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Interview column インタビュー&コラム

The Distortion of Sound

僕は最近アナログレコードをまた聴き始めている。好きなアルバムはアナログで買いなおしている。最初に若い頃アナログLPで購入して、それは売ってしまってCDで買いなおして、更にリマスター版のCDまで買ったのに、今度はまたアナログLPを買いなおしているという、自分でも納得いかない流れだが「アナログで聴く感動」を再体験してしまった後ではもう引き返せない状況。更に自社でアナログレコードを初心者でももっと楽しめるようにと「フォノイコライザー」まで作り始めてしまった。かれこれ一年近くも「あーでもない、こーでもない」とアナログレコードの溝に刻まれた、果てしない可能性を秘めた「リアルな音」を求めて、その「心を揺さぶるサウンド」を追い求めている。かなり満足いくところまで追い込めているので、きっと近いうちに成果をお知らせできると思っています。

そんな最近の気分に同期するように、やはり世の中も「MP3で当たり前」みたいな風潮に疑問を感じているようです。

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「The Distortion of Sound」というドキュメンタリーフィルムが公開されています。Quincy Jones、Snoop Dogg、Kate Nash、Linkin Parkなどのミュージシャン、プロデューサー、サウンドエンジニアなどが主に2000年代に主流となった「Compress Audio」、つまりはMP3やサテライトラジオ、Youtubeなどのストリーミングによる圧縮された低品質オーディオファイルについて語っています。

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ダウンロードされた低品質の圧縮ファイルを、更にラップトップの小型で低音質なスピーカーで聴くことは、本当の音楽の大半を失ったサウンドを聴いている状態だ。文章の中の一部の文字列を間引いても、まだ何とか読めるような状態に例えられた「間引かれた音楽」が世界中の多くのシチュエーションで聴かれている。MP3はとても便利で素晴らしい技術だが、MP3は「エモーショナル=音楽の持つ感情」を全く伝えることができない。オリジナルの信号やディテイルは甚だしく失われてしまい、ミュージシャンやエンジニアが細部にこだわり表現し創りあげた「音の芸術」のほとんどが伝えられないままになってしまう。作り手が伝えたかった「感情」や「ソウル」は何処へ行ってしまったのか?

コンテンツ・デリバリーの巨大なビジネスがもたらした利便性、完全に立場が逆転した「Physical」vs「Digital」の世界を少し見直しても良い時期ではないか?250億の楽曲がダウンロードされ、500億時間ものストリームによる音楽が再生されている今、圧縮された音楽はどんな1つの音符からも「エモーション」を削ぎとってしまうのです。今ならその全てを元通りに戻すことができるし、まだ間に合いますよ。とこのドキュメンタリー映像は語りかけている。

11:40辺りでは実際に圧縮されたサウンドと、通常のサウンドがコレだけ違いますよ!というデモンストレーションも行われています。 また「Head-Bob-Test」と命名された(笑)、音楽を聴いてノッて来たときに頭でリズムをとるような(Bobbing)行為をスタジオでテストした結果、低い品質の圧縮ファイルと高解像度の非圧縮ファイルとでは、音楽を聴いてBobbingする人に4倍もの差がでるというデータもあるようです。

本当の音を知っているサウンドエンジニアにとっては「大衆を騙して欺いているような気持ちになる」という話にも共感するところがあります。

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さらに「リアル」なパッケージ商品としての所有感についても語られていて、実際にアルバムのジャケットを楽しんだり、歌詞カードに掲載された写真を眺めたり、といった「リアル」は、音楽の作り手とリスナーとの一体感を演出するツールなのでしょう。それは輸入盤を購入してはシュリンクを破った時の「匂い」がその国の「匂い」であると信じていた(笑)、自分にもとても共感できる話でした。

とにかく絵画でも文章でも舞踏でも詩の朗読でも、ましてや「音楽」は表現された世界ができるだけ多く伝わってくれたほうが心に響く(more soul-stirring musical experiences)。深く響くほうがエモーショナルな感動があるし、心が動かされる。僕が最近アナログレコードを聴いているのも「より音楽の振動や感情が心に響く」からに違いないのです。

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"Hear it all" 「音楽はもっと聴けば、もっと感動できる」、アナログレコードの世界に再度足を踏み入れてからというもの、特に実感していることです。

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