アルミ筺体を採用しサウンドをグレードアップ!
GPC-Alでは従来の1U筺体から2U仕様に変更。さらに従来は鉄製だった筺体をアルミ製とすることで大幅なサウンド面でのブラッシュアップを達成しています。
↑GPC-Al プロトタイプです(印字がGPC-Tになっていますが・・)
トランスやコイルなど磁束が多い設計のGPCシリーズに「アルミ筺体」を採用することで、強磁性体である鉄に比較して磁束による影響を受けにくくなります。結果サウンド的にたいへん効果があり、さらなるパフォーマンスを期待できるということです。また特有のうなりも低減され、全体のサウンドパフォーマンスが大幅にアップグレードされるとのこと。発売が楽しみです!
GPC-TQとAlを徹底比較試聴してみました!
今回は通常の壁コンセント、GPC-TQ、GPC-Alと3つの異なる電源でサウンドを比較してみます。
試聴環境は今回はヘッドホンで行いました。前回私が(前職時代に)行ったGPC-TQのテストではスピーカーで徹底比較を行いましたので、今回はあえてヘッドホンで試してみました。ヘッドホンは密閉型のカスタムチューンされたSONY MDR-7506、そしてゼンハイザーのHD650を使用、ヘッドホンアンプとDAコンバーターにはスタジオリファレンスのGRACE design m903を使用しました。
まずは壁コンセントと発売中のGPC-TQで比較
まずは壁コンセントで聴いてみます。
試聴ソースは以前のレポートでも使用したShelby Lynneの「Just A Little Lovin’」で聴いてみます。
GRACE design m903ならではの丁寧で切れ味のよいサウンド、正に正確なリファレンスと思える私にとっては聴きなれたサウンドです。このサウンドだけを聴かされたらまず誰も文句のつけどころはないと思います、スピード感、空間の再現性、ソースの持っている情報が全部引き出されたように聞こえます。全く不満はありません。
しかしながら、GPC-TQに電源の取り口を変更しただけで目が点になるほどサウンドが変化します!以前のスピーカでのテストでも感じた変化と同じ傾向です。ヘッドホン環境でもこれだけ電源が音に及ぼす影響が大きいのか!と改めて感心してしまいました。
壁コンだけでは気にならなかった部分が、比較してしまうと明らかに欠点に聴こえてしまいます。壁コンだけ聴けば全く不満がなかったのに、比べてしまうともう絶対に後に戻れないほどのアップグレードを確認できます。
壁コンの音質は明らかに雑味があり、軽く、サウンドの締まりがありません。
GPC-TQを電源に配したm903とヘッドホンのサウンドは、まずサウンドの焦点と重心が完璧に定まっています。音が発せられる点が正に一点からまっすぐ放たれ、サウンドが消え入るところまで全くブレがありません。キックドラムがしっかりと響き、スネアが全く滲みなく鮮明に空間に広がります。
ノラ・ジョーンズの1stに音源を変えてみると壁コンのサウンドは、ノラの美しい倍音を含むハスキーなボーカルがざらついて聞こえます。ベースラインを聴いてみると平坦で響きも豊かに聞こえません。繰り返しますが比較しなければこんな事は考えもしません。電源周辺の世界は「できれば知りたくなかった・・・」という方も多いですが、まさにそれを実感。GPC-TQの音を聴いてしまったらもう壁コンの嫌なところばかりが目立ってしまって、後には戻れない感じです。
HD650でSteely Danを聴いてみます。壁コンは明らかにサウンドが腰高で、キックやベース、中低域にしまりがなく聴こえます。空間もごちゃついていて整理されていない印象です。しかし電源をGPC-TQに変えただけでサウンドが一変してタイトになり、艶が加わりつつも一音一音が研ぎ澄まされます。不満に感じた中低域も弾力がでて心地よいサウンドです。何度も繰り返しますが、これはあえて比較すればということです。壁コンだけの時は全くこんな不満があるとは思いもしなかったのですが・・・
GPC-TQとあたらしいGPC-Alを比較
壁コンセントとGPC-TQのサウンドの違いに驚愕したところで、今度はGPC-Alを聴いてみます。
まず驚いたのがGPC-Alの機器自体の動作音の静かさです。
GPC-TQは以前から少し気にはなっていたのですがトランス自体のうなり音があり、共鳴しているように思っていました。音が鳴ってしまえば気になることはないのですが、特に静かなスタジオや試聴ルームでは少し気になるのも事実でした。GPC-Alではトランスのうなり音がほとんど聞こえません。電源をいれてもとても静かなので気になることはないと思います。これはひとつ大きな発見で利点であると思いました。
Shelby Lynneを聴いてみます。
GPC-AlではGPC-TQより一回り音像が大きいように感じられます。端正にサウンドがまとまり、さらにキレがよく、さらにブレのないサウンドを聴かせてくれました。リバーブや残響が明瞭で消え際まで際立っています。よりリファレンスなサウンドだと感じました。
GPC-TQはどうかというと、GPC-Alよりサウンドへの色つけが大きいようにも感じます。それは全く良い意味での中低域へのたっぷりとした鳴りの演出です。GPC-TQはこのむっちりした弾力のあるサウンドに特徴があるのだと再認識しました。引き締まったキックドラムの鳴りと、鮮やかな残響はオーディオ的に素晴らしいものです。
次にノラ・ジョーンズの1stからLonestarを聴いてみます。
GPC-TQはゆったりとたっぷり鳴る大人っぽいサウンドなのに対して、GPC-Alでは一歩前にでてくるような明瞭なボーカル、フォーカスがよりシャープなサウンドを聴くことができます。楽器の配置がより正確に聞こえるため音像が大きく感じます。
同CDからCold Cold Heart を聴いてみると、GPC-TQでは響きに重心のある艶のあるウッドベースのサウンドが、GPC-Alではより見えるサウンドに変化していました。指が弦にあたる瞬間に発せられる弦自体のバズ音(びびり)がGPC-Alでは鮮明に聴こえました。正直「こんな音まで入っていたのか!」と驚いてしまいました。全体の見通しが良い、セパレーションの良いリファレンス的サウンドです。
ノラのボーカルの表情だけを聴いてみるとGPC-TQは独特の艶が特徴、壁コンで感じたハスキーボイスのザラつきは全く感じません。倍音成分がきちんと音楽に収まっているというか、滑らかで美しく聴こえます。GPC-TQ特有の重心に低さや弾力感がサウンド全体をしっかりと下支えして、安定感のあるサウンドが最高です。
GPC-Alではノラのボーカルはとても丁寧に紡がれているように感じました。細部まで正確に明瞭に描き出されていてサウンドがGPC-TQより明るく感じます。より色付けのないストレートなサウンドです。
ノラジョーンズはGPC-Alが良かったのですが、Steely Danはタイトな低域でGPC-TQがよく合うように思いました。
どちらの機種もかなりレベルが高いサウンドなので、どちらが良いという話ではないのだと思いますが、壁コンセントでもう聴きたいとは正直思いません。歴代のGPCシリーズは全部聴いてきましたが、聴くたびにそれを再確認してしまいます。また最新機種になるほどその気持ちも強くなるので、きっと性能もどんどん良くなっているのだろうと思います。
勝手な思い込みで、電源関連の機器はどちらかといえばスピーカーモニタリングによく効く印象だったのですが、ヘッドホンモニタリングでも驚異的な効果があると実感できました。とても有意義な楽しいテストでした。今度はスピーカー試聴もぜひ行ってみたいと思います。
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