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Headphone ヘッドホン

MDR-CD900STのアップグレード改造が究極進化!「Perfect Symmetry Mod」

 

たいへんご無沙汰しておりましたMDR-CD900STネタですが、これまた効果的なMOD方法を開拓いたしました。

BTL-900で好きな音楽を聴いているのですが、相棒はもちろん愛用の900ST、これまでの「ぷすっと」や「くるっと」や「ダミーケーブルMod.」まで完璧にチューニングしてあるのですが、もっと気持ち良い、もっと正しいサウンドがあるはずだ!と、実験を繰り返し、妻には帰りが遅いと叱られご所望のCD・DVDを買ってご機嫌をとって、それでも止められない900STの研究。しかしその甲斐あって900ST Mod.をみたび進化させる事ができました。 今回、長いです。

試聴に使っているヘッドホンアンプBTL-900はローエンドの再現性能が良く、空気の圧や振動の領域まで再生できます。そんなBTL-900で聴いていると音楽ソースによってはローエンドの圧のかかり方がL側に少し偏っている?ダミーケーブルMod.で微調整を行う際にも、まず最初の状態ではそのように感じる事も多く、ミクロングラスの仕込み方やぷすっと具合で調整し合わせ込んできました。しかし、このような傾向が現れるのは何でだろう?と疑問も感じるようになってきて、こうなると止められません。ダミーケーブルModの時にL/Rの違いについてかなり調べつくしたつもりでしたが、見逃した点があるのか、もう一度見方を変え調べてみました。

見方を変えただけの事はありました、L側のハウジングとドライバーユニットが取り付けてある前面板の間に極わずかな隙間を発見しました。  
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L側

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R側

R側も確かめてみると、こちらにはありません。ネジを締めていくと隙間は小さくなっていきますが、ドライバーユニット部分が何かに押されるようにわずかに持ち上がるのが分かります。これが原因か?何かに押されている?何だ?何かあるとすればケーブルを固定するための突起くらいしか・・・、これが当たる訳ない。が、念のため検証してみます。近くにヤマト運輸の送り状がありました、カーボン紙の転写になっていますので、これを挟んで組み上げてみます、もしこれが当たっていればその箇所が転写され黒くなるはずです。

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ネジを止めた後の2枚目の紙を見てみると、黒くなってる!この下には、

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まさかの真実、この突起!ほんのわずかながら当たっている事が確認できました。L側はバッフル板となっている前面板がこの突起によって支えられている事になります、ローエンドの圧の違いについては振動板の動作による反作用の処理の違いが影響する、という仮説が立てられます。

 

L/Rの構造を揃える

L/Rの音質の差をなくすためには同じ構造にする事が必要、この突起を取ってRと同じ条件にするか、Rにも突起を付けてLと同様に前面板を支える構造にするか。簡単にへし折る事ができそうなのでRと同じにする事は簡単そうです。しかしサウンド面を考えると個人的にはL側の方がほんの少し低域も伸びていて気持ち良いと思う、それに先ほどの仮説が実証できればL側と同じ構造にした方が絶対に良いと考えました。どうやって実現するか、突起の高さは10.7mmこの数値は重要だ、何か手頃に利用できる物はないか?10.7mm、しばらく考えましたが、・・・ない。ケーブルをクランプするのには片方だけで十分そうなので、L側の突起そのものを使ってしまおうと考えました。突起の長さを保ったまま切断する必要がありニッパーなどの工具では変形してしまう、根元にカッターで切れ目を入れて折ってみます、思った以上にきれいに折れました。

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これをR側に移植します、接着剤で位置を決めホットボンドで補強・固定します。ダミーケーブルもやっちゃう場合はケーブルの上からホットボンドです。R側にも隙間が確認できるようになりました、上手くいきました。

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モディファイ後のサウンドを確かめる。期待通りローエンドが揃ってきました、今までぷすっと加減でバランスの詰めをしていた分、若干逆転した印象もあるくらいです。再度微調整し詰めました。キックや両サイドのディストーションギターが重心を下げフォーカスがはっきりしてきた。ドラムのフィルの後ろでなんとなく隙間を埋めていたストリングスが、すごい存在感を出してきた。ボーカルにうすーくかかっているディレイ成分がくっきり出てきて驚いた。低域が中高域を邪魔しないというか、中高域が低域に負けないというか、強い音に弱い音が埋もれてしまうというか、弱い音が強い音に負けないというか、互いに干渉しない再生ができている。と、予想していた低域の変化ばかりか、フォーカスの良さ、解像度の変化が目立ちます、解像度が上がった?というより、これまでの状態でL/Rで解像度に違いがあった事に気がつきます。

