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今までの集大成となる製品

自宅録音を中心とした「D.I.Yミュージック」や「クリエイティブ機材」といったキーワードはアンブレラカンパニー設立時のコンセプトです。Umbrella Companyブランドのファーストプロダクトとなった本機 The Fader Controlは、「自宅スタジオ環境」に役に立つ製品について色々と浮かんだアイデアを何度も組み立てなおし完成させた自信作です。これまでの経験を最大限に活かし、今までの集大成となる製品に仕上がりました。

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一般的なスモールスタジオでのセットアップを想像すると、PC、オーディオインターフェイス、モニタースピーカー/ヘッドホンは最低限必要な物と考えられます。たいていのオーディオインターフェイスはモニター用であっても音量レベルは固定で出力されます。それは内部の演算による音量調整は音質の劣化を避け、DAコンバーターの性能を十分に使いきれる最適な音量レベルで出力するためです。これをパワーアンプやアクティブスピーカーに直接つなぐと音量調整がとても不便なため、モニターコントローラーの必要性がでてきます。デスクトップミュージックに限らず、商用スタジオでもモニター環境を整える事は正しい録音・ミックスをするためにとても大切ですし、作曲や録音に対するモチベーションも全く違ってくるはずです。また、フェーダーでの操作は微妙なコントロールを可能にするだけでなく、より音楽スタジオ的なスマートさやかっこよさもあります。

さらに重要なのは「良い録音をするために良い演奏をする」という当たり前の事実です。
スモールスタジオでの録音については、ヘッドホンモニターで演奏する事が圧倒的に多いと思います。演奏者にリズムやピッチ、楽曲のバランスを正しく伝える事ができれば、演奏がしやすくなる事はもちろん、この楽曲の中で自分はどう演奏すれば良いか、どう歌えば良いかが見えてきます。モニタリングの良し悪しによって演奏は全く変わってきます。作品の芸術性や完成度を左右するほど演奏時のヘッドホンモニタリングの音質は重要なものだと考えています。
The Fader Controlのヘッドホンアンプはリファレンスを徹底的に追求した高品質設計を貫きました。正直、本機の数倍もするハイエンドオーディオのヘッドホンアンプを超えるようチューニングしました。またスタジオモニターヘッドホンの定番SONY MDR-CD900ST(※)とのコンビネーションを中心にサウンドチューニングを行いました。最高のコンビネーションをぜひお試しください。

(※)開発の際に使用したヘッドホンは主に3機種。
スタジオモニターの定番 密閉型のSONY MDR-CD900STとMDR-7506、オープンエアー型のSENNHEISER HD650です。

従来にはないコンセプトの製品

Umbrella CompanyのThe Fader Controlは、フェーダーコントロールアンプ/ヘッドホンモニターアンプとして、従来にはないコンセプトの製品に仕上がりました。高級フェーダーによるスムースでなめらかな操作性と電子ボリュームの融合により、ボリューム位置による音質変化やステレオイメージに全く変化のない、完璧なボリュームコントローラーを完成させられたと思います。
フェーダーコントロールアンプとしては同回路のコントロール方法を変える事で2つのモード(インプットモード/アウトプットモード)を実現できるため、機能性を難しくすることとは思いましたが一つの製品に納めました。切り替えは設定用のボタンを押しながら電源を投入するだけのシンプル設計で、次回起動するときはその設定が記憶されています。

インプットモードは録音時のリアルタイムコントロールを想定し設計いたしました。音量レベルは0.125dBステップのデジタル指定(精密なレベルセット)、音量変化はアナログ無段階(滑らかなコントロール)のコントロール性を実現し、極めて滑らかな音量コントロールを可能にしました。フェーダー操作時はその変化量を補間し音量を制御するためアナログライクな操作感、ゼロクロスポイントでのレベルセットにより僅かなクリックノイズも発生しません。
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モノラルオペレーションではOUTPUT Aはバリアブル(可変)レベル、OUTPUT Bはフィクスド(固定)レベルでの信号出力となります。一度しかない録音ですので、OUTPUT Bのフィクスドレベル出力を予備的に録音しておけば後の作業も安心です。ステレオオペレーション時は、L/R間レベル誤差、ギャングエラーのない完璧なステレオボリュームコントローラーとなります。また、MUTEやSCALEの切り替えは誤動作防止のためファンクションキーと同時押しで実行します。

アウトプットモードでは、完璧なステレオボリュームコントローラーとしてモニタースピーカーの音量調整にご利用いただく事を想定しております。モニターコントローラーとして必然性のあるREF、DIM、MUTEの機能を備えています。OUT SELボタンでライン出力(スピーカー)とヘッドホン出力を切り替えます。切り替えの際にはリレーによるハード的なミュートと電子ボリュームによるミュートを組み合わせ、切り替え時のノイズは皆無です。電源ON/OFF時もいち早く出力リレーを動作させ、ポップノイズの発生を防ぎます。また、電源ON時の音量はフェーダー位置までフェードインするハイクラスな演出をプラスしました。

