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Interview column インタビュー&コラム

ピエールさんの音楽室

桜の後の雨の日に久しぶりに友人のピエールさんのスタジオを訪ねた。

音楽室ができたのでというお知らせをいただいていたので。

また長らくご愛用いただいているGRACE designのマイクプリアンプmodel 101に続いて、今度はADC付のLunatec V3を導入いただいたので取材を兼ねてお伺いしました。

おそらく7-8年ぶり(?)にお尋ねしましたので道に迷いながら(10年位前には僕も近 所に住んでいたのですが・・・)なんとかたどり着きました「何故こんな場所にこんな広大なキウイ棚?」雨の良く似合うアパートメントです。さっそくクラシックギター 中心に生楽器の録音作品の多いピエールさんの作業場をレポート。

(2011年取材)

Q: 最近はどんな機材でレコーディングしているのですか?

高橋ピエール(P):DPA4090と A/T4060を主にクラシックギターの録音で使い分けることが多いですね。やはりDPAは弾いたそのまま、4060は強く弾いたときの軽いリミッティン グ感を感じます。この2つのマイクはスピード間が異なるのでその違いを活かして実験的なレコーディングを試すこともあります。

Q: GRACE designのMODEL101は古株ですよね。

P:そうですね。もう5年ほど愛用してま す。GRACEのマイクプリはスピード感があるのでクラシックギターの録音では高い再現性が魅力です。たとえばギターの弦をはじくときに、まづ指が弦に当 たって消音、次に爪が当たってチ、その音の出始めの「ンチッ」っていう感じ。この生で弾いている感じを唯一表現できるのがGRACE designのマイクプリアンプだった。つまりそういう事って言うのが人体の存在感で、心にダイレクトにアクセスする部分だと思うんです。トランスを積ん だマイクプリとかだとコノ感じがなかなかでないんです。GRACEだと高域も低域も周波数帯域によるスピード感のばらつきがない。そこが気に入っている理 由です。

P:あと勝手に良い音にしないところも良い。NEVEとかSSLだとどうしても売っているCDの音になってしまうような気がします。

Q: そして今回のLunatec V3の導入ですね。使用された感想はいかがですか?

P:まずA/Dの質が繊細で素晴らしかっ た。マイクプリのサウンドとあわせて、色付けがなくて全部入っている音ですね。今までこのE-Muの1616Mを使っていたんです。そんなに高くないモデ ルですがとても繊細で、太さはないけど艶があって綺麗なサウンド。ちょっと偶然そうなってしまったかのような感はありますけど(笑)。間違いなく GRACEの場合は偶然ではなくて狙ったサウンドとして良い。クラシックギターのサウンドを再現するには最適です。

P:爪があたって弦の鳴りがある、そしてボ ディーの鳴り、ネックの鳴りがあって・・それらが音となって出てきた時に、GRACEでマイクプリアンプした音だと各々の分離がきちんと分かります。爪が 弦を通過している音まで明確に表現できる。生で弾いているとそういうニュアンスが把握できるのですが、ブースでヘッドホンで録音している時にそれが分から ないと演奏の表現ができなくなってしまいます。プリアンプを通すとそれが分からなくなることが実際に多々あるんです。

P:だから僕がGRACEを使う理由は実は 良い音・悪い音という以前のことなんですね。機械的に良い音にして欲しいという気持ちはなくて、なるべく白い、色のついていない紙の上に(音を)書きたい という気持ちなんです。なにより、世の中にあるもので満足できるなら僕が新たに作る必要はない訳で、それとは別の新しい良いものが作れると思って表現する 訳ですから、なるべく色の無いものの上に作りたい。そのほうが見つけやすいのです。

 