R側はふんばりがなかったので前面板が音を再生する事による反作用の力を受けていた、振動の基準となる前面板が反作用を受けわずかに振られていたため解像度を低下させていたと考える事ができる。L側は前面板を突起で支えになっていてバッフル板がハウジングと一体化した強固な状態。この事がL/Rの解像度のズレを生んでいたと考えられます。

と、思ったのですが、アンブレラカンパニーのスタッフOさんからこんな意見も「ベースの迫力が減った、ノーマルはブイブイ出ていて音楽的な太さを持っている。ふんばりModはその辺がおとなしくなっちゃったかな。」確かにそんな印象もあります。ふんばり過ぎたのか??しかし、ふんばりの方が重心は低い。スタッフYさんは「ベースがタイトでラインが見えやすい」「パッと聴きだと音場がちょっと狭いか?」と、「タイト」と表現しているあたりからブーミーな帯域はが控えめというニュアンスはうかがえる、「ラインが見えやすい」は重心の低さからか。質感がどっしり落ち着いた分、音場の印象も異なる。

ここで選択肢として両方R側に合わせるModが浮上した、つまりのところ「ふんばらないMod」です。前面板に当たらない高さに突起をカットしてみます。出た!指摘のあったベースのブイブイが出てきました。

 

早速用意して聴き比べ

①ダミーケーブルMod ②ふんばりMod ③ふんばらないMod

スタッフYさん ①と②③は全然違う、①はコンパクト、②③は音場が広い。 ②の良さは分かる、タイト。音場が広い。定位がしっかりしている。その分Voの定位がすごくシビアに出る。残響の広がり方がフラット。 ③は音が散ってしまう。腰高。残響は上に広がる。 ②vs③は、②ふんばりMod ①コンパクトにまとまったサウンドがモニター向き?②良さは分かるが、広すぎないか?鑑賞用? どっちが良いかというと、ソースによって、用途によって変わる。

スタッフOさん ②も③も定位のずれがない。 ②センターの音が遠い?真ん中に壁があり反射音を聴いているみたい。 ③ボーカルやベースが前に出る。 ②の方が900STっぽい?

スタッフS(筆者) ②L/Rの解像度が高い、揃っている。重心が低く、L/C/Rで重心の位置も揃う。音場も定位している位置も広い。距離感が円弧状、立体的。 ③音場のL/Rの見え方が揃った。音が近い、力強い。重心は②より上にある。距離感が直線、平面的。 ②③を聴いてしまうと、①は音場のずれが気になる。

各自感じた印象から理由を考察してみる。

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まず、「①ダミーケーブルModはコンパクト、②ふんばりMod ③ふんばらないModは音場が広い。」これは、おそらく解像度の違い。解像度が低いとアンビエンスや残響音といった微小な音を再現しきれない。残響時間やその程度によって空間の広さを認識するので、残響音が少ない → 空間が狭い と認識する。この事は僕が感じた「①は音場のずれが気になる。」とも結びつけられる。Lの方が音場は広いと感じとった、つまりLの方が解像度は高い、L/Rに差を感じた事で空間のずれを認識したと考えられる。スタッフOさんの「②も③も定位のずれがない。」という意見もこの事が影響していると考えられる。僕は②と③で「②距離感が円弧状、立体的。③距離感が直線、平面的。」と感じた、②の方が解像度が高く楽器が配されている空間の情報をより多く得る事ができた事によるものだと考えます。

スタッフYさんの「②残響の広がり方がフラット。③は音が散ってしまう。腰高。残響は上に広がる。」から、③で残響は上に広がると感じた理由として、高域は解像度が高く、中低域では解像度が低いとすれば、中低域の広さは失われ、高域だけ広く感じていると考えられる。解像度が周波数帯域で違う事を意味するのではないかと言って良さそうです。

