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GRACE design のヘッドホンアンプ m903の上位機種であり、最高峰のスペックを搭載したm920の評価が高まってきています。

DAC回路が一新され、DSDフォーマットや最大384kHz /32bitのPCMにも対応するなど、製品詳細やスペックなどから読み取れる情報からでも大きなアドバンテージがある事が分かると思いますが、ここではそれ以外のより深い、マニアックな部分まで検証していこうと思います。基板を良く観察し小さな変更点でも突っ込んで解説していきたいと思います。

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m920の内部写真です。相変わらずきれいな基板デザイン、勉強になります。しっかりとしたトロイダル電源トランスが目につきます、トランスはm903から変わっていませんが、アナログ回路用の電源とデジタル用の電源は違う巻き線が用意されていてアイソレーションされており、お互いにノイズの混入を防止しています。メインのレギュレーターがあり、各セクションにそれぞれローカルレギュレーターを持っており、セクション間でのノイズの混入を防いでいます。また、この事はレギュレーターからの引き回しを短くして電源ラインをローインピーダンス化、鮮度の良い電源供給が可能となり、オーディオ性能のしっかりとした土台を築いています。

電源基板中央のデジタルセクションは大きく変更されています。その中心にはES9018K2M DACが確認できます。現状手に入るDACの中では最高峰の物ではないでしょうか。m903ではPCM1798を採用していました。おもなスペックの比較してみます。

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ダイナミックレンジはES9018K2Mが4dB上回ります。THDは単位を変換するとPCM1798は約106dBとなりますので、ES9018K2Mの方が 14dBも良い数値である事が分かります。m903が登場した当時では、最新・最高峰のDACであったはずですが、集積回路の進化のスピードは恐ろしいもので、スペックを見る限り相当なアドバンテージが伺えます。もちろんDACチップのスペックだけで全てを判断するのは間違っていますが、大きな検討材料となります。

DACチップの性能を発揮させるためには、その後のI/V変換 & LPF回路がカギです。デジタルからアナログへと変わる瞬間、I/V変換回路ではDACチップが出力する電流信号をその後の回路で使用する電圧信号へと変換します。LPFはDACセクションでの最後の仕上げ、サンプルクロック成分を完全に除去します。このセクションはm920もm903も同じ構成になっています。ハイスピードな差動アンプであるTHAT1570とハイグレードオーディオオペアンプのOPA1612を使用しDACの性能を余すことなくアナログ信号へと再構成しています。

 

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m920 DAC回路周辺


 
M903 DAC回路周辺

m903 DAC回路周辺


 

DACのクロックの重要性は周知の通り非常に大きいです。クロックは時間軸の分解能に対しての基準となります。この基準となるクロックのゆらぎをジッタと呼びますが、このジッタを極力抑える事がとても重要だとGRACE designでは考えています。GRACE design ヘッドホンアンプの2代目m902からS-LOCKというオリジナルのジッタリジェクション技術を投入し、定数の微調整を繰り返しm920では3世代目となる完成度の極めて高いS-LOCKを確立しています。m920では入力されたデジタルオーディオ信号は、まずCS8416というデジタル・オーディオ・インターフェイスに送られます。このCS8416もジッタリジェクション機能を持っておりますが、さらに精度を高めるため、さらに2段階のPLLによりジッタを強力に抑制します。また、これらのクロックセクションは他の回路に影響を与えないように独自のフィルターを備えた電源回路を置き、細心の注意を払いデザインされています。こうした技術も高性能なES9018K2Mの実力を活かすための布石となっています。

m920のデジタル部は全モデルm903から性能もサウンドも大きく向上し、大幅な進化を遂げています。

アナログ信号となった後は、INPUT SELECTのためのリレーを通り電子制御式アッテネータによるボリュームセクションに送られます。ここのセクションはm903と同じチップを使用し、ボリューム位置による音質の変化を排除するとともに、左右のレベル差0.05dB以内という精度で完璧なステレオバランスを保ちます。これは可変抵抗器を使ったボリューム回路では到底真似のできない芸当です。0.5dBステップのボリュームコントロールはノブを回す速さで変化量を変え、目的の音量へ素早くあわせる事ができます。この高音質・高精度なボリュームセクションはヘッドホンアンプとしてのボリュームだけでなく、LINE OUTを利用したプリアンプ/モニターコントローラーとしての価値も各段に高めているのです。

