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現在、本記事に記載のモディファイは弊社では受付しておりません。ご了承ください

 

KORG MR-2000S モディファイ解説

 

5.6MHz DSD対応スタジオレコーダー KORG MR-2000S以前のモディファイの記事をご覧いただいて、今回新たにご依頼をいただきました。
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MR-2000SはDSD対応のレコーダーという事でDSDレコーディングの現場やスタジオのマスターレコーダーとして導入されております。初めてノーマル機の音を聴いた時はレンジが狭く、響きが減ってドライな印象を受けました、正直なところDSDやハイレゾフォーマットの利点があまり感じられませんでした。ちょっと失礼して内部を拝見するとその要因が理解できました。アナログ部分はオペアンプで組まれていて、バランス出力以外はNJM4580Dという品種が採用されている。このNJM4580Dはオーディオ用として発売されているとても使いやすいオペアンプですが、サウンドはパンチがあり強い音なのでそういうキャラクターを持たせたい部分に使うのは最適ですが、MR-2000Sのような原音忠実な録音再生を行う機器には合わない気がします。原音に忠実という方向ではオーディオ特性的にはまだまだ上のオペアンプはたくさんあります。あとは、入出力に入っているカップリングコンデンサの容量が気になりました。バランス出力で47uF、負荷インピーダンスを仮に10kΩとするとカットオフ周波数は0.3Hz。低周波数の可聴帯域は20Hz~とされているので0.3Hzという値であれば十分に思えるかもしれませんが、これは信号レベルが3dB低下するポイントを示しているので0.3Hzまでフラットに伸びているという事ではありません。カットオフ周波数が0.3Hzならば一桁上、3Hzあたりから落ち始める事になります、それでも可聴帯域はカバーしていますが余裕の無さはそのままサウンドに反映されてしまいます、軽自動車でベタ踏み120km/hと真っ赤なスポーツカーでの余裕の120km/hの違いみたいな感じです。MR-2000Sのモディファイで目指すグレードはスポーツカーの方ですので十分な余裕を確保したいところです。入出力のアナログ回路がせっかくのDSDやハイレゾといったデジタルフォーマットに見合っていないデジタル領域の性能を活かしきれていないと考察できます。

 

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ご提案させていただいた内容
・オペアンプの換装(NJM4580D → LME49720)
・入出力カップリングコンデンサの容量アップ
・バイパスコンデンサでのチューニング

 

オペアンプは私が好きなLME49720がこの用途にはベストマッチだと考えます。LME49720は最高クラスの低歪性能で解像度がずば抜けています。様々なオペアンプを聴き比べしましたが、LME49720は一番響くオペアンプです。響くという事は減衰していく残響成分をより忠実に、明確に再生している証拠、どの品種よりも響きを持っています。もう一つ特筆すべき特徴があり、超低域の再現性が群を抜いている事。どれが一番とか順位の問題ではなく、LME49720しか達成できていませんでした。低域までくっきりはっきり明確明瞭、それでいてしっかりたっぷりの重量感LME49720にしか出せません。機会があれば新登場のオペアンプを集めてオーディションをしていますが、いまだにLME49720を超える物は現れていません。ちなみに弊社のヘッドホンアンプBTL-900にも採用しています。

入出力のカップリングコンデンサはノーマルでは容量が小さすぎますので大幅アップを行います。実装スペースの制限もありますので20倍程度を目安に変更します。もちろん種類や品種も音に影響しますので、ノーマルはアルミ電解コンデンサが採用されています、品種などは特定できませんが汎用品だと思います。今回のモディファイはルビコン社のアルミ電解コンデンサ ZLHシリーズを使用する事にします。コンデンサの性能を表す指標にESR(等価直列抵抗)というものがあります。理想的なコンデンサはこれが0、しかし現実的に0は無理なのでなるべく小さい方が優秀。ZLHシリーズはこのESRがかなり小さく作られているので、リアクタンス成分によるインピーダンスが小さくなり、抵抗性のインピーダンスが支配的になる高い周波数での総合的なインピーダンスが小さく、カップリングとして使用した時は中高域の抜けや分解能に優位に働く。バイパスコンデンサに採用しても、その抜けの良さや分解能の高さは活きてくるし、瞬発力が良いので入力波形に遅れる事なく追従できるレスポンスの良いサウンドはとても魅力的。このコンデンサも弊社のヘッドホンアンプBTL-900で採用しています。

天板を外し、内部を観察すると多くのオペアンプが確認できる。NJM4580Dがアナログ入力段、ADCチップを動作させるためのレベルシフト段、DACからのI/V変換・LPF段、そしてアナログ出力段に合わせて14個確認できる。しかし、不思議な事にバランス出力回路が見当たらないアンバランス出力と兼用か?いやそんな事はないはず。いました、リアパネルを外すと基板の裏側が確認でき、そこに2個実装されていました。バランス出力だけは5532が採用されていました。5532は出力電流が多く取れるのでオーディオ回路の出力部分の定番的なオペアンプ、しかし古くから存在するので設計も古い。太さがある滑らかな質感、しかしスピードが遅いので高域での歪率が下げられない。その歪は倍音としてみた場合はオーディオ的にはマッチするので定番とされるのも分かる。ですが、レコーダーであるMR-2000Sに色付けは求めないのでこれも交換です。