耳元でささやかれると当然近くに音源があると認識します。音源が近い場合、近接効果によって低域が持ち上がります。意識していなくてもこの事は脳が覚えていて、低域が持ち上がった音は近くに感じます。微小な違いではあるのですが、低域がほんの少し抑えられた印象の③、それよりも強く聴こえる②を比較した、スタッフOさん の「②センターの音が遠い?真ん中に壁があり反射音を聴いているみたい。③ボーカルやベースが前に出る。」僕の「③音が近い、力強い。」という意見はこの事が影響していると考えられます。

ふんばる ふんばらない の両方を体験してみて個人的にはやはり、ふんばりModの両サイドのローエンドとの埋もれがちな音の存在感の大きさは諦めきれません。また、ふんばらない時の量感も魅力的。ふんばりModを施した上で違う方法で低域の量感を補うのか、ふんばらないで解像度を高めるか、両方の長所を活かすのがベストだと新たな企みが生まれてしまいました。

今回の比較では②ふんばりMod ③ふんばらないModは ①ダミーケーブルModを超えたのは明らか、しかし②ふんばりMod ③ふんばらないModの比較では、どの長所に重きを置くかで、どちらが良いかというのは意見が分かれた。これは900STマニアとしての血が騒ぐ!!!!!!誰が聴いても、どんな音楽を聴いても、どんな目的で聴いても満足できるヘッドホンを目指す!!モニター用?リスニング用?そんな意味のない線引きも取り去ったPerfectなヘッドホンを。そのためには自分も含めたヘッドホンにうるさいアンブレラカンパニーのスタッフ達を倒さなくてはならない、更なる研究が必要だ。

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いったん頭をリセット。LとRの違い、そうハウジングの隙間。Rも固定ネジを緩めれば隙間はできる。ネジを緩めてできた隙間、これはどうか?聴いてみる、低域の変化が確認できた。強く締め隙間のない状態だと900STらしい低域のプッシュが弱くなる、少し緩めると良い感じ。隙間の作り方で低域の量感違う!しかしそれを得ようとネジを緩めると解像度が低下し音像がぼやけてしまう。また、しっかり締める事で高い解像度が得られることが確認できました。思惑通り、隙間を大きくとれば低域は延びてくる、小さくすれば逆におとなしくなる。しかし解像度のピークはしっかりネジを締めた状態。何かを挟めば隙間を確保しつつ、固定はしっかりの状態を作ってあげればどっちも理想に持っていける?

そうすると、はじめに立てた仮説 「ふんばる事が低域の出方に影響しているのではないか」 は少し違うようだ。「ふんばる事によってできる隙間が低域の出方に影響している」と修正が必要なようです。この、ふんばる事によってできる隙間の効果 は一長一短を感じる面もあり、求める傾向とは違っていたようですが次へつながる大きな手ごたえを感じました、とても面白い実験でした。

 

低域は前面板の隙間が左右する。

そもそも、どうしてL/Rで低域に差を感じられたのか。ネジの締め方?無意識にL/Rで締め方に差をつけていた?Rだけなぜか力が入っていた?それはちょっと考えにくい。ふんばりModのきっかけとなったあの突起?いやこれだけではなかった。いろんな要素を疑い始めた僕はネジを止めるスタッドの高さを調べてみた。L=3.55mm R=3.50 と僅かですが差がある事が確認できた。

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これによってLの方は高く、ネジをしっかり締めても隙間ができる。隙間ゲージを買ってきて測ってみると少しきついけど0.05mmが入る、一致!あえてずらしたとは考えられない、900STが登場したのは1989年、今年で25歳だ。金型の消耗か?理由は不明だが、とにかく差はあった。ふんばりModとふんばらないModの差は?ふんばりModでは、しっかりふんばるためにネジをしっかり締めた、結構しっかり。ふんばらないModではネジの締め方はふつうにしっかり留まる程度、特に意識して強くは締めていない。無意識のうちにに意識して(変な日本語ですが)ネジの締め方に違いを付けてしまっていたようだ。ふんばりModのテスト用にした僕の900STは何度何度も開けたり閉めたり、強くしめていたのでさすがにネジ山がバカになる。そうするとハウジングは交換しないと使い物になりません、2セット壊して今3セット目、この3セット目さえも嫌な手ごたえになってきた、4セット目突入も目前です。しかし、ふんばらないModテスト機のネジ山は、同様に開けたり閉めたりを繰り返しているが平気、問題ない。この違い、裏付ける材料なり得るかと。他の要素の方が影響力は大きいと思いますがネジの締め方も解像度の違いの要因の一つと考えても良さそうです。今回のキーは“隙間”と“ネジの締め方”。