アンブレラカンパニーのヘッドホンアンプへのこだわりは半端なく、これまでのノウハウや新たなアイデアが惜しみなく投入されており、基音も倍音もダイレクト音もアンビエンスも音符も休符も全て聴かせる・全て表現する集大成的サウンドに仕上がったと自負しております。

妥協のないパーフェクト設計

The Fader Controlのオーディオ回路は極力シンプルに設計しました。プリントパターンの引き回しは信号の流れ、回路の接続のポイント、予想発熱量など留意点はありますがすんなり決定できました。オーディオ部分がシンプルなだけに電源レールの設計が音に関わる割合が大きく、電源のバイパスコンデンサの選定や定数の決定にはとても時間がかかりました。

いつもの事ですが、電源回路でこんなに変わるかと今回は特に痛感いたしました。スイッチング式のAC-DCアダプターですが、サウンドは「すごい事」になっていると思います。アダプターだからと言って、スイッチング方式だからと言って甘く見ないでください。その見た目から敬遠されがちな電源アダプターですが、長所と短所は良く分かっています、短所とされている面がカバーできる回路であれば、ノイズ源となる交流電源部分を筐体の外にできる事が大きなメリットとなります。他にも本体の小型化、商用電源の質の影響が少ない事、ローコストである事。AC-DCアダプター方式でもそのサウンドが十分すぎることは、その長所を最大限に利用したこのThe Fader Contolの音を一聴するだけで納得いただけるのではないかと思います。

休符の表現力が素晴らしいニチコンKZという電解コンデンサを今回も使いたかったのですが、基板上のスペースの問題から異なるものを探していました。種類や容量を無限に組み合わせた結果、たっぷりとした量感、周波数特性や解像度、全てにおいて申し分ないサウンドとなりました。
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ただスネアの「バッ!ン」、タムの「ット!ゥーン」といった辺りの帯域100~300Hz辺りのスピードに少し納得いかなかったのでさらに実験。初期段階から採用していた銀色コンデンサがパスコンとして受け持つ帯域がおとなしかったようでした。「コンシュマー機器の振幅レベルにはマッチするかもしれないが、プロオーディオの+24dBuの振幅を満足させる物ではないかもしれない」。銀色コンデンサの音響用という冠に安心してしまっていた事に気が付きました。数週間前には効果を実感していたのは確かですが、完成形に近づき、更に切磋琢磨した結果、このコンデンサが求めるサウンドのものではないことが判りました。

さらにコンデンサーを換装しながら、再度の確認作業を重ねていきました。電解コンデンサは付けたては少しうるさく感じますが、徐々に落ち着いてくると「低域と中・高域のスピードが見事に揃いました!」。重量感とスピードが全ての帯域でつながった。位相-周波数特性が良いとはこの事だと実感できました。しかし社内試聴の結果、残響音の表現性がもっと出せないものかと、再度厳しい意見が・・・これを聞いてみてと渡されたCDはシェルビィ・リンの「Just a Little Lovin」。楽器やボーカルなどの実音がリアルでアナログテープのヒスノイズまで緊張感に溢れたゾクゾクするような録音。アル・シュミットの録音です。ダイナミックレンジの広さ、緊張感のある休符、残響音のバランスも聴き取り易く、開発に使用する音楽ソースの選択の重要性も再認識。当然このCDはリファレンスCDに加わりました。

GRACE design など一部のヘッドホンアンプだけが、このCDのシビアな残響音の再現を明確に消え際まで響かせられる事も判り、ハイエンド機を相手にかなりハードルの高い作業になりました。今回は更にそれを超えるべく、一度すべてのバイパスコンデンサを外し、実装する位置を再検証、変更していく事で大きな改善が得られました。が、さらにあとほんの少し「音の鮮度が出せないか?」、「空気感をもう少しだけ」、「ボーカルをもう少し前に!」などなど・・・ひとつ改善するたびにもっとこうしたいという音欲や課題が現れ終わりなき戦いのよう・・・配線材をハイエンドな線材に変更したり、値の調整や新たなアイデアを毎日試し、それらを確実にクリアしていった結果、試作基板の仕様がようやく固まりました。こうして固まったアイデアを余すことなく製品に反映するための最終調整を行い製品版の基板を完成させました。

音を耳で判断していく芸術的な作業

umbrella-company_thefadercontrol-logocloseup-250x250長年シビアな音のチューニング作業をしていると、リクエストに対してこのコンデンサをこの値に変更とか、この種類のコンデンサをこの位置で使うなど、結構自在に操れるようになってきます。このような作業ではまるで音のミックスやマスタリングをしている様な感じもあり、機器を作っているのか音楽を作っているのか、そんな疑問が浮かんだ事もあります。でもそれはどちらも正解であるべきだと考えています。音を音として再現するだけではなく、音楽を音楽として表現するためには、ハードウェアの知識や技術だけでは達成出来ない。音を耳で判断していく芸術的な作業が求められました。「楽曲の表情、動的なパフォーマンス」「楽器音だけではない空間の音」といった所に注目してThe Fader Controlの「すべてを再現する音」を体感して欲しいと思います。

 

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