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Kush Audioの「UBK Fatso」製品レビュー(技術解説付)

  UBK Fatsoを一通りサウンドチェックしてみました。 UBK FATSOはEmpirical LabsのEL-7 FatsoをKush AudioのGreg Scottがモディファイした製品で、オリジナルのFatsoがどちらかと言えば(特にコンプレッサーの機能)派手で極端な設定のプリセットであるのに対して、よりスムースで音楽的な、万能で使いやすいサウンドに仕上げてられています。アナログテープのエミュレーション、コンプレッサー、高周波数帯域への高速リミッティング(Warmth)、出力トランス回路のオン・オフなど、様々なセクションを複雑に組み合わせることで、様々なサウンドキャラクターを作り上げることができます。そのサウンドはデジタルのシミュレートでは無く、すべてアナログ回路を複雑に制御するという手法で作られるリアル・アナログ・サウンドであることが本機の大きな特徴です。 Kush Audio UBK Fatso レビュー 音質 評価 一つ一つ機能を検証していきます。 1、アナログテープのエミュレーション コンプレッサー、Warmth(高周波数への高速リミッター)、TRAFO(トランス)などを全てオフにした状態で、Inputを突っ込んでいくとソフトクリップが起き始めます。この状態がアナログテープ・エミュレーションの状態です。ピークを軽く抑えながらサウンドに温かみのある倍音が加わります。正にアナログテープに録音したようなオーガニックな質感にサウンドを仕上げられます。プラグインにも良くあるタイプの機能ですが、こちらは本物のアナログ回路だけあって、音の瑞々しさが違います。通すだけでこの質感が得られるのなら全チャンネルにインサートしたくなるでしょう。アナログのハーモニクスがとても心地よい使えるサウンドです。アコギのソースにこの機能だけを効かせてみましたが、音像に力強さが加わりぐっと音が前に出てきました。あまり深く考えずに音を入力してインプットを上げるだけで間違いなくどんな楽器でもボーカルでも美しいアナログ感が加わりオーガニックなサウンドになるでしょう。
ソフトクリッパーは信号電圧の振幅を直接制限しますのでアタックやリリースといった時間的な操作は行っていません。そのためコンプレッサーやWHRMTHで間に合わない高速に立ちあがる波形もピークを逃さずソフトに丸めます。ピークを叩き、その分出力レベルを上げれば簡単に音の密度を高める事ができます。倍音、歪感を伴いますので掛け過ぎは注意です。
  2、Warmth(高周波数への高速リミッター) 高域に対して高速なリミッティングを行い、アナログテープで起きるコンプレッションや飽和感に似た質感をプラスできます。Warmthはスイッチで8段階に調整できるのですが、ステップを上げていくたびに強くかかってきます(リダクションメーターでWarmthのかかり具合を確認できます)。高域がアナログライクにやわらかく変化し、サウンドがファットになると同時に、アンビエンス成分が強調されてサウンドが活き活きとしてきます。特に波形の立ち上がりの速いソースに有効で、スネアドラムのアタックがタイトに温かみのあるサウンドになります。ドラムの金物に関してはまるでサウンドがダイナミックに蘇ったかのように輝きだし、アンビエンスも強調されてとてもサウンドが馴染むようになります。アナログテープに録音した場合にミックスの中での個々の楽器の座りがよくなるように、Warmthをプラスするだけでサウンドがしっかりと、アナログっぽく響くようになります。ただしWarmthを上げ過ぎると、ソースによってはハイの響きまで抑え込んでしまうので、適度なwarmthに設定するのがコツです。【アナログテープのエミュレーション】は常にかかっている状態ですので、この効果と一緒になり正にアナログテープの「あの」サウンドを、本物のアナログ質感で加えることができます。
高速で動作するダイナミックEQで高域の速く短いピークをコントロールします。アタック音に反応し、高域を減衰させています。アタック音減衰すれば周波数特性はフラットに戻りますので、アンビエンス成分はフラットに再生され、部屋の鳴りや空気感を強めます。強く掛けるとあまりの高速動作に効果が不安定になってきますがUBK FATSO独特の荒さ、ざらつきが得られます。また、高域のピークは振幅が大きい割にエネルギー密度が少なく、音圧を稼ごうとすると実はそこが邪魔だったりします。素早い動作でピークを抑え、出力ゲインを稼げば音圧を高める事ができます。マスタリングの隠し味的な使い方も良いと思います。
  3、TRAFO(トランス回路) 出力トランスフォーマーのオン・オフによりNEVEなどに代表されるトランス特有のサウンド質感を得ることができます。高域に静かなシルキーさを加え、中低域はダイナミックにワンランク前に出てくるようになります。リッチなサウンドに変化しつつも、サウンドを引き締めてくれます。ベースサウンドにTRAFOをオンにすると、タイトに低域が締り、弦のタッチもリアルに、とてもかっこいいサウンドに変化します。
本物のオーディオトランスを使用しリアルなトランスの質感を加えます。あえて電気的な特性は良くないトランスですが、トランスによる倍音や質感が付きやすくしています。ローエンドは滑らかにロールオフを始めますが倍音が豊富に付加され“目立つローエンド”と変化します、これが太さ、タイトさ、リッチさを生み出しています。