振動板の背面、ハウジング内の音圧を逃がしている?バックキャビティー内の空気のバネ圧を弱め振動板が動きやすくなる、特に振幅の大きい低周波数の振動は大きく動けるようになる。しかし密閉型の900STのドライバーユニットは当然密閉型で使うように設計されたもの、適度なバネ圧制動が必要。以前の「ぷすっと」と原理的には同じ、しかし形状が違えば効く帯域にも違いが出るので、ぷすっとを併用すべきかは後で検証するとしましょう。ぷすっとの場合は元には戻らず調整不能だが、隙間はネジの締め具合で調整できる。なので、この方法を詰めてみる。

周りを見ると0.3mmの極細の針金、これで輪を作って前面板のスタッドを受ける部分にかます、隙間を確保しつつ固定もできる。低域の瞬発力や量感は良い、L/Rの音場も決まっている、解像度は?ネジを緩め隙間を作った状態よりも解像度は確保できている。スタッド部分は樹脂製なので強く締める事で針金は食い込み隙間を小さくできるのでL/Rの隙間を揃えるように持っていくことができる。これで隙間をキープしつつネジをしっかりと締められる、低域と解像度を両立できる事が分かった。

さらに可能性をさぐる。もっと隙間を空けても良さそう、もう少し太い針金?部品のリードはたくさん転がっている、直径は0.6mm。素敵なLOWだ、でも少し出すぎか?もっと締めると良い感じ、針金はその形状ゆえ、ネジをしっかり締めると樹脂製のスタッドにくい込んで隙間をキープできないのでL/Rの調整が難しい。M2のワッシャー!力が面でかかるのでくい込まないしっかり締めれば隙間も揃う。今後この手法がレギュラー化される可能性もある、その場合にも再現性が良く、都合が良い。手元には0.4mmと0.5mmのワッシャー、隙間の間隔のバリエーション。そしてどこに挟むか、ネジは4か所、様々な組み合わせを試してみる。

 
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写真は0.5mm外径 4.6mmで丁度良い。外形5.0mmのワッシャーは入らなかった。

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ぴったり❤

まず0.4mmを下側一か所、この位置に着ければ突起からも浮かせる事ができ、構造上の不一致をなくす事ができる。音はバランスもまずまず、低域も伸びている。圧の偏りもなくなり音場のバランスも良い、元々の隙間L=0.05mm R=0mmが0.4mmワッシャーを入れる事で計算上はL=0.45mm R=0.4mmとなり、隙間ある/なしの差に比べればそれらの比率はぐっと小さくなる事によるものと考えられる。針金よりも解像度が向上しています。しかし、針金の時はくい込んでくれたので扱いやすかったがワッシャーは簡単に外れて、かなりイライラ。はい、接着剤。解決。

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結構しっかり隙間が空いています。900STのバックキャビティーは小さいので振動板の動きによって逃げ場のないこの中の空気は圧縮されたり、引き延ばされたりする、それが振動板の動きにブレーキをかける。隙間を設け空気を抜く事で、ブレーキの作用は小さくなりスムースに動く事ができる。

0.5mmに変えるともう少しローエンドが伸びて厚く濃くなってきます、LOWのスピード感があり、濃密かつ切れの良いサウンド。上下に1枚ずつ0.4mm隙間が増えて1枚よりも低域には効果があります。0.5mmを上下にかますとやりすぎ感が強くバランスが崩れてきます。空気の圧縮をなくした方が振動板はスムースに動ける訳ですが、効かなすぎてもドライバーユニットの共振のQが高くなってしまい都合が悪い。0.5mmを上下に追加したパターンだと音の変化の傾向から共振のQが高くなりすぎていると考えられます。適切に働くポイントを見つける事が重要。隙間を設けた時の音の方が量感は増し、圧縮感がない自然な印象だったのでドライバーユニットは本来の状態よりもっと空気の抜けを求めている、ここにきてようやくドライバーユニットの気持ちが分かるようになってきた気がします。