 

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基板の表面だけであれば天板を外すだけで作業ができるので楽勝でしたが、裏面にもリプレイスすべきパーツの存在を確認してしまったので少々たいへんな作業となります。まずは、メイン基板を外します。ネジ、配線を外すと基板が外せます、バランス出力のオペアンプを交換していきますが、ハンダ面への面実装パーツはリードのハンダ付けに加え耐熱性の接着剤での固定もされているため、外すにはコツがあります。外せればLME49720に換装します。そして、表面のオペアンプは数が多いですが裏面に比べるとだいぶ楽です。換装し終えたらフラックスを除去し目視検査、電源ピンはテスターで確認します。

 

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入出力のカップリングコンデンサを交換していきます。交換するZLHはリードタイプですが、面実装用のパッドを利用し取付けます。バイパスコンデンサも同様の作業になります。コンデンサの不要な振動は音にも影響しますので、テープを巻き制振します。

再度目視検査、絶縁の確認を行い組み込み完成です。電源を入れ各レールの電圧、DCオフセットなど異常の無い事をいよいよ確認し音声テストです。

改造前に予めCDプレイヤーのアナログ出力から音源を録音しておくとADまでの経路の音質の聴き比べが可能です。改造後同じ音源を録音しA/Bで比較試聴してみます。

まず、低域のレンジが圧倒的に広がり改善されている事が一聴して分かります。キックやベースの存在感、フロアタムのベッドが揺れる様子などリアリティーが違います。やはり改造前はコンデンサの容量が小さすぎたのでしょう、別物くらいの余裕のあるサウンドです。周辺パーツをアップグレードする事でオペアンプの性能も活かしきる事ができます、LME49720 の特徴の一つ、超低域の再現性の良さもしっかり出ています。芯がしっかりとしていてぼやけない低域が得られています。解像度も左右の広がりに加え奥行き方向にも高い分解能を与え立体感のある音像が得られています。これでやっとDSDやハイレゾのハイスペックなデジタルフォーマットの利点を活かすことができるようになりました。改造前の小じんまりとした感じはやはりアナログ回路がネックとなっていたと、仮説が証明されました。

DACからの経路も同様の改造を施しているので改造前に録音しておいたファイルも良い音で再生できている事になります。この比較方法ではADCまでの経路の違いしか確認できませんが、それでもこれだけの改善が体感できたので、このモディファイは大成功です。ノーマル基を用意しDAC以降も含め全系統の条件に関して聴き比べができたら、もっと大きな違いを体感できるはずです。

今回、ご依頼をいただいたユーザー様はMR-2000Sを使いジャズやボサノヴァの音源を制作・配信を行うエンジニアさんでMR-2000Sを複数お使いとの事ですので、比較・検証をお願いいたしました。レポートしていただきましたのでご紹介したいと思います。

 

 

 

KORG MR-2000S サウンドレビュー

このたびアンブレラカンパニー/Gizmo-Musicの宿澤様より、先日モディファイしていただいたKORG MR-2000Sの使用感などをレビューしてみませんか?とのお話をいただきました。早速私の環境での使用レポートを書いてみたいと思います。

 

まず改造後のMR-2000Sには、モディファイ前後の効果確認のためにデモ曲のサンプルが入れられていました。ノリのよいファンキージャズです。もう最初から違いを実感できました!
何が違うのだろうかと良く試聴してみました。一番効果が実感できたのは「音の立体感」がわかりやすかったです。サウンドの奥行が増して、リバーブのディテールまで美しく聴こえています。

モディファイ前と後の音源では「モディファイ後」の音質に驚かされました。改造後のMR-2000Sでは音の柔らかさも増してとても良い感じです。

 

さて私が今回モディファイを依頼した本当の目的は「DSDに2トラックだけで録音する」事です。当方はKorg MR-2000Sを2台所有しておりますので、同じ条件で実際に録音を行い、違いを検証してみたいと思います。

 

korg-mr-2000-mod-02
使用する機材は以下のとおりです。

1, AKG 414XLS(マイクロホン)
2, A design MP2A(真空管マイクプリアンプ)
*2台のMR-2000Sに同条件で音を送るミキサーとして
3, Current CSP350 Supermix 24 (Slave)
4, モディファイ Korg MR-2000S
5, ノーマル・無改造の Korg MR-2000S

1→2→3をパラって4,5に接続しました。
このときに共通クロックとしてRME FIREFACE UFXを使用しています。

このときに録音したのはピアノとガットギターのデュオです。

収録語にDSDで聴きくらべましたところ、ノーマルMR-2000Sのほうが一聴して音が元気に聴こえました。しかしこれは音が前面に少し張り出したように感じたためで、実際には奥行き感に欠けます。ちょっとPCMに近い印象をうけます。
↓MR-2000Sオリジナル