 

m920 ボリュームセクション

m920 ボリュームセクション


 

そして、ヘッドホンアンプ部は、ICを使った構成となっています。ハイスピード、高出力のAD815AYSを使用しています。このICは、もともとはADSLやVDSLなどの通信ラインの駆動用に作られたもので、通信用の送出アンプとしては波形の立ち上がり/立ち下がりのを崩さない追従性と、エラーを排除するための低歪性能はかなり厳しい基準で要求されます。また、長距離ケーブルを駆動するための高い安定感・信頼性も重視されます。これらの特徴はオーディオ回路にも共通して重要なポイント、加えてAD815AYSの高い電流供給能力、不可に対する安定度はヘッドホンアンプとしても最適なデバイスと言えると思います。性能を見極めオーディオに用いたGRACE designの確かな分析力、柔軟な発想力があったからの結果だと思います。

当初、アナログ系統はm903と同じだとアナウンスさてれいました、確かにオーディオ信号が通過する部分は回路は同じ、しかし良く観察するとパーツの種類の変更や、アナログ電源のバイパスコンデンサのアレンジが各所に確認できました。

まず目につくところですとボリュームセクションへの入り口にあるAC結合用のコンデンサがm903の大きいフィルムコンデンサから、小型で容量の大きいメタライズドポリエステルフィルムコンデンサWIMA社 MKS2シリーズに変更されています。これによりローエンドの周波数特性がm903の6.5Hzから4Hzへとより低い帯域へ拡張されています。また、大型のコンデンサは外的な振動を電圧の変化に置き換えてしまう、つまりノイズを拾ってしまうので、このコンデンサの変更はノイズ対策も兼ねています。

ボリューム回路に採用している電子式アッテネータICのアナログ電源レギュレーターのバイパスとなっているコンデンサも過渡応答特性を改善するために変更が確認できます。

出力部のヘッドホンアンプ回路では、より大きい値の導電性高分子アルミ電解コンデンサに変更されています。静電容量としては約7倍、スムースで俊敏なサウンドの安定感を可聴帯域外の超低域まで確保しています。また、長期的な信頼性も従来のタンタル電解コンデンサに比べ極めて高く、同時に大きなメリットをもたらしているのです。

 

m920ヘッドホンアンプ部

m920ヘッドホンアンプ部


 

バランス・ライン出力(TRS)の出力回路は、m903では高出力電流オペアンプOPA1632が採用されていたのですが、THAT1606へ変更されています。THAT1606はバランス・オーディオ伝送のための専用ICです。高出力電流性能に加え、長いケーブルを使用した場合の音質劣化も最小限に抑える事ができる回路構成、トリミングが施された抵抗器も内蔵し完璧な同相ノイズ除去性能も備え、次段の機器への伝送経路までマネージメントしています。

そしてもう一つ、m920とm903の間もう一つの大きな違いは、新しいクロスフィード回路。 クロスフィード回路は頭部伝達関数を電気的に構成し頭内定位の解消を実現します。ソースによって低域の量感が減って聞こえる事がありましたが、m920のクロスフィード回路は、調整を改善しオリジナルソースに忠実なバランスを保ち、頭部伝達関数による頭内定位の解消を実現しています。

リファレンスサウンドとして完璧なアナログ回路ですが、デジタル系統の大きなアップグレードと共に電源系統などで定数が見直され、現代のリファレンスサウンドとしてさらなるブラッシュアップが施されました。アナログもデジタルも進化した真のリファレンス・サウンドは、スタジオ・エンジニアリングやレコーディングのプレイバックモニターはもちろん、それらスタジオでのパフォーマンスの息使いを余すことなくリアルに伝えてくれる『リファレンス・オーディオ』によるオーディオ鑑賞用途にも間違いなくお勧めできるものです。