こんなに隙間が空いてたら音が漏れる?隙間からの音漏れ?気になりますよね。音漏れが気になる帯域は中高域、直進性が高い帯域でもある、隙間からの音漏れが大きくなるとすれば指向性が弱い低域。しかしヘッドホンの低域は音源からの距離によって減衰が著しいのでこのくらいの隙間ではそこから漏れる音なんてほとんど分かりません。それに他の要因での漏れの方がはるかに大きい、よって隙間のあり・なしによる音漏れの違いはないと思っていただいて良いと思います。

ワッシャーを入れる事で全体的に低域のレスポンスが向上する一方、相対的に高域がおとなしく感じます。圧の偏りを排除できるし、圧縮感のないワッシャーによるこの低域は活かしたい、今度は高域を調整しバランスをとる事を試みます。ダミーケーブルModで辿りついた笹かま形状は今回の隙間を設けるModのままでは、ワッシャーModとは相性が良くない?!という可能性を感じた。確かに笹かま形状は高域の反射を少しだけ低減させる方向に働くが、隙間を設けない状態であればダミーケーブルModでの笹かま形状はハウジング内のアコースティック条件を揃え、周波数バランスの調整にも有効な方法だった。しかし、ワッシャーModで低域が伸びる方向に変わるなら、高域も伸ばす方向にするべきでは!?ここで改めてミクロングラスの形状を見直す必要性を感じてきました。

ミクロングラス再調整。下に新幹線が見えてきましたが、読んでいただくと分かります。ミクロングラスをフラットにしてイヤーパッド内に反射させる量を増やしてあげれば中高域は強くなります。が、L ch側は、装着したときに前方にくる方にプラグからのケーブルが存在しどうしてもミクロングラスはへこまされてしまいますのでフラットにする事は難しく、ダミーケーブルModによるL側の形状を再現する必要性は外せない。ならば反対の後ろ側、こっちは渡り線の経路を変える事でフラットにできる。渡り線はミクロングラスの下を這わせ、側面から立ち上げると実現できます。すると、ちょうど横から見た300系新幹線ような形状になります。中高域のバランスをとり、ダミーケーブルによるL/Rの形状の一致させる、どちらも作る事ができました。

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ミクロングラス

ミクロングラスは 300系形状を再現する他にも重要なモディファイポイントがあります。

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ミクロングラスは、長きにわたる調査により個体差があることが分かってきました。製造時期に依るものか、組み込み方に依るものか原因は不明ですが、厚さが違っていたのです、若干ですが。厚さが違って見えるということは重量が異なるか密度が異なるか、2つの可能性が考えられます。こんな軽い物を計れる精密な重量計は持ってない。持った感じはどっちも重さを感じないくらい軽いし、ここは少しあらっぽいですが、仮に重量は同じだと仮定してしまいましょう。そうすると、異なるのは密度ということに。ミクロングラスを使う目的はバックキャビティ内の空気粒子の移動を妨げ、等価的に容積を大きくし、共振周波数やQを調整する事。この事を考えても質量より密度の方が重要だと推測できますので重さのことは今回は放置。ミクロングラスの厚さが薄いということは圧縮され密度が高い、逆に厚い物は密度が低い。密度が高いと多孔質材としての性質は弱まり固体に近づく、キャビティ内にある物が固体なら、ただ単にキャビティ内の容積が縮小しただけ、期待する効果とは反対だ。密度が高いミクロングラスは適正にその働きをしていないと言えるのではないだろうか。そこでミクロングラスの密度を低くする方法を考えた。ミクロングラスをよく観察すると、薄い層が幾重にも重なっていることが分かる、この層を一旦剥がして戻すのだ。ただ、完全に剥がしてしまうと扱いづらいので、円の半分程度まで剥がして、次の層は90度ずらして剥がして、それを繰り返す。