Q: ピエールさんの音楽で不思議なのは「思考」を全く遮らないところだと思います。最近僕が気に入っているピエールさんのCD(「ア・トンノレイユ」*注1) を夜のオープンカフェでずっとリピートして聴いていたんで す。仕事柄、自分でも嫌なのですけれども僕はたいてい音質とかアレンジとか、つい何かと分析的に聴いてしまうのですが、ピエールさんの音だとそういう事が ない。音はしっかり染み込んでくるのに、一方で全く関係ない考えに集中できてしまう。だから「ブックストアでピエールギター」(*注2)が10年も続いているというのも分かる気がします。

P:音楽が「鏡」になって、聴いている人の想いがうつる。それは意識していることなんです。

   

*注1: 「ア・トンノレイユ」高橋ピエール氏の最新作。音楽を聴きながら文章が書けない自分にとって唯一文章を書くときに聴きたい音楽。そうして完成した文章には しっかりピエールギターの匂いが佇んでいるところが不思議だ。夏の雨が染込んでくるときのスローモーション、乾いたアスファルトが濡れていくときの匂いが するレコードです。

*注2: 「本屋で奏でられるギターの音色に、耳を澄ませてみてください。本が深呼吸する音も、聴こえるかもしれません。」青山ブックセンター本店・六本木店で10 年ちかく続いているイベント(イベントではない?)。本と人とバックグラウンドミュージック。詳細はこちら

 

高橋ピエール

p1(Amazon 「ア・トンノレイユ」販売ページより転記しています)

ノーブルロマニスト=高橋ピエール。

“ピエールギター”という新しい音楽、その魅力と才能に触れてみてください。

「青山ブックセンター」での演奏や、東京駒沢の「喫茶ニコ」京都の「エフィッシュ」「ミナペルホネン京都店」など、とびきりな場所での演奏を長く続けているノーブルロマニスト=高橋ピエール。待望の2nd CD 全曲オリジナル。

クラシックギターをメインに、独自の感性で程よく加えられる様々な楽器など全ての演奏、さらに、その録音、エンジニアリング、商品デザイン、文章、組み立て?に至るまで、全てピエールさんが手がけています。

盤面のネジバナのデザインも美しい。ケースを開けて、CDを取り出すと・・・?? 小さなお楽しみ。

生の演奏に於いては、決して聞き手の感情を独占することなく、その空間に共存するがごとくに、それぞれの想いや状況にそっと寄り添いながら、時には1時間以上も途切れなく弾き続ける。そんな稀有なあり方を確立しているピエールさん。その琴線にそっと触れる不思議な心地よさを確認できるはずです。

これは、独自の活動を続けてきた結果の感性。音楽に詳しくなんか無くっても、そういう人にこそ届い てほしい。音楽を発する人との付き合い方そのものを発見させてくれる、「ピエールギター」という新しいジャンルです。各界の方々からの絶賛のコメントが 続々と寄せられています。

ピエールレコードのホームページ

http://www.pierre-record.com/

音楽室レポート

今回のもう一つの目的はピエールさんの「音楽室」を見学することでした。

なんと6万円で完成したというハンドメイドのこの音楽室でピエールさんの音楽は日々録音されています。

45mm角材の枠に 構造用合板→遮音シート→ニードルフェルト→石膏ボード→寝具用のプロファイルスポンジ という構造に、90~120Hzを吸音できるというチャンバーを片側の天面に、床はなし(絨毯)というシンプル構造。

クラシックギターが心地よく弾けるように反射板(ウッドデッキ用の硬板)やチャンバーでサウン ドをチューニングしてあります。実際に中でギターを弾かせていただきましたが、さすがギター用に作りこんだという事はある、ギターのおいしいところがEQ しないでも、きちんと録音できる印象でした。

マイク2本とUSBテンキーが置かれている。この窓から外にあるDAWをテンキーでコントロールする。ケーブルはクリアーで歪が少ないというBerdenで配線してある。

部材の中で一番高価だったというタキゲンの密閉ハンドル!なんか妙にデザインがコンパクトで素敵。そして蝶番もまた素敵な感じです。

ありがとうピエールさん。

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