独自のカレント→ボルテージコンバーターに利用できるからです。それはもっとも大切なDACのパートとなりました。電流から電圧へと変換される場所は極めて重要な役割をもっています。なぜならDACから送られるパルスはとても高速であり、正しい変換のためにはとてもハイパフォーマンスなアンプが必要となるのです。多くのDACはそのプロセスをビルトインしており、そのサウンドもスペック的には問題がありません。でもそのサウンドが決して素晴らしものではないのは何故でしょう?人々は私たちに「どんなチップをDACに使用しているのか?」と尋ねられます。そのパーツの型番を教えるだけなら簡単です。しかしそれはすべての要素のほんの一部分でしかないのです!


注目すべきこととして、m903は電解コンデンサーを一切シグナルパスに使用していません。マイケル・グレースは説明します。「電解コンデンサーは安定感に欠けます。歪み、インピーダンスの点からも、サウンド面も少しメタリックな高域のサウンドになります。またリキッドを使用しているので経年変化によりオーディオパフォーマンスが変化してしまいます。わたし達はフィルムコンデンサーを使用します。たいへん安定したパフォーマンスと音質、そして長年の間そのオーディオパフォーマンスは変化しません。長く安心して使用できる信頼感については、すべてのデザインを決定する指標にもなっています」




サウンドテストと評価

「私はこれほどの「リアリズム」をヘッドホンアンプで体験したことがない。」

サウンドテストを行うにあたってSennheiser HD650ヘッドホンと、Musical Fidelity X-Can 8VPヘッドホンアンプを比較用のリファレンスに用意した。


最初にRCAコネクターから出力した信号をMusical Fidelity X-Can 8VPヘッドホンアンプで試聴してみる。

最初に数小節だけで、限りない高潔さを感じた。個々の楽器が非常によく表現され、存在感を放っている。たとえばギターパートは素晴らしく写し出されている。サウンドの細かな詳細について本当に注意深く、刻銘に描き出している。バンドアンサンブルの個々の楽器の「真実」が限りなく表現されている。私はこれほどの「リアリズム」をヘッドホンアンプで体験したことがない。

X-Feedをオンにしてみるとより低音が柔らかくなり全体で鳴っているようになる。音楽的な広がりが十分に感じられた。サウンドステージ全体に情報量が増えたような印象だ。


同じ音源をバランス出力から接続してみる。

ミッドレンジの見通しが良くなり、さらなる恩恵を感じられる。RCA接続の時に感じたミッドレンジへの疑問点は、なんと(アンバランス接続による)ノイズまで克明に描き出せれたことによるものだったのだ!(*そのくらい微細なサウンドを表現しているという意味)。バランス接続ではクリアーで、素晴らしくフォーカスされたサウンドを聴くことができる。タンバリンの鮮明な響き、明瞭で全てがエンハンスされたように進化している。


RCAアウトに戻りHD650から同じくゼンハイザーのHD800にヘッドホンを交換してみる。そしてAvid AcutusのターンテーブルでJune Christyのレコードを再生。m903は表現力の高い熟成したボーカルを聴かせる。繊細なニュアンスをMusical fidelityにGRACEのDACが与えテクスチャーの再現も素晴らしい。バックの演奏はピアノの演奏ぶりが引き立っている。ベースやドラムも同様だ。パーカッシブなブラシストロークは近く響く。先に感じたアッパーミッド帯域の気になる点もまったく改善された。


今度は再度バランス出力で聴いてみる。

サウンドのフォーカス感が素晴らしく、一点の曇りもないサウンドが展開される。ボーカルにはパワーが宿り、Christyのソフトでハスキーな声が再現されている。低域はバランスモードでは少し落ち着き素晴らしいキャラクターである。ミドルレンジもピアノをきめ細かに表現している。ドラムのブラシサウンドはその空間そのものを切り取ったように写実的。ブラシのファイバー素材が変わったら、たぶんそこまではっきりと聴こえるだろう。


今度は電源ケーブルをTellurium Q Blackに変更してみる。

ダイナミクスと明瞭さに大きな変化を確認できる。ボーカルに華やかさを感じ、さらなる発見がある。ベースの表現性も高くなりリズムもリラックスしたものに感じる。




スピーカでのテスト

DACとしてのm903のテストとして今度は、4コアのPCと、Rega Miraのアンプ、Mission70スピーカーでリファレンスとしてArcamのrDACを用意した。リファレンスサウンドはCarol KiddのNever Entered My Mindだ。

GRACE design m903は大げさな「華」は取り除き、再度フォーカスの素晴らしいボーカル、全帯域で表現するバッキングの楽器を表現した。ボーカルはクリーンであるだけでなく、サウンドのレイヤーや重なりによるモジュレーションまで鮮明に描き出す。サウンドに本来含まれていた要素をすべてリアルに描き出してくれる。ピアノやシンバルは本当に輝き全てを全部伝えてくれる。どんな複雑な音楽の構造でもGRACEは正真正銘のリアルを再生してくれる。

SugarbabesのBlueを試聴する。この曲ではArcamとGraceの違いが明確に表れた。この曲はピークリミッティングが大きくたいへんコンプレッションされたサウンドである。

GRACE m903はサウンドステージが(Arcamより)ワイドでクリーン、リードシンガーに絡む複雑なハーモニーにも一体感がある。ボーカルがMixから飛び出してくるようだ。




まとめ

GRACE m903は上っ面だけの美意識だけで作られているのではない。その全てはサウンドのために作られている。サウンドこそが優先されている。この小さなm903は素晴らしい仕事をしてくれる。このクラスをリードするヘッドホンアンプとして輝かしく、全ての詳細を表現することができる。DACとしてもコンピューターにUSB接続することでたいへん満足に使用することができる。




【総合評価】

コンパクトで素晴らしい価値を持つ製品だ。サウンドクオリティを最も重視し、トップクオリティのDACとヘッドホンアンプを搭載している。すべてのオーディオファンを満足させてくれるだろう。 総合評価 ★★★★★(満点!!)



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