↓MR-2000Sモディファイ

 

■ MR-2000Sオリジナル DSDファイル ダウンロード(115MB)
■ MR-2000Sモディファイ DSDファイル ダウンロード(115MB)

 

改造を施したMR-2000Sのほうは立体感が素晴らしく、ガットギターの低域のピッチ感は文句なしでこちらに軍配があがります。音がより自然な感じに近づいているのがよく判ります。DSDを2トラックだけで録音しようという方には断然こちらの改造バージョンがお勧めです。

・・・と個人的感想だけではいけないと思いましたので、データーをAUDIOGATEで32bit/192kHzに変換してスペクトル分析してみました。

korg-mr-2000-mod-graph

 

はっきりと違いがでました!オペアンプの違いもありますが、ノーマルは低域が持ち上がってしまっています。それに比較してモディファイしたKorg MR-2000Sでは低域までフラットです。MR-2000Sで勝手に音を変えていないともいえます。さらに同じ音の場所で改造したMR-2000Sのほうが振幅の幅が大きいことに気がつきます。波形も微妙に異なります(同時に再生するとフェイズがかかったようにも聴こえます)。オペアンプのひずみ率が格段に向上したことによるものかと想像しています。波形の頭のつぶれてみえる部分のシェイプが明らかに違うのが判ります。真空管で歪ませた方が音が元気に聞こえるのと同じ状態なのでしょうか?そのためモディファいしたほうのMR-2000Sはノーマルに比べると地味に聴こえてしまうのでしょうね。

 

 

昨年OTOTOYレーベルより配信しましたDSD音源は、ノーマルMR-2000Sを使用して、録音後に別のMR-2000Sへとアナログミックスしました。ただし録音時からKorg MR-2000のサウンドの中域から低域にかけてのちょっと
PCMっぽい煩さを持っているような気がしてなりませんでした。コンプやEQはなるべく使わないミックスにしたかったのですが、曲によってはどうしても最低限のみ使用しています。

korg-mr-2000-mod-album

容易に編集や修正を”しない”音源を目標にしていたので、DSDをいかに使うかということについてずっと考えていました。そんな時にアンブレラカンパニーさんのMR-2000Sの改造記事を目にして「これだー!」と確信した次第です。その結果は今回レビューさせていただいたとおりです。

その時、その場所、その人々が集まって音楽を奏で、それをできるだけ新鮮な状態でパッキングする。チェリストの溝口肇さんもおっしゃっていましたが、演奏者が理想とする音の空間をそのままリスナーに届けるために現在最も最適なツールがDSDだと思います。

2chでDSD録音されている方々にはこの改造はお薦めです。是非改造してください。その代わりにメーカーサポートは無くなるでしょうが・・・それでも良い音質を望む人にはお薦めいたします!

 

最後に、昨年のミックスで大変にお世話になったUmbrella CompanyブランドのFader Controlはボーカルのレベル調整に大活躍でした!複数チャンネルの製品が是非欲しいです!
TAI MUSIC WORKSHOP
田井 泰弘

http://www.h2.dion.ne.jp/~taijazz/

 

korg-mr-2000-mod-tai

 

参考音源
『Frevo de Flute』(Yuki Imai) 制作紹介 BY TAI MUSIC WORKSHOP
演奏者

今井祐岐(ピアノ)

京都出身。ブラジリアンユニットYUKI BRASIL PROJECT リーダー。
ボサノヴァ・JAZZを中心としたクール&スパイシーな
サウンドで作品を発表中。
今回の参考音源に使用したFrevo de Flute の作曲者。
TAI MUSIC WORKSHOP ピアノ科講師
京都ボサノヴァセッション主宰。

korg-mr-2000-mod-yuki

田井泰弘(ギター)
和歌山県出身。JAZZ&ボサノヴァギターリスト

TAI MUSIC WORKSHOP / MUSIC & SOUND PERFORMANCE KYOTO 主宰。
京都藤JAZZスクール及び月光堂でギター科講師も務める。
今井とのアルバム制作では録音・ミックスも担当。
今井・田井 制作アルバム
2001年 『Voz De Lua』
2008年 『I WISH YOU LOVE』(AMAZON)
2012年 『MEETS THE BEATLES』(DSD配信/OTOTOY)
2013年 『あなたと夜とボサノヴァと』(DSD配信/OTOTOY)
公式HP
TAI MUSIC WORKSHOP
http://www.h2.dion.ne.jp/~taijazz
京都ボサノヴァセッション
http://kyoto-bosanova-session.webnode.jp/
MUSIC & SOUND PERFORMANCE KYOTO
http://taijazz.wix.com/guitar-english
OTOTOY(DSD音源)
『MEETS THE BEATLES』
http://ototoy.jp/_/default/p/27481
『あなたと夜とボサノヴァと』
http://ototoy.jp/_/default/p/35412

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