スタジオのエンジニアリング業務では高性能なDACとしてはもちろん、DAW上からはオーディインターフェイス(出力のみ)として扱われるためダイレクトなモニタリングが可能です。通常であればPro Tools | HD I/OなどのASE出力をm920に入力されるかもしれませんが、PCからのオーディオデータはAESやS/PDIFなどのフォーマットへ変換され機器間を伝送し、それを受けた機器ではAESやS/PDIFなどのフォーマットからDACチップが扱えるI2Cシグナルに変換された後アナログ信号へコンバートされます。PCからのデータがアナログ信号に変換されるまで機器の内部では何段かのフォーマットへ変換が行われてしまうのです。I2Cの多種のシグナルをAESの1種類へ混ぜ込んだり、それを戻したり、デジタル信号波形の変形や揺らぎを招く要素でもあります。m920はPCからのデータ信号をXMOSプロセッサーが直接受け取りI2SデータシグナルをDACチップに直接送ります。必要最小限のプロセスでアナログ信号へとコンバートが完了し、データエラーやジッタの発生原因そのものを排除できます。完全なデータコンバートである“Bit Perfect”を実現しているのです。

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m920のコンパクトな筺体はデスクトップに設置しての普段使いの他にも、外のスタジオでも大活躍してくれます。エンジニアリングにとって基準となるモニターはとても重要です。DACを含めたモニタリング・コントローラーが同じ環境である事で、その日のレコーディングのマイキングや音決めに不安はなくなります。モニタースピーカーの持ち込みが可能であれば完璧ですが、それが叶わない場合にもDAC~ヘッドホンアンプ~ヘッドホンを基準の環境として準備できます。スピーカーを持ち込んだ場合でもルームアコースティックは当然場所により異なりますので基準とはなりにくいかもしれません。その際にもルームアコースティックの影響を受けないヘッドホンなら、『いつもの環境=基準』となります。使い慣れたスタジオへ行く際もスピーカーだけでなくモニターコントローラーを含めた“いつもの環境”を構築できるm920の導入の利点は大きいと考えます

音楽鑑賞用のDAC/ヘッドホンアンプとしてもm920はたいへん高い評価を獲得しています。大幅なアップグレードを見せたデジタル回路は32Bit/384kHzまでのハイレゾ音源に対応し、ソフトも充実してきた話題のDSD64(2.8MHz)/DSD128(5.6MHz)のDopプレイバックにも対応、来るものは拒まないフルスペックです。

m920は出力インピーダンス1.2オームと、とても低く設計されており数オーム程度のカナル型のイヤホンから、スタジオ定番のMDR-CD900ST、人気のハイエンドオープンエアーHD800などご使用になるヘッドホンを選びません。どのヘッドホンも100%のパフォーマンスで駆動できますので、複数のヘッドホンをお持ちの方もその日の気分で純粋にヘッドホンの違いをお楽しみいただけます。ライン出力を活かせばパワーアンプ/スピーカーシステムとも共生可能、可変抵抗を使ったボリュームでは実現できない高精度なボリュームコントロールアンプとしての利用価値も十分です。純正ワイヤレスリモコン(別売)やアップル社の Apple Remote(別売) を m920 のリモコンとしても使用可能、操作性も快適です。

大幅なアップグレードとなったGRACE designのDAC内蔵ヘッドホンアンプ m920の音質、性能、操作性をぜひお近くの展示店でお確かめ下さいませ。また、デモ評価機もご用意しております。“いつもの環境” でごゆっくりお確かめいただく事も可能ですので、是非ご利用くださいませ。デモ貸出についてはこちらをご覧ください。

文:技術部

 

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Grace design m920 高音質 USB DAC ヘッドホンアンプ
GRACE DESIGN開発者が語る「m920開発インタビュー」はこちら

 

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