  4、コンプレッサー 非常にシンプルなコンプレッサーながら、欲しいサウンドが確実に再現できるため、コンプレッサーに対する知ubkgirl識がなくても、プロフェッショナルなコンプレッションをたっぷり実感することができる。基本的にはプリセットを選び、インプットを突っ込みながら、アウトプットを調整する、作業はこれだけなのに実際の出音は、ミュージシャンやエンジニアがコンプレッサーに求めるサウンドそのものになる。結構タップリとコンプレッションする方がこの機種では個人的には好みだが、もちろんINPUTを控え目にしていくことで軽い効果を得ることもできる。KUSH AUDIOバージョンのUBK FATSOではこのコンプレッサーをかなりモディファイしている。オリジナルのEmpirical LabsのFATSOではどちらかというと、ガツンと効くアグレッシブサウンドを得意としているが、KUSHバージョンのUBK FATSOではより音楽的で濃密、万能で使いやすいコンプレッションも選択することができる。こちらも通常のコンプの使い方とは全然違う、耳で聞きながら好みのプリセットを探し、INPUTを突っ込んでいきながらコンプサウンドを確認していくだけだ。ドラムでは激しくリミッティングしてアンビエンスを強調したZEPPELINのようなFAIRCHILD風アグレッシブサウンドから、ナチュラルにパコンとつぶしたNEVE系コンプなどのプリセットが良く似合う。またアコギのストロークではとてもミュージカルで心地よいリミッティングと倍音がまるでビートルズのアコギサウンドのようで最高に気に入った。KUSH AUDIOも一押しのGLUEポジションは特にすばらしく、ナチュラルでどんなソースに対してもとても【まとまり】を良くしてくれる。
SPLAT  レシオはきつくないがスレッショルドが低く強くかかる印象だが芯がとてもしっかりしている。ディテクター回路の前にハイパスフィルタがルーティングされ低域の量感を残す。ボーカルでは、実体感のあるサウンド、WRAMTHと組み合わせて“s”や“ch”の歯擦音をトリートメントしてあげると自然で太いボーカルに仕上がります。 SMOOTHは高速のアタック/リリース、レシオはきつくリミッター的な設定でピークを的確に抑える、軽いリダクションで使うのに向く。リリースタイムが速いので次のアタックに素早く対応、細かい音符が続くフレーズもアタック感を残しリミッティング、パーカッシブな楽器に使いやすい。 SPANKは高いレシオな設定だが時間変化は緩やかなのでアタック感が強く出る。深めにかけた時も気持ち良い。オリジナルFATSOの設定を残しているポジション。 また、それらを組み合わせた時にはさらに違ったキャラクターとなり、特にGLUEはサイドチェインフィルタが効いた高速コンプレション、自然すぎて何にでも使いたくなる、迷ったらコレ。2MIXにも。
KUSH AUDIO UBK FATSO これらの4つの機能を複合的に使用することで得られる音のバリエーションは膨大です。各機能のもつ特徴的な個性を組み合わせることで、とても立体的で前にでてくるアナログサウンドを自在にコントロールできます。 UBK FATSOの魅力は「押して、ひねって、探していく楽しみ」だと思います。専門知識よりも感性を重視した音作りができるので、よりミュージシャン向きの機器だとも言えると思います。ボタンをカチャカチャと調整しながら、自分の好みにあうポジションを探していく感じは、より楽器的だと言えるでしょう。コンプレッサーに関しても7つのプリセットの完成度が凄まじく高いのが特徴です。どのポジションも「これこれ、このサウンド!」と思える納得のニーやリリースなどの組み合わせに調整されているので、特にコンプレッサーの使い方に慣れていない方でも、簡単に「かっこいい、プロフェッショナルなサウンド」が作れてしまいます。エンジニアリングよりも作曲やパフォーマンスに集中したいミュージシャンやアレンジャーさんなどに特にお勧めしたいです。 最後に2ミックスにも効かせてみましたが、TRAFOをオンにして、Warmthを控え目にプラスしたサウンドは素晴らしく、ミックス全体をワンランク上の質感に仕上げてくれそうです。 Kush Audio UBK Fatso レビュー 評価 総評としては「かなり使える一台」だと思います。 価格は決して安くないのですが、これだけのリッチなアナログの質感をアウトボードで揃えようとすると、まず現実的ではありません。「じゃあ、プラグインで・・」、うーん、UBK FATSOのサウンドを聴いてしまった後には、いくら良くできたプラグインでもこの質感にはなりません・・・。オーガニックで立体的なアナログの質感はやはりハードウェアでないと出せない響きだと思います。この本物の質感を是非試聴してみてください。作品のクオリティを確実にプロフェッショナルな領域に押し上げ、手放せない一台になると思いますよ。 Kush Audio UBK FATSOの技術解説はこちら https://umbrella-company.jp/contents/kush-audio-ubk-fatso-tech-note/   products-page_button

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