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うまくやるとこのように ふわふわ 、2倍の厚さ、つまり密度は1/2にできる。これぞF(ふわ)F(ふわ)M(ミクロングラス) Mod!ハウジングの中に収める時には結局潰されて2倍の厚さは保っていられないがハウジングの中いっぱいに広がった状態になり、それ以上は潰れない。それでもオリジナルより密度が低い状態にはできる。隙間はなくてもローエンドの延び、反応の速さなど大きな改善が確認できる。しかし、ミクロングラスの不織布の面が振動板側に近い状態なので中高域も同時に出てくるため、相対的なバランスを鑑みるともう少し低域はあった方が良い、ワッシャーでできる隙間Modの必要性はやはり感じます。

説明の度に「ワッシャーでできる隙間Mod」は、いまさらながら長いと思いこのモディファイに命名の必要が。ふわふわミクロングラスがFFM Modならば、これはWDS(Wassha de Dekiru Sukima) Modか?し、し、しっくりこないぞ。FFMってかっこいいのに、 す・き・ま の SKM Mod!どうだ! Kが入るからなんかカッコイイぞ。(僕だけでしょうか。)

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ふわふわのミクロングラスをダミーケーブルでL/Rの押され具合の一致を図ると、300系形状ができあがる、さらにL/Rの形状を揃える事を意識する【 FFM Mod 】でミクロングラスを調整し、ワッシャーでできる隙間【 SKM Mod 】によるローエンドの拡大を融合する・・・、うわ!キタ!キタ! 音場、周波数レンジ、解像度がばっちりそろって心地よい。方向性は正しいと自身が持てる変化がありました。

L/Rの圧の違いとともに一つ感じていた違和感があったことを思い出しました。L/Rで完全に逆相の音を聴いた時、例えば「X SINGLES」10曲目に入っている「JOKER」00:27~ 「Jealousy」に収録されているバージョンだとイントロの前にSEが入っているので 01:02~ です。4/4拍子 + 2/4拍子 の6拍のディストーションギターのフレーズはMONOにすると完全に無くなる、つまりL/R逆相でMIXされています。ちなみにiPhoneのスピーカ、MONOミックスされているので逆相の音は聴こえなくなっちゃいます。こういう逆相の音を聴いた場合は定位こそ落ち着きませんがL/Rで同等にイメージは広がるはず、それが帯域でずれを感じた、中心の軸が曲がっている感じがした。人の聴覚は絶対的な位相のずれは良く分からない、左右の相対的なずれには敏感と言われています。電気的(※)にも1%のレベル差、正相ならば 20log(1-0.01)=-0.04dBのずれでしかない、これは電子式アッテネータを採用したBTL-900のギャングエラー程、分かりません。これが逆相なら20log(1-(1-0.01))=-40dBとなり、ずれが無ければ-∞になるはずのところ、‐40dBです、16bitの-∞に相当する-96dBからみても56dBのずれとなり、誤差は大きく拡大されます。これは正相のセンター定位の音では気付かない、逆相だからはっきり表れた現象だと思います。これが全ての帯域で見事に解消されている!L/Rの解像度、音場などがぴったり合った、実に姿勢の良い音、立ち振る舞いいが美しい音。SKM Modによる圧の差が埋まった事、ネジの締め方やFFM & 300系Modよる解像度の向上と一致が大きく効いている、しかもかなりの高精度で効いていると考えられます。

※ アコースティックエネルギーの比較なので本来は係数は20ではなく10で計算するべき。しかし説明の例えにCDのダイナミックレンジしか思い浮かばなかったので係数はあえて20を使いました。

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最終調整、そして“Perfect Symmetry Modify”へ

ここからいよいよ大詰め、ワッシャーの厚み、配する位置など再度追い込んでいく。この前のテストから大きな手ごたえを感じていた ・0.4mm 1枚 ・0.5mm 1枚 ・0.4mm 2枚 この辺に絞って比較する。どのパターンもこれまでのModを上回る音場の整合性、高い解像度を持っている。ここまで来るとどのパターンをとっても良い気がするが、自分なりに答えを出してみる。同時にアンブレラカンパニー・スタッフの厳しい耳にもぶつけてみる。試聴会だ!

ファーストインプレッション、今までのModより広い音場と均質なでゆがみのない空間に驚いているようだ。比べなければどれも1位っていうレベルではないか?しかし、絞る。

・0.4mm 1枚 音場の広がりは一番感じる。オープンエアー型みたい。この中では高域が強めでクリアなサウンド。定位がビシビシと鋭く決まる。 隙間は3タイプの中では一番小さい、低域は少なめ、相対的には高域が優勢にたったと分析できる。もう少しLOWがあっても良いかなと思えるバランス。

・0.5mm 1枚 これもオープンエアー型みたい、圧縮感がなく開放的。左右に広いだけでなく上下にも拡大した音場、濃密で実体感が強い音像、ボーカリストが目の前にいる!重圧でプッシュが強く、かといって出すぎず締りがある。高解像度でクリア。周波数バランスは一番良い。 隙間は中間、ローエンドが伸びていて中高域とも相対的なバランスが良い。「実体感が強い」という意見からも一番忠実に音を描き出していると捉えられます。

・0.4mm 2枚 量感は出ているが軽い印象もある、中域にディップを感じる。他の2つと比べてしまうと何か物足りない印象。 隙間は一番大きくなる。空気バネによる制動が効きにくい状態で共振周波数がシフトし、Qも鋭くなったように感じる、もう少し空気による制動が必要なようだ。

結果、3人の意見は一致しました。横に上下に広いリッチな音場。ローエンドの延びは圧倒的、中低域のブイブイくるプッシュ重心が低く縦のラインがきっちり出ている。中高域はうるさくなく、明瞭。濃密かつ高解像度、歪感が少ない。ふんばりModやふんばらないModで感じた利点も残っている。

優勝は【 0.5mm 1枚 】です。

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聴くソースの違い、音の好みや主観、また冷静に客観的な意見、完成した音源を聴くのか、演奏モニターとして聴くのか使用目的の違いなんかも越えて社内での意見は一致、これぞ目指していたところ。ダミーケーブルModによるミクロングラスの調整に加え、ワッシャーでできた隙間Modで、突起やスタッドの高さの違いによる影響もなくなり左右の構造は完全に一致(ケーブルの引き出し部はここでは忘れましょう)しました。左右の定位の幅も、音像の上下方向の位置関係も、そして解像度も、より完璧なマッチング、音の土台がまっすぐで自然。名付けて“Perfect Symmetry Modify”!これは良いです、目指す音を手に入れた! 900STネタもこれが最終章になってしまうかもしれませんって言えるくらい、さらに高い次元の900ST Perfect Symmetry Modify。自分的にも、とても満足できる音だし、それを裏付けるメカニズムも解明できた。今のBESTである事は間違いないと思います。ぜひ最新のPerfect Symmetry Modifyを体感してください。

しかしながら、ダミーケーブルModを完成させた時には最高のMod方法を確立できたと思っていた訳で、今後更なる進化を遂げる可能性もないとは言えません。スポーツをはじめベストスコアは常に書き換えられます、ベストは更新するもの!今後もまた新たな研究課題を見つけた時は、もちろん上を目指します。

これまでのダミーケーブルModにワッシャーを足したからと言ってPerfect Symmetry Modifyのサウンドが得られる訳ではない所が唯一の難点と言えるかもしれません。一度開けると再び耳で微調整していく作業は必須、時間もかかります。時間ベースによる作業費を計算すると再度チャージさせていただく事も気がひけるところです。また、より精密になるPerfect Symmetry Modify では細かな異変も気になってしまいます、使い込まれた900STや他のModが施された物ではミクロングラスの状態やドライバーユニットのエージング具合、ヘッドバンドのへたり等、調整しきれない要因も多く存在します。パフォーマンスを100%に持っていくためにも0からのスタートが必要と考え、アップグレード対応(お使いいただいている物の改造のみの対応)はお受けできません。何卒ご容赦いただければと思います。

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今後弊社でお受けする900ST Modは ・セパレート配線 ドライバー取付け角度変更 空気抵抗チューニング までを行った 「標準改造」 ・標準改造に ダミーケーブルMod+300系バージョンのSKM Mod+FFM Modを追加した 「Perfect Symmetry Mod」 の2タイプにラインナップを変更いたします。

    ・900ST改造済の新品(シングルエンド) http://www.gizmo-music.com/?pid=48826827 ・900ST改造済の新品(BTL駆動) http://www.gizmo-music.com/?pid=62879082  
最新のMDR-CD900STモディファイ関連の記事は以下にまとめてあります。合わせてご覧くださいませ(アップデート情報もございます!)。 https://umbrella-company.jp/contents/tag/900